Only Sense Online 〜幻想抜刀の戦士〜 作:蒼井しの
「あのね。私ね。男の子なの」
「は?」
何年も付き合っていた幼馴染から出た衝撃の一言。
わかる。わかるんだが……。
嘘でしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!
夕食が終わり次は自分の部屋でVRを起動し、ゲームを再開する。
眠くなる感覚の中、反転し、いつの間にかゲームの中へとダイブしていた。
「すごいな……これ」
違和感を感じない転換もそうだが、これでは現実とゲームの区別がまるでつかない。
「って、感心してる場合じゃない。狩りに行く……いや、クエスト受けてみるかな」
『クエスト』つまりはゲームの小さなイベントだ。
物を収穫し、それをNPCに渡すことで終わる『納品クエスト』。
フィールドに湧いているモンスターを指定された数倒して終わる『討伐クエスト』。
『クエスト』にストーリーがあり、ストーリーに沿って『討伐クエスト』や『納品クエスト』を複数回続けて、ストーリーを終わらせていく『チェーンクエスト』。
この三つが基本らしく。それ以外にも何やら隠しクエストのようなものが多数存在するようだ。
だが、実際皆が受けるのは『納品クエスト』か『討伐クエスト』である。
『チェーンクエスト』は長く、NPCの話もしっかり聞かないといけないため、受ける人は少ない。
今、俺が受けようとしているのは『討伐クエスト』。
何を狩るかは決まっていないが、自分に出来るものがあればそれがお金にもなる。センスのレベル上げにもなる。
ならば、受けないよりはお得というわけだ。
「……よく考えたら、最初から受けろよ俺……」
クエストについては既に事前情報で知っていたはずなのに、最初の時はそこまで頭が回っていなかった自分を呪う。
仕方ないじゃないか。レベル上げ楽しいんだもの。
「うーん、クエストか。こういうのは酒場かな」
ロールプレイングゲームの定番だよね。やっぱり。
いやぁ。ゲームしてるなぁ。ホント。
PPP!PPP!
そんな時にかかってくる着信。
「はいはい? ショウちゃん?」
俺を知っている人なんてこのゲームでショウちゃんぐらいなものだ、と当たりを付けいうとビンゴ。
液晶画面に『シゥ』とショウちゃんのプレイヤーネームが浮かび上がっている。
「あー。あの。金成、じゃなくて『カイ』だっけ」
「そっか。ごめん。俺もシュウちゃんじゃなくて、シゥって呼ばなきゃいけなかったね」
今まで慣れていた呼び方に甘えてしまっていた。
これはあくまでもオープンワールドのゲームなのだ。プレイヤー名が違うなら、リアルネームで呼ぶのはマナー違反か。
「そ、そういうことじゃなくて……あのね。一緒に……レベル上げしない?」
「うん。いいよ」
なんだろう。むず痒い。
何でこんなにもシゥちゃんは改まっているんだ?
「何処で集合? クエストはどうするの?」
「えっと、クエストは決まってるんだ……。丁度今、β版やってた人がいいクエスト見繕ってくれて、それをカイも誘って、一緒に受けようってことになってるの。
場所は、聖堂前でお願い」
「うん。了解。今すぐ向かうよ」
そこで連絡が切れた。
「聖堂前か……」
場所はわかる。だが、
「装備……初心者のままだけどいいかな……」
武器が出来るのは明日。装備は、耐久度はないが、ATK、DEFには心許無い。
といっても……、
「どうしようもないか」
まだ、一日目だ。
そこまで急いでもしょうがない。相手も……初心者装備なのを祈ろう。
聖堂前には待ち合わせの人が沢山待っていた。
人ごみが苦手な俺は出来るだけその中に入らず、ショウちゃん……じゃなくシゥちゃんを探していたが、見つからず、諦めて突撃することにした。
「シゥちゃんー? いるー?」
声で呼んでも人ごみの声でかき消されてしまう。
「こういう時のフレンド通信か……っていた?」
手を振っている影が見える。視線を見てもこちらを見ているので、おそらくあれがシゥちゃんなのだろう。
丁度背もそれぐらいだ。
「おお、い。シゥちゃん……」
そうして、気づいた時。
僕は、頭が白くなった。
短く整った髪は何処かボーイッシュ。いや、まだここまではいい。シゥちゃんは元々髪が短いし。
肝心なのはまな板だ。現実でもそこまである方ではなかったのだが、今では完全に、いや。見事なまな板となっている。
肉付きも少しピシッとしており、どう見ても、どう見ても。シゥちゃんの性別とイメージ合わない。
そして何より、男としての勘が、シゥちゃんを男として認めない。
「……シゥちゃん?」
そうして、衝撃な発言を聞いた僕はもう何とも言えなくなっていた。
いや、いや、いや!!
「シュウちゃん……いやシゥちゃんだよね」
肩をがしっと掴み、頑なに確かめる。
「う、うん」
「別人とか! ドッキリとかじゃないよね!!」
「うん……」
「そっか……」
そっか……そうだよね。だったら。
「良かった。ごめんね。シゥちゃん言い出すの辛かったよね」
全ての覚悟を決め、今の彼女を受け入れよう。
「カ、カイ!? ちょちょっと!」
「大丈夫。そんな姿になっても、シゥちゃんはシゥちゃんだよね。俺もう大丈夫だから。うん」
「な、な、何勝手に納得してるのよー!!」
「大丈夫シゥちゃん。オレも、これから頑張っていくから」
自然に笑みが出た。
これから消えそうな人の言葉が出たが、これが今の精一杯の想いだ。
それを聞いてか。シゥちゃんの顔が思いっきり赤くなっている。
風邪じゃないだろうけど、恥ずかしかったかな?
「くっくはははははははははは!!」
隣からいきなり声がする。
隣?
「いや、いや、聞かせてもらったよ。っていうかびっくりだ。他の人たちが立ち退いたぞ。君たち」
荒髪カットの女性が笑いをこらえきれない様子で、こちらに声をかけてくる。
「あ、ああ。すまない。私はポーカス。いやこれでもシゥちゃんと、君の……先輩となるかな?
よろしく頼むよ」