「「行くぞぉぉぉ!!」」
闘技場に二人の叫び声が響き渡った。そして一番最初に行動に出たのは、ラインハルトだった。
『その男は墓に住み あらゆる者も あらゆる鎖も
あらゆる総てを持ってしても繋ぎ止めることが出来ない
彼は縛鎖を千切り 枷を壊し 狂い泣き叫ぶ墓の主 』
「(な、なんだ!?あいつの声が魂にまで響き渡るこの感じは!?身動きが取れねぇ!?)」
植木はラインハルトの詠唱が身に響き渡り、金縛りのような感覚にあった。
『この世のありとあらゆるモノ総て 彼を抑える力を持たない
ゆえ 神は問われた 貴様は何者か
愚問なり 無知蒙昧 知らぬならば答えよう
我が名はレギオン
創造
(Briah― )
至高天・黄金冠す第五宇宙
(Gladsheimr―Gullinkambi fünfte Weltall)』
ゴオォォォォォォ.......
「な......」
ラインハルトの背後の天空高くから魔法陣が浮かび上がり、その上には髑髏で出来た巨大な城、ヴェヴェルスヴルグ城が発生した。城が発生すると同時に、辺りの景色はまるで血で染まったかのように薄暗くなっていた。
「な....これは....」
「これは私が全力を出せるための異能。というより異界だな。無論これを出した以上、現世との干渉はますます不可能となった。卿がここから脱出するためには、私を倒すしかあるまい。」
「だよな.....だったら早速やってやるよ!4つ星神器、唯我独尊!(マッシュ)」
ホゴォ!!
植木はそう叫ぶと同時に、ラインハルトの下から巨大な口を開けた箱の様な物をだし、ラインハルトにぶつけようとした。しかしラインハルトは避けようとしなかった。
「(さっきの大砲といいこの箱のような物......どうやら彼はマレウスのように多種型の聖遺物の形成.....いや、武器を持ってるようだな。しかもよく見るとあの手の塵を媒介に。いいだろ、ならば.....」
「(ん?あいつ何を?)」
植木はキョトンと頭にハテナを浮かべながらラインハルトを見た。するとラインハルトは槍を植木側に向けながら呪文を口ずさむ。すると、槍からは黒いオーラのような物が帯びる。
『この身は悠久を生きし者。ゆえに誰もが我を置き去り先に行く
追い縋りたいが追いつけない。才は届かず、生の瞬間が異なる差を埋めたいと願う
ゆえに足を引くのだ――水底の魔性 」
「!」
詠唱の間、まるで時が止まったような感覚になる。そして植木は一瞬、ラインハルトの姿が小さな少女の姿をした魔女と重なって見えた。
『波立て遊べよ――
拷問城の食人影 (Csejte Ungarn Nachtzehrer)』
ザアァァァ.....!!
「な、影が動いた!?」
植木は驚きを隠せなかった。呪文を終えると、ラインハルトの足元から影が生き物のように周りへと広がって行く。そして植木が先程出したマッシュは、ラインハルトを噛み砕くことを叶わず、一瞬にして影に飲まれて、動きを止めてしまった。
「(あの影、まさか動きを止める能力か!?)」
「取り敢えず足場を限定させてもらうぞ。何を驚いている、まだ序の口だ。狙いは卿だぞ?」
ラインハルトはニヤッと笑いながら植木を見る。
「く、6つ星神器、電光石火!(ライカ)」
ドギャッ!
植木は影に飲まれる前にローラーブーツのような神器を召喚して、そのまま身を翻してラインハルトとその影から距離をとった。
「ほう、刹那ほどではないが速いな。だが、限界があるぞ?」
「(んなことは分かってる。闘技場である以上、端っこに追い込まれたら終わりだ。それよりもこいつの能力......もしかしてだと思うが、部下の.....)」
「そうだ、『私は軍勢(レギオン)』だ。」
植木の心を読んだのか、ラインハルトは植木が逃げている間、自身の能力について語った。
「銃兵には銃を、砲兵には砲を。部下の長所をよく知ってなければ将にはなれない。ゆえにこう考えられぬか?」
「お前は仲間の能力を知っている。つまりお前は仲間全員の能力を使えるを」
「然り。将たるもの、部下に愛を示さないとな。我が愛しのレギオンは卿と戦いたくて仕方がないらしいからな。ならば私は親としてそれを想いを果たしてやらなければならない。」
ラインハルトがそう語ると、植木は表情を歪めた。何が愛だ、そんなのただの強制労働だ、愛や絆の糞もない。
「そんな奴におれが負けるわけにはいかねえ......5つ星神器、百鬼夜行(ピック)!」
ズドォォォォ!!
影から十分に距離を離すと、黄色と黒の積み木で出来たような横長の棒状の神器ピックを発動した。ピックは影の上をそのまま並行に走り、ラインハルトへと迫る。
「無駄だ。」
ズドン!
だが、ラインハルトはピックの先端にロンギヌスを勢いよく突き刺した。
ピシピシ.....ゴジャァァ!!
「な!?」
みるみる内にピック全体にヒビが刻まれてゆく。そしてそのまま粉々に砕けてしまった。
「これは単純な威力の差だな、私の友の話によるとコレは一撃で都市一つ破壊して余りがある程らしい。まあ、卿の今の武器の威力がどれほどかは知らんが少なくとも、コレ以下らしいな。」
「くそ、バケモンが........」
植木は苦虫を潰したような表情をした。しかし、足元に影が迫っているのを察知し、直様疾走を始めた。
「(くそ!ピックすら効かねえかよ!このままではヤバイ!取り敢えず走り回って作戦を練るしか.....)」
しかしそう思ったのもつかの間、目の前に闘技場の壁が近づき始めた。
「(まずい、このままじゃあの影の能力で強制的に止まる!そしてそのままあの槍の攻撃を直で.....くそ!どうすれば!)」
振り返ると見渡す限り影、影、影。このままゲームーオーバー.....その瞬間、植木は閃いた。
「まてよ、『能力』.....そうか!こうなったら一か八か!八つ星神器波花(はみはな)!」
「む?」
そして何を思ったのか、植木は地面の影に向かって鞭状神器をぶつけようとする。ラインハルトはそれを見て呆れた。
「血迷ったか?影に触れたら.....」
「レベル2!(リバース)」
「っ!?」
バシュゥゥゥ......
しかし植木の行動によって一瞬にして一変した。何と、ムチとぶつかった影は一瞬にしてタダの影へと戻っていった。ラインハルトはあまりの驚愕で呆然とする。
「リバース?.....まさか....ふ、ははははは.....はははははははは!はははははははははは!!」
「なんだあいつ、急に笑いやがった。」
こんどは植木が呆れたが、ラインハルトはそんなことすら眼中に入らなかった。何せこれは未知なのだ。AからBに変えた物を強制的に戻す。つまり先程は『ラインハルトの影』を『ルサルカの能力(ナハツェーラー)』に変えたため、植木のリバース(法則)は発動された。そしてラインハルトはこんな能力は知らない。それがあまりに嬉しかったのだ。
「あははははははは!!いいぞ植木耕輔!もっとだ、もっと!私を楽しませろ!」
「今れなくても.....鉄、唯我独尊、百鬼夜行!レベル2!」
植木は一気に3つの神器、レベル2付きでラインハルトを攻めた。これなら影に止められることはないと。
「行けぇぇぇぇ!!」
ドクン....!
「!」
だが.....植木は再び時間軸が止まったような感覚に落ちる。そして、ラインハルトの槍から兄弟な殺意と漆黒のオーラが溢れ出る。
「ああ、日の光は要らぬ。ならば夜こそ我が世界
夜に無敵となる魔人になりたい
この畜生に染まる血を絞り出し、我を新生させる耽美と暴虐と殺戮の化身――闇の不死鳥 」
こんどは髪と肌が純白に染まり、目は赤く染まり、犬歯がむき出しの凶悪な顔をした男と姿が重なった。
「枯れ落ちろ恋人
死森の薔薇騎士 (Der Rosenkavalier Schwarzwald)」
オオォォォォ......
ただでさえラインハルトの創造によって暗くなってるはずのここの世界が、さらに暗黒に染まった。唯一の明かりの月さえ血のように赤く染まっている。そう、この創造(のうりよく)は強制的に吸血鬼の夜にさせる。あの男は最強の吸血鬼を望む、故に吸血鬼にとって都合のいい世界を発動させる。そして......
「があぁぁぁぁ!!」
植木は絶叫を上げた。唐突に起きた脱力感。みるみる内に血色のいいはずの自分の肌がどんどん薄い白色にと変化する、まるで吸血鬼に吸われて行くかのように。そう、この夜を発動したら、その異界の中の生命力は全てこの能力の発動手に奪われる。まさに自分の強化と敵の弱体化をうまく併合した能力である。そして、植木が発動した三つの神器はみるみる内に天界力を奪われ、ラインハルトのロンギヌスの一振りで払われるように消し飛ばされた。
「敵の弱体化.....あまり私の好みではないがつい気分が良くて発動してしまった。とわ言え、卿は私に未知を見せてくれた男だ。舐めてはおらんよ。」
「クソ.....野郎が.....」
植木は余りの脱力で地に膝をつけてしまったが、なんとか震えながら立ち上がる。
「言っておくが、この夜を力ずくで終わらすためには、月でも壊さん限り不可能だ。卿にはそれ程の力はあるとは思えんが?リバースとやらも届かんとはずだか......」
「言われなくても......わかってるよ.....」
そう言って植木は、次の手を打ち出す。
続く
植木のレベル2に関してはツッコミはなしにしていただくと幸いです。獣殿といい勝負させるためには自分の力ではこうするしかなくて、Diesファンとうえきファンの皆様、本当にすみませんでした!