黒円卓第一位の武者修行   作:刹那

13 / 13
ようやく完結します


最終幕

メルクリウスが詠唱を唱えると同時に、全宇宙が歪み始めた。

「踊れ、あまねく万象全ては女神を彩る舞台装置.....我が脚本に踊る演者なり。さあ、今宵の恐怖劇(グランギニョル)を始めよう

 

 

始まりから終わりまで

Ab ovo usque ad mala.

時はすべてを運び去る

Omnia fert aetas.」

「う....おぉぉぉぉぉぉっ!」

素粒子間時間跳躍・因果律崩壊(エレメンタリーパーティクル・タイムパラドックス)

メルクリウスが自身と世界を素粒子化し、多元宇宙ごと過去の時間軸へ跳躍、それによる現在と過去の抑止力を利用して雷帝を消滅させた。

雷帝は咆哮を上げ電撃を撒き散らすが、メルクリウスには届かず、消滅する自分を阻止することは叶わなかった。

 

そして、赤屍とラインハルトは....

「人世界・終焉変生 (Midgardr Volsunga Saga)」

 

ロンギヌスから飛び出てきたマキナの幕引きの鉄拳が、赤屍の眼前へと迫る。だがその刹那、ラインハルトの目に映ったのは、わずかに微笑む赤屍の表情だった。

 

「クス....赤い槍(ブラッディ・ランス)」

「!」

 

赤い槍(ブラッディ・ランス)赤屍が戦いを終わらせようと思った時につかうとどめの武器。その槍はマキナと交差すると、ラインハルトへと飛んで行った。その穂先は.....

 

(まさか卿は、これを狙って....)

(まあ、河童の最後っ屁みたいなものですがね....)

 

そうそこは、赤い剣(ブラッディ・ソード)によって開けられた胸の傷へとまっすぐ飛んでいた。そして....

 

ドゴォォォッ!

 

「があっ!」

「ぐうぅ....!」

 

結果は相打ち。マキナの鉄拳で赤屍は血飛沫をあげながら弾け飛び、赤い槍はラインハルトの心臓を貫通し、奪い取った。

 

「ふ....ふふ、見事。良くぞ私の全力の愛で壊れずにいたことを誇りに思え。」

「クス....それはこちらのセリフですよ。感謝しますよ。あなたは私ですら知らぬ、私の底を見せてくれましたから....」

 

だが2人は血だるまになりながらも微笑み、両者に賛美の言葉を贈っていた。全力を出し、自身の底をしれたことに喜びで満たされ、痛みなどとうの昔に忘れていた。

 

 

そして、蓮と蛮はというと.....

 

「海は幅広く 無限に広がって流れ出すもの 水底の輝きこそが永久不変

Es schaeumt das Meer in breiten Fluessen Am tiefen Grund der Felsen auf,

永劫たる星の速さと共に 今こそ疾走して駆け抜けよう

Und Fels und Meer wird fortgerissen In ewig schnellem sphaerenlauf.

どうか聞き届けて欲しい 世界は穏やかに安らげる日々を願っている

Doch deine Bnten,Herr, verehren Das sanfte Wandeln deines Tags.

自由な民と自由な世界で どうかこの瞬間に言わせてほしい

Auf freiem Grund mit freiem Volke stehn.Zum Augenblicke duerft ich sagen

時よ止まれ 君は誰よりも美しいから

Verweile doch du bist so schon―

永遠の君に願う 俺を高みへと導いてくれ

Das Ewig-Weibliche Zieht uns hinan. 」

「へぇ....面白い光景だな。」

 

蛮の邪眼が解かれると同時に、蓮から膨大な力が流れ出ていた。それはまさに時間の冷結地獄だった。しかもそれは、時間の概念がない座すらをも停滞させるほどのものである。

 

「流出

(Atziluth)

新世界へ語れ超越の物語

(Res novae――Also sprach Zarathustra)」

「.....」

 

そして蓮のまわりには、血の伯爵夫人(エリザベート・バートリー)の鎖、緋々色金(シャルラッハロート)そして戦雷の聖剣(スルーズ・ワルキューレ)と、三つの聖遺物に囲まれて、流出を行っている蓮の姿がそこにあった。

 

「聖遺物を操る聖遺物、ねぇ....俺の邪眼でいけないスイッチでも押してしまったか?」

「さあな。」

 

蛮の質問を蓮が流したと同時に、雷を纏った聖剣が、本来の持ち主、ベアトリスが姿を現したと同時に、詠唱を謳え上げながら、蛮の喉元を狙いながら突進する。だが蛮はそれに迎え撃つように、ベアトリス同様、詠唱を唱え始めた。

 

「私が犯した罪は

War es so schmählich,――

心からの信頼において あなたの命に反したこと

ihm innig vertraut-trotzt’ ich deinem Gebot.

私は愚かで あなたのお役に立てなかった

Wohl taugte dir nicht die tör' ge Maid,

だからあなたの炎で包んでほしい

Auf dein Gebot entbrenne ein Feuer;

我が槍を恐れるならば この炎を越すこと許さぬ

Wer meines Speeres Spitze furchtet, durchschreite das feuer nie! 」

「我こそは蛇遣い座(アスクレピオス)の使者なり… その呪わしき命運受け入れし者にのみ賜うべきは 毒蛇の牙に秘められし高き天と深き地獄の力なり… されば愚かなる者共に鉄槌を打ち下ろせ 荒ぶる神魔の怒りを以て」

 

戦乙女の肉体が雷神のごとく、雷そのものへと変成し、蛮の左腕に、蛇のオーラが帯び始める。

 

「雷速剣舞・戦姫変生 (Donner Totentanz――Walküre)」

「蛇殺(スネーク・ジェノサイド)」

 

雷神と蛇神がぶつかる。するとそこに閃光が走った。雷バチバチと音を立てながら蛮の肉体を焦がすが、同時に蛇使いの座がベアトリスの魂を喰らおうとする。

 

「へ......へへ、どうした金髪の姉ちゃんよ?顔色わりいぜ?」

「ぐっ....それはこちらのセリフですっ!あなたはツァラトゥストラと戦ってる時からどれほど肉体の限界をいくら超えてると思ってるんですか!?鏡を見なさい!口と目から血が流れてますよ!」

 

事実、ベアトリスの雷がすでに肉体を再起不能になってもおかしくない位体を焦がし、破壊していた。雷帝のそれよりも威力がやや下とはとはいえ、ラインハルトの総軍の突撃の阻止、そして蓮との連戦でもはや今、蛮は精神力と魂だけで立ってるも同然だった。

 

「へっ、わざわざ解説してくれてありがとよっ....てなぁっ!」

「があっ!?」

「ベアトリス!」

 

すると蛮は聖剣ごとベアトリスを蹴り飛ばした。咄嗟に緋々色金(シャルラッハロート)から飛び出した櫻井螢が彼女を受け止めた。

 

「そのまま姉妹そろって、イッちまいなぁァァッ!」

「「!」」

 

だが蛮は、そのまま飛ばした勢いで、蛇のオーラを纏った右腕で二人を潰そうとした。ベアトリスと螢はとっさにガードするが、蛮はそれごと潰すつもりでいた。

 

「「我が身 地上の生活の痕跡は

Es kann die Spur

幾世を経ても滅びるということがないだろう 」」

「なぁ!?」

「「え?」」

 

だがこの歌が届いた瞬間、蛮の肉体に変化が起きた。その現象に、ベアトリスと螢も呆気をとられる。

 

「「そういう無上の幸福を想像して

Im Vorgefuhl von solchem hohen Gluck

今 私はこの最高の刹那を味わい尽くすのだ

ich jetzt den hochsten Augenblick. Genies' 」」

「体の....自由が....きかねぇ.......」

 

この詠唱を歌えあげてるのは、永遠の刹那と黄昏の女神の美しい歌声だった。蛮が無理矢理動こうとすると、肉体は悲鳴を上げ、血飛沫が弾け飛び、それと同時に血の時間が止まる。

 

「時よ止まれ おまえは美しい

Verweile doch, du bist so schon!」

「っ!」

 

そして、蛮の肉体の時間は止まった。

 

「肉体的な.....時間停止?」

「彼の時間感覚こそ止まらないものの、肉体概念や血流が凍りつき、身体に膨大な負担を掛けたのね....」

 

これこそ無間大紅蓮地獄。空中で止まる血飛沫は、まさに紅蓮の花を連想させる。

 

「どうだ?体の自由が効かねえ気分は?」

「.....」

「返事する余裕もねえか」

 

蓮の問いに、蛮は答えなかった。このままヤられるのだろう、そう確信した蛮は、反撃のチャンスを探ると同時に、とどめの一撃を受け入れようとした。だが....

 

「ごめんなさい。」

「え?」

 

彼の肉体は女神の抱擁を受けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「目覚めはどうかね?」

「....すごく悪い。」

「ふふ、仮にも自身の一部でもある雷帝が根元から消えたから当然か。」

 

素粒子間時間跳躍・因果律崩壊を受けた後、ニタニタと笑うメルクリウスに若干苛立ちを覚えながらも、銀次は渋々と答えていた。

 

「ま、私からの歓迎の置き土産だよ。君は二度だ雷帝は必要ないと思ったからね。あと、赤屍と獣殿の心配もいらない。結果は相打ち、赤屍は何とか自力でこの特異点から飛び出て行き、獣殿は少し休んでいる。」

「そ、それは良かったのか良くないのか.....あっ!そう言えば蛮ちゃんは!?」

「ふむ....君の友人かね?」

 

銀次は相棒の安否を確認するため、銀次はメルクリウスを押し退け、すぐさま駆け出そうとするが、後ろからメルクリウスに止められる。

 

「心配いらん、見たまえ。今女神の抱擁を受けてるところだ。」

「へ?」

 

メルクリウスが若干嫉妬を込めたような口調で指差す先を見た銀次は、タレ銀になりながら、呆れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で....俺、抱かれてるんだ?」

「だって、あなたたちは巻き込まれただけだったもん。」

 

動揺を隠しきれない蛮に対して、マリィは涙を流しながら、ただ謝るばかりだった。

 

「あの人、ラインハルトがただ戦いたいからってあなたたちの世界まで巻き込んでしまったの。だから、それを許した私も悪いの。だから、本当にごめんなさい.....」

「お、おう....」

「だからお願い、抱きしめさせて。私から流れる思いは、抱きしめたいという気持ち。あなたも、いつか絶対幸せになって。」

「何で嬢ちゃんが一々俺達のことまで想ってくれてるんだよ。」

 

マリィからの祝福の言葉に、蛮は苦笑いをしながら、なぜそこまで自分たちのことを、想ってくれるのか聞いた。

 

「だって、何と無くわかるよ。あなたたちも私達みたいに、世界をかけて戦ってきたって.....レンと戦う前から、凄く傷だらけだったもん」

「へぇ、よく見てるのな。」

「だからね、私も神様としてあなたたちのことを抱きしめさせて。愛しい万象、私は永遠に見守りたいの。あなたたちの世界も......」

「.....ふっ」

 

すると蛮は、マリィを押しのけて、この場を去ろうとする。

 

「取り敢えず感謝はするぜ。ありがとよ、女神の嬢ちゃん。そして心配は要らねえ、てめぇの世界はてめぇで守って見せらァ。おら銀次、いつまでぼけっとしてるんだ。帰るぞ、俺らの世界に。」

「あ、蛮ちゃん!」

「は、俺に負けたくせによく言うな。」

「然り、塵芥の世界などどうでも良いが、愚息との戦いを見るに、その調子で大丈夫なのかね?」

 

タレ銀の首を鷲掴みして、そのまま持ち帰りしようとすると、蓮とメルクリウスが皮肉の言葉を投げた。

 

「バーカ、俺らを誰だと思ってる?」

「依頼達成率ほぼ100%のは無敵のゲット・バッカーズとは俺達の事だよ。」

「プッ....」

「ふふ♪」

「やれやれ、ほぼかね....」

 

彼らの名乗りに蓮は思わず吹いてしまい、マリィは微笑み、メルクリウスは呆れ果ててしまった。

 

「ばっ、おまえこんな時まで言うんじゃねえよ!」

「いたたたたたたっ!あ、それじゃみなさんさようなら〜。」

「うん、またね♪」

 

蛮が銀次のあたまをグリグリしながら、そのまま消えて行った。最後まで締まらないものの、何処か頼りになる二人だった。

 

「.....終わったか。」

「ラインハルト.....」

 

すると不意に背後からラインハルトが現れた。彼から、何処か儚さを感じた。

 

「どうしたのですかな、あなたらしくないな。顔色が、少し青ざめてるような気がするが?」

「それに関しては、卿にはいわれたくはなかったのだがな。何、全力を出し切った故に、少し反動が来たかもしれんな。これほどの充実感、あの時以来だ。」

 

ラインハルトのそのセリフは、何故か蓮とマリィに視線を向けながら言っていた。

 

「あの時....か。」

「私にとって、全力が出せるということは、渇望が満たされるということだ。.......逆に言えば、満たされれば飢えることがなくなる。その時こそ、また全てにおいて哀てしまうのではないかもしれないとな.....赤屍と戦った時、ふとそう思ってしまってな。」

「お前はまたそんなことを考えていたのかよ。年を取りすぎると、そんなネガティブ思想になりがちだな。」

 

そう呟くラインハルトに対して、蓮はまるで司狼のような飄々とした雰囲気を出しながら言った。

 

「それこそお前が人間らしい証拠だと俺は思うがな。飯食って満腹になって、着たい服を着けて、満足して、寝る時間になったら寝る。それが人が生きる上での最低限の満足だ。そしたらそれで人間として完結し、全てが終わるわけじゃないだろ?日が経てば、また新しい世界が生まれる。新しく食う飯、新品の服、今まで見たことのない夢。生きてれば未知の世界ってのは向こうからやってくるもんじゃねえのか?そしてそれこそ、今マリィが抱きしめてる世界で、生まれ変わりながら世界が成長しているんじゃないのか?」

「然り然り、輪廻転生が繰り返してるうちに、文明が進化しているのは目に見えてる。安心したまえハイドリヒ、女神の地平が我らに至高の未知を示してくれてる。我らも共に見守っていこうではないか。」

 

蓮とメルクリウスがラインハルトにそう言うと、ラインハルト微笑んだ。

 

「そうだな。私が認めた敗北だ。その先を我らが身届く義務がある。我らの黄昏を穢す宇宙が訪れるように。」

「然り。もっとも、私は彼女を塗り替えようとするものなど、認めんよ。」

「そうだ、俺らは守護者として、命の円環をつなぐためにな。俺の女は、俺が守る。」

「.....ありがとうみんな。私も、あなたたちを包むから。レン、ラインハルト、カリオストロ、本当に感謝します。....す べ て の 想 い に  巡 り 来 る 祝 福 を

Amantes amentes―Omnia vincit Amor(アマンテース・アーメンテース=オムニア・ウィンキト・アモール)」

 

こうして、一度破壊されかけたものの、輪廻転生の宇宙は再び流れ出した。辛いことも、悲しいことも、絶対永遠に続いたりはしない。生きていれば幸せは絶対に訪れる。そう信じれば、女神の宇宙は揺るがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう....

 

 

 

 

 

 

 

 

絶対に....

 

 

 

 

 

 

「滅尽滅相!」

 

 

 

 

 

 

黄昏は、朝日へとつながるから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




長かった..正直、何度打ち切ろうさと思いましたが、感想で来て本当によかったです。
感想や応援してくれたみなさんに、本当に感謝します。
ではまた、次回作の時に会いましょう。
皆様にも巡りゆく祝福を!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。