Only Sense Online 〜幻想抜刀の戦士〜 作:蒼井しの
混乱――一定時間の間。味方と敵の判別がつかなくなる。
「ひ、ひへろ?」
視線が歪み、視界が黄色くなっていく。
敵はそこにいるはずと振り返り、武器を振ると何やら声が聞こえる。
が、その声が誰のものか、はたまた敵のものかも判別できない。
「な、なんらこれ」
何処が、何処だかわからない。
それ以前に、なんだろう。くらくら。くらくら。
「ヒグッ!?」
口の中に何か押し込まれたのを感じた。
滅茶苦茶まずい。苦味が走り、植物の様な渋みが口や胃、喉に伝わっていく。
「まっず!」
「大丈夫か!」
「ティース!?」
な、何が一体どうなっていたんだ?
「【混乱】のバッドステータスだな。気付け草で直したんだが……グールだ。来るぞ」
「っ!?」
そうだ。敵が襲ってきてるんだった。
ティースは素早く前衛を俺に任せ、俺はグールの攻撃を盾で防いだ。
「人間系モンスターなら!」
攻撃を防いだ盾で、敵を弾き、そのままショートソードを敵の弱点である心臓を狙う。
そのまま串刺しにし、モンスターを倒す。
「もう一体!」
二体目のグールの攻撃を避け、その隙に一体目のように弱点を串刺しにした。
「……ふぅ」
「戦闘になると俺いらずだな」
「最初の【混乱】以外は……ですけど」
だが、グールの攻撃を受けたわけでもないのに何故【混乱】にかかってしまったのだろう。
「フィールド効果っていうのか。これが」
「効果付きフィールドっていうことですか」
「そうそう。多分だが『プレイヤーが驚くことで【混乱】を与えるフィールド』なんだろうここが」
フィールド効果は様々だ。
それについてはプレイヤー間で調査中ではあるが他にも【恐怖】や【怒り】などのバッドステータスを与えるものがあるらしい。
「にしても、前こんなのなかったぞ。どういうことだ」
「これも、難易度調整の影響?」
「か。それとも一定の条件を満たしたか。だな」
おかしいところが多い。
ティースとの認識の違いが大きい、どういうことだ。
「部屋を探そう。もしかしたらなにかわかるかもしれない」
「はい」
部屋を調べると、【発見】がいきなりとある地点に反応を示した。
「ここ?」
何も変哲もない床なはずなそこを【発見】は赤いマーキングで示している。
床に耳を当ててみると、風の音が……下から響いていていた。
「地下?」
「何かあったか?」
俺の不審な様子に反応して、ティースが来てくれた。
「ここの下があるみたいなんです」
「地下があるってか。ということは、スイッチが何処かにあるのか……案外簡単に開くのか」
「そっちはどうでした?」
「アイテムが幾つか。今のうちに分けておくか」
ティースがとってきたアイテムは『ポーション*2 気付け草*2 ガーブスの日記』だった。
「日記?」
「ああ、こういうのは【言語学】のセンスを持ってないと意味ないアイテムらしい。中身を読んだがちんぷんかんぷんだったぜ」
「じゃあ、日記を解読することはできないっと」
「事の顛末とかを知りたいなら、必須なのかもな【言語学】のセンスって」
だが、ないものはしょうがない。いや……いっそとってしまおうか。
「取るのはやめとけよ。『今は』。
一レベルじゃ、簡単なのしか読めないだろうし、何があるかもわかんないんだからな」
「はい……」
諫められ、少し落ち込む。
そうして、とってきたアイテムをお互いに分けたのと、気付け草を幾つかもらった。
「俺が混乱食らった時はお前が回復しなくちゃならない時もあるかもしれないしな」
「あれ? そういえばあの時ティースさんは【混乱】を受けなかったんですか?」
「いや、受けた。だからイベントリから気付け草を飲んだんだ。
見たらカイは【混乱2】を食らって、俺は【混乱1】しかもらってなかったから状態的にお前の方がひどかったんだよ」
だから正常に動けなかったのか。
「【混乱1】ぐらいなら自分で動けるが、2からはやばいらしいな。出来るだけ驚かないように備えとかないとな」
こう思うと、バッドステータスはこのゲームにおいてかなり辛いのかもしれない。
【恐怖】【混乱】【怒り】などは特に行動が縛られる上に正常な判断が出来なくなる。
「【混乱耐性】ってセンスもあったな確か」
「あったが、結局レベル1じゃなって感じだ。そのうちバッドステータスについてはちゃんとした対策練らないと色々なところを回るにはダメなのかもな」
スイッチを探しならが、喋っていると、ティースの方に反応があった。
「あった。ここを引っ張れば」
床の一角に開く場所があり、そこにレバーがあったようだ。
それを引っ張ると先ほどの床が開き、床の下に階段が出てきた。
「ビンゴですね」
「階段……地下……」
ティースは何故かすごく難しい顔をしている。
「俺が正当法じゃなかったか。それともな……」
「行きましょうよ」
「ああ」
そうして、地下の階段へと足を進める俺たち。
「松明付けるぞ」
更に暗くなる地下を目の当たりにし、松明を付ける。
階段は螺旋状に続き、どこまでも続くかと思えた。
だが、俺たちはその時忘れていた。
この闇に染まった家に住む。一人の男を