Only Sense Online 〜幻想抜刀の戦士〜 作:蒼井しの
広がったのは、レンガの建物と整備された道。
多種多様なな人々、見たこともない物、この世界には様々溢れていた。
戦闘チュートリアルを終え、一通り動きを覚えたことである程度の自信を付けた俺はその景色に圧倒されていた。
先ほどの草原も圧巻だったが、ここもまた違う意味で圧巻だ。
どうすればいいか……戸惑いを隠せない。
この中で皆何をしているのだろうか。敵であるモンスターを倒す為の準備だろうか。それとも情報収集? パーティを結成し、何があるか分からないダンジョンヘ?
「……あっ」
忘れてた。ショウちゃんどうしてるだろう。
まだフレンド登録もしてないので、プレイヤー名――さっき言っていた『シゥ』の名前で同じ名前のプレイヤーがいるか検索をかける。
「いたいた」
結果は一人! 正にビンゴだ。
念のため有っているかどうか確かめるため、今後のためにも通信を試みる。
「ショウちゃん! ショウちゃんだよね?」
「え? その声金成? チュートリアル終わったの?」
良かった。有っていた様だ。
「今終わったところ。せっかくだし一回会わない?」
「あー。ごめん。今ちょっと出てるところなんだ」
「え」
な、なんと!!
「フレンド登録の通知は送っておくから、これ終わったら合流しよう? ホントごめん!」
「あー。うん。いいよー。うん」
や、やばいどうしよう。
フレンド通知が来てそれに登録した後。俺は途方にくれた。
まさか、ショウちゃんがパーティを組んで……?
「どうしよう。追い抜かれる……」
なんとしてもそれだけは防がなければいけない。俺の男としての沽券に関わる。
「一人でもなんとかなるさ!」
そうして……無謀にも俺は近くの草原へと駆け出した。
戦闘のチュートリアルでは全くセンスレベルは上がらなかった。
チュートリアルで自分がやったことは、戦闘の基礎と、動きのコツを掴んだことだ。
その時の自分はそれだけで大体はやれると思い過ごしてしまっていた。
「はぁ……はぁ……」
実際は一匹のブルースライムを相手にするのが精一杯。
しかも、長期戦。相手の攻撃を地道にガードし、隙を見てこちらが攻撃する。相手の手番と自分の手番を交互に繰り返して戦っている。
ブルースライムはその名の通り、青く丸いぷにぷにしている敵であり、その特徴はその中央の丸い玉らしい、どうやら自動再生のスキルがあるらしく、ちょっとの攻撃ではすぐ回復されてしまう。
逆に俺には盾があるため、ブルースライムの攻撃を跳ね返す『バッシュ』というスキルでダメージを全く食らわないが……。根本的に、ブルースライムも、俺も攻撃力、つまりはATKが致命的に足りないため決着がつき難い状態となっている。
それにつれ、センスは地道に上がっているのだが、それも微々たる物で、全く効率の良さを感じない。
「…くそっ!」
どうすればいいか戸惑いながら戦い続ける。
ちゃんとガードすれば、確かにダメージを受けない。だが……
「埒が明かないんだよ!」
攻撃を捨て、捨て身の戦法。
相手の攻撃をガードせず、一方的な攻撃に入る。
連打。連打。連打。連打。
徐々にスライムの勢いが弱まり、玉の部分が表面に現れる。
「いやああああああああああ!!」
最後だと力を要れ、その玉に有りっ丈の力を込め一撃を振るう。
そうすると、『クリティカル』と表示が出て来て、今まで見たこと無いようなダメージが出てきた。
「そっか……。そこが弱点なんだ……」
体の疲労が回り鈍くなった体を動かしながら、モンスターが近寄らないセーフティエリアまで何とか逃げ延びる。
「ただ……闇雲に攻撃しちゃダメだ。もっと相手の動きや、弱点を考えて動かないと」
ブルースライムの落としたドロップを確認しながら、さっきの反省点を確認した。
チュートリアルの戦闘と、実際の戦闘が違いすぎると、やっと俺は実感する。
「だからこそ。自分の戦い方を見つけないと」
今あるセンスで、そしてこれからのセンスで。
今、俺に出来るのは敵の急所を付く戦い方だ。
一旦急所を付けば、いくつかのセンスによりダメージが増大し、雑魚敵ならば一撃で倒せる威力が出せるかもしれない。
(色々な敵と戦って、弱点を把握しなくちゃいけない…かな)
まだ、自分は何も知らないという事を思い返し。それを補う『何か』を求め始めた。
「止まってても、仕方ない。やるか」
そこからは、思ったほど苦戦しなかった。
所々で、薬などの素材を集めながら戦っていったが、最初の戦いがいかに下手かを実感し、動きを変え、センスレベルが上がるにつれダメージも高くなってきたのだ。
しかし、この地道なレベリングがいかに非効率化を、教えてくれる存在が、この時俺の目の前に現れた。
それは、近辺のモンスター狩りを終え、少し奥に行った時の事だ。
モンスターが出るまで少し休憩と、腰を下ろした時、誰かが戦っている音がし、他人の戦い方も見てみたいと好奇心を走らせ、音がする方へ向う。そこには白髪のツインテールの少女が大きく、立派な角を二本もった猪の様なモンスターと戦っていた。
少女は自分から見たところ、確実に猪のモンスターと戦うためにはセンスのレベルが足りていない。
だが、何回もセーフティエリアに逃げて、戦って、逃げて、戦ってを繰り返すごとに、ドンドンとその差が縮まっていく。
もちろんそれでもセンスレベルの適応レベルには足りてないだろう。
だが、彼女の持つ知識や、経験。そして戦いの繰り返しが、その差を更に埋めていく。
早く、正確に。
まるでパターンを知っているかの様な動き。彼女はおそらくβ版の参加者なのだろう。
だからこその動き。そして自信。
強く。美しい。
研磨されていく動き。研磨されていく強さ。何度も挑み続ける心は決して折れない。
いいや、むしろ。
戦っていく度に、心が研ぎ澄まされていっている気がする。
彼女の確かな確信が、そこにはあった。
そうして彼女は戦いを終えた。
最後の方に武器が壊されたが、すぐに代わりの武器を出し猛攻を続けた結果彼女は勝った。
その時に彼女は笑顔を浮かべていた。
このゲームを本気で、楽しんでいた。
僕は思った。
彼女に勝てるようになろうと。彼女の様に、このゲームを精一杯楽しもうと。
そうして彼女が去った後、再度出現した猪のモンスターに立ち向かった僕は。
あっさり負けた。