Only Sense Online 〜幻想抜刀の戦士〜   作:蒼井しの

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『始まり』のボス、弱点

「いいね。君はすごいよ。カイ君」

前にそびえ立つのは、大柄の土の塊。なれど、その一撃地面を揺らし、大地に穴を開ける。

「戦いっていうのはね。守りでもあるけど、根本的には自分のペースを握ることなんだ。

どんな攻撃が来ようと、どんなギミックがあろうと。

最後に勝つのは、自分を乱さなかったものさ」

三倍はあろう高さをジッと見つめ、並び立つ女性はそう言った。

戦い始めて、五分近く。まだ……戦いは終わらない。

だが、俺たちに負ける気は毛頭なかった。

 

お互いの自己紹介が終わりフレンド登録を済ませた後、シゥちゃんとポーカスの馴れ初めを聞いた。

どうやら、シゥちゃんはとある青髪の女性プレイヤーに魔法を教えてもらおうとして、パーティに入れてもらったらしい。そしてパーティの前線役の一人がここにいるポーカス。

そのポーカスに俺のことを紹介して、俺のこのゲームへのスキルアップを狙ったというわけだ。

「それじゃあ何処行こうか。オススメは手頃なところじゃ。近くにいるビックボアかな?」

ビックボア。俺が戦っていた猪のモンスターだ。

「あいつは最初の狩りには丁度いいんだよね。数人いれば狩れるし、その素材で軽防具系も作れるからまさに序盤のお供だね」

「俺はそれでいいです」

「わ、私も……」

シゥちゃんはまだ姿に慣れてないか、俺に続いてしどろもどろで返事をする。

「そうか。じゃあビックボアの討伐クエストを受けてその後に行こうか」

そうして酒場に移動し、任務を受けようとクエストボードを見たとき、ポーカスが苦い顔をした。

「やばい。このクエスト複数のパーティが受けてる」

複数受けている? クエストボードのその依頼表を見ると、今受けているパーティ数と思わしき数字が浮かび上がっていた。

「12組」

実際の人数にしたらもっと多いだろう。

パーティは何人でも組めるが、ペナルティや戦略の関係で六人が最適だと考えられている。

この依頼を受けている全パーティが6人でないにしろ。3人で計算しても36人がこのクエストを受けていることになる。

「ダメだね。こういうクエストを受けると下手すると取り合いでPVP(プレイヤーVSプレイヤー)になって騒動になる可能性がある。

言いだしたのは僕だけど、予定変更しよう」

「じゃあどうするのです?」

「そうだね……候補としては三つ。

1『雑魚モンスターの討伐クエストを受ける』地味だけど確実だし、お金も貯まるし堅実だね。

2『待つ』これについてはおすすめしない。先程もいたようにデメリットも高いからね。

そして最後の一つが……」

出来れば言いたくなかったというポーカスの顔に何を言い出すのかと期待してしまう。

「3『無茶をして、強いモンスターに挑む』これは更におすすめしない。

僕が本気を出さなきゃいけないし、君たちがやられる可能性が高いからさ。

だけどセンスは一番上がるだろうね。早くセンスを上げたいって言うならおすすめカモネ」

この三つ。

正直言って俺は三つ目の案に心惹かれていた。

早くセンスを上げたいのもあるが、実際戦ってみたいのだ。

「カイ君は逸る気持ちを抑えきれてないみたいだね……。だけどね、考えて。

私一人じゃもちろん勝てないモンスターだし、君たちを加えても勝率は、五分……いやいいところ3分ぐらいだね。そんなところに挑むんだよ?

あとから私が悪かったとかはなしだよ」

「カイは、そんなこと言いません」

シゥちゃん……。

シゥちゃんの言葉に全面の信頼を感じた俺は少し泣きそうになった。

だが、泣けはしないと思い、全力で涙を止め、涙目になっている。

「そっか。シゥも止める気はないんだね。

はぁ……じゃあ仕方ない! 私の本気! 見せてあげるよ!」

さっきから一変。ポーカスさんの顔が、やる気で満ち溢れていた。

「但し、私から飛ばす指示には従ってね。

それは最低限。負ける気で行く気はないから、勝つ気で行くよ」

「「は、はい!」」

燃えに燃え上がるポーカスに勢い押される俺たち。

「狩るボスはゴーレム! 物理に強いからシゥの魔法主体で戦っていくよ!

私とカイ君はボスの攻撃をこっちで一点に引き受ける!

いいね!」

「「は、はい!」」

頼もしくもあるが、勢いが強すぎないか……この人?

「よっし。やるぞー!」

「「おー!」」

そうしてクエストを受け、俺たちは無謀にもゴーレムに立ち向かうこととなったのだ。

 

「はぁ……はぁ……」

「ぜぇ……ぜぇ……」

「どうしたのー? まだ三割しか削れてないぞー」

ゴーレムとの戦闘に入り、少し立った時の光景。

俺とシゥちゃんが初めての激しい戦闘により、HPは減らないが、体力がどんどんと削られていった。

それにゴーレム戦に入る前にも何匹かのモンスターに襲われ、それも撃退して行っている分かなり精神が削られている。

「ほら! 私しかほとんどダメージ与えてないじゃん! そんな気でやる気だったの!?」

「クソッ!」

なんとか剣を握り、ゴーレムの前に立つ。

圧倒的威圧感。

俺はこの戦闘に入ってから全くゴーレムに致命的なダメージを与えられていない。

「スキルを打つんんだよ! 《インパクト》か《デルタ・スラッシュ》覚えてるでしょ?」

「でも、ダメージが!」

「ダメージはいらなくてもいいの、焦らない焦らない。

君は、スキルを打つことだけを考えて」

センスのレベル上げのためだろうか。そう指示してくる真意は正直分かりかねない。

だが、先程の約束もある。

俺はそうしてスキル《インパクト》を放っていくが、やはりダメージはあまり与えられない。

(硬い! ただ打つだけじゃ駄目だ! 弱点だ。弱点を狙うんだ。この敵だって何処かに弱点が!)

土で出来ている体には一分の隙もない。

シゥちゃんは回復と魔法攻撃の切り替えで手一杯で、混乱しないようになんとか保っている。

シゥちゃんの魔法ダメージはかなり効いているところがあり、ゴーレムを怯ませたりもしていて、役立っている。

だからこそ、自分が不甲斐ない。

いや、見るんだ。

ゴーレムを絶対何処かに弱点がある。

「はぁ……はぁ……」

意識が遠くへ、遠くへ。

「大丈夫?」

ポーカスが心配してくれる。が、大丈夫だ。

むしろ……

「詠唱終わりました! 《ライトシュート》!!」

ゴーレムに魔法が放たれる。

それによりまた、怯んだゴーレムを見たとき、俺はやっと気づいた。

肩に微妙な、隙間がある。首の根元にもだ。

(あれは……ゴーレムの繋ぎ目。そこを攻撃すれば)

だが、ゴーレムの怯みが解かれ、その繋ぎ目の部分がまた見えなくなってしまった。

(そうか。ボスはある一定の条件でしか弱点を狙えないのか。

ゴーレムだったら怯みの時とか、他にもあるんだろうか?)

「よっしっ!《フィフス・ブレイカー》!!」

ポーカスさんが怯みの隙に接近し、スキルを浴びせるとゴーレムは、その衝撃により転倒する。

(今だ!!)

それは直感だった。

おそらくゴーレムは怯んだり、倒れたりすると弱点を表すと当たりをつけた俺はその転倒を見て、先程繋ぎ目が出た肩の部分に対し、

「《インパクト》!!」

スキルを放つ!

すると、今までの自分では考えられないダメージが表示された。

やはり僕の考えは正しかったのだ。

「へぇ……」

ポーカスさんが自分に並び立つ。

 

「お願いします!」

「ああ、僕とシゥがゴーレムを転倒か怯みを与える。

カイ君はその隙に攻撃をお願いね」

「はい!」

ドンドンと、この即席パーティに纏まりが生まれていくのを感じる。

 

ただ、攻撃するだけだった自分。

魔法と回復でテンパっていたシゥちゃん。

俺たちを守るためスタンドプレイに走らなければいけなかったポーカスさん。

 

この三つの交われなかった道が一本の道となり、繋がっていく。

「転倒させた! いけるね!」

「はい! 《インパクト》!!」

「ポーカスさん。回復します!」

「ありがとうシゥ」

こうして連携が生まれ、俺は始めてパーティというのを感じていた。

一人で出来ないことを、みんなでやっていく。

これがパーティ。

「《ブラックシュート》!! カイ!」

「ああ、《インパクト》!」

言葉がどんどんと短くなっていく。

名前を呼ぶだけで、自分が何をすればいいか感じ、それに合わせて動き、次に繋げる。

それがループとなり、ハメの状態を作ることに成功した。

『新たなスキルを習得しました《ショック・インパクト》』

そして――

「《ショック・インパクト》ッ!!!」

新たなセンスを放つ!

着実にセンスのレベルが上がっている。

ゴーレムの動きにも慣れ、ポーカスさん一辺倒ではなくなってきたとき。

「よーしそれじゃあ一回休憩」

 

ポーカスさんはセーフティエリアへの撤退を選択した。

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