Only Sense Online 〜幻想抜刀の戦士〜   作:蒼井しの

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一日目終了。


『始まり』の現実、支援

「儂は武器を打つだけじゃ。結局それ以外は出来なんだ」

ただ、真っ直ぐに彼はそう言った。

その言葉こそ、彼の全てだったのだろう。

彼を俺は、信じてしまったのだ。

 

「なんじゃそいつ?」

始まりの街の南も南。

辺境と言っていい程人が立ち寄らない所にその『工房』は建っていた。

そこには、あの刀を作った彼――『ナルバス』さんが蓄えた髭を撫で下ろしながら椅子に座っている。

「彼はカ…『カイ』君、あの『黒鉄 一輪』に惚れちゃったんだってさ」

「馬鹿か」

「バカで悪かったですね!!」

改めてそう言われると色々恥ずかしくなってしまう。

勢いだけではなく、あの刀を真の武器として認めてしまった俺としては、そんなところでくじけてはいられない。

「あの刀が欲しいんです。その気持ちに変わりはないです。で、話って何ですか?」

頑なに刀は譲らないという姿勢だけでも見せていくと、その姿を見たナルバスさんはいきなり大笑いし始めた。

「プハハハハハハハ!! おいおいおいおい。こいつ本当に馬鹿か! クハハハハハ!!」

「あの……お爺ちゃん流石に笑いすぎ……」

「クヘヘヘヘヘ!! 何を言うアルミ! いや、いやこれは笑うしかないわい! なんせこいつには見る目がある!!」

「……?」

話が……全く読み込めない。

「儂の刀を見て『惚れた』とな。しかも今回の最高傑作である『黒鉄 一輪』を! いやはや。こいつはまぁ……」

ナルバスさんが俺の顔をジッと見て、値踏みをしているかの様に見てくる。

「お前は、何でこの刀を求める?」

「綺麗だし、よく切れそうだから」

「やっぱ馬鹿じゃな」

質問に即答したところ。また帰ってきたのは馬鹿認定。

そろそろ事情を教えて欲しい。

「だが、見る目がある馬鹿じゃ。まだ……石の部分しか見えてない原石の様な存在じゃな」

褒められて、いるのだろうか?

「おじいちゃん。そろそろ本題話していい?」

「ああ。ああ、そうか。なるほどな。お前はコイツに決めたのか」

決まった?

二人の中で気になる単語が出てきた。本題という内容も気になるが、何なんだ?

「ごめんね。色々衝撃だと思うけど、実はこれからが本題なんだ」

「じゃな」

「本題って何があるんですか?」

「実はね。私たちβテスターなんだけど……そこはわかる?」

「ええ、テストランをやった方ってことですよね」

β版をやった人はあの少女もだが、何か迷いがない。

既に何処かで自分の方向をもう見据えた落ち着きが感じられ、俺とは大違いだ。

「βテスターの人って、実はね。β版のお金をある程度引き継げちゃうの。それで私たちは初期から『工房』を手に入れて、一歩どころか。十歩ぐらいスタートラインが違うんだよね」

「まぁここを手に入れるにも相応の苦労はしたがな。その努力があればこそだ。そこは文句を言わせる気はない」

「その刀もこの工房がなければ作れなかったものだ」と付け加えられると、俺には何も反撃のしようがない。

「だがここを完成させ、センスも一通り成長させたところで、ワシらは思ったんじゃ。『行き過ぎたな』とな」

「行き過ぎた?」

この工房が? 行き過ぎた?

「早すぎたんじゃよ。まず、まだこんな工房を誰も持っていないだろう。なんせこの工房を作るにはGだけではなく、他の街まで自力で行かねばならぬしな。

で、工房を完成させ、どうするかと考えた時じゃな。その需要を儂らは考えたのじゃよ」

「需要?」

「そう、こんな施設が必要かどうかを。そしてここで出来る武器が、今のプレイヤーたちに求められるものかを」

益々言っている事の意味がわからない。

「……『黒鉄 一輪』実際に値を出したらいくらかわかるか?」

「わ、わからないです」

流石にそんな事情を初心者である自分が知るわけない。

「素材を考え、扱うモノが少ない、需要を鑑みても、50万Gはくだらんな」

「……は?」

「β版の生産職が作っていた鉄で出来た追加効果付きの装備の今の相場が大体5〜7万。つまりはその約10倍じゃ」

「か、か、か、か」

「買えるわけないんだよね」

「だから値を出さなかったんだ」と更に添えるアルミさん。そういう問題じゃない。だったら何故こんな高価な装備を出してたんだ?

「いや、安いアクセサリーも販売してたんだよ? ただ、君が刀しか見てなかっただけで」

……へ、へぇ。

「まぁその話は置いておくぞ。カイ……じゃったか。お前も思った通りだ。まだ、誰も、そんな高価な装備を求めていない。それに気づいた儂らは行き過ぎた代償として、これの維持費を一定期間で払わねばならぬ」

「結構高いんだよねぇ維持費。お金もありったけ使っちゃったし、結構ギリギリなんだよねぇ。私たち」

「そこでじゃ。その急務を脱出するため、先見通しを始めることにしたんじゃよ」

「せんけんとおし?」

「そう。つまりは初心者の育成。なんと君はその第一号として選ばれちゃったわけ」

「まぁといってもやるのはアドバイスと武器を多少融通するぐらいじゃがな」

「え、えーっと」

 

つまり、彼らは高速でこの施設を建てることに成功したはいいが、維持費が賄えないのが目に見えてきて。

どうすればいいかと考えた結果。初心者たちを……自分たちが必要になるレベルまであげちゃえばいいと、考えたわけか。

 

「なんでその方法にしたんですか?」

もっと方法だってあるはずだ。

自身のレベルを上げれば、それこそいくらだって強い敵を倒せるはずだし、自分に頼らなくても良いはずだ。

大体、自分がその額が出せないだけで、他の、テストランをしたの人ならば、数日で買える程度に成長するのじゃないだろうか……。

「今、β版をプレイした人に、自分たちの武器を売りつければいいんじゃないか……とか考えてた?」

見抜かれたような言葉だが最もだ。

「それが一番楽なんじゃないですか?」

「馬鹿じゃなやっぱり……」

「へ?」

「儂らはな。あのβ版を体験した。だがな。結局のところ武器を打つことが好きじゃった。大好きじゃ。

他の奴らもそうじゃ。冒険が好きな奴は好きだろう。釣りや料理が好きな奴は好きだろう。

そして……儂もその馬鹿の一人じゃ。

今回の件は完全にそれが空回った結果となった」

「おじいちゃん……」

「効率、効率。ならばその方法などいくらでもある。だがな。

最終的に何処へ行く? 

孤独か。高みか。……そんなもんに、価値はない。誰もいなくなって、周りを見渡せ。

ただ、孤独で震えるのに耐える人生が待っておる。

儂らはな。そうして感じたのじゃ」

深い悲しみの中で、決断した硬い判断を感じる。

彼らの話している内容は、正直言って、何故そうなったかがわからなかった。

経験してなかったからだろうか。自分がまだ何も考えられない若造だからだろうか。

ただ、何故か。グサリと来るものがあり、ジッと話を聞くことにする。

「それで、周りを見た。まだ、皆初心者ばかりだった。β版の奴らも、それにちょっと飛び抜けた程度じゃったが、その差は歴然じゃ」

それは、自分にも実感だった。βテスターとの差は埋まらない。そう簡単には。

たった数時間であの少女が猪のモンスターを狩れたように。

彼らは、もうこのゲームを『知っている』。

「だったら、そのちょっとを儂は埋めようと思った。

ちょっとの差は武器と儂が持っている情報を教える事でな」

「……」

「儂は武器を打つだけじゃ。結局それ以外は出来なんだ」

ただ、真っ直ぐに彼はそう言った。

その言葉こそ、彼の全てだったのだろう。

彼を俺は、信じてしまったのだ。

「俺は……僕は……貴方たちを信じます」

それが、俺の全てだった。

「きっと、それは貴方たちの覚悟だと思います。自分だけでなく、他人を見ることは、難しいんじゃないか……って、思うんです。

話の内容が、全部分かったわけじゃないです。

正直、分からないことのほうが多かった。

だけど、だから」

 

「僕は貴方の武器を振るいたい。僕は貴方も、貴方の刀も信じていますから」

 

最初は刀を見ただけだった。

だが、今は違う。

彼らに触れ、彼らの思いを聞き、自分なりに考えた。

そうして俺は、彼らの覚悟を……信じた。

「……そうか。わかった。儂はカイ。お主の武器を打とう!」

ナルバスは立ち上がり、槌を片手に持った。

「ところで、だが……カイよ。お前お金はいくら持っておる?」

何でお金の話?

「1G万あります」

「よしっ! では、それで武器を作ってやろう!」

「お金いるのですか!?」

今までの話から、え? 作ってくれるって!?

「あったりまえじゃろうが、武器作るには相応の苦労と施設がいるんじゃ。

ただ、今までの話はレートを下げてやるって話じゃよ」

「ぜ、全部ですか?」

「全部。それ以外にありえん」

「は、あはははは……」

「だ、大丈夫! しばらく使っていけるぐらいいい武器打つからさ!

それを使えばすぐ元は取れるよ!」

アルミさんがフォローしてくれた。

そりゃそうだけどさ……。

「使ってるセンスはなんだ? 教えてくれれば適正な武器の診断もしてやろう」

こうなってしまっては、俺に選択肢はない。

彼らに自分の適性を調べてもらうため、覚えているセンスのことを話して、チュートリアルでは短剣がおすすめだったとも伝えた。

「ほー。チュートリアルもかなり成長したもんじゃな」

「私たちの時なんか。そんなこと全然話してくれなかったよね」

「そのセンスじゃと。チュートリアル通り短剣がおすすめじゃな。一番『急所の心得』の補正が強く乗るし、回避のためのスキルも覚える」

「短剣だったらちょっとオマケできるかも」

「オマケ?」

「ああ、短剣はインゴット一つで出来るからの。かなり安めなのじゃよ」

へぇ。経済的にいいな。

「まぁ刀はインゴット三つ使うから。かなり高いのじゃがな」

「そんな……」

「あはは、お金貯めるまで『黒鉄 一輪』はキープしておいてあげるから。安心してね」

「それまでは、短剣で腕を磨くのだな」

 

そうして、ナルバスさんとアルミさんは僕に武器を作ってくれた。

それは別のところでひとつの波乱を呼ぶこととなるが、それはそれ。

舞台は次のステージに進んでいく。




6/2修正 今の生産職→β版の
一日目で追加効果付き装備は流石に無理でしょ……。
追加修正。もうちょっと主人公らしくなるんじゃい。
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