Fate/princess knight 作:ジャックハルトル
そして完全なギャグ回です、面白いかどうかは別として。
昨晩の出来事が嘘だったと思えるような快晴を迎えた朝。
普段は凛々しい玲からは想像出来ない寝相によって、シーツや毛布がぐっちゃぐちゃになっていた。
「ふぁ〜ぁ…よく寝た……」
まだ頭がコクリコクリと船を漕いでいるがいつも通りの時間に起きた玲はフラフラとした足取りのまま手洗い場で顔を洗い、少しだけシャキッとしたかと思えばトイレでパジャマとパンツを足首までずり下げた状態で寝始める。
ハッと飛び起き、何故トイレで寝ていたのか困惑しながら台所に向かい朝食を作り始める。
これが士条 玲の朝だ。
「なぜ私はトイレで寝ていたんだろう…」
分かりきっている事を自問自答していると
背後で何者かが立ち上がる音がした。
昨日の事がトラウマになり少しビクビクしながら振り向いてみると…
「おはよう、ございます…レイ……」
寝ぼけ眼のアルトリアが起きてきた。
嫌がるアルトリアに令呪を使うぞと脅して着せた着ぐるみパジャマ(ライオン)姿で。
生来の可愛いもの好きである玲がその姿を見て我慢出来るわけもなく…
「アルトリアーーー!!その格好は卑怯だよぉぉぉお!可愛すぎるよーー!!」
「うわっ!な、何をするのですか
レイっ!?突然抱きつかれては倒れてしまいまっうわわわわわ!!」
ドターン!ゴスッ!
「痛たたた……レイっ!危ないじゃ無いですか!」
「…………」
「聞いているんですかっレイ!」
「…………」
全く反応を示さない玲を不審に思ってか、うつ伏せになっている玲を仰向けにしてみると…
「…………(白目)」
「レ、レーーーーーーーイ!!」
どうやら倒れたときに頭を強打したらしく、その衝撃で気絶してしまったらしい。
「レイ!どういう事ですかレイ!?
聖杯戦争でこんな死に方するマスター見た事ありませんよ!?」
アルトリアはその場で慌てふためき、玲の周りをグルグル、グルグルと走り回っていた……アヴァロンを使えばいいだろうに。
「そ、そうだ…こういう時は友人に頼むのが早いです!ユイを呼びましょう!ユーーーーイ!!清姫ーーーー!!」
アルトリアは慌てすぎて混乱しているのか
この場にいない友人2名の名前を全力で叫び出した。
「呼んだ?」
「呼びましたか?」
「!?っきゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
突如現れた優衣と清姫の二人に驚き過ぎて
まるで生娘のような叫び声を上げてしまった。
「き、聞きましてマスター?きゃーーっですって…ふふっ」
「も、もう…そんな事言ったら悪い……ぷふっ」
「「あははははははははははっ!!」」
「笑うなーーーー!!」
「だ、だってアルトリアさんの格好…ぷっあはははははは!!」
「と、とても可愛らしいですよ?あはははははは!!」
「違うんです!私の格好はどうでもいいですからっ、レイをどうにかして下さーーい!!」
「「あははっ……死んでるーー!?」」
「ど、どどどどどういう事!?」
「はい、それが……」
事の成り行きをアルトリアが話す中、優衣は既に治癒魔法を使い、玲がただ気絶しているだけという事は分かった。
分かってはいたのだが……
「清姫ちゃん清姫ちゃん」
ちょいちょいと手招きで清姫を呼んだ。
何ですか?と言いながらも来てくれた清姫に対して、優衣はとんでもない事を言い出した。
「玲ちゃん、バリバリ生きてるんだけどね…ちょっとアルトリアちゃんに悪戯してもいいかな?(ひそひそ)」
「私に嘘をつけと?(ひそひそ)」
「アルトリアちゃんの可愛いところ見たくない?それにこれは嘘じゃなくて、ドッキリって言うんだよ(ひそひそ)」
「ドッキリ……聞いた事がありますわね。
分かりました…やりましょう(ひそひそ)」
清姫からの了承を受けた優衣は嬉々としてアルトリアに嘘、否!ドッキリをかます事にした。
「玲ちゃんが死んでる!」
「!!」
「おいたわしや玲様…ううっ…」
悪ノリに重なる悪ノリ…アルトリアは玲の胸が上下しているのに気が付かず、顔を真っ青にしている。
「そんな…私の、私の所為だ……」
項垂れる姿はまさしくライオンそのものだった。
床にポタポタと雫が落ちる、玲を想い…そして、自分の不甲斐なさに。
「……どうしよう清姫ちゃん、凄く胸が痛くなってきたよ」
「……私達はとんでもない事をしでかしているような気がしますわ」
してる。
「うぅ…レイ……どうして、何故こんな所で死んでしまったのですか……」
✳︎死んでない。
「レイーーーー!うわぁぁぁぁん!!」
泣き叫ぶアルトリアを見ているとどうしても悪い事をしている気がしてならない……
いや、実際悪い事しているのだが。
優衣はいつ、ドッキリ成功プラカードを掲げるか頭を考えフル回転させていた。
清姫はいつ玲が起き上がってくれるか、今か今かと待っている。
「アルトリアちゃん、謝らなくちゃいけない事があるの……」
「何…まさかっ!貴女がレイを殺したのですか!?」
「違うよ!?」
「では貴女か!清姫!!」
「何故そうなりますの!?」
「怪しい…貴女達でないとしたら一体誰が。
ーーーーっ!?………私か」
「どうしよう清姫ちゃん、アルトリアさんが思ってたより頭悪いよ…」
「えぇ、何故自分が殺したと思い込めるのかしら…」
別にアルトリアの頭が悪いわけではない、むしろ王としての教養があるのでそこら辺の連中よりは頭がいいはずなのだが、レイの死(笑)によって混乱しているだけだ。
アルトリアはすっ……と両手首を揃えて優衣に差し出した。
「……私が、犯人です……うぅっ」
どうしよう、凄く言いにくいよ…今更「ドッキリでした!」って言いにくいよ…
「ドッキリでした!」って言ったら『も〜、ビックリしましたよユイ!ぷんぷん( *`ω´)』くらいの感じで納めれると思いたい!
この状況をなんとかしてもらおうと清姫をチラッと見てみる。
「…………」
顔を背けられた。
「そうだ……ブリテンには死者を蘇らせる儀式があったような、なかったような…それを行えばもしかしたら……」
アルトリアは『儀式に必要な物を揃えて来ます!その場で待っていて下さい!』と言い残して宿からダッシュで出て行った。
「……さてマスター?この状況をどう納めるつもりですか?」
「面目次第もございません……」
「はぁ……だから最初にやめておけ、と言ったんですよ?」
「で、でも清姫ちゃんだってノリノリだったじゃない!」
「ユイほどノってはいませんよ!」
自業自得で起こった剣呑な雰囲気…完全な自爆なのだが。
主従のプチ聖杯戦争が始まろうとしたその時、ドタバタとアルトリアが帰ってきた。
余程急いで帰ってきたのだろうか、肩で息をしている。
「ユイ!ドラゴンの生息地を教えて下さい!」
「ドラゴン!?いや、存在はしてるけど!」
そうして騒いでいると、もぞもぞと玲が動き出した。
清姫はユイの服をちょいちょいと引っ張ると内証話を始めた。
「玲さんが起きます、逃げましょう」
「うっ…隙を見て逃げようか」
「うぅん……頭が痛い……あれ?そんなに慌ててどうしたの、アルトリア?」
「レ、レイ?レイ!レイーーーっ!うわぁぁぁん、レイーーー!!」
頭を押さえながら起き上がった玲を見たアルトリアは感動のあまり、玲に向かって突撃するかのように抱きついた。
「おっと…」
そんなアルトリアを優しく抱きとめると、アルトリアは玲の胸の中で嗚咽を漏らしながら泣いている。
「あぁ…思い出した。
大丈夫、アルトリアのせいじゃないから安心していいよ」
「ありがとうございます〜」
ぐすぐすと泣いているアルトリアの背中を撫でていると、次第に落ち着いてきたのか、暫くすると落ち着きだした。
「そういえば、優衣と清姫が来てたの?
声が聞こえた気がしたんだけど」
「そういえば…いつの間にかいなくなっていますね、きっと彼女達がレイを蘇らせたのでしょうね」
「へ?」
何を言っているのか訳が分からない玲は惚けてしまった。
元々死んではないので蘇らせるという表現自体が間違っている上に、レイを死体扱いしたのが優衣と清姫の二人なのでアルトリアが感謝する必要は全く無い。
「でも待って下さい、あの方達がレイを蘇らせた?
そんな事はマーリンでも不可能だったはず……余程の魔術、魔法の使い手…はっ!ユイはレイの旧友なので人間であるばず、その可能性は低いでしょう、しかし、清姫は…」
「ア、アルトリア?さっきから何をブツブツ言ってるの?」
「もしかしたら…清姫は、私と同じサーヴァントなのかもしれないです……」
意外なところでバレた。
「そ、そんな訳ないよ…優衣と清姫に限ってそんな……」
「では一度ユイ達に遠回しで聞いてみましょう、そうすれば分かるはずです」
「うん、若干意味の分からない部分があったけど、二人がマスターとサーヴァントじゃなければ問題は無いしね」
玲にしてみれば大切な友人と殺し合わなければならないかもしれない、その事を考えるとどうしても沈痛な面持ちになってしまう。
「では早速呼んで見ましょう……ユイーーーーー!!清ひガブゥっ!ひたはんらーーー!!」
「かわいいなぁっアルトリアは!」
「おかひいでふねぇ…さっひはひょんだらふぐにひたのでふが……」
「あぁっ…何言ってるかわかんないけど舌ったらずなアルトリアもかわいい……」
「レイ、はのふはりのひへがほほにあふのはわはりまふか?」
「ん〜…わからない……(何言ってるか)」
「ほうでふは…」
ちなみにアルトリアがふがふが言っていた内容を訳してみると…
『舌噛んだーーー!!』
『おかしいですねぇ…さっきは呼んだら直ぐに来たのですが……』
『レイ、あの二人の家が何処にあるのか分かりますか?』
『そうですか……』だ。
「ひたがひはふへうまふはべれまへん(注・舌が痛くて上手く喋れません)」
「ね、ねぇ…アルトリア?」
「はひ?なんでふは?(注・はい?なんですか?」
「怪我、治したいよね?」
「ほれは…ほうでふへほ?(注・それは…そうですけど?)」
上気した頬、焦点が合っていない目、唇を潤わすように舌舐めずりをする玲を見てアルトリアは悟った……あぁ、またこのパターンか…
「怪我はね……唾をつけると治りやすいんだよ!」
その瞬間、玲はアルトリアに向かって跳躍した。
およそ人間が出せる限界を超えているであろう速度に、流石のアルトリアも面を喰らったのか、あまりの事態で一瞬身が固まってしまったのかは分からないが、そこは最優のサーヴァント、華麗な身のこなしで突撃して来る玲を見事にかわした。
「レイっ!めほはまひへふらはひ!
ほへに、ふばならはひめはらふいへいまふ!(注・レイっ!目を覚ましてください!
それに、唾なら最初からついています!)」
「大丈夫…痛くないから…むしろ気持ちいいから……」
「ひぃぃぃぃぃっ!はんへんひひいてまふぇんよぉぉぉ!(注・ひぃぃぃぃぃっ!完全に聞いてませんよぉぉぉ!)」
「さぁアルトリア…天国に連れて行ってあげるよ……」
縮地と言っても過言ではないスピードでアルトリアに肉薄すると、レイは腰に剣を挿していない筈なのに居合斬りの構えをとった。
「これが……愛の力だよ《ミストラル・ブラスト》!!」
本来ならば剣を用いる技なのだが、パジャマ姿のままなので、そんな物騒な武器は装備していない。
振り切った腕から発生した突風は、まるで巨大な拳に殴られたかのような衝撃をもってアルトリアを襲った。
咄嗟の攻撃に反応が遅れたのか、踏ん張りが利かずに、窓ガラスを突き破りながら外に弾き出されてしまった。
「くっ!はばはーはのへいへましゅしゅにへいほうできはい!?(注・くっ!アバター化の所為で魔術に抵抗出来ない!?)」
それでもなんとか空中で姿勢を直して地面に降り立ったアルトリアは流石だ。
自分達のいた部屋を見るとそこには、瞳がハート型に変わり投げキッスをしてくる玲がいた。
「今行くよ、アルトリア…」
「……ごくりっ」
「ハァァァァッ!」
「がひできまふね!?(ガチで来ますね!?)」
2階の窓からグルグルと回転しながら攻撃を仕掛けてくる玲に対して、アルトリアは腕を頭の上でクロスし、防御することに成功した。
ドゴンッ!
という音がその威力を物語るようにアルトリアの足が足首まで埋まってしまっている。
「ぐぅぅっ!ふぇやぁ!!……ほんろうにあならはにんへんでふか!?(ぐぅぅっ!でやぁ!!……本当に貴女は人間ですか!?)」
玲の身体能力は剣闘士、という新たなサーヴァントになれそうな程にアルトリアへの愛が暴走している。
ガードついでに足を掴みそのまま5〜6m程ほど山なりに投げ飛ばしたが、玲は空中で体制を整え華麗に着地した。
「流石アルトリア…まともに戦ったら勝てるわけがないのは分かっていたよ」
「ならはあひらめへくらはひ!(注・なら諦めて下さい!)」
「何言ってるか分かんないけど、止めて欲しいならそのハフハフ言いながら舌をペロッと出してるのやめて!」
「ひはひんらからしかたらいじゃないれふか!(注・痛いんだから仕方ないじゃないですか!)」
「カワイイーーーー!!」
「にゃーーーーーー!!」
その後、令呪を使うぞと脅されたアルトリアは、玲の命令に渋々従い宿へと戻っていった。
暴走した玲を止める手段はアルトリアになく、組んず解れつニャンニャンマット運動会が行われたとか行われてないとか……
玲や優衣の設定、というか見た目などを知りたい人はプリンセスコネクトの公式サイトにのっているのでどうぞ。
他力本願で申し訳ない(>人<;)