「ははははは!はーーはははははははぁぁ!!」
黄金の獣が咆哮の如き高笑いを上げる。その背後には彼の爪牙たる魔軍の幹部達だ。
「魅せろ、我が愛子らよ!卿らの愛をあの魔人に叩きつけよ!」
すると、ラインハルトの掛け声に先に応じたのは自称、獣の牙たる白貌の薔薇騎士、ヴィルヘルム・エーレンブルグだった。
「死森の薔薇騎士(Der Rosenkavalier Schwarzwald)」
天空高くにある満月が紅色に染まる、吸血鬼の夜が展開される。吸血鬼が生き血を吸うごとく、星々を喰らい、飲み込み、吸い殺す次元違いのエナジードレイン、これを前に信じられない量の魂がグラズヘイムに送り込まれ、当然赤屍も例外なく巻き込まれたが......
「クス......成る程、これがエイヴィヒカイトの最高位の流出ですか.....確かに規模が違いますね。それにしても、紅の月....綺麗な月光ですね....」
彼の余裕は同じまま、まるでそよ風を受けてるがごとく、クスっと穏やかに笑ってるだけだった。実際、赤屍よ分身が一瞬にして吸血鬼の夜に吸い殺されたのだから確かに彼にも効いているはずなのだが、彼はその月光をうっとりと見惚れてるだけだった....
「クククク......アーハハハハハハ!いいねぇ、やるじゃねえか運び屋。ハイドリヒ卿の恩恵を受けた俺の創造が簡単に応えねえとはな....そんな奴はメルクリウスの代替ぐらいだぜ。」
「おや、そうだったんですか。それは別の意味で心外ですね。まぁ、
しかし.....」
それはそれでヴィルヘルムにとっても歓喜だったらしい。自分の能力に抗えたのは永遠の刹那ぐらいだったから、赤屍の魂の頑丈さに感心していた。もっとも当の本人は自覚なしだったらしく、そのセリフと同時に.....
「な!?」
「あなたが厄介なのは変わりありませんからね。先に消えてもらいますよ。赤い影(ブラッディ・ダークネス)」
「ぎっ!糞がァァァ!!」
ヴィルヘルムの視界から一瞬にして赤屍は消えた。その赤屍は一瞬にしてヴィルヘルムの背後へと移動した。赤い影(ブラッディ・ダークネス)ありとあらゆる影へと瞬間移動する能力である。そして、闇のエレメントを司る異能であり、影を操って対象の敵を無に帰する力でもある。赤屍が手を上げると同時に巨大な影の手がヴィルヘルムを飲み込む。無論ヴィルヘルムも無抵抗ではなく、とっさに無数の杭を赤屍の周りに展開し、串刺しにする。
「おっと危な.....っ!?がっ!」
赤屍はそれに反応して、もう一度影の中に逃げ込み、吸血鬼の杭から回避しようとするが、その瞬間唐突に動けなくり、串刺しになった。
「拷問城の食人影 (Csejte Ungarn Nachatzehrer)悪いけど、逃がさないわよお兄さん?あなたが遠くに行こうとするたびに、あなたの足を引いてあげるわ。」
「影には影ですか.....黄金閣下とあろう方が、随分と洒落たことをしますね.....クス。」
「ふふ私の子度などどうでもいい、しかしよくできた子達であろう?これが私の爪牙だ.....彼らの物語と渇望は、かくも戦慄に美しい.....笑わせなど、せんよ。」
赤屍の背後には、いつの間にかルサルカ・シュベーゲリンが影を操っていた。目には目を、毒には毒を、そして影には影を、赤屍の瞬間移動に対して彼女の影は不動縛の効果が付属されていたのだ。赤屍はそんな洒落た真似をするラインハルトに皮肉の言葉をかけるが、ラインハルトむしろ自慢の部下で誇りに思うと言い返した。
「それにしてもベイ、あんた登場早々やられるって....油断しすぎよ。ま、見た感じ彼は蓮君と同じレベルの魂の質量だから仕方ないけどね。」
「チッ、単一の魂でハイドリヒ卿とそこそこヤレるあたりこいつもやっぱデタラメだと感じてはいたがな......」
「しかし、最終的には戦いは基本的に魂の内包量が勝負の鍵となる。ゆえに案ずるな、私は負ける気はしないし、まだ引き出しはある。卿らは卿ららしく戦え。」
ルサルカは赤い影によって片腕が奪われたヴィルヘルムに呆れていたが、相手があの蓮と同じレベルの赤屍とわかった以上仕方ないと思った。実際、先程からあの本気のラインハルトと白兵戦をしているあたりそれほどのレベルとわかる。しかしそれでも勝負を決定づけるのは魂の量。ゆえに数百万の魂を内包するラインハルトがまだ有利、加えて薔薇の夜で秒刻みでラインハルトの魂の量が増え続け、逆に赤屍は体力等が減り続けてるのだ。
「第九_SS装甲師団(ホーエンシュタウフェン)」
「オラァ行くぜェ!」
「さぁ、足を引いてあげるわ。」
ゆえにあとは攻めるだけ、ラインハルトの背後からグラズヘイムの装甲師団の火砲が炸裂し、ヴィルヘルムの周り、地面、何もない空間から無数の杭が飛びててきた。加えて、ルサルカの影が赤屍の周りに広がって行く。
「赤い盾(ブラッディ・シールド)・赤い奔流(ブラッディ・ストリーム)」
百、千、万と大量の弾幕が赤屍を襲いかかるが、臆することなく彼はメスの盾で弾幕を防ぎ、お返しとばかりに血飛沫から出来たメスの弾丸を発射する。その隙に、赤屍は接近して、赤い剣で接近しながら振り下ろす。
「っ!」
「まさかと思いますが黄金閣下、手数で私を倒そうと思ってませんよね....」
「ああ!?てめえ、ハイドリヒ卿に生意気言ってんじゃ......」
「あなたは黙ってていなさい。とにかく、連続攻撃なんて所詮は相手の油断や好きを作るためのつなぎでしかない.....ハイレベルな戦いにおいて効果があるのは『意味のある一撃』です。もしそれを否定するなら、あなたの言葉を借りて言わせてもらいましょう。あまり舐めていると、愛が足りないと思わずにはいられない。」
「てめぇ!」
赤屍の攻撃を防ぐと、その激突の最中、赤屍は連続攻撃で自分を倒すのなら失望したと言った。彼にとって
戦闘の勝負を決めるのは『効果のある一撃』だと。それを否定するなら、それこそ愛が足りないと、そう言った。それに対してヴィルヘルムの堪忍袋が切れようとしたが.......
「奇遇だな、私もちょうどそう思っていたところだ。もとより物事、究極に近ければ近くなるほど陳腐になるからな、無論、戦いもな。」
「「!?」」
「ほう......」
「故に見るがいい、これが卿の言う、私の『効果のある一撃』だ。」
ラインハルトはそれを肯定した。そう彼は破壊公。そんな彼に戦いについてや、一撃がどうだのと釈迦に説法に等しい。ゆえに示してやろうと、聖槍に今までにない黄金の波動が爆発しようと振動している。『あれをやるのか!?』と、ヴィルヘルムとルサルカは感じ、あまりの恐怖に、ラインハルトの背後へと消えた。その波動に、期待の眼差しを向けている赤屍を残して。
「Oh! Welchen Wunders höchstes Glück!
おお 至福もたらす奇跡の御業よ
Der deine Wunde durfte Schließen,
汝の傷を塞いだ槍から 聖なる血が流れ出す」
それは鎮魂歌、死に行くものへと送る花束の代わりとして送る瞑想曲、黄金の破壊の一撃が放たれる。
「至高天_聖槍13騎士団(グラズヘイム・ロンギヌスドライツェーン・オルデーン)」
黄金の獣の全総軍突撃。そう、ただの突撃なのだが、規模が最早次元違いなのだ。これを放たれたら最後、宇宙はおろか、森羅万象、多元宇宙、座が消滅するだろう。これはそれほどの威力を持っていたのだ。もとより黄金聖槍は通称神殺しの槍、それほどの威力を持っていてある意味当然なのだ。
「はははははははー!!」
万象に亀裂が入る。ありとあらゆる星が崩壊し、宇宙が破裂する。ありとあらゆるものが黄金に染まりに染まり、崩壊する。黄金の獣の咆哮のような高笑いを残して。
「ああ、私は全てを愛している!ゆえに、全てを破壊する!卿も例外なくな。それでどうかね赤屍よ、私の愛は?」
「........」
何もなくなった世界で、ラインハルトは独り言のように聞いた。返事はなかった......と思われたが。
「んなもん、胸糞わりいに決まってるだろ!」
「.....こんなの、愛ってやつじゃないよ!」
「む....」
唐突に、赤屍とは別の色をした波動が感じ取られた。それも二つ、しかし赤屍とは同レベルの魂の波動を持ったものが。
「卿らは何者だ?この戦いを邪魔しに来たのか?」
「はっ、ほざけよ金髪軍人が。俺らは無敵最強のGet Backers_奪還屋。俺が美堂蛮。そしてこっちが.....」
「同じ奪還屋の天野銀次。赤屍さんが唐突にいなくなったって、卑弥呼ちゃんから聞いてね、それで蛮ちゃんと一緒に赤屍さんの気を辿ってきたらこんなところに来ちゃってね。」
「ま、野郎の奪還何て死んでもやりたくなかったがな、卑弥呼の奴がギャーギャーうるさくてよ。それに.....なんかヤベーもんが裏新宿に迫ってたからよ、もしかしてっと思ってな
。」
奪還屋と名乗る二人。天野銀次、美堂蛮がラインハルトの眼前に現れた。彼らはこの異空間に現れた赤屍の奪還目的でここに来たと、それに先程放った全軍突撃を瞬時に感じ取って、そこに赤屍がいるであろうと、そう思ったのである。
「そうか、まあ私は歓迎するぞ。ようこそこの黄昏の宇宙へ、私の名はラインハルト・ハイドリヒ、そして......」
黄金はそれに唐突に乱入した彼らを排除するどころかむしろ歓迎した。そして自己紹介をしたと同時に背後に目をやった。
「少々戯れが過ぎましたな、獣殿。」
「たく、お前は暴れすぎなんだよ。マリィ守るので精一杯だったぞ。」
「あなた、この状況どうするつもり?」
「彼らと同じ、黄昏の宇宙を守るものだよ。」
そこには、半ば諦め気味で、軍服を着けた友人、水銀の蛇、メルクリウス。そしてそんな彼にやや怒り気味の少女、当代の座の支配者、黄昏の女神、マルグリット・ブルイユ。そして彼女の恋人、永遠の刹那、藤井蓮がラインハルトを睨みつけていた。
気が付いたら、なんか面白い形式が出来上がってました。