Fate/princess knight 作:ジャックハルトル
キャラは基本的に壊れていくスタイルなのでご承知置きを
……
では、お楽しみ?下さい。
Fate/princess knight 1話
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
馬鹿だった、慢心してた…
アストルムの夜、特に森の中は危険だ…モンスター、盗賊……日常に生きる人々にとっての【脅威】は夜に行動する事が多い。
彼女はレアアイテムの情報を聞いて、居ても立ってもいられなくなり、一人で探索に出ていた。
本来なら彼女一人だけで何とでもなるのだが、今回は訳が違った。
「arrrrrrrrrrrr!!」
黒い騎士甲冑に黒い霧のような物に身を包んだ化物は、まるで悲鳴の様な叫び声を上げながら少女に襲いかかろうとしていた。
「ーーーーっ!!」
人間ではこの化物に敵わない…そう思わせる程の夥しい死の気配が少女の身を支配した。
死ぬっ、死ぬっ、死んじゃうっ!
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!!こんな所で死にたくない!
「arrrrrrrrrrrr!!!」
「うわぁぁぁぁ!!」
ザクッ……と嫌な音が耳に入った気がする、骨付き肉を包丁で突き刺した時の様な音だ。
少女は胸に空いた穴からドクドクと心臓の脈動と共に血を噴き出していた。
少女は願った、『死にたくない…誰か助けて…』と。
「arrrrr……」
化物は満足したのか先程までの獰猛さが嘘の様に大人しくなりその場でもう一度剣を振り上げ、首を落とそうとした。
……しかし、死にかけの少女の周りに、突然【アストルムには存在しない】謎の魔法陣が浮かび上がった。
そして光を放つ魔法陣が一層強く輝くと何かが魔法陣から飛び出し、一直線に化物へと人影が疾った。
「ーーーーgaaaaaaaaa!!」
その人影が化物の横を通り過ぎたかと思うと突然化物が苦しみ始めた。
少女は既に焦点もあっていない目でその人影を見つめているとそこには…美しい金の髪を後頭部で結った青と銀の騎士甲冑を身に着け、光り輝く剣を正眼に構えた少女がその目に映った。
「……なるほど、事情は概ね理解できた、貴様が犯人だな?
我が聖剣の錆になりたくなければ早々に消えろ!!」
化物は一足飛びでその場を離れ、辺りには再び静寂が戻ってきた。
「……たす、けて…」
「酷い傷ですね、普通に対処していたら間に合わない…」
騎士の少女は「仕方ないですね…」と言いながら少女の傍に座り、胸に手を添えた。
「ーーーーアヴァロン!!」
少女の持つ剣に良く似た、盾のような物が倒れた少女に重なるように現れた。
すると、少女の傷がみるみるうちに塞がっていき、致命傷かと思われた傷が治ってしまった。
「これで…よし、動くのは血が足らないのでもう暫く無理でしょうが大分楽になったはずです…どうですか?」
「凄い…こんなに回復力のある魔法なんて聞いたことがないよ……」
「それの説明は後からにしてもよろしいでしょうか?」
「わ、わかりました…あ、でもこれだけは言わせて下さい」
「はい、なんでしょう?」
首をコテンと傾げる姿には先程までの凛々しさは無く、年相応の可愛らしい少女にしか見えない。
「私の名前は《士条 玲》です、先程は助けていただきありがとうございます、本当に助かりました」
「礼などいりません、私は騎士として…いえ、人として当然の事をしたまでです」
「あの……よろしければ名前を教えて頂けますか?」
「そうですね、ついでに聞きたい事も色々とあるので名乗りましょう」
騎士の少女は立ち上がり、玲を正面に見据えてこう言った……
「私はセイバーのサーヴァント、名はアルトリア・ペンドラゴン…
問おう、貴女が私のマスターか?」
「サ、サーヴァント?マスター?アルトリアさん…でいいのかな?
ちょっと言ってる意味がよく分からないんだけど…」
「むっ…まさか何も知らずに私を召喚したと?……そうですね、では右手の甲を見て下さいますか?」
チラリと言われた場所を見ると、さっきまでは無かったはずの刻印の様な物が刻まれていた。
「あれ?こんなのあったかな?」
「それは『令呪』というものです」
「れいじゅ?」
「はい、それがあれば3回まで私に強制的な命令をする事ができます。
例えば…そうですね、遠く離れた所から空間を飛んで瞬間移動が出来たり
私は絶対にしたくありませんが、令呪を使えばこの世界の民を皆殺しにするなどと言った命令も強制的に行わせる事が出来ます」
「二つ目のは私もやりたくないからいいけど…瞬間移動……本当に?」
「はい、それだけでは無く、例えば私に今後、語尾にニャンをつけろ…と命令すれば私はそれに従わなくてはなりません。
もちろん令呪にも制限があり、一生などの永久的な効果、魔力を無限にするなどの強化といったものはかなり厳しい制限をされますね」
「へぇ…って、命令を出すの?私が?」
あまりの事態に頭が付いて来てないのか、先程のショックで耳に入っていなかったのか、どちらにせよ助けられた自分が命令を下すなど…むしろ命令されても素直に従えそうなのに…
「貴女はマスターで私はサーヴァントです…その手の甲に現れた令呪が良い証拠ですよ」
「そっか……まだあんまり理解出来てないけど、取り敢えずは私のパートナーって思っておけば良いのかな?」
「はい、その認識で大丈夫ですよ、マスター」
マスター…と呼ばれた玲は何故か赤くなった頬をポリポリと掻くと「いやぁ…あはは……」と照れ笑いをした。
「どうかしましたか、マスター?」
「あ、あのさ…そのマスターっていうの止めてもらってもいいかな?
君みたいな子にそんな風に呼ばれると妙に気恥ずかしくて…」
「そうですか…ではレイとお呼びしましょう」
「私はなんて呼べばいいかな?アルトリア?」
「はい、それで結構ですよ」
「うん、わかったよアルトリア。
…って、あれ?ペン…ドラゴン、聖剣…」
玲はそう呟くと『いや、まさか…ん?』と言ったきり黙り込んでしまった。
セイバーはその様子を見て…
「あぁ、では玲にわかりやすい様に言い換えましょうか。
エキュス………エクスカリバーと言う剣を知っていますか?」
「(噛んだ…)うん、有名だからね」
「ブリテンの森の奥深くにある泉の精霊から受け取った私の愛剣、つまりこれが正真正銘本物のエスクカリバーです。
本名をアルトリア・ペンドラゴン…つまり私はアーサー王本人という訳です。
恥ずかしながら」
森に玲の叫び声が再び上がることになったのは仕方のないこと。
二人はそのまま非殺傷エリアであるアストルムの王都・ランドソルまで戻っていった。
道中現れる魔物は、魔物が可哀想になるほど、玲と雑談中のアルトリアに瞬殺されていた。
……………………………
ランドソルに着いた二人は、取り敢えず話をしたいのと空腹を満たす為に深夜でも開いている食堂に入っていった。
「やっと落ち着けたね」
「そうですね…でも大丈夫なのですか?
結構刺激的な体験をされたと思うのですが…」
「あぁ…慣れてるって訳じゃないけど、死にそうになる事は今までも何回かあったからね。
そんな事よりも、まさかアルトリアがあのアーサー王…」
「レイ、あまり人のいるところでは…痛い人だと思われます」
「そ、そうだね。それはそうと…」
食堂の席は空いていたので、先の話をするために奥の方の席で食事をしているのだが……
「もきゅもきゅ…」
「よく食べるね……」
「もきゅ?もきゅもきゅもきゅもきゅきゅ(はて?まだまだ食べるつもりだったのですが)」
みるみる内に目の前に積まれていく皿の山、それを見ていると玲は軽く食べただけで腹が膨れてしまいそうだった。
「サーヴァントってのはみんながみんなそんなに食べるの?」
「もきゅもきゅ、ごくんっ…いえ、その…お恥ずかしい話ですが、これほど食べるサーヴァントは恐らく……少ないです」
しゅん…としてしまったアルトリアを見て、なんだか悪い事を聞いてしまったなと思った玲はポンっとアルトリアの頭を撫でてみた。
「いいんじゃないかな、そうやって食べてる姿はさっきの戦ってるときと違ってなんだか可愛いらしいしね」
「むっ…か、可愛らしいなどとは失礼な、私は王になる為女を捨てた身…そんな事を言われても嬉しくありませぅへへ……」
アルトリアのアホ毛がまるで犬の尻尾のようにブンブンと振られている、実はかなり嬉しかったのかもしれない。
玲はそれを見て、何かのタガが外れたきがした。
否、外れた。
「あぁーー!もうダメっ、我慢出来ない!
何でアルトリアはこんなに可愛いかなぁ!」
「な、何をするのですかレイ!?」
「あぁ〜もうっ可愛いなぁ!」
「ちょっ、い、一旦止まって下さい!」
そう言われてしまえば惜しみつつではあるが、玲はアルトリアを解放する事にした。
撫で終わると、アルトリア突然真面目な顔をした。
何だろうと思い、姿勢を正して玲の話を真面目に聞く事にした。
「どうしたの?」
「……レイ、サーヴァントはお互いが近くにいると感覚的にその魔力の量から相手を感知出来るのです。
本来は【霊体化】をする事でそれを避けるのですが、何故かこの世界では霊体化では無く【アバター化】というものに変更されています。
これがどういう物か使ってみない事には確証を得られませんが、どうしましょうか?」
「アバター化……もしかして何だけど、そのアバター化っていうのを使ってから【シェル】って唱えてくれる?」
【シェル】というのはアストルムを始めれば誰もが最初から使える初級回復魔法、もしそれが使えたなら…
「そうですね、では試してみましょうか、危険な物では無いようですし」
「じゃあ、お願い」
「ではまずアバター化を……よし、と言っても見た目は全く変わりませんね。
強いて言うなら玲からの魔力供給が切れて私自身の魔力を運用するしかなくなった感じですね」
「それって不味くないの?」
「アバター化さえ解けば再び玲からの魔力供給が始まるようですし、この状態で常に魔力をポンポン使ったりしない限りは問題無いでしょう」
「アルトリアが問題ないって言うならそうなんだろうね。
じゃあ、そろそろ頼むよ」
「分かりました、それでは……
【シェル】」
アルトリアがそう唱えるとホワっとした柔らかい光がアルトリアの身を包み込んだ。
「やっぱりね」
「やっぱりとは?」
「そのアバター化っていう能力は多分だけど…私達がこの世界に閉じ込められたっていう事は説明したっけ?」
「いえ、現界する際にこの世界の常識やルール、その他の必要な情報は全て与えられているのでレイ達の状況もなんとなくは理解しています」
「そっか、じゃあ話は早いね。
この世界を元にした【レジェンド・オブ・アストルム】っていうゲームはね、私もなんだけどみんな最初にアバターっていう自分の分身みたいな物を作り出してこの世界に投影しているの。
もうちょっと詳しく話すならmimiっていうゲーム機が私達の身体データをスキャンして、そこから私達の見た目に近い、理想的な見た目のアバターを作り出すの」
「なるほど…ではこのアバター化の能力を使うと、この世界の住人になる事が出来るという事ですね」
「そうだね、この世界が現実から…まぁこの世界も現実なんだけど……私達の世界からこのアストルムが切り離されたときにレベルっていうシステムが無くなったんだ。
だから単純な戦闘能力で戦う事になるだろうからアルトリアは変わらず強ままのはずだよ」
そう、ゲームとしてのこの世界ではレベルを上げてステータスアップするそして魔法を覚えて行き、全プレイヤーの頂点【プリンセス】を目指すゲームだったのだが、ゲームから切り離され、現実と化したこの世界にはステータス…つまりレベルというシステムが消えているが、レベルの代わりに身に付いた身のこなしや戦闘技術によって、レイ達の元いた世界【地球】から来た住人達は一様に強くなっていた。
「分かりました、ではもう一つ質問を…」
「ん?なにかな?」
「あの黒騎士は一体何だったのですか?
私のいた時代でもあのように邪悪な化物はいませんでした。
最初はサーヴァントかとも思いましたが、しかし、あの黒騎士から感じられる気配はサーヴァントとも違いました」
「あぁ、アレの事か…」
言い淀む玲に、少し酷な質問をしてしまったかと心配になったアルトリアだったが、それは杞憂で終わった。
「それは私が答えるよ、玲ちゃん」
レイは聞きなれた声を聞いて、沈んでいた顔を上げた。アルトリアは突然現れた【二人組】に警戒心を覚えた。
「久しぶりだね、優衣」
「レイ、お知り合いですか?」
「うん、このゲームを始めた当初からの友達だよ」
アルトリアはそれを聞いた途端、アワワワと慌ててその場に土下座した。
「も、申し訳ありません!」
「あ、頭を上げてください!
知らない人からいきなり話しかけられたら警戒するのは当然です!
むしろ私が謝らないと…」
「あ、あはは……ところで優衣、そちらの方は?」
「えっ!?あっ、この人はね…」
「大丈夫ですよ、自己紹介くらい自分でさせて下さいな。
こほんっ…では、私は優衣のパートナーをさせて頂いている
【清姫】というものです」
清姫、と名乗った少女はライトグリーンを更に薄くしたような腰まで届きそうな長髪、まさに大和撫子と言わんばかりの雰囲気と神秘的な美しさと可憐さを併せ持つ着物のの少女だった。
「では私も遅れ馳せながら自己紹介をさせてもらいましょう。
私は玲とパートナーを組ませてもらっているアルトリアと言うものです、以後よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「凛々しいお方ですわね」
お互いの挨拶が終わったところで、玲が気になる事を聞いてみる事にした。
「清姫…というとあの?」
「はい、あの【安珍清姫伝説】からお名前を拝借しております」
「じゃあ君の前では嘘だけはついちゃいけないね」
「そうですね…嘘だけはやめていただきたいですね……【嘘】だけは…ふふっ」
玲は薄ら寒い物を感じて、あははと愛想笑いをしているが、アルトリアは???を頭に浮かべ首を傾げていた。
「じゃあ説明するね」
ユイは『ちょっとゴメンね』と言いながら玲の隣に、清姫は『申し訳ありません』と言いながらアルトリアの横に座った。
こんな感じで
玲、優衣
机
清姫、アルトリア
「それじゃ話すね。
玲ちゃんが見たのは偶々黒騎士の格好をしていただけで色々な見た目があるみたいなの、彼らは通称【スレイブ】…噂話によると、数々の英雄や伝説、神話や物語の人達がその黒騎士のように召喚されるらしいの」
「ーーーっ!そう…ですか」
数々の英雄……なるほど、彼等もまた世界に使役されるサーヴァント(使い魔)という訳ですか…それにしてもスレイブ(奴隷)
とは、名のある英雄とは言え…哀れですね。
「ア、アルトリア…それってまさか(小声」
「えぇ、間違いなくサーヴァントと同種の者達ですね(小声」
急に机に乗り出してコソコソと話し始めた2人を怪訝に思ってか、清姫が2人を少しだけ睨む。
美人の睨みほど怖いものは無いので玲とアルトリアは2人揃って『あ、あはは…』と苦笑いをしながら椅子に座りなおした。
「もう、そんなにコソコソと話してないで
私達にもお聞かせくださいません?」
「え、えぇーと……」
玲が言い淀んでアタフタしていると、清姫は着物の袖を口に当てて『ふふっ』と笑いだした。
「冗談ですわ、あなた達があんまり可愛らしいものだからつい…ね?」
「も、もうっ、ダメだよ清姫ちゃん初対面の2人に失礼じゃない!」
「ふふふ、あなた達は本当に可愛らしいですね」
「でも本当にありがとう、優衣も清姫さんも……久しぶりに優衣と会ったらなんだか楽になって来た気がするよ」
「私からも御礼を言わせてもらいます、レイの不安は私だけでは取り除けませんでした…それに、貴重な情報を教えていただき本当にありがとうございます」
「そんなの気にしなくてもいいよ、私達友達でしょ?
また困った事があったら言ってね、私がすぐに駆けつけるから!」
「あら、私は仲間外れですの?」
「も、もちろん清姫ちゃんも一緒に駆けつけるよ!」
「それでこそ私のパートナーですわ」
「もう…からかわないでよね。
それじゃあ、久し振りに玲ちゃんの顔も見れた事だし、そろそろお暇させてもらうね」
「うん、ありがとうね、優衣、清姫さん」
「では、またいつか会いましょう」
「うん!またねっ。
じゃあ行こうか清姫ちゃん」
「そうですわね。
それではお二人共、また後日…」
一通り挨拶を終えると、優衣と清姫の2人は店から出て行った。
4人ともお互いの連絡先を手に入れた。
まぁ連絡先と言ってもメールやチャットなどの機能も消えているので2人が止まっている宿の住所なのだが。
「さて、私達はどうしようか?」
「そうですね…今夜はレイもお疲れでしょうし私達も宿に戻って休むとしましょう」
2人が店を出てから玲が泊まっている宿に着くまでの間は何事もなく、無事に帰る事が出来た。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ar…………thur……arrrr」
アルトリアは自分の中ではポンコツなくらいが可愛いので、ポンコツになっちゃいました。
これからもポンコツにしていきます!