Only Sense Online 〜幻想抜刀の戦士〜 作:蒼井しの
「どうだー? そっちに薬草あったか?」
ポーションを作るため薬草のため走り回ることとなった僕。
レンジャーと名乗った弓使いのティースは、生産系のスキルを持っていた。
このティースと、とあるボスとの戦いの準備をするためこうして、消耗品を作っていた。
この男との出会いで、僕の『Only Sense Online』生活は激変することとなる。
気さくで、屁理屈だが、仲間のことをしっかり見ることができる彼は、
後の僕の親友である。
「疲れた……」
あのゴーレムとの激しく長い消耗戦を終え、僕はすぐに仲間と別れログアウト押した。
ポーカスさんとシゥちゃんも同じようにすぐログアウトしたようで、ログインいる印がない。
「明日に備えよう……。寝る」
そうして――しばらく数日が経った。
俺は中学三年生の受験生なため、それからは勉強と『Only Sense Online』を繰り返すような生活となっていった。
それから、ポーカスさんやシゥちゃ……シゥとは時々狩りに出るぐらいにはなったが、俺は基本的にはソロプレイだ。
理由としては、シゥがメインとしているパーティが忙しいらしく、こちらに付き合えないというのと、俺がパーティを組もうという気があまり起きなかったからだ。
ゴーレムみたいに、強敵を相手にするときは確かにパーティが最適だとは思うのだが、別段。今の自分ならば、ボス以外ならば一人で狩れるし、【発見】センスによる採取も地味に自分の趣味となってしまっていたのが原因である。
行ったフィールドの採取は行わないと何故かそんな気分がし、ついつい採取してしまう。
シゥとパーティを組んだときそのことについて非効率だとか、不必要だとか言われてしまい、マイペースでやるにはやっぱり一人なんだなと実感してしまったのである。
元々人と喋ることも上手く出来ないし、これはこれでレア素材が出たときはニヤッとして面白い。
「別にいいんじゃないか。これぐらい」
といっても、素材は生産系のスキルを覚えなければちゃんとしたアイテムにならないため、ただイベントリを圧迫するだけの要因となっていることは内緒だ。
何か変化があったといえば、二つ。
一つ目として、シゥちゃんという呼び名がシゥと呼び捨てになった。
これは次の日シュウちゃんに直接言われたことなのだが、
「あのね……あんた私はあっちでは男のキャラになっちゃったのよ! それをちゃんちゃんちゃんちゃんって言ったら、周りから不審がられるでしょう!! 今度からゲームの中では呼び捨て!! わかった!!」
シュウちゃんの見た目は確かに髪が短くボーイッシュに見えるが、それをVRが誤認識するとは、実際に事例もあったらしく、ポーカスさんのパーティには簡単に受け入れられたらしい。
なのでポーカスさんの呼び方も男の子でも女の子別に間違えじゃない『シゥ』と呼び捨てだったのだ。
「髪伸ばせば可愛くなるんじゃない?」
「うるさい!!」
そうしてちょっと、シュウちゃんとの距離が開いてしまった。
二つ目は装備とセンスだ。
ゴーレムを倒したことによることと、今までの成果かセンスが幾分と上がった。
今の俺のセンスは
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取得SP13
【剣LV20】【鎧LV13】【盾LV16】【発見LV10】【魔力LV15】【物理攻撃上昇LV20】【物理防御上昇LV18】【速度上昇LV17】【急所の心得LV16】【戦士の心得LV20】
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防御系のセンスが全く育ってなかったため、それを中心としてなるべく鎧で受ける戦いを心掛けここまで成長することに成功した。
だが、やはり全体的に見て【鎧】のセンスの成長が芳しくない。
敵の攻撃は、避けるか、盾で受けてしまうため、中々センスが成長しにくいのもあり、自分の戦闘スタイルには合わないのかもしれないと、違うセンスも考えなければいけない状況になってきている。
SPを20まで取得すれば、ポーカスさんが新しいセンスが出現してそれを入手出来ると言っていた。それを気に一気に構築を考え直すのもいいかもしれない。
そして装備の話だが、ついに1万G払った装備が完成したのだ。
「ほれこれ」
場所はナルバスの工房。入ってきた俺に渡されたのは、比較的短いショートソードだった。
「これぐらいが、ぎりぎり短剣として扱える長さじゃ。
あんま短すぎるとこれまで使ってた装備と違いがありすぎて使いづらいじゃろうしな」
『鉄刀 小雨』AKT+11 SEED+3
『鉄で出来たショートソード。
小さな水玉を掴んでも、それは最後に手からすり抜ける』
今までの装備の約二倍近くの装備。これで火力の問題は大分解消されるだろう。
だが、このこじゃれた一文はなんだろう?
「ああ、あとな。アルミがこれもついでに付けてやれとな」
そう言って渡されたのは、革のベルトだった。
『革のベルト』DEF+1 DEX+3
『革で出来たベルト。
ポーチが常備されており、色々な物が収納可能』
「この二つがあれば、そこそこは戦えるじゃろうて。
ちゃんとした防具は防具屋に頼め。探せばいくらでもあるはずじゃ」
「ありがとうございます……」
「何、別に良いんじゃよ。元々儂ら生産職は作る相手がいないとスキルも伸びん。儂らはWIN‐WINな関係だ。
ただ、武器は出来れば上手く使ってやってくれ。こっちで強化はいくらでもしてやる」
ガッチリ腕を組み、自分の作品が俺に装備されるところを見届ける。
「うむ。初心者装備に毛が生えた程度じゃが。マシはマシじゃろて」
「これがあれば、かなり戦えそう」
「じゃろうな。耐久度には気を付けろ。初心者武器ではないからの。耐久度に限界が来れば壊れるぞ」
「はい」
そうして装備とセンスが強化された俺はあのビッグボアを一人で倒せるぐらいにはなっていた。
「だけど。『黒刀 一輪』の値段は……」
「50万じゃな」
しばらくは、装備を買うお金すらなさそうだと、装備についてはやりくりしようと決意する。
これによって、俺にとっての序盤の準備は終わった。
これから、これからが、俺の本当の『始まり』が幕を開けたのである。
その始まりは、いつものように防具の素材を集めるためにビックボアを狩ろうとクエストを受けようとしていたときのことだった。
「げっ、クエスト受注パーティ数5か」
前にもこんなことがあったなと思いつつ、次はゴーレムのクエストも見たが……、
「こっちは受注パーティ10……」
倍の数。今日は夜からのログインだったため。こんなに待っては明日のための睡眠ができない。
「……どうしようかこれ」
何処かに、狩りに出ようかどうか迷ったとき、
「クエストに迷ってるなら、オススメがあるぜ?」
「!?」
ズバッと後ろを振り向くと、耳の長いローブに身を包んだ男がいた。
「いや、驚かせて悪い。パーティを組みたいんだが誰も組んでくれなくてな。手当たり次第に声をかけているんだ。
一人で稼ぐにも限界があるだろう? どうだ?」
「………」
怪しい。怪しいが、一応聞かねばならぬことがいくつかあると、疑問に思ったことを聞くことにする。
「なんで、パーティを組んで貰えないんですか?」
「持ち武器が弓だからだ。かなり不遇不遇って言われてるからな。それでみんな組みたくないんだろ」
「おすすめのクエストというのは……」
「チェーンクエストだ。最終的な報酬の入りがかなりいいらしい。道中で幾つかのクエストも受けるからセンスのレベルも上がる。
そして、最後にはボスとの戦闘。
王道だろ?」
「……いいですよ」
別に自分にデメリットがある話ではなさそうだ。と思ったのが受けた理由だ。
弓がいくら不遇武器だからといって、それだったら俺が目指している刀はどうなのだろうか。
ポーカスさんやアルミさん。ナルバスさんの話を聞いたが、刀だってコスパは良くないし、特徴が尖っていて使いにくいと言われたし、そう言う意味では不遇武器だ。
そんな同じ不遇武器を扱う(俺は扱おうとしているものだけど)者同士、除け者には出来なかった。
「……ホントか?」
「はい。フレンド登録送りますね」
「あ、ああ! よろしく頼む! 俺はティース。エルフのレンジャーだ」
「レンジャー?」
「そうだ。俺は弓使いだが、その都合でな。生産系のセンスも覚えているんだ。
自分で狩りをし、作り、そして使う。どうだ? レンジャーだろう?」
ナニヲイッテイルカ、サッパリダ。
「ア、ハイ」
そこで思った。
僕はもしかしたら、どんでもない人を仲間にしてしまったのではないかと。
そして、僕はティースとチェーンクエスト『呪いの戒め』を受けることとなった。