世界の始まるその日まで   作:スノウレッツ

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また天使か!ほんと語彙力ないな私!
……と、自らの技量不足を恥ながら書いてました。
ロンドン編、終結でございます。しかもフルボッコ回。
新キャラ三人が白黒白とややこしいやら無いですね。
だいぶ重要なイレギュラーキャラになります。詳細は本文にて………

それでは暫しの間お時間頂ければ、と。



第11話 [モノクロ・エンジェル]

 な、なんてこと………!?

 

 アリスの頭の中は驚愕に満ちていた。

 

 

「そ、そんな……!ありす? ホントにありすなの? 私の幻覚じゃあなくて?」

「そんなわけないじゃない! わたしは確かにここにいるわ、ほら」

 ぎゅっと、抱き締める。

互いの存在を確かめ合うように、強く、つよく。

 

 涙が流れた、哀しみでなく喜びのだ。

「ああ、ああ…… 会いたかった……会いたかったの、ありす……」

「わたしもよ……なんとか間に合ってよかったわ!」

 

 目の前に奇跡がいる。

 アンデルセンは必死で思考していた。

---いったい今日はどれだけ驚けば気が済むんだ……

 

「ア、アンデルセン……? 彼女たちは……? どうしてアリスちゃんが二人もいるの……??」

 そして俺より困惑しているのはエレナ。

頭から煙が見えそうだ。

「……わからん!」

 俺も困惑中だ!

 

 ふともうひとつ煙が立った、視界の端に。

「───」ぷしゅー

 ああ!シェイクスピアが!

「マ、マグ! 臨界供給を終了! 通常運行に戻れ!」

〔───了解(OK)帰宅までが旅行になります(Until the return home will travel) どうかお気をつけてご帰宅下さい(Please come home whether to take care )

 ええいうるさいわテンプレ!まだ全然危機真っ只中だ!帰れそうな見込みがない!

 

「やあやあ、困惑してんなぁ。まあ流石になぁ……」

 白い女がこちらに語りかける。

 

 白く長い髪、白い肌……というかなんだ?生きているような感じがしない。純白の彫刻のような美しさ……と表現するのが一番か……?

 というかだな……!!

「いったい貴様はなんなんだ!? いや色々突っ込みたいところはあるがまず服きろ服!」

 その白い肌の輝きを少しは隠せ!

「突っ込みたい……? いやいやそんな会ってすぐだなんて色々越えすぎっていうか……」

カァー

 

 違う!そうじゃない!

「ええい生娘みたいな反応しやがって!そんなんで人やってけるのか!?」

 たまらず叫ぶと、そいつはパッと表情が明るくなり、赤く光る眼をニンマリさせる。

 

「アハハ、そう? ニンゲンに見える? そっかぁ

……やっぱお前いいやつだな、仲良くシてやってもいいよ?」

 ちがああああああう!!!!

もう困惑すっとばして只の相互不理解だ!これ!

 

「はあ、はあ…… 貴様……そうのたまうってことはヒトじゃないのか?」

「ん? ああ、そうだけど?」

「やけにあっさりいうな……」

「”あっち”じゃあもっと色々居たからねぇ。こっちの世界には居ないの? アタシみたいなのは 」

「居てたまるか!お前みたいな露出きょ……

あ、いやなんでもない 」

 なんでもないなんでもない。流石にダメだ。

冷静になれ、俺。

 

「うーん、なにかおかしいのかなぁ……?」

 ええい胸を寄せるな、ていうか殆どないようなもんじゃないか。どこぞの貧相な女を想起させ……

「アンデルセン……? 女の子の身体をジロジロ見るなんて……あなた………」

 はっ、後ろから痛い視線が……

 おかしいな、こんなのはマスターの役のはずだが……?

 

「ねぇジャバ。 アタシのカラダなにか変?」

 ジャバ、と呼ばれたのは黒い巨人。

 白狼を受け止め、エレナとアリスを救った張本人だが…… こっちは見た感じからヒトじゃあない。

 2mはゆうに超える図体、赤黒い体表、大迎な手甲のような、異形の腕に、悪魔のような翼。

顔は存在しない。時折光るラインが数本入っているだけだ。

 

 こちらを向かずに、白狼を押し止めつつ、言葉を紡ぐ。怪物じみた声かと思いきや機械音声のような平坦な、紳士のような声だ。

「………オマエの身体は人として何も不思議なところはない。しかし肝心なものが足りていない。被服というものだ」

「服……? もしかしてマスターが羽織ってたアレ?」

「ああ、ヒトは服を着ることで体表付近の湿温度を調節する環境制御を行っている。その歴史は長く、また民族によって様々な意匠を含んでおり……… というかオマエも着ていただろう、いやオレを纏っていただけだが 」

「へぇー。じゃあソレちょーだいよ!今!そこの子に見せるから!」

 

 身内すらイラついたようだ、若干口調が荒れ

る。

「貴様この状況を理解しているのか? オレを見ろ! 両腕が塞がってる!」

「そんな抜け殻みたいなのさっさと殺っちゃってよ。アンタなら出来るでしょーが 」

 

「これで抜け殻だとすると本体はいったい……

そうだな、『水晶(クォーツ)』と同格といったところか」

「ええ!? こっちにも似たようなのがいるの? どっちもどっちだなぁ……」

 

 さっきから話についていくのすら精一杯だ。

 マスター? それではこいつらサーヴァントか?

 他の世界からやってきたとでもいうのか?

 たしか織田信長と沖田総司はその方法でカルデアに流れ着いてきたことがあったはずだが………

 

 ともかく状況整理だ。

 アムレートが消滅したあと、こいつらはやってきた。

 白い少女は恐らくアリスだろう。直接会ったことはないが、月の裏側で同位相に存在していたはずだ。

 黒い巨人は、アリスに付き従っているのと、”ジャバ”という名で呼ばれていることからほぼ確実に”ジャバウォック”でいいだろう。

 問題はこの白い女だ。まったく見当がつかん。白……と、人外か……

 

 少なくとも敵ではないことが唯一の助けだ、まだ先は見えないが、終わりからは遠ざかったことはわかる。

 

 

「───とはいえ、いつまでもこうしている訳にもいかんな。ジンが足りるか分からんが……オマエには退場してもらう 」

ハァッ!

 黒の巨人が動く、白獣の頭を左腕で掴み上げ───

『Gurrrrrrr---!!!』

「哭きたいだけ哭け。所詮はハスのいう通りの抜け殻だ。オレの敵ではない 」

 右腕が真ん中から割れ、変形していき、バリスタのような発射台になる。そこに、尋常でない密度で形成された穹弾が発生していく。

 

 

「我が主に危害を加えようとした、その報いを受けろ。白き獣よ 」

錐穿つ───『拳は堅なり轟々響く(ギムレット・ギンブル)

 

 完成した弾……いや槍は、生長するヤドリギ(ミストルティン)の如く、螺旋回転を繰り返す、その姿は既に神具の域に至っている。近くにいるだけで張り裂けそうなこの感覚がそれを物語っている………!

 放たれた螺旋の槍が白獣を抉る。頭を潰し、毛皮を巻き込み、その身体ごと崩していく。

 

「───これで終わりだ。貴様は還れ 」

 更に出力が上がり、周囲の空間すら歪んでいるのが視認出来るほどの威力を叩き出している。

 

もはや白獣の姿はどこにも見えない。

まるで世界からえぐりとられたかのようだ。

 

 ………圧倒的だ、こいつらは俺たちとはそもそもの規格が違う存在なのかもしれん。

 ソロモンはマスターが存在していなくてもあれだけの力を行使していたが、コイツらは間違いなくそれ以上の原理で動いている……

 

 しかし、どうやらあちらもなかなか諦めが悪いようだ。

 

「───む?」

「あー、抜け殻って言ったのは訂正するよ。そんなこと出来て抜け殻な訳ないよな……」

 

 白獣が消えた、その空間に再び魔力反応が現れ、とあるものが出現した。

 

 ひも、いや帯だ。一部分だけねじれている。

つまりは”表裏同一体(メビウスリング)”。

そこから心筋が発生し、心臓を形成し、今一度形を持ち直そうとしている。

 

「なるほどね、そっちが本当の力ってわけか」

「そもそもの生命の形式が違うか…… これはオレではどうにもならんな 」

 

 そういえばあの男も言っていた、出来損ないだと。あれは、”殺すための力”ということか……

 あちらから殺せないのに、こちらからも殺せない………

先に力尽きるのがどちらかなど明白だ。結局はこちらが詰められるのに変わりは無い。

 

 こいつらはどうなんだ………?

 

「あいつ、倒せないの? 命が尽きないなんて……

そんなことがあっていいのかしら……?」

 エレナは疑問を投げかける。それは当然のことだ。

 

 この世界に存在している以上、生は死への一方通行だ。そして死を乗り越えた者は、世界に存在できなくなる。

 イエスは死から遠ざかったことで昇天したのだ。そして釈迦は悟りを拓いたことで輪廻から外れた。アッラーはそもそも最初から世界になど降りてこない。

 死なない、ということはあり得んのだ。いや正確には、現世にて死を経由せず存在し続けるなど絶対に不可能だ。

 絶対はありえない、とよく言われるが、少なくともこれだけは絶対だ。

 なぜならそれは世界のルールなのだから。

 

 ”始めに総てを創ったもの”、の考えなど知ったことではないが……

 

「別に死なないという訳ではない。命の規格が違うだけだ」

「地球上の生物とは違う構成体ってわけ?もしかして、アイツもマハトマの一部なのかしら……?」

「その”まはとま”とやらは知らんが、恐らく人を創ったものとは異なるものがつくった整形物には違いない。殺すための手段も異なるのは厄介だな 」

「そこら辺は『水晶』に似てるね。アイツ空から降ってきたらしいし、ハルペーで死ななかったし 」

 

 そして、白と黒の異形はひとつの結論を出す。

「アイツを殺すことは出来る。だがオレにはそれだけの力がない 」

 

「ふむ……お前はどうなんだ、白いの」

「白いのって! アタシにはちゃんとハスっていう貰った名前が」

「無駄に話をややこしくするな、彼らには時間が無いのだ。ちゃんと答えてやれ」

「うー!」

 ハスと名乗った少女は顔を膨らませる。

 

 ハッ、悪いな。俺は世間知らずの小娘には厳しいんだ。そもそも人じゃない? ヒトの形をしてれば人だろう。違いが分からなければいいのだ。

 

「むぅー。………アタシとジャバは物理干渉しか出来ない。それでアイツは物理的な死を受け付けない、相性は最悪だよ。でもありす嬢ならイケるんじゃない? 相手が獣の形してるし 」

「アリスちゃんが?」

「黒い方の子じゃないよ、アタシたちと一緒に来た方。」

 今更だがどっちもアリスなのか…… 白やら黒やらなんというややこしい来訪者どもだ。

 

「───ええ、たぶん大丈夫。わたしたちならやれるわ 」

 黒と白のアリスが応えた。手を繋いでこちらへと歩みくる。

「もう大丈夫なのか、……アリス」

 ダメだ!結局どう呼び掛ければいいかわからん!

「いいのよアンデルセン、私たちは二人でひとつなんだもの。アリスって呼んでくれればいいわ」

 黒いアリスは返す。

 その目には、失われた光が少しずつだが戻っている。なんとか立ち直ったみたいだ。

 

「ええ、やっとふたり一緒になれたんだわ。マスターには感謝しないと!」

「ありすありす、自己紹介しないと。あなたはわたしだけど、みんなはあなたを知らないわ 」

 

 服装が違うから分かることには分かるが、同じ顔で同じ声だと本気で区別がつきづらいぞ。

 

「そうね、今のうちにしておきましょう。それじゃあわたしからね。

幻想魂・二十一天(ファンタズマ・ダブルクロス・ワン)』、階梯六位”恋人”

クラスはセイバー…… 名前はありす、よ。

こちらではサーヴァントという括りが一番近いものかしら」

「同じく、階梯十五位”悪魔”、クラスはバーサーカー。名はジャバウォックだ。ありす嬢の護衛をやっている 」

「えーと確か……階梯十一位”欲望”、クラスはビースト。 名前はバンダースナッチだけど長いからハスでいいよ、というかそっちの方がいいな 」

 聞き慣れない言葉の後には、きちんと規格(クラス)名が入る。しかし………

 

「”恋人”に”悪魔”に”欲望”…… タロットか。そしてその言い分だとサーヴァントではないのか?」

「限りなく近いけれど違う存在だわ。この世への呼ばれ方が違うの 」

むぅ………

「それで、貴様らは何処から来た。他の世界軸からか?」

 

 そう問うと、ありすは少しだけ神妙な顔をし、その小さな口で答えた。

「………未来の地球からよ」

 ……!

「それは………俺たちと同じく、カルデアからきた、ということか?」

 

 ……カルデアといってもひとつではないはずだ、多元宇宙論なんていうトンデモ理論がもし正しいのならば、だが。

 しかし、彼女の返答は想像の上をいく。

 

「いいえ、西暦より後の世界よ。詳しくはわからないけれど、私たちのマスターにはそう言われたの。確か……新暦とかいってたかしら」

「な………なん、だと?」

 西暦より後? しかもコイツらにはマスターがいるらしい。けれど、カルデアとは違うところからやってきたという。

 それでは………人理焼却は阻止されたということか………?

 

 多くの疑問が浮かぶ背後でヤツが再び息を巻く。

『----Graaa………!』

 っ、もう復活するのか………!

 

 そしてもう1人、意識が浮上してきたヤツがいた。

「………むぅぅ…… はっ、吾輩はいったい……?」

 この………! 相変わらずタイミングが悪い男だな!

「シェイクスピア! 今すぐそこから離れろ!

 ヤツがそぐそこだ!」

「おお……? いつの間にやら演者が増えて……」

『GRAAAAAAA !!!!』

「---おおおおおおお!?」

 

 くそっ!まさしくヤツが言った通りだな!

 ”窮地は群れを成してやってくる(That may succeed as his inheritor )”とは!

 忘れてほっといたのが仇となったか……!

 

 

「───ありす嬢、これ借りてくよ」

「……! ええ!行って!」

 刹那、白い閃光が獣へと向かう。姿は捉えられない、サーヴァントの眼にすら一瞬の光が映るのみ。

 白閃が獣の腹を貫き飛ばす。

『Gur……!?』

 怯んだ白狼は一歩後ろへたじろぎ、新たな敵に視線を送る。

 

 シェイクスピアの前へと立ちふさがった、ようやく、いや直ぐに現れたその姿、人型だったものは既にその一部分が異形に変わっていた。

 

「───”案内人”はその速さに於いて右に出るものはいねぇ、覚えとけゾンビ狼 」

 ハスの脚は、人ではない奇妙な筋肉の付き方、そう───兎のような。

 

「よう、髭のオッサン! ようやくお目覚めかい?」

「おお……おお? なんと……」

「あん?」

 カッと見開かれた。

「なんと美しい物でしょうか!

綺麗とは醜い、醜いとは綺麗(Fair is foul, and foul is fair )”! その人外の身で、なんと美しいヒトを演じようとしているのか!実に健気、ああ、だが同時に哀しみが見えるほどの、その純白の裸身よ! 」

 

 ……流石と言ったところか。今まで潰れていたっていうのに、一目見ただけでアイツを根こそぎ暴いたぞ。

 

「うん? 褒められたのか? ……えへへ、褒められるのは好きだぜ、だってヒトは”そう”なんだろ?」

 全てがすべてそういうヤツだけじゃあないぞ……

 と、言おうとしたが、止める。まだ敵は生きてる、油断は出来ない。

 

「よーし! 気分もいいからこのままキめてやるよ!アタシを本気にさせたんだ、記録すらも残させねえ!…………って思ったけどアタシじゃあ倒せないんだった。ありす!アイツ引きずり出すから構えててよ!」

 

 脚が元の人間に戻る、いや元々は人ではないのだから少しだけ違うのだが。

 しかし、相手はどうやら違うらしい、臨戦態勢から抜けていく。

 

//

 

『------緊急事態発生、緊急事態発生、予期シナイ脅威ガ発生、数ハ3。帰還シテ再ビ協議ノ必要性ヲ検討スル』

 

//

 

 白狼は後ろに跳び去り、そのまま空へ離脱しようと……

「ハッ! アタシが噛みついた獲物を逃がすかよ! 少しばかり判断が遅れたなぁ!」

 啖呵を切り、延ばした腕が次々と変幻、本来の姿へと戻っていく。

 白蛇のよう、だが全身に目玉を持ち、そこから骨のような触手が伸びていく、異形の白。

 

「そら、掴まえたァ!」

 白狼が、空中で骨子に串刺しにされ、瞬時に動きを封じられる。

 

「───行きましょう、わたし」

「空へ行くってことはあの子の出番かしら?」

「ええ、”白うさぎ”でも良かったんだけど、今はこちらね」

 ありすは、一通の手紙のようなものを取り出し、言葉を紡ぐ。

 

「これはお茶会の招待状、今すぐ始まる狂気の宴よ!

わたしに空駆ける喜びを教えてちょうだい、気さくなあなたの、その名は”グリフォン”!」

 

 白き少女は空への希望をその身に写す。

 ありすの靴に翼が生える、グリフォンの翼は大空統べる大君の証。

 

 黒き少女は破断の剣を小さき御手に。

「さあ、この手に掴むは勇気の剣!貫き貫き、噛みつき刈り取るは彼のくび!

その名は”ヴォーパル”、わたしがわたしであるための、”死に至る傷痕(ヴォーパル・ソード)”を彼の心に貫き突かん!」

 アリスの手に現れたのは、蒼の意匠が施された、白刃の両手剣。

 それはセイバーであることの証明である、剣の錬成詠唱。

 

 ヴォーパルの剣は、人に仇なす獣を屠るための剣。それは今、名も無き男から、物語の主人公へと委譲される。

 

「さあ、やってやりましょう、二人ならきっとなんでも出来るわ!」

「わわっ……!」

 白いありすは黒いアリスを両手で抱える。

 

 ……白い王子様に抱えられる黒い装束の姫、と形容するにはいささか両者とも可憐で幼すぎるか。どこぞの劇作家がのたまいそうなセリフが思い浮かびそうだ、そう………

 

「おお、まさに”幼い無垢ほど愛を綺麗に魅せるよう”ですな!」

「結局はその愛は散るのだがな」

「なかなかにロマンがないわね、アンデルセン……」

 エレナは呆れたように言う。

 そうだ、浪漫など……とうの昔に棄てた……棄てたはずだ。

 

 しかし、なんだ。二人の少女が空へと昇る。

 この情景に何か、俺は───

 

 

「お嬢、ソイツを叩っ斬ってやれぇ!」

 

 天上の舞台にて、ふたりは構える。

「---いくわよアリス!新たな始まりのページをめくりましょう!」

「ええ! さぁ、今こそ宝具の開帳を---」

 

 今、『誰かの為の物語(ナーサリー・ライム)』は再び、名を昇華する。

 そう、遥か彼方、理不尽に戦地に倒れた少女が憧れ望んだ『少女の為の物語(アリス・イン・ワンダーランド)』へと───

 

 

 ───アリスとありすはふたりでひとつ

 

 ────ワタシのツルギはアナタのツルギ

 

 ───アナタのしもべはワタシのしもべ

 

 ────かがみうつしのふたりで落とす

 

 ───これはアナタ/ワタシの物語!

 

 

「これで……!」

「幕引きよ!狼さん!」

「「たぁぁぁ!!」」

 

 ヴォーパルが世界を引き裂く。白狼が造り出した、偽り/真の世界を、少女たちは否定する。

 

 瞬間、二つ目の楔が、世界へと撃ち込まれた。

 

 

//

 

『!!!!!!?!??!!!?』

 

『─────異常……イ……セ……』

『限界……維持………帰………不………可』

『コー……18……再起……不可………』

『……………………………………………………』

 

//

 

 

「世界が……!」

 元へと、すべてが戻る。回廊は崩れ、庭は再び更地へと。

 我々が干渉したロンドンの姿へと戻っていく。

 

「これが……世界が壊れていくっていうことかしら……」

「うむ、誠に見事な舞台装置でありましたな。───世界の終わるとき、羽もつ少女がその地に降りる……… 演目としては成立しませんな、あまりにもこの光景は神秘に満ちております。人では再現が難いでしょう 」

 

 崩壊する虚界に、天より舞い降りる白黒少女。

「───っと、大丈夫? どこか痛いところはない?」

「ええ、大丈夫よ。……ああ、ようやくゆっくり出来るかしら……」

「……ぐすっ」

「……?どうしたのありす?」

「うん……今更だけど、なんだか涙が出てくるの。 再会できた、のが、うれしくて……」

 小さな指先で、その涙を拭ってやる。

「そう、ね。でもこれからはずっと一緒よ。ずっと……一緒にいられるわ 」

 二人は、ただ安堵し、寄り添いあう。

 

 過去と未来、再会した少女たちの物語は、今から始まる。それが奇跡か必然か、誰も知るよしはない。

 何故なら、幸せとは、きっとそういうものだから。

 

//

 

「あー、やっと終わったー」

「緊張感のないヤツだな、こっちは何度死んだか、と思うほど窮地の連続だったぞ 」

「えー、だって、終わり良ければ全て良し!なんでしょ?」

 

 こいつポジティブなことしか知らないのか?

 

「そしてもう一回言ってやる。服を着ろ。俺たちと一緒に来る気ならそのままだと死の危険があるぞ 」

 カルデアは、危険人物しかいないからな。誇張などしていない。

 

「んー、ジャバ。ちょっと………ジャバ?」

「………なんだ、礼装か 」

 黒い巨人は、少しだけ間を開けて応える。

「うん! いつもので!」

「ああ……」

 

 ジャバウォックの身体が、糸のようにほぐれていき、瞬時に礼装の形態と変化していく。

「よっと。………これでどうよ!」

 やがて、その全てが礼装へと変貌した、

 ……無辜の怪物にも程がないか、コイツらは。

そしてだな………

 

「………なぜ執事服なんだ?」

 ハスは、どこぞの弓兵のような執事服を着ていた。

「誰かに仕える人はこういう服を着るものだってマスターに言われた! あとメガネがあると更に良いって…… あれ?ジャバ、メガネは?」

(……ジンが足らん)

「……え、ほんと? 確かにこっちじゃ全然漂ってないけど………」

 

 ジン………それがこいつらの燃料か。未来では豊富でも、こちらではまだまだ希少なものなのか?

 

「まあいい、今日はここらへんで御開きと行こうじゃないか、もういい時間だ」

陽は既に沈もうとしている。

 

 すると、今日一番のイレギュラーが別れの挨拶を。

「なに、やっと行くの? 」

「ああ、今日は貴重な経験だったろうエレナ・ブラヴァツキー。常人では体感出来んような催しが大量だったからな」

「ええ、只でさえ短い寿命が更に縮んだ気分だったわ。……でも良かった。たくさんの神秘や奇跡に出逢えたんだもの!」

「今回のことは心の隅に置いておけ。間違っても今書いてる本になど載せるなよ」

「そんなことしないわよ。 でもそうね、また会いに来てくれるかしら? 今度は普通にお茶でもしましょう?」

「貴様がくたばらんうちには来てやろうさ。アリス達もそう言うだろう」

 

 向き合う。そもそも会うはずは無かった運命。

 一期一会とはよく言ったものだ。

「それじゃあね、旅の方。また、いつか───」

 

 ああ、また会う日まで。

 

「マグ、帰還術式を起動しろ。土産物も追加でな」

 随分な土産だ。旅話だけでは足らんよ。

 

〔---了解(OK)術式起動、帰還(Operative procedure start , Return )

 

 ───そうだな、帰ったら天使の話でも書いてみるか…………

 

 

 

 




アリスの再会はどうしても書きたかった展開のひとつだったんですが、たいぶトンデモ展開になりました。
てことでロンドン編が終わりました……伏線を張りまくってたら終わった感じですけど。
ちなみに『幻想魂・二十一天』は、魔剣の名前です。
………そうです、「鋼の大地」と世界線接続完了です。
まだまだこちら側での話がメインですけどね。

次はようやく主人公、長かった………


オリ宝具について
「少女の為の物語」
"アリス・イン・ワンダーランド"
ランク EX /種別 対界宝具
レンジ 不明 /最大捕捉 不明
実際はだいぶインチキ効果なんですが、とりあえず本文中の描写から……
まあケーキ入力斬なわけですが。
二人の再会のお陰で、能力が全解放されたんです。
覚醒アリスです、言うなれば。

「拳は堅なり轟々響く」
”ギムレット・ギンブル”
ランク A /種別 対人宝具
レンジ 1~30 /最大捕捉 1人
ジャバウォックが腕を変化させて、様々な攻撃を行う、一連の流れ。本文中にやった技は、ドリルで相手を削る、みたいな感じです。
ギムレット→gimlet→ネジ切り
ギンブル→gimble→錐穿つ

「燻り狂うは好奇の純怪」
"キュリオシティ・フューミス"
ランク C /種別 対人宝具
レンジ 自身
バンダースナッチの存在そのもの。
ナーサリー・ライムと同じく、マスターによって姿を変貌させる。人の姿は、本来の姿を隠すためのがわに過ぎない。本来の姿は、ムカデっぽい蛇っぽい、実にクトゥルフな異形。
キュリオシティ→curiosity→好奇心
フューミス→frumious→燻り狂う

ジャバウォックは既にビジュアルがあるからいいけど、バンダースナッチは非常に苦しい。ってことで美少女にしてしまおうじゃないか、と成りました(なんでだ)
いやー好きなんです、人に憧れる化け物。
本家にもでないかな……こういうタイプの英霊…

あ、他のステータスについては後日です。
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