ここは童実野町のはずれにある孤島、『デュエルアカデミア島』。
その海岸に近づくフェリーから一台のバイクが勢いよく飛び出し、浅瀬を駆け、浜辺を超えて島の内部に消えていった。
バイクに乗る少年はほほに印象的な切り傷があるが、ヘルメットのせいで顔と髪型はよく分からない。その口には不敵な笑みを浮かべており、右手には、この島では珍しい真っ黒のデュエルディスクを装着していた。
「ここがデュエルアカデミア……今日から俺の根城になるわけだな。さっさと潜入しないとな」
不敵な言葉をこぼす少年は、この島、そしてデュエルアカデミアに災厄をもたらす。だが、その災厄をはらうのもこの少年自身だ。ここでは禁止されているバイクのエンジンをふかしながら、少年は森の中へと消えていった。
この世界は、武藤遊戯も、遊城十代も、不動遊星も存在しない。誰にも語り継がれない、不思議なものに愛された少年、『大鬼星王(おおきせお)』。彼を中心に、このIFの世界は回っていく。今、この時も………。
森を抜けた先には、今は電灯一つついていない真っ暗なショッピングモールに行きついた。星王は、真昼間なら学生で混雑している街路の真ん中をバイクで駆けていく。
その途中だった。三人の学生が彼に気づいたのか、近くのコンビニから街路に現れ、星王の道を塞いだ。さすがにそのまま突っ切ることはできず、星王もバイクを止めた。
「なんだなんだ、見かけねぇ顔だな。しかも持ち込み禁止のバイクに乗ってやがる」
真ん中の体格のいい男が言う。それに同調するように右にいる背の低い男と、左のやけに細長い男も星王に話しかけた。
「ひゅー、良いバイクじゃん!アンタ、どこから入ってきたんだ?」
「虎さん、こいつ怪しくないですか?」
着崩していて分からなかったが、三人ともが同じ色の制服を着用していた。色は赤であり、中々に派手な配色の服だった。
「……邪魔だな。どけよ」
星王がそう言うと、虎さんと呼ばれた中央の男が顔を近づけてくる。
「あぁ?なんだぁ、その口の利き方は。不審者のくせに偉そうな、今すぐ警備を呼んできてもいいんだぜ?」
男が言う。また同調するように左右の二人がわめいた。
「生意気だぞてめぇ!この人はなぁ、オシリスレッド最強の男!」
「『花田虎二郎』さんだぞ!頭がたけえ!」
面倒くさい、星王は思った。だから、早めに話をつけようと思った。何しろ、星王には時間がない。
「はぁ、おい、デュエルしろよ」
「この俺様にデュエルを挑むとは!おもしれぇじゃねぇか。いいぜ、そんかわり、何か賭けようじゃねぇか」
虎二郎の提案に星王は小さく笑った。この男が自分に勝てると思っていること、それが愉快でたまらなかったのだ。どうせ彼らは自分のバイクを要求してくるに違いない。なら、自分は何を要求しようか、そう考えていた星王の目に入ったのは、彼らの鞄だった。
「いいぜ、俺はこのバイクを賭けてやる。だから、俺が勝ったらあんたらの鞄をもらおうか」
「なに?鞄?はっ、そんなものいくらでもくれてやらぁ!さぁ、デュエルの開始といこうじゃねぇか!ガリ、ディスク!チビはデッキを用意しろ!『セカンド』で相手してやる!」
その言葉と同時に虎二郎の右手に、細長い男によってデュエルディスクが、小さい男によってデッキがセットされる。
星王はデュエルディスクを起動させ、三つのホルダーから一番目のデッキを取り出し、ディスクにセットする。
「行くぞ!不審者!」
「「デュエル!」」
こうして、星王のデュエルアカデミア島最初のデュエルは深夜に始まることとなった。