また落ち込みますが。
さあ、オケアノスの四人の運命やいかに?
※今回は投稿環境が変わってます。また不具合でなきゃいいけど…
未知の敵と接触してから、既に四時間、いや、或いはそれ以上か。時間感覚はとうに闘争が奪っていった。
白狼と雷光は対峙する。しかし。
その怪物は、衰えを知らない。
その怪物は、死を知らない。
その怪物は、恐怖というものを、知らない。
明らかに異質な存在に、雷光は苦戦していた。
何度殺しても蘇る。そのことに恐怖を感じ始めてしまったのだ。
それだけではない。
怪物は、死ぬ度に完全に元に戻るのに対し、こちらの傷は尋常でない速度で増えていく。
マグのバックアップにより、回復もしているはずなのだが、全く追い付かない。
既に、アステリオスの左手は動かなくなっていた。
「はあっはあっ……がああ、ああ、あああ!!」
喉も機能しない。
しかし。
叫ばずにはいられない。己を恐怖で潰さぬように。
ウォークライ、自らの鼓舞と、敵への威嚇。
しかし。
後者は初めから効きはしない。
何故なら、相手は感情を持っていない。
ただ、プログラムを反復するように、こちらへと殺戮の意思を向ける。
『Guooooooooo!!!!』
白狼は吼える。ソレは大気を揺るがす程の咆哮であるが、心が篭ってはいない。
ただ、白狼自身が知っている、最も強いモノに成り済ましているだけだ。
そう、ただの真似事に過ぎないのだ。
しかし、ああ。相手を理解したところで、事態はなにも変わってはくれない。
これら全て、アステリオスにとって想定外の事態である。自分以上の化け物など、ついぞ彼は知らなかった。
外などに出られたことは、迷宮に入れられてから、ついぞなかった。
振り下ろす右手の戦斧にこもるのは、同情か、嫌悪か、はたまた困惑か。
───否。勇気と恐怖である。
その二つは、英雄にとって切っても切り離せない感情だ。
そう、雷光の心は既に、英雄として十全な可能性を秘めていた。
だが、あと一押し、足らない。
死ぬまで迷宮に閉じ込められた怪物は、余りにも世界を知らなさすぎた。
「あ、あああ…… があああ、ああああ……!」
遂に、その身に亀裂が走る。
隙、死闘においてそれはつまり死に直結する。
『Graaaaa!!!!』
白狼が凶爪を構える。決めにかかる、その瞬間。
相手を殺すことしか知らなかった男は、極限の殺人者によって、今まさに、その命を散らそうと───
「『天穹の弓』ッ!」
その瞬間、彼方より神嵐きたる。
その矢、風を纏う。全て散らす風の音を。
白狼の身体ごと吹き飛ばすほどの威力まで、その弓は力を増していた。
崖に打ち付けられ、死が迫る。だが……
今ひとたびの死が白狼を襲う暇もなく、その身体は再生していく。
「……間に合ったかっ! 」
上空から、天使が舞い降りる。
〔……ほう、アレはまさに"記録を廻すもの"か。カタチをとっているのをみるのは些か久しぶりだな〕
「知っているのか?、アリエル。あの白狼を」
〔ああ、知っているとも。私は叡知を授けし者であるからして、あの者を知っている〕
その口を開くのは、アタランテの左肩に乗る獅子頭、アリエル。
「アレは一体なんなんだ? なぜ私たちを襲う?まさかアレも魔術王の使い魔なのか?」
魔神柱とはまた違った脅威だが、もしやこちらの方が圧倒的かもわからん。
〔あれはゲーティアになど並んではいまい。むしろ彼らの敵でもある。……だが、すまない。君たちには教えることができない。君たちではまだ格が足らないのだ。授けの天使が知識を渡せないとは、なんという滑稽……〕
いや、今はいいだろう。私の鍛練が足らないだけだ。それよりは。
「そうか……ならば、今はただ退けるのみ……!」
〔そうだ。アレは我々とは絶対に相容れない存在。御するのは容易ではないが、出来ない訳ではない。やつは自身に不具合が起きれば、その身を保てなくなる。〕
……! それは有益な情報だ!
だが不具合か…… どうやらそれは単なる死ではないらしい。
私ではどうにもならない。だが、ロビンの策がまだある。
”心臓をくれ”
いいだろう、かの身を引き裂き、必ずや心臓を貴様の目の前に晒してやる。
立ち尽くす雷光に呼び掛ける。
「アステリオス! そろそろ起きてくれないか!」
酷なのは分かる。だが、使える戦力は総動員せねば、勝機は見いだせない。
頼む…… もう一度その身を起こしてくれ!
すると、眼光に輝きが垣間見え、
「………ああ、いわれなく、ても……まだ、やれるっ!!」
「よし! それでこそ雷光だ!」
これで詰めきるっ!
既に再生を終えた白狼が、此方へと猛然と走る。
……一度目の死には驚愕した、二度目の死には驚嘆した。幾度殺したか既にわからない。
終には恐怖すら覚えた、この白狼に今、引導を渡す!
『……Ugaaaaaaaa!!!』
「いいか! 我ら二人で正面からヤツを引き裂く! ……これを貸してもらうぞっ!」
彼の左手から落ちた戦斧を掴み、振りかざす。
「……くるぞ!構えろ!」
「うううう……がああああ!!」
右に構えるは天性の魔獣、左には神格すら得た狩人。
対峙するは、不滅の獣。
『Guooooooo!!!』
「……!!」
「がらああああああ!!!」
勝負は一瞬、……斬り込むっっ!!
『Guaaaggigigigigiigig!!?!?!』
開いた口へと、互いの得物を振り込む!
「ぐううおおおおおぉおお!!!!」
「ぐぅっ……!! ……嵐、巻き起これっっ!!」
───斬ッッ!!!
天魔の双撃に、”
上半身ごと削りきってやった、……間違いない!
心臓が露出した!
「ロビン!! 今だ! ……貴様の覚悟を示せ!!」
───あいよ、お待たせだ!
───ほんとに行くの!?
大地蹴る音、確かに聴こえる!
───『顔のない王』解除っ!……女神サマ!しっかり掴まってろよ!」
「……うう!……もうどうにでもなれぇ!」
ロビンフットはエウリュアレを抱えて飛び出す、特製の策を持ち!
既に白狼の身体は再生を始めている。
「くっそ!間に合えぇぇぇぇ!!!」
アタランテぐらいにとは言わねえ!駆けろ!せめて届け! 女神の加護を今は信じるっ!
「だあっっ!」
跳ぶ。……ヤツの上をとった!
「構えろエウリュアレ!」
ロビンの策、その一つ。
女神の持っていた弓は”祈りの弓”だった。
「う~ ……これで失敗したら一生恨むわよ!」
そいつは勘弁だ! 俺たちは戻る!こいつを殺してな!
「───弔いの木よ!その神毒で女神を犯せ!
然れば、かの視線は心魂すら捉える!」
簡易的な詠唱を重ね、少しでも威力を底上げする。
ああ、このセリフも付け足さなくちゃあいけねえな!
「───その
共に叫ぶ。新たな業の名を。
「『
『───!!!!』
再生を果たす直前に、心臓に宝具が撃ち込まれた。
毒を付与し、起爆させる『祈りの弓』、
対象者の心臓を掴む『女神の視線』、
その二つが合わさった、”融け合う幻想”。
「どうだ! 心臓を永遠に殺される感覚は!?」
「上手くいったの……!?」
白狼の心臓は、再生した端から爆発を起こす。
遂に、完全に動きを止めることに成功したように見えたが、しかし……
〔むっ! いけない、再生に態勢がシフトしている。このままでは再び元に戻るぞ!〕
「何だと!? ……くっ、どうすればいい……?」
「これでもダメだってのか!?」
「うー! やっぱり恨むわよロビン!これでダメだなんて───」
……キラッ
「……! まって! 何かあるわ!」
心臓が再生破裂を繰り返す、その中心になにかが輝く。
〔ふむ。それがおそらくコレの核だろう。取り出して破壊、いや肉体から剥がせば───〕
聴き終わる前に、雷光が吼える。
「うおおおおおお!!!」
心臓を掴み、握り潰すも、腕ごと再生に巻き込まれる。
「……アステリオス! 貴様が英雄を目指すなら、この化け物をねじ伏せろ!それがお前の始まりだ!」
「……そうよ!貴方は雷光の名を持つ英霊。底力を見せなさい!」
女神たちの声援が届いたか、アステリオスは最後の力を振り絞る。
自分に残された、英霊としての奥の手。
しかし、その名は自身の怪物としての側面を表す。
「さまよえ……!! わがめいきゅうに!!」
ああ、しかし、それは怪物であった自分にとっての救いの名でもあった。
ここで、天に還った、還ることができた。
最後の日、彼は僕に、
「君を助けたかった。」そう言った。
「おれはとっくにたすかっていたんだ。」そういって、怪物は息絶えた。
あのときは、ほんとうにしあわせだった。
でも、この身体は再び、世に戻った。
化け物でしかないこの身がどうして。
でも、マスターは自分を必要としてくれた。
世界をもとに戻すんだ、救うんだ。マスターはそう言っていた。
───せかいをすくうのはえいゆう?
───そうね、そんな大それたこと英雄でなくちゃやりきれない。けどね、英雄なんて誰にでも成れるわ、チャンスを掴みさえすれば。
そう、アステリオスにだって…ね?
そう、言ってくれた。
だったら、ぼくは。
この身、その全てを使って、”あり得ることの無い者”英雄アステリオスを造り出す───!
───『
ラビリンス。ミノスの名工ダイダロスが造り上げた窮極にして巧緻の構造物。
特別な魔術が施されている訳ではない。しかし、その構造が、入った者を深淵に引きずり込むような、まるで魔術を掛けられているような感覚に陥ってしまうほどの驚異。
ダイダロスの才が、その魔を生み出したのだ。
その名をもつ”力”を白狼の心臓に注ぎ込む。
化け物の核が囚われ、少しずつ引きずり出される。
「……これ、でぇぇ!!!」
そしてもうひとつの宝具をとる。
剣、けして大きいものではない。小剣である。
それは、怪物である自分を殺した剣。
あの日、ぼくを救いにやって来た男の剣。
自分が、英雄の目標とする男の剣。
そう、彼の名はテセウス。迷宮に潜む怪物を打ち倒した英雄。
その力を、借りる。
「うおおおおおおお!!!!」
やっと動き始めた左手で、その剣を、核に突き立てる。
これがぼくの、英雄としての、第一歩だ!!
_____________
『-----------------』
遂に、遂に、白狼の姿は揺らぎ、崩壊を始めた。
「……どう、だ?」
「やったの?」
〔……ふむ。崩壊が始まった。我らの勝利だ〕
「勝った……のか……!」
姿が綻びていく…… すると、
『─── 異常事態発生、現界ヲ維持出来マセン』
……しゃべった!?
〔自身の作業に戻れ、”記録を廻すもの”。これは貴様の領分ではないだろう〕
『私ハ”
『貴様ラガ、コノ星ノ崩壊ヲ止メル可能性ヲ発見シタ。コレハ検証ヲ続ケル必要性ガアル議題ダ。ヨッテ、再ビ俯瞰形態ニ移行スル』
『───汝ラニ光アレ、我ラニ裁キアレ』
『個体コードA.D. No.1537、対象ノ名ヲ記録シ、再起動ノ準備ニ入ル』
『───
何かの終了合図だったのか、声が途切れた。
そして、完全にその存在が、無へと消えた。
……………
……………
……………
……………ブハァッッ!!
最初に息を切らしたのはロビンだった。
「はあっ……はあっ……勝った?勝ったんだよな? 」
「……そうみたいよ」
「……よっしゃあああ!!」
「ありがとう、アリエル。少し休んでいてくれ……」
〔ああ、再び私の力が必要になったら、また呼ぶがいい〕
アタランテの天装が解除され、もとの姿に戻る。
「っていうかオタク、いつの間にそんな天使みたいになってたわけ?それ知ってたら俺が無理しないでもっと頼れたってのに!」
「これには色々事情があってだな……」
それはもう込み入った事情が……
「まあまあ、いいじゃない勝てたんだから。
……アステリオス? どうしたの?」
アステリオスは佇む。左手の小剣は崩れ去っていた。
既に、太陽は沈み始め、夕陽へと切り替わる。
「……ねぇ、ぼくはえいゆうになれたかな?」
その問いに、皆は応える。
「ああ、十分なってたと思うぜぇ。あんたみたいな英雄は二人と居ないだろうさ! このロビンフッドが言うんだ!誇っていいぜ!」
ロビンは笑いながら讃える。
「君がいなければ、あの強敵を倒せなかっただろう。うん、英雄を名乗るには十分すぎる武勲だ。」
アタランテは嬉しそうに微笑む。
「私が見初めた英霊なんだから、あのくらい出来て当然よ! …よくやったわ!それでこそ私のアステリオスね!」
エウリュアレは喜びを隠そうともせず、アステリオスに抱きつく。
アステリオスは落ちる夕陽を眺めつつ、思う。
ああ、きっとこれからが英雄としての始まりなのだと。
……ありがとう。これからも、がんばる。
四人の英雄は、帰路へつく。
これは、彼らの一日。
とても短いひとつの時間。だが、確かに彼らの魂に刻まれた、大切な一日。
「さあ、帰りましょう!私たちのカルデアに!」
「そうだな、マスターに知らせなくては。ロビンがエウリュアレを抱いていたと」
「ちょっ!? 言葉のあやが過ぎるぜ!?」
いつもの風景がちょっとだけ、いや、一変したようだ。アステリオスは、何故だかとても楽しかった。
「それじゃあ、マグを起動するわ」
帰還術式が組まれ、転送が始まる。
英雄四人、彼らの絆が深まった日。
そんな彼らの今日が終わり、また明日が始まるのだ。
そう、世界が始まるその日まで、彼らは明日を求め続ける。
世界の救済を。
タイトル回収回に主人公がいないっていうね。
まあ、アステリオスにとっての始まりという意味だったんですけど。
そしてオリ敵のメビウスさん。一応ガイアの抑止力なんですが、様々な事情であまり強くはないです。
常時リレイズ状態なだけです。
※FGO的に書くとクラス ビースト/HP約15万/ガッツ(約15万回)が基本性能です。オケアノスの個体はこれで弱い方です。他に出ている個体はもっと数値が高いです。
さあ、次はロンドン。作家勢はどうやって倒すのか?
まあナーサリーいる段階で察して下さい。