海斗の家を出て急遽2人で帰ることになった、中々話さないので絵里は師走を見て切り出す。
「で、確認したい事って何よ?」
「いや~中々タイミングがなくて急でごめんね。」
「そんな事はいいから、早く言いなさい。」
「まぁまぁそう焦らないで。・・・まずは海斗の事どう思う?」
「咲雷君?へんなこと聞くのね。」
絵里は師走の『まず』が気になった。
海斗の事となると多分希にも関係あるだろうからあの場では聞けなかったのだろう。
「んーそうね、初めて会った時の印象は人を寄せ付けないような感じがあって近寄りがたいと思ったわ。」
「そんな印象だよな~。あとエリチカが休んだ日に編入してきたが、その時のアイツは異常だった。でも休みを挟んだ次の日には今の感じになってたな。」
休みを挟んだって事は希が家の鍵を無くして海斗の家に行った時に希が話した他に何かあったのかもしれない。だったらこの前もう少し希に深く追求するべきだったと後悔した。
「・・・えっと、異常だったってどういう事?」
「何か心ここにあらずって感じだったな、単に面倒くさがりの部分もある。まあそれだけならいいんだが、アイツの対応がなんか・・・こう・・・無感情?」
「無感情って人に興味がないのかしら?」
「多分。話しててもなんていうか機械を相手にしてる感じかな。それなのに冗談も言える中々の高性能。あんなんじゃ人間関係上手くいかずに孤独になるんだろうと俺はそう思ったよ。」
「・・・」
言葉が出なかった、今の海斗とはあまりにもかけ離れているため頭が整理出来なかった。
「まあこれは初めて話した時までの話で、その後すぐに海斗は1人でいた希ちゃんを一緒に飯食おうって誘ったんだよ。」
「そうなの?でもそれって今までの話だととても人に関心がないとは思えないわ。」
人に関心・興味がなければ目に入らない、仮に入ったとしても面倒くさがりであったら何もしない。
「海斗が何考えてそうしたかは知らないが誘ったのは事実だ。何か希ちゃんに惹かれるものがあったのかもしんないな~。他にはない?」
「他には・・・私の容姿を初対面であそこまで褒めてくれた人は初めてだったわ。」
「あ~あれね。いきなり言われて惚れたんじゃないかと思ったよ。」
「私はそんな単純じゃないわよ。唯々嬉しかったのよ。それに今日咲雷君と話しててわかったんだけど、彼は優しく真っ直ぐな意見を言う人だわ。」
「なるほどね~。その意見に強いて付け加えるのであれば、良いも悪いも本音しか言えないとこだな。」
「その言い方だと、何かあったのね。」
「この前うちのスタッフを家まで送ってもらった際に変なこと言って困らせてね。」
「その子、今は大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。それに今の海斗なら後日謝りに来ると思うしね。あとは当事者達の問題だからもう口は出さないさ。」
多分海斗に何か言ったのだろう、師走の言う通りその問題には触れない方がいい。
「エリチカが海斗の事をどう見ているかわかったし、もう1つ聞いていい?」
「いいわよ。咲雷君の次だったら希の事でしょ?」
師走は理解が早くて助かると言ってる様にニヤリと笑った。
「正解。もう少し深く聞くけど希ちゃんが海斗の事をどう見ているかわかるよね?」
絵里は頷き同意する。
「その言い方だと君も気付いているんじゃない?多分希は咲雷君の事を、好きなんだと思うわ。」
「やっぱそう見えるよね、希ちゃん海斗と会う前とじゃあまるで別人だもんね。」
「それで、わかってどうするの?私達が口を挟むのは良いことじゃないわ。」
師走でもその事はわかっているはず、下手に関わって今の仲をぎくしゃくさせては意味がない。
「何もしないさ。俺らが知ってればもしどっちかが相談してきた時に協力しやすいでしょ?」
「それもそうだけど、希はまだ何も言うつもりはないみたいよ。」
以前に希に海斗の事を聞こうとしたらはぐらかされてた為、今は何も進展はないと絵里は考えている。
「そりゃそうでしょ。ましになってるとは言え、俺らが散々海斗の事を近寄りがたいとか人に興味がないとか言ってるくらいだ。希ちゃんもそう見てるから切り出せないんじゃないか?」
確かに師走の言う通り、会って間もない相手が人に対して無関心だと必然的に恋愛にも同じ事が言える。
「あり得そうね。希は私の気付かないとこまでとこも気付けるから。」
「エリチカよりとはすごいな、まさか振り向いてくれるまで待つつもりとかないよな?」
「流石にね・・・。何かきっかけがない限りは咲雷君は変わらないと思うわ。」
「だよな~・・・でもあの事以上な何かとかって、漫画じゃあるまいし無理だろ~。」
師走は溜息を付いているが、絵里はそれよりも気になる事があった。
「どうしたの?急に黙っちゃって。」
「・・・荒浪君はどうしてこの話をしたの?」
正直師走が何故希と海斗の事を聞いたのかわからなかった。師走とは今年度になって初めて同じクラスになり今では話す機会が多くなったが、それ以前は数えるほどしか話したことはなかった。
「強いて言えば自己満足かな。」
「自己満足?」
「そう。ただ単に今の4人でいるのが1番楽しくていい雰囲気だと勝手に俺は思ってる。だから高校生活まではこの雰囲気が崩れないように出来る限りの事をしたいんだよ。」
「なるほど、それで自己満足ね。」
確かに今の4人はお昼もいつの間にか一緒に食べるくらい仲良くなっていい雰囲気だと絵里も思ってる。
「でも荒波君、この関係を崩したくないのに希の恋を協力ってちょっと変じゃない?」
例え希の恋を実らせても、崩れるとまではいかないが少なからず変わってしまう。
「変どころか矛盾、もっと言えば無茶苦茶だ。成功するしないで関係は変わるだろうけど、どうせ変わるんならいい方向にいった方がいいでしょ?」
師走は屈託のない笑顔で絵里に見せた。
「っ!?」
絵里は不意に笑顔見せた為、絵里はドキッとし恥ずかしくなって顔を反らしてしまった。
「どうしたんエリチカ?何か俺変なこと言った?」
「べっ!別に言ってないわ!」
「そう?まあいいや。取り敢えず希ちゃんの恋は様子見だから、問題は海斗だな。」
「問題って咲雷君に何かするの?」
師走が話題を変えてくれて助かったと安堵する。
「いくつかは考えはあるよ。アイツにもう少し周りに興味を持たせる為に何かしらしておきたいからね。1つ1つは小さいきっかけでも後々関わってくれれば御の字だ。」
「まさか変な事考えてるんじゃないでしょうね?」
「そんな訳ないじゃん。こんな俺でもちゃんと考えてるつもりよ!?」
師走とは友達となって日が浅いが、普段の事を思い返すととても不安になる。
「はぁ・・・まあでも私よりも『トラブルメーカー』の君に言われた方が諦めがつくかもね。」
「へい!エリチカ!俺に何か恨みでもあるのかい?」
「あるにはあるわ。荒波君、昨日から今までずっと私の事をエリチカって呼んでるけど?」
師走は不味いと思い1歩後ずさりをした。
「あっ・・・と・・・ごめん!悪気はないんだ!次からちゃんと呼ぶから!」
「・・・別にいいわよ。」
「へっ?」
「そう呼んでもいいって言ってるのよ。君に言っても懲りないんだもの、諦めるわ。」
海斗が師走に対して溜息を出す理由が絵里には何となくわかった。
「じゃあお言葉に甘えて。改めてよろしく!エリチカ!」
「態々改めなくても、こちらこそよろしく。」
「ところでエリチカの家ってこの辺り?」
「そうね。もう近いからこの辺でいいわよ?」
流石に家まで送ってもらうのは悪いからね。
「家までついてくのはあんまりよくないもんね~。」
「そう言う意味で言った訳じゃないわよ。」
「わかってるよエリチカ。今日は帰り付き合ってくれてありがとね。」
「いいわよこれくらい。私も色々知れたから、勿論荒波君の事も含めてね。」
「そう言ってもらえると嬉しいね~。さてと今日はもうひと頑張りしないとな。」
「偉いわね荒波君、今日あれだけ勉強してたのに。」
絵里はこれからゆっくりして明日から頑張ろうかと思ったが、その言葉を聞いたら自分もやらなとと感化される。
「逆にする時間が今日しかないんだよ。明日以降はいつも通り店に出っ放しだからね。」
「それって勉強する時間ないじゃない!?」
学生は勉強が本分だ。たとえ自分の家が喫茶店とは言えそこまでする必要はないはず。
「1日もあるだけましさ、いつもは勉強自体しないからね。それに調理師免許取るから俺にとっては国語やら数学やらの成績なんてどうでもいいんだよ。」
「たとえそうだとしても、疎かにしたら卒業出来なくなるわよ。」
「大丈夫!去年もこんな生活で進級できたから後2年同じようにやれば平気!」
「・・・はぁ。」
呆れるあまり声も出なかった。免許取るからっても内容はともかく勉強はしなければならない、それに上がるにつれて内容が難しくなるので今のままではとても平気とは言えない。
「でも今年は海斗がいるから去年より楽できるわ~。」
「随分人任せなのね・・・。」
「学校の勉強に関してはね。しかも今回海斗に勝つか引き分けで言う事を聞かせる事が出来るしね。」
「でも今の荒波君の成績じゃあどうにもならなくない?」
「どうにもならなくても見えても、結果出す為に今日これから頑張んの!」
「咲雷君も言ってたけどあんまり無理しないでね。・・・あっ。」
立ち止まらずに歩き続けてたらいつの間にか絵里の家まで着いてしまった。絵里は師走に対し悪い事したと反省した。
「ごめんなさい荒波君、もう家に着いちゃって・・・。」
「そうなの?こっちこそごめんね、話し続けちゃって。じゃあエリチカまた学校でね~。」
「私も夢中になっちゃったからお互い様ね。送ってくれてありがとう、気を付けてね。」
師走は手を振り来た道を戻るようにして帰って行く。
「亜里沙、ただいま~。」
・・・返事はなかった。耳を澄ますとシャワーの音が聞こえた。
「お風呂入ってたのね。」
絵里は自分の部屋に行き荷物を置いてベッドに仰向けになって師走に会話を思い出していた。
「荒波君はやりたい事をしようとしてる。私も出来る限りの事をしたいけど、今の私に何が出来るんだろう・・・。」
私は難しく考えてしまった為、いい案は思い浮かばなかった・・・。
テストが無事終わり、数日経った本日答案返却される。そしてこの学校では名前と合計点の全員分を掲示するらしい。
「さあ!やってきたぞこの時が!」
「五月蠅い。騒いでも結果は変わらない。」
「まぁまぁ咲雷君、今回は勝負もしてるんやしいつものとは違うのは確かやで?」
希の言う通り今回は4人がテストの点で勝負している。海斗が1番なら海斗の勝ち、引き分け以下なら希・絵里・師走の勝ちと少し変わった内容になっている。
「ほら、もう貼り出されているんだから早く行きましょ。」
絵里は海斗達を置いて先に貼り出されている場所に向かう。
時間は昼休み、4時限目の最中に先生が各フロアの階段近くに成績表を貼り出す為、絵里は授業中落ち着きがなかった。
「待ってよエリチカ~。海斗、希ちゃん、俺も先に行くわ。」
師走は2人を置いて絵里を追いかけた。
「あのアホじゃあるまいし絢瀬は何慌てているんだ?」
「えりちも楽しみなんとちゃう?」
「結果が楽しみなのか?そしたら相当自信があるんだな。」
「んー何か違う気もするんやけど。」
希には絵里の変化に気付いたがどのように変化したかまではわからなかった。
「まぁええか。咲雷君、ウチらも早く行こう?」
2人は師走達がいる成績表へ向かう。
やはり混雑していて上手く確認する事が出来なかった。そんな中、希は何かに気付いた。
「何かいつもと雰囲気違うような。」
「そうなのか?」
「うん。普段ならもっと騒がしいんやけど、今回はざわついているように見えるよ。」
そう話しているうちに少しずつ人が減り、表の目の前にいる師走と絵里の姿を見つける。
「えりち~結果どうやった~?」
「・・・。」
返事がなかった。海斗は聞こえていないのかと不思議に思ったが表を見て理解した。
「・・・ほう。まさかこうなるとはな。」
「えっ!?咲雷君何かわかったの?」
「成績表のトップを見てみろ。」
希は海斗に言われ表を見る・・・。