世界の始まるその日まで   作:スノウレッツ

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さあロンドン組はどうアレに対抗するか……?

実は書いてる途中でシェイクスピアに新スキルが来たので、どうせならと活躍シーンを書こうとしたら死ぬかと思いました。作者潰しとはこれいかに……

ちなみにオケアノス編以上に異常です。


第9話 [語り手は起つ]

 

 ロンドン、大英博物館地下。

 魔術協会跡地に向かったアンデルセンたちは、途中、神智学者ブラヴァツキーを一行に加え、何故か壊れたはずの大英博物館図書室に酷似した部屋に辿り着いた。

 

 不可思議な現象の連続。その中で起きた異常な魔力反応。天から落ちくるモノ。

 

 そして今、彼らは……走っていた。

 

 

 地下道を、文化系四人は駆ける。

「アレは一体何でしょうかね! アンデルセン殿!」

「知るか! 無駄口叩かず走れ!! 追い付かれるぞ!」

「ええ、追いかけっこはたのしいわ!……だけど、一方的なのはゴメンね!」

「それについては同意するわ……! 」

 

『Grlloooooo!!!!』

 

 白狼は一直線に此方へ突進してくる。

 

 我ら作家にこれ程の運動を強いるとは!

 やはり外になど出なければよかった…と後悔している暇もない!

 

「どうでしょうアンデルセン殿? 一度殺されてカルデアに戻るというのは!」

「ええい恐ろしいことを言うな!死ぬ経験は一度で十分だ!」

 

「ちょっと、もう追い付かれるわよ! というか、この道来たときより長くないかしら!?」

 

 それは確かに! だが今はそれよりも───

「我々ではどうにも出来ん!貴様は何かないのか、エレナ!」

 もう何をいってるのかもわからんほどの混乱だ。 一般人に何ができるっていうんだ!?

 

 

「ええ!? そうだ、アレ効くのかしら…… ええい! マハトマァ!!」

 後ろに振りかぶった彼女の右手から、三本の光の流線が伸び、白狼に突き刺さる。

 少しだけだが勢いが落ちたように見える!

 ……が!

「!?」

「!?」

 

「効いた! やっぱりレムリアは最高ね!」

 この女なんでもアリか!?

「……もう足止めできるならなんでもいい! 今のうちに距離を稼げ!」

 

 まさかアレに対抗できるのが人間とは……

 俺たちの面目が立たんというものだ! もとから戦力にはならんがな!

 

 

「む! 有りましたぞ、上への階段が……なんと!?」

「なんだ!どうし……っ!」

 

 走った先にあったはずの階段が、いや階段はあるのだが…

「…何故先が存在しない!?」

 階段の先は閉ざされていた、というかただの床板であった。

 そんなはずはない……そもそも来たときはそんなところに壁など存在しなかった!

 

 ……やはり何かがおかしい。あの図書室といい、狙い済ましたかのような敵性の召喚、あるはずのない壁…!

 

 なにか、とんでもないことに巻き込まれている。恐らくは世界という単位で事態が変革している!

  そして、その中で一つ確かなことがある……!

 

「……全員、衝撃に備えろ!ヤツがぶつかるぞ!」

『GAhaaaaaaaa!!!!』

 くそっ!万事休すか……!

 少なくともエレナだけは生存させなければ……!

 生者、ましてや英霊となる運命にあるものが異常中に消えれば、それからの運命が捻曲がる!

 そうなれば我々が修正した特異点まで記録から消滅しかねん!

 

 

 必死で思考を回していて気づかなかった。

 スッと、黒い少女がヤツの前に出た。

「まだまだ追いかけっこは終わらせないわ!……兵隊さんっ!」

 ヤツと我々の間に、無数のトランプ兵が召喚され、まさしく城壁が造り出される。

「……!どうする気だ!アリス!」

「出口が閉まっているのだったらこじ開ければいいのよ! せっかくだもの、鬼さんに開けてもらうわ…… みんな、ひとつにぎゅーってなって!」

 な、なに?

 

「ほらほら、はやく!」

 そう言って抱き寄せてくる、って劇作家! さりげなく壁側に行くな!

 

 四人で団子状態……いや、互いに背中を合わせている状態か。

「ふうむ、これは一致団結という状態ですかな? 運命共同体のほうがよろしいか!」

「死ぬ時の一致団結とはどれだけ悲惨な状況だ? 俺はまだ貴様らと一緒にくたばるわけにいかんぞ! まだ書きかけの原稿が残っているからな!」

「ってアンデルセンが一番危険な場所にいるじゃない!?」

 ふっ、男はいざというとき女性を護らねばならん生き物なのだ。だからお前も階段側からこっちにこいシェイクスピアァァ!!

 

 本当は気がついたらこのポジションに配置されていただけだ!なんてこった!

 

 エレナとアリスを中心でくっつかせ、俺がトランプ兵どもと共に白狼と向き合っている。

 ええいそっちで涼しい顔をするな劇作家!自己保存も大概にしろ!

 

「っっ!! くる!」

 

『Guugaaaaaa!!!』

「ぐううっっ!!」

 

 白狼が突進し、トランプ兵が雪崩を起こしたようにこちらに迫る、……押し込まれるっ!

 

「……今よ! 兵隊さん! 私たちを守って!」

 すると、トランプ兵たちがクッションのように幾重にも重なり、白狼の激突を受け止め……

 きれてない!?

「おい! 勢いが止まらんぞ!?」

 これではそのままの勢いで押し流される!

 

「がんばってアンデルセン! ……あとごめんなさいシェイクスピアおじ様、たぶんそっちのほうが危険かもしれないわ!」

「なんですと? ……っぐっはあ!!?」

 背後から悲鳴とドッガア!っとなにかが壊れる音が耳に入った瞬間、一気に身体がもっていかれた。

「うおおおおお!?」

 まばたきのうちに、外へと放り出される。

 

 さっきの悲鳴は劇作家が壁に激突したときのものか……と一瞬だけ同情しようかと思ったが、やめた。

 

 ともかくひとまずは生き延びた、ということだ…!

「───ぐっ! まったくなんて酷い脱出劇だ、今どきのコメディ映画でもこんな演出はやらんぞ!」

「とりあえず生き残っただけましだって考えときましょう! でも油断は出来ないわ、アイツはどこにいったのかしら……………え?」

「………頭を打ったせいでしょうか? これは幻覚ですかな………?」

 

 さっき、壁をぶち破ったときにそのまま何処かへ飛んでいってくれたらどんなによかったことか。そんな都合よく話は進んでくれんがな。

「……まだ俺たちを追い足りないらしいぞ、あちらの客は!」

 

 見上げると白狼は遠くの回廊の二階に居座り、鋭く、しかし虚ろな眼光でこちらを睨んでいる。

 

 ……回廊の二階?

 

 そんなものはある筈がない。

 

 (…………………なんだ?此処は……)

 

 自分が視たものすら信じられない。

 

 (…………………ここは、何処だ?)

 

 

 我々が立っているのは広場、下には青く繁る芝生がある。周囲は広大な……さっきまで居た図書室と同じくらいの土地だが……問題なのはその周りだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、その二階目にアイツはいた。

 

 ……おかしいのだ。そこに建物があることが。

 

 全て壊れた、しかも瓦礫まで撤去されていてただの更地だったはずだ、ここは。

 アリスとシェイクスピアはただ状況を理解しようと周囲を見回す。

 

「ほう? これは……どのような奇術によるものでしょうか…? これほどの幻影を写すとは、いかなる舞台仕掛けにありましょうか!是非ともお教え頂きたく存じますですぞ!」

「いいえおじ様、たぶん全部本物よ。

 ……だってあまりにも当たり前のように存在するんだもの。まるで前からずっとこうだったみたい……」

 

 そんな……そんなバカな話があってたまるか……!

 恐る恐る尋ねてみる。

「……誰かここを見たことあるヤツはいるか?」

 

 エレナが怪訝そうな表情で答える。

「知ってるわ、私。ここは確かに大英博物館の敷地。あの、霧が蔓延した日までには確かにあった、この街の象徴の一つよ。でも、どうして……」

 

 そうか…… ということは、俺たちは時間を跳んだ、と考えるのが普通か? いや、普通であってくれ。これ以上の不可解はいくらなんでもキャパオーバーすぎる!

 今、もっとも信じたくない連想は、あの白狼が全て仕組んでやったことだ、という考えだ。もしそうならば、既に我々はヤツの手の上で転がされているに過ぎなくなる。

 それだけは断固否定したい……したいが、まだ判断材料が少ない。もう少しアレに弄ばれるはめになりそうだ。

 

 幸い、周囲に人の気配はない。まだ陽が昇っているというのに。

 ……これも全てヤツの仕業ではあるまいな?

 

「……アレの相手を出来そうなのはいるか?」

 

「言うまでもなく我々には手がありませんぞ! ええ、まさしく手も足もでない状態に陥っております!」

「……っ、反論の余地もない。まったく、旅行には腕の立つ用心棒を雇うに限るな。次の現界の時には用心することにしよう。」

「……冗談よね? アンデルセン?」

 この状況で冗談を考え付くとは、なかなかどうして自分も捨てたものではないな。

 だが!

「ああ!もちろん冗談だ!こんなところで死んでやるのは癪だからな! 数少ない休日すら邪魔したアイツをさっさとぶっ飛ばしてやりたいところだ!

 ……しかしだな!作家と学者と幼女であの化け物を倒せる策が思い付かん!」

「はっきり言ったわね!?」

 だが事実だ!

「ああ、だから逃げの一手だ! ほら、走るぞ!」

 

 ……逃げる、という選択肢に至ったあとで、こういうのもなんだが。

 

「……ところで、出口は何処だ?」

 俺は絶対に見回したくないぞ。現実はどうにも残酷で理不尽で、見飽きたし書き飽きた……!

 

 エレナは、ただ単純に驚愕することになる。

「……!! アンデルセン!」

 

 なんだと……?

 

「ここ……何処にも繋がってないわ! 出口がないのよ!」

 

 まさに袋小路というわけか……

 

 何ゆえ、地下通路で閉じ込めたあげくの広場すら閉ざされた空間にしたのか? あの白狼、人の心を折るのが大層得意と見える。くそったれめ…!

 

 ザッ

 降りてきた、あの化け物が。話し合いの時間もくれんのか。 せっかちなヤツだ。

 

 袖を引かれる。

「怖いわアンデルセン……まるで世界に私たちしかいないみたい……」

 アリスは怯えたように、こちらにすがるように目をむける。

 やめてくれ、お前になにかあったら、あのマスターの心すらヒビはいることは想像に難くない。そもそも俺たちが戻れるかすらも分からないっていうのにだ、他人の心のケアなどしていられないんだ……

 

 おまけにまだ人間である令嬢を護衛しながらだ。戦闘など他人に任せきりだった我々がどうにかできると思うのか?

 ……だからその目で見つめるのは止めておけ、俺を見るよりマスターを見たほうがあの女も喜ぶぞ?

 

 ……ああ、結局はこうするしかないか。

 世界を救うなどという愚行の片棒を長く担いでいるせいか、いつの間にかずいぶんヒロイックな考えをするようになってしまったことだ。帰ったらマスターにひたすら愚痴をぶちまけてやる。

 

「……仕方がない、やるしかないか。まったく、肉体労働などついぞやらんと思っていたのだが」

「ほう! アンデルセン殿がやる気ならば、我輩も参戦せざるを得ませんな。

死の間際こそ、人が最も輝くときだ(Sweet are the uses of adversity )”!それこそ檻の中でもがき苦しみ、さらに魔獣すら放たれていようとは!まさにこれは至高の恐慌に違いない! これは執筆が捗りますぞ!」

 

 なんだ、お前まで来るか劇作家。まあ最後だけでもせいぜい役にやってくれ。

 

「アリス、最後の策はお前に任せた。それまでの時間稼ぎを俺たちがやる。お前は持っている筈だ、アレに対抗できるほどの力を」

「……! それって…ジャバウォックのこと……?」

 頷く。あれなら恐らくは白狼と互角以上の戦闘力を誇る筈だ。お前がアリスだというのなら召喚できるはずの存在。

 

 

「…………」

 アリスはうつむく。

「……エレナ嬢、アリスを守ってやってくれ。現状でアレに刺さる技をもつのはお前だけだ」

「……ええ、分かったわ、私もまだ死にたくはないからね」

 残念だったな、お前はあと三年もすれば天に召されるよ。

 

 踵を返し、ヤツと向き合う。

 有難いことに、腰にまだマグがぶら下がっている。これがあれば少しは保つか……

 

「おい劇作家。魔力の供給を限界点まで引き上げる。壊れるなよ」

「はっはっは、何を仰いますか。吾らとっくに壊れているでしょう! 何を間違ったか作家が舞台に立っているのですから、ろくな演技ができるわけありませんぞ!」

 貴様は俳優でもあったろうに。まあ二人でどこまで観客様を満足させられるかなど知ったことではないが。

 

「……それもそうだな。ああ、せめてくたばるなよ、俺もお前もまだまだ原稿が終わってないからな」

「ふぅむ。これが最後の舞台にならないことを祈りたいところですな。せっかく主役を演じれそうだというのに!」

 

 さて、と。

 マスター、悪いがやはり壊れるかも知れん。何がとは言わない。

 

 渡航聖杯を掲げ、起動の文句をつける。

「機能制限の解除を申請する!」

 

〔───申請を許可(Permit application )指定の解除コードを宣言してください(Please declare the designation of the unlock code )

 

「”魔力供給(マナライン)”/”臨界突破(オーバートップ)”、一番上から始めろ!」

 

〔───了解(OK)コードの申請を受理しました(it has accepted the application of the code )

  ───それでは、快適な旅を(So, a comfortable journey )。〕

 

 快適な旅、ねえ。地獄への片道切符だよ、これでは。

 直後、尋常でない魔力がマグを通じて流れてくる。ああ、俺が何処ぞの英雄様だったのなら満足できる量なのだろうが……!

 

 ───ぐは……っ! 流石に許容量は超えるか……!

 魔力の過剰供給など普通なら絶対にあり得んからな……

 全身が焼け切れそうだ……!これでどれだけ出来るか……

 

「っ!……アンデルセン殿、それで、なにか策はあるので?」

「ない。というかそんなものがあったらとっくにやっている」

 あのクラスの存在に非戦闘員二人で挑むとは……

 無謀にも限度があるというものだ。

 

「ふむ!それでは即興劇ですな! あまり得意というわけではありませんが、観客を待たせるのもいけません! さあ、開演と相成りましょうぞ!」

「はっ、三流役者で悪いが、しばしの間お相手願おうか!」

 

 既にヤツは目と鼻の先だ。素直に舞台に上がってくれればいいのだが、そう都合よくいくはずもない。これは現実なのだから。

 

 不戦の作家(やくたたず)。そう銘打たれた英霊が今、仲間…いや、ただ自分自身の為に戦う。

 

 片や、心の奥底にて希望を棄てられず。

 片や、心隠さず、欲のままに喜悲を求む。

 

 死はすぐそばにある。気づくことは簡単だが、対処するのは不可能に近い。そう。

 

 二人の作家は、ただ自らの運命へと。

 

 挑戦を、叩きつける。

 

 

 




本格的に対抗手段が見当たらない作家組よ……
FGOで戦えてるのは何かおかしいんじゃないか?ってくらい設定では攻撃手段がありません。
頼みの綱はジャバウォックですが……果たして。

新しいほうの「アリス・イン・ワンダーランド」は面白いので是非ともご覧あれ!(唐突の宣伝)
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