Only Sense Online 〜幻想抜刀の戦士〜 作:蒼井しの
周りが見れてなかった。
シゥちゃんのMPはそこ切れ、ポーションの消費アイテムは底をつき、撤退したとき僕はそれを知る。
「ふぅ……飲む?」
ポーカスさんが休憩中の俺に水を差し出してくれる。
「水って意味あるんです?」
「いや、全く。ゲーム的にはね。だけどこういう時に飲むと美味しいんだよねー」
そもそもこのゲームに味の原理があるのか分からない俺は、戸惑いながらも水を受け取り飲んだ。
すると、スカッとくる冷たさに、体が感動してしまった。
「う、旨い……」
水なんて味がないと思っていたが、無性に美味しい。
これならいつだって、飲める気がするほど俺は高々水だと思っていたものにハマってしまってた。
「いやいや、ゲームでもこういうのは大切だよ。楽しむためにさ。シゥもいる?」
「はい……」
シゥちゃんはかなりげっそりしてしまっている。
疲れもあるだろうが、あそこまでやってまだ倒せないのかという不安も出てきているようだった。
実際にあの戦闘で俺のセンスはかなりレベルアップしている。
だが、倒せないというのは根本的に装備の問題が凄まじく響いているのではないだろうか。
自分の現在のセンスを確認する。
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取得SP3
【剣LV12】【鎧LV4】【盾LV6】【発見LV4】【魔力LV6】【物理攻撃上昇LV12】【物理防御上昇LV6】【速度上昇LV7】【急所の心得LV8】【戦士の心得LV12】
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あまり防御には回っていなかったため防御系センスは成長していないが、攻撃系センスの上がりがかなり大きい。
スキルも覚えていっていることを考えれば、やはり武器の問題なのだろうか。
「どうしたの? センスとにらめっこ?」
センスボードを確認していた俺に、ポーカスさんが気にかけ声をかけてくれる。
「いや……ゴーレムまだ倒せないかな……って」
「まだって5割は削ったんだけどなぁ。カイ君の攻撃も効くようになったし、本当にあとちょっとだよ。
だけど、これからはもうちょっと慎重にかな。消費アイテムがなくなっちゃったし、今までは無理が出来たけど、これからは、それがないからちょくちょく休憩を挟むよ」
「こんなに大変なんて思わなかった……」
「……その……ごめんなさい」
シゥちゃんの弱音を聞いて、かなり答えてしまい、つい謝ってしまう。
「いや、いいんだ。君たちには大変さも学んでもらおうと思ったしね。
自分より強い敵との戦いが以下に大変かっていうのも知って欲しかったんだよ」
自分より強いものとの戦い……だが、結局のところこれも序の口なのだ。
今はポーカスさんがほとんど攻撃を引き受けてくれている。
俺に来るのは、時々出る流れ弾と俺がポーカスさんに近づきすぎて受けてしまったダメージ。
そのダメージを受けただけでHPが半分となり、シゥちゃんに回復を負かす羽目になる。
「だけど……もう、少し……なんですよね」
「まぁね。思ったより早かったかな。カイ君が通常の戦士系センス構築だったらもっとかかったと思うけど、急所を狙うクリティカルヒッターだから助かったよ」
そうじゃなきゃ、諦めてたね。と付け加えるポーカスさん。
それだけ、本当ならばかなり、苦しい戦いなのだ。
成長があって、やっと戦力になるクラス。
「ポーカスさん……」
「ん? なんだい?」
「武器の予備とか貸してくれませんか?」
「……そっか」
何か思い返したように、ポーカスさんはイベントリから一つの剣を取り出す。
「NPCの店売りの武器。これでもうちょっとマシになるかな」
AKT7の武器……実際これでどこまで変わるだろうか。
「それを貸すんだ。これからはもうちょっといけるよね」
ふふっ、とプレッシャーをかけ、笑いかけてくるポーカスさんはかなり意地悪に見えた。
「やれるだけはやります。俺がやれること、ありますよね」
「そうだね。それぐらいは最低。やってもらわないと……シゥ!」
「は、はい!」
「元気ないね……。アノ日?」
「そ、そんなわけないじゃないですか!!」
「いやハハハハ、そう元気あるならよろし、じゃ第二回戦いっくよー!」
そうして、シゥちゃんのMPが回復したところで、2戦目が始まった。
だが、それでもまだまだゴーレムには敵わない。
そうして、何度も、何度も繰り返していく。
ここで諦めなかったのは、ポーカスさんの存在が大きかった。
彼女は気さくで、冗談も言え、褒めるところは褒められる良い大人だったからか。何度挑んでも雰囲気はあまり悪くなかった。
「そういえば、ポーカスさんは何か目標とかあるんですか? このゲームで」
何回もの休憩を繰り返している時、そんなことを聞いたのは偶然じゃなく、自分の意志だった。
あの時の彼女がどうして、俺達がやっているような無茶をやっているか知りたかったのだ。
その為に、ちょっとでも近い人、β版をやっていた人ならば同じ想いがあるのではないかと、期待してのことである。
「私? 私はねー」
ニシシと笑うポーカスさん。
「楽しむことかな。その為に、やることは全部全力で行きたい」
初戦はゲームだしね。
そんなことを言う彼女は、やっぱり笑い顔だった。
「じゃあ行こうか。もうゴーレムの体力はほとんど残ってないし、いけるいける」
そうして、また戦いに駆り出す。
この戦いは、最後には勝利に終わった。
最後に得るものは大きかった。それは、僕が最後の最後まで忘れてはいけないものだと気づくのは、もう少し後になる。