世界の始まるその日まで   作:スノウレッツ

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はい、一章最終話となります。
絆レベル5なら死んだマスターはこんな感じで迎えられる……かなぁ?
変わらないヤツ、変わったヤツ、変わっちゃったヤツと。
キャラの性格が丸くなる理屈をそれっぽく書いてみました。
あと最後詰めたのに10000字とかいってました、長いな………



第14話 [始まりは全てを終える・後]

 よっと、よっと。

 

 

 なーがい階段登ること、5分だか10分……

 

「ってどんだけ地下だよ!?」

 

 もうずいぶん歩いたよ!? いくら死体安置所でも地下に造りすぎだろうが!

 もっと仲間の側に置いといてやれよ!

 

「そうは言ってもですね……エレベーターが壊れているから階段使うしかないんです……」

「マシュはどうしてあんな直ぐに来れたの!?」

 

「あ、あの部屋の近くの部屋で待機してまして…… ロマンの食事をさげようと食堂から帰って来た時に、驚いた声が聞こえたので 」

 

 死体安置所の近くに部屋を造るな!

 そんな奥深くに閉じ込めるくらいなら近くに個室造るな!

 

 とりあえず、そのまま登り、暗めの通路をまた歩く。

 

「…………あぁむぅ……にゃ……… あ? ここは……って九波ちゃん!? どうして僕を背負ってるんだい!?」

 あ、起きたか。んじゃ、一人で歩いてもらおうか。

 死人におぶられるなんて貴重な体験だけどな?

 

「ロマン、ちょっと身体軽いよ。もっとちゃんとご飯食べな?」

「ええ…… 九波ちゃんに言われるとちょっと……」

 そういや私はどうなって………いや、死んでたんだから飯食うなんて出来ないけれども。

 

「ほーれ、後は自分で歩いてくれい」

「あ、うん……って何処に行こうとしてるんだい!? 」

「え? 食堂。 みんなに少しでも顔を合わせなきちゃ」

 

 ロマンは、ちょっと顔をしかめたが、やがて諦めるかのように、はぁーっと息を吐いた。

 

「ああ、分かった、分かったよ…… でも、くれぐれも無理をしないように。もう君の身体がどうなってるかさっぱりなんだから 」

「大丈夫だよロマン。さっきマシュに問題ありませんって---」

「わぁーー!わーー!」

 

 通路で叫ぶんじゃないよ、響いて怖いじゃないか。

 

「わっ!? どうしたんだいマシュ? そんな……」

「なんでも、なんでもありません! ほら、行きましょう、早く行かねば皆さん部屋に戻ってしまいます!」

走って行ってしまった。

 

 ………って先に行かないで! 私、道知らない!

 

「待てぇ! ほら、ロマン走るよ!」

 

「え、ええぇぇ……?」

 

 下ろそうとしたロマンをそのまま担いで走る。ずいぶん快適だな………?

 

 

 …………ああ、ロマンが軽いんじゃないわ。

 

 私が、おかしいんだ。

 

 あはは、はは…………

 

 

//

 

 

 

 だいぶ見たことある景色になってきた。

 

「もう下ろしていいよ、ここからは自分で行くから 」

「そう? それじゃあお言葉に甘えてっと」

 

 ロマンを下ろして、そこで別れる。

 

 二人が残された。

「……行こうか 」

「そうですね……」

 

 通路を二人で歩く。

 

 静寂を、二人の足音がゆっくりとゆく。

 

 誰にも会わない。 なんだか、ちょっと不安になってくる。いや、あんまり多く人がいるわけじゃあ無いけど、誰とも会わないなんて。

 

「……マシュ、ちょっといい?」

 たまらず、不安を言葉にしてしまう。

 

「なんでしょう?」

 

「実はもうとっくにみんな終わってるってわけじゃないよね。それとも私が見てるのは幻覚なのかな 」

 

「……そんなことは無いです。センパイは、生きて、ちゃんとここに居ますよ」

 

 うん……そうだと、信じたい。

 夢ならいい夢であってほしい。それこそ、みんなと、仲良く、世界と……

 

 

 ……向こうに食堂が見えた。

「あ、食堂に灯りついてるじゃん。誰か……エミヤだけでもいるかな?」

 

「そうですね、エミヤさんだけは遅くまで食堂に居ますから 」

 

 ちょっとだけ安心した。

 食堂は私の心の安寧を図ってくれる、重要な部屋だな。いやまったく。

 

 

 扉の、前に立つ。

 

 ………………。

 

 

 すぅーー、はぁーーー

 

 うん。私は、いつも通りだ。

 

 

 扉に、手をかける。そして、ゆっくりと。

 

「───たのーもー!」

 ははっ、やっぱこうやって入ってやろう。

 私らしい。実に。

 

「「「………………………!!!!! 」」」

 

 食堂には、そこそこの人数がいた。

 エミヤはいつも通りカウンターに。

 

 中央付近で、丸く並んでいるのが何人かいる。まるで円卓会議みたいだな。

 あ、ヘクトールがいるってことは、こいつらが鬼退治のキャストか?

 

 ヘクトール、アンデルセン、モードレッド、ゲオルギウス、ラーマ、カルナ、レオニダス、ダビデ、呪腕の。

 

 こんだけのメンツが集まってるってことは、その鬼ってのは相当の強者らしい。

 

 んで、みんな目を見開いて、私を見ている。

 言葉はかかってこない。なんだー、会わなすぎてみんな私の顔を忘れちゃったのかね。

 

 少しだけ、前に進んで、口を開いた。

 

「あーーー」

 あ、ヤバい。なに言おう? うーん……

 

 ……やっぱこれかな。

 

「……みんな、ただいま 」

 うん、久しぶりに会う家族……ってか仲間なら、これ、かな。

 

 

「「「……………」」」

 

 それでも、声はかかってこない。 みんな、阿呆みたいに、口開けて突っ立ってる。

 

 なんか、ちょっとだけ悲しくなった。

 でも泣きません、泣きませんよ私は。

 

 

「───マスター?」

 

 なんと、後ろから声をかけられた。

 振り向く、そこに居たのはエリザベート。

 あ……

 

「……ああ、私。私はマスターだよ。他の誰でもない、カルデアの赤須九波だ 」

 

 エリザは、ゆっくりと私に歩み寄る。

 

「あ、あああ…… マスター? なんで、なんで生きてるの? ……死んだんじゃなかったの!?

ぅああぁ……なんでよぉ!!うわぁぁああ……ぁぁぁん……!」

 

 抱きつかれて泣かれた。しかも逆ギレおまけ付きで。

 よりによって最初がアンタかエリザよ……

 

「泣かない泣かない。なに、そんなに寂しかった?」

「えぅ……寂しいとか……悲しいとか……えぐっ……そんな言葉じゃ片付けられないわよっ バカァ!!」

 

 すごい剣幕で泣かれてわめかれて。

 

「そっか…… ゴメンね。私が不甲斐ないばっかりに。いやー、まさか殺されることになるとは全く思ってなかった 」

「ひぐっ………アンタ………私たちの目の前で……真っ二つになって………ああああぁあ!!」

 

 ……っ!

 ヤバいな、妙にトラウマにさせちゃったかもしれない。

 

 こっちからも抱きしめてやり、諭す。

「ははは、大丈夫だよ。生きてるでしょ?私。それにエリザ、死体なんて見慣れてる……」

「………あなたの死体なんて……見たくなかったわ……ばか 」

 

 ………!

 

 ああ、確かに、人の死に方じゃあないよな。

 真っ二つでぐしゃぐしゃか。全く………私、なんで生きてんだろ。

 

 そして二人目が動く。

「ハハハ、死に別れては泣かれ、甦っては泣かれか!相変わらず災難が尽きないなマスター!いや、ゾンビマスターと言った方がいいか? 俺たちはサーヴァントであってアンデットじゃあないがな!」

 

「アンデルセン……変わんないね。アンタ、今、私の目には相当かっこよく映ってるよ」

 

 ああ、その変わらん立ち振舞い、感動すら覚えるね。

 

「なっ…… そういうオマエはだいぶ変わったように思えるが? 地獄で閻魔にでも諭されたか?」

 

 ほう、地獄に墜ちたのは確定かよ。

 

「残念、閻魔様には会えなかったよ。……っていうかなんで私が死んだって知ってるの?」

 

「つい先日までそこのお嬢様が泣きわめいてたからな、嫌でも察するだろうさ。恐らくここにいる全員は、貴様は既に死んだ、と思っていたに違いない!」

 

 おおう、言葉にされるとすごいインパクトだな。

 んじゃ私はさしずめ幽霊状態ってか? ああ、ゾンビって言われたか。

 

「マシュ、そうらしいよ?」

「す、すいません、私、ずっとあちらにいたので…… もっと早くに気づいていれば……」

「まあまあ、後悔はする必要ないよ。そんとき死んでたのは事実っぽいし。考えるのはこれからのことだけでいい。過去を思い返すのも悪くはないけどね 」

 

 ……そうだな、ここにいるやつらからだけでも聞いておこう。

 

「……みんな!ちょっと私の謝罪と言い訳と質問だ。聴いてくれ! いいかい?」

 

 言葉は発せられない、みんなは此方をただ見つめてくれる。

 

 ……うん、無言は肯定と取らせて頂く!

 

 

「長い間……つっても一ヶ月も経ってないけど、留守にしてごめんなさい! ちょっと死んでました!仕方ないよね、死んでたら流石に顔出せないよね! でもこの通り、私生きてるから!理屈なんざ知ったこっちゃないけど、私はまだ生きてる、だからまた君たちと一緒に戦わせてほしい!……どうかな?答えを聞かせてくれ!」

 

 この問いは、絶対に聞かねばならない。

 私が認めてもらえなくては、ともに戦場を駆けることも、日常を共に過ごすことも許されない。

 私は彼らとの時間の共有を放棄したのだ。

 再び、同じ舞台に上がるには………彼らに許してもらう他ない、と思っていた。

 これも私の勝手に過ぎないことではあるが。

 

 始めに声をあげたのは、叛逆の騎士。

「そんなもん口に出すまでもねぇよ!……けどマスターは聞き分けが良くねぇから、あえて言ってやる。いいか?オレたちサーヴァントはマスターありきの存在なんだよ! だから、アンタが嫌だって駄々こねても無理やり引っ張って戦場に連れ出してやる!ああ……だから……なんだ……

このオッサンの指揮よりマスターの方がいい!そんだけ、そんだけだ!」

 

 ヘクトールは肩をわざとらしく落として嘆く。

「へっ……オジサン流れるようにディスられちゃったよ。ってことで本来の持ち主に指揮権戻していいか?……もう疲れたねぇ、いやホント 」

 

「アンタの作戦は回りくどいしセコいし細かすぎてやってられねえよ! ああ、その点マスターなら多少強引な手を選んでくれるからな。

その方がオレには性にあってるぜ? 」

 

「ふぅむ!ならば、再び筋肉の出番ですかな、マスター!ええ、あれほどの強敵を相手どる

など、血湧き肉踊ること間違いありませんぞ! 」

「そうですね、私たちが盾となり、必ずや皆さんを御守りしましょう。マスターは皆を導く、それだけに専念すれば宜しい 」

 レオニダスとゲオルギウスは、再びの始まりに気合いを入れ直す。

 

「ああ、ヘクトールの作戦は合理的ではあったが、若干とは言わず卑劣な手を使うはめになった。王としては看過できなかったが、ようやくマスターが帰って来たからな。これで全力で戦えるというものだ」

 

「ふむ……お前はああいう搦め手も十全に機能するということは知っておいて良かったと思うのだがな。ああ、マスターが居ることが一番だと言う意見には賛同するが 」

 

「私は久しぶりに本来の仕事をやらせて頂きましたので。……だが、また護衛役に回るのもやぶさかでありません、主殿。 さあ、今一度の御命令をば 」

 

 ラーマも、ヘクトールの作戦が気に入ってなかったらしい。

 カルナとハサンは変わらず、任務に忠実のようだ。

 

「いやー、まさか生き還るだなんて! 全く、何処かの誰かに教えたいほど自然に甦ったものだね! 明日にでも歓迎会をするかい? 多少は費用を出しても、僕は構わないね!」

 

 おう、ナチュラルに息子ディスるの止めろや、親父さん。あとその言い回しだと自分が金出すわけじゃない、ともとれるぜ。

 

「………まあ、死んだ人間が甦ったところでそんなに驚くほどのことでもあるまい。なぁよ、だが、大変ショックを受けたのもいるにはいるらしい。きっちり心のケアをしてやれよ 」

 

 アンデルセンはわりと優しいアドバイスをくれた。現実は優しく無いけどね、ねぇエリザ?

 

「な、なによ……」

「んー、ねえ、エリザは私のこと好き?」

「ばっ……な、なに言ってるの!?たかがADの分際で!」

 ああ、いつもエリザに戻ったな。泣き顔はアンタには合わないよ。

 

「そっか、残念。」

 笑って悔やむ。私はエリザのこと好きだけどな。

「あ…… そう……?」

 うつむいてしまった。まだくっついたままだけど。

 

「マスター、ちょっといいか」

「ん、どしたモード?」

 さっきまで、ヘクトールに噛み付いてた時から、顔が真面目になる。

 ああ、この顔見るのも久しぶりかもな?

 

「ああ、その……なんだろうな。 戻って来てくれて、嬉しいよ。死んだって噂がたって、まさかって、そう思ったけど。結局アンタは今まで顔を出さなかった。 でも、どうしても、納得出来なくて……… 」

 

 ゆっくり、言葉を紡いでくれる。

 私を、裁くための言葉を。

 

「だから………また会えて、嬉しい。少なくとも、オレはそう思ってる。ああ、だからって訳でもないんだけど、ソイツのこと、許してやってほしいんだ 」

「………エリザのこと?」

 ビクッと、少しだけ反応する。

 

「……サーヴァントは、マスターを守る為にいる。ソイツ……エリザは、アンタが死んだのは自分のせいだって、嘆いてた 」

 

 どうやら特に深いひずみを受けさせてしまったらしい。

 

「──そう、そうか。はは、いいんだよエリザ。あれは私の不手際。私がわる……」

「そんなこと言わないで! あの時動けたのは私だけだった!私は貴女を見殺しにしたの! それなのに貴女に許されてしまったら私は誰に裁きを受ければいいの!?」

 

 ああ、また……

 やはり私はなだめるのが苦手だな……

 

「落ちついてエリザ、いいんだ。私は生きてるんだから 」

「お願い……お願いだから罰をちょうだい……

 自分の中の罪に潰されてしまいそうなの……」

 

 ………私は、エリザベートという少女のことを殆ど知らない。この娘の原型となった、エリザベート・バートリーについては聞き齧ったことしかわからない。けれど、本来の彼女は、殺人を恒常的に楽しんでいた異常者だ、とそういう結論を出した。

 

 ……けれど、目の前で罰をせがむ少女に、その一片をこれまで見ることは無かった。

 

 私の目には、彼女はただの、少し高飛車なだけの普通の……ああ、そもそもが間違っているんだ、この娘は。

 

 私に出会う前、何処かで変わってしまったんだ。

 

 自らが背負った罪の重さに気づいてしまったんだ。

 

 ああ──だったら、私が更に荷を積ませるのは絶対に間違っている。

 

 

「──エリザ。ちょっと目をつむって?」

「……ふぁ?……うん……」

 

 こんなに精神にヒビが入って……

 

 ……今からエリザを襲えば、それこそ心身ともに私のものになるだろう。

 でも、それじゃあ駄目なんだ。

 

 エリザベートという少女は、何かの間違いで、運命が狂ってしまったんだ。

 それを直せるのは、他人では出来ない。

 自分で、全てを終わらせなくては。

 なんて、酷な……

 

 

 私は、エリザの額に指を当て……

「ほらっ」

 軽く凸ピンしてやった。

「みゃっ!?」

 ……目を白黒させてこちらを見つめる。

 

「はい、これが罰。今ので、私に関してはチャラね 」

「……え、ああ………え?」

「なに?もっと痛いことされたいの?」

 エリザベートは虚ろな目で、しかし何か……絶望に堕ちきってはいない。

 

「……ぁ………うん………」

 首を傾けるような……いや、縦に振った。

「そうか、それじゃまた後に。少しずつでいいよ、償いなんてね」

 

 罰なんか好きなだけくれてやる。

 他人にだって、手伝うことくらい出来る筈だ。

 別に、他人から更に上の立場に立つことも私はやぶさかではないけど。

 

「やっぱアンタは優しいな。 ああ、戦場とは全然違うよ 」

「モードが他人を気遣ったことに私は泣きそうだよ」

「な、なんだよ……仲間を気遣っちゃ悪いかよ……」

照れ隠しか、視線を外された。

 

 ……ああ、どうやら分かってなかったのは私の方だったみたい。そうだな、モードレッドはこういうヤツなんだろう。ちゃんと、覚えておかなくちゃ。

 

「そうだ、ちちう……リリィも結構落ち込んじゃってな…… 明日でもいいから、きちんと向き合ってやってほしい 」

 

 こやつ、リリィを父上と言い違えそうになったな? あのリリィはまだアンタの父上じゃねぇよ。

 

「ああ、うん。分かった。……リリィだけじゃないよ、明日の朝は皆に会わなくちゃね 」

 

「みんな、アンタを待ってる。まあ……いろいろ言われると思うけど…… 頑張れ 」

 

 なんか励まされた。え?なぜ?

 

 ……まあ明日の楽しみにしておこう。

 

 ふと、また、モードレッドは私を見つめる。

 その整った顔は、自然ながら……ああ、目に覚悟が宿っているんだ。まさしく……

 

「………オレは騎士だよ。騎士は主に付き従うもんだ。 オレの剣、この身、この命、全部アンタに捧げる。だから……」

 

───騎士モードレッドは、王を目指した。

 

───しかし、どうやら、彼もまた。

 

「だから……共に最後まで歩ませてくれ、マスター 」

 

 以前に何処かで変わったのか。

 私が知らぬ間に変えてしまったのか。

 状況が仕方なく変えたのか。

 ああ、彼の父が変えたのかもしれない。

 

 

 

 …………そうか、英霊とは、変化するものなのだ。

 進化でも、適応でもなく。

 様々な触れ合いで、変化していく。

 

 そんなのは……ああ、まさしく人じゃあないか。

 

 当たり前のことだ。

 けど、近くにいすぎて気づかなかった。

 英雄と言っても、彼らは人間なのだ。友人を、仲間を、気遣わない訳がない。

 

 そして、その中で、自分をつくり続けていくものなんだ。

 

「ああ、あなたの力、借りさせてもらう。

……もう一度聴くよ。みんなは、どうだい? 私と一緒に戦ってくれる?」

 

 

 ここで始めに声をあげたのは、忠義の暗殺者。

「無論。私はマスターに従いましょう。サーヴァントとは、元来そういうものですからな」

 

「そうだな、死からも生還してのけたのだ。その気概に応えてやらなくては!マスター、余も新たな力を手に入れた。存分に使うがいい! 」

 

「へいへい、マスターが貸せっていうならいくらでも力なんぞ貸しますよ? 生憎、オジサン意外と義に厚いんでね……とか言ってな 」

 

「はっ、貴様以上の軍将なぞ居てたまるか!

あ?お前? マスターなどただの飾りに過ぎんじゃないか、何を勘違いしている? ……ああ、それは今までの話だ!これから?そんなもの自分で示していけ! 俺を退屈させるなよ?」

 

「アンデルセン君は辛辣だなぁ。ああ、マスターを火葬してあげようかと神殿の炎を持ってきたのに、結局使わずじまいだったのを思い出したよ! 今さら返すのも面倒だ、これからは君の敵を焼き払うのにでも使うとしよう。いいかい?」

 

「貴女が甦ったのも、きっと神の御加護でしょう。ならば我らのゆく道も、光に満ちていると、そう思われますよ 」

 

「神の加護……か。そうだな、お前はそれだけの奇跡をその身に受けたのだろう。俺にはこの雷槍くらいしかないが、君を守るくらいならこれで十分ではないか? ああ、願うならば他の武器を持ってこよう。俺の全てを使う戦いにふさわしいだろうな、君の戦いは 」

 

「ふっ、私はかつて国を守る為に散った英霊では有りますが…… ああ!やはり、なにかを守る戦いは戦士にとって至上の喜びで有ります! 貴女は、どうでありましょう?マシュ・キリエライト!」

 

「わ、私ですか? 私は……センパイに助けられて、今ここにいます。だったら、私もマスターを守らないといけません、よね? まだまだ力不足は承知の上ですが、マスターが私を必要としてくれるなら、全力で応えさせてもらいます! 」

 

 

 おう、所々物騒な忠義の申告ありがとう。

 ……ああ、私も結構信頼されてんだな!あんまり聞いてこなかったことだけど……

 あれ? はは……私泣いてる?

 

「……どうして泣いてるの?マスター 」

「……人は喜びでも涙を流すらしいよ? エリザはあるかい、喜びで頬を濡らしたことは? 」

 

「あ…………」

「そういう涙なら、エリザにも似合うかもね?」

 

 うん、笑顔で泣いてるエリザか……

 コンサートだけは阻止するね、私は。

 

 

「………ありがとう、みんな! それじゃ早速なんだけど、鬼退治してるんでしょ?私も混ぜてよ!」

 

そう言うと、横から腕が伸びてきた。

「マスター、水だ。話しきりでは口が乾くだろう」

 エミヤから水を差し出される。

 

「おお、ありがとう………ってエミヤ、待っててくれてたの?」

「待つのは弓兵の専売特許だからな。……ああ、明日の夜は釜飯にするかね?」

 

 覚えててくれたのか?三週間前だぞ?

 

「………ああ、ほんとにありがたいね。……ごくっ」

 

 ……………っぷっはぁ!

 

「うまい、うまいなぁ…… はは、水だけでこんなにうまいよ 」

 

 身体の隅々まで染み渡るね。三週間ぶりの水だよ、普通は絶対に飲めないものだ!

 

 

 …………ちょっとだけ、部屋の空気が重くなった。

 ん?なんだ?

 あれ? …………なんか忘れてるような……?

 

「……マスター」

 

 その申告は非常に重く始まった。

 

「なに?アンデルセン 」

 

 目を合わせてくれない。え?

 

「ああ、そのだな…… 我々ではどうしようもなかったというのは非常に心苦しいものなのだが……」

 

 アンデルセンが言い澱んでる、だと……?

 

「これだけはマスターに頼まざるを得ないというかだな……」

 

 ……ごくり。

 

「…………まあ、清姫に会ってやってくれ 」

 

 バッサリ、きっかり。

 

「あ…………ああああああああ!?」

 

「いいか?…………死ぬなよ 」

 

 死人に更に死ねというか? ほっほうなかなかの狂言だな? いやいやそう来たか……

 

「……ふぃーーー」

天を仰ぐ。天井の照明が私を照らす。

 

 オーケー、いいでしょう。一回死んだんだ、あと何回死のうが知ったこっちゃない!

 

「…………分かった、行ってくる 」

 

「んじゃ作戦は明日マスターがあの鬼に会ってから決めますかねぇ、明日が有ればねぇ」

「ちょっとヘクトールてめぇ黙ってろ!」

 

 大丈夫だよモードレッド。明日は来るさ、必ずね。

 

「それじゃね、エリザ。また明日 」

「……おやすみなさい……?」

 おう、どの意味だそれ。

 

「マシュ、明日の朝は起こしにきてくれると嬉しいな 」

「は、はい! なるべく早くに伺います!」

 まあゆっくり寝るんですけどね。

 寝たいんですけどね。

 

 そうやって、私は、食堂を後にした。

 

 ………明日が私を待ってるんだよぉ!あの狼野郎絶対に許さねぇ私を殺しやがってぇぇぇぇ!!!

 

 吼えた。無論、心の中で。

 

//

 

 ………とりあえず今日は終わった。現在深夜の……まあいい。明日はすぐそこだ。

 

 最近サボり気味だった日記を書くことにしよう。いや、流石に今日は書かねばならんことが多すぎる。

 前回からずいぶん日付がとんで……あ、当たり前だね。

 ああ、今日は清姫に始まって清姫に終わる一日だった。

 マリーが朝食を作ってくれてな。美味しかったよ、こう、陳腐な表現だが、愛が籠っていた。

 マシュのお見舞いにも行った。もう大丈夫そうだったけど、一応念を押しておいた………あれがブーメランだなんて分からんでしょう、普通は。

 昼までは、牛若の相手をしてやったんだった。

 一ノ谷の再現です!とか言ってたけど、何故あの崖を下から登ろうとした牛若。まあ逆落としとかやれって言われても出来ないけれども。

 

 結局そのまま昼になり、食堂に流れ着き。

 ヘクトールになじられつつ荊軻のつくった飯を食い。

 エリザと清姫を無理やりアメリカまで連れていき。

 

 あれ、間違いだったんかな……

 ……いやいや、後悔はしない。今があるなら関係無いね。これから償えばいいんだ。

 

 んで………アレが出てきた。白い狼。

 二人は頑張ってくれた、先に私が倒れた。

 そんだけのことだ。でも許さねえ、あの狼、次会ったらズタズタにしてやる………

 

 気い失って、起きたら死体安置所だ。

 いやー、初めての経験だった。ここに来てから色んな初めてがあったけれども、かなり上位にくる衝撃だね。

 しかも死んでたんだって。そんときは全然実感無かった、あとで否が応にも身体に教えられるはめになったわけだが。

 

 どうやら、私は死ななくなったらしい。

 こいつはいいや、これでみんなと一緒に最後まで戦えるよ。

 そんくらいの認識だ、不死とか良くわからん。

 今は、それでいいだろう。

 

 それで、みんなに……と言っても一部だけだったけど会った。

 最初は悲しかったね、みんな反応くれないんだもん。

 その前にエリザに顔を合わせた。泣いて、私に嘆いてくれた。ああ、なんか愛しく感じたね。

 私が死んで、悲しむ人がいるのだ。今後は無為に死ねなくなった。

 

 モードレッドは、私なんかに忠義を誓ってくれた。

 ハサンは、もう一度私の頼みを聞いてくれるって。

 ラーマは、どうやら新武器を手に入れたらしい。あの矢の攻撃なのかな?

 ヘクトールは、変わらずのらりくらりと優秀だ。私の代わりを十分にやってくれたみたい。

 アンデルセンは、ちょっとだけ丸くなってた。なんか有ったんだろうな、後で聞かなくちゃ。

 ダビデは、相変わらずのマイペース。でも、心配はしてくれていたみたいだ。

 ゲオルギウスは、私に神の加護がついてるって。うん、彼が言うなら、そうなのかもしれないな。

 カルナは、なんか他の武器も持ってくるとか。今より強くなってどうすんだアンタは。

 レオニダスは、私を守ってくれるって。ああ、かのスパルタ王がバックについてるとは、なんと頼もしい。

 マシュも、なんかちょっと頼もしくなってたような……? 私の身、預けても大丈夫そうだね。

 

 ………ああ、んで。

 清姫のとこに行った。

 いや、正確には私の部屋に居たんだが。

 どうなったか、はちょっとここには書ききれんな。

 簡潔に言えば、許してもらえた。

 5、6回焼き殺されたけど。

 …………うん、内臓を焼かれる感覚を知ったよ。

 しかも私だけ燃えるんだ、お陰でまた上半身真っ裸だよ。

 清姫?今、私のベットで寝てる。

 

 ああ、明日の朝はどうなるだろ?

 うーーん、眠いや。寝よう。

 

 今日は………ああ、そうだな。

 愉快だった。笑って泣いて、泣かれて死んで。

 うん、いい日だった、新しい敵も分かったしな……!!

 

 ……それで。どこで寝よう………?

 

            

             ───赤須 九波

 

 




彼女にとっての一日が終わり、彼らにとっての戦いの再開が始まりました。

エリザベートをだいぶ精神不安定にしてしまいましたが、CCCをやってた人はどう思うでしょうか。無間獄を通過した彼女はこんなことにはならないでしょうか?
永遠に救われないと言われてしまった、彼女を救ってあげよう、とマスターは奔走するのですが……

まあ、舞台がやっと整いました。
ここからまた日常に舞い戻るとしましょう。
次回はキャラマテリアル、やたら文章量多くて指つりそうです。


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