fateはキャラのバックグラウンド広すぎて把握するのに時間かかる、という単純なことにやっと気づきました。うーむ円卓は特に難しい……
今回はモードレッドとセイバーオルタの物語。
この組み合わせ、なんと前例がコハエースにしかないという狂気のカップリングであります、どうすればいいかわからなくなった結果が今回からの2話です。
分割したので若干短く仕上がりました。
それでは、暫しのお時間をば。
わいわいがやがやと。
私が戻ってきてからというもの、朝の食堂は比較的賑やかになった。
理由は……よく分からない。みんなよく話し掛けてくれるような気がするけど。
───ふぅ。
朝食が終わり、食後の一杯を飲みつつ椅子にもたれる。相変わらずエミヤの料理はウマイし、しかもキャットも料理が得意ときた。
あとは、供給さえ安定すればいいんだが……
「─────。」
ああ、エリザも少しは料理が出来るようになった。始めはヒドイもんだったが、エリザによればアレを完食した猛者がいるとか。
是非とも会ってみたいね、私みたいな人外なのかな?
「─────!」
あのボロネーゼっぽい地獄は凄かった……
頭ごと吹っ飛ぶかと思ったね。いやすぐ再生するけれども。
エリザの前じゃ死ねない、そう約束したから。もう、泣かせたくない。
ああ、んで。
「───マスター!聞いてんのかおい!」
「………なに? モード。私の優雅な食後のコーヒーを邪魔するかね?良いだろうさ、受けてたってやろうじゃない」
テーブルの向かい、私に呼び掛けていたのはモードレッド。円卓の騎士の一人。しかし”叛逆の騎士”と呼ばれ、アーサー王に反旗を翻した者でもあった。
あとアルトリアの息子らしい。血筋は争えないのはいつも感じている。食の好みとか。
ま、うちにはオルタとリリィしかいないけど。まあ、それが一つ、モードが変わった要因かもしれないが。
「優雅ってなぁ…… それミルク入りじゃねえか!ただのカフェオレだ、そいつは! 」
「バレたか!………って何、なんか用が有るんでしょ?」
カフェオレ最高ですよ。酸味と苦味がまろやかになるからね。甘ったるいのは苦手だが、これくらいなら実に具合がいい。
ぐいっと最後まで飲み干し、モードレッドの話を聞いてやる。
向かいのモードは少しだけうつむき。
「いや……あのさ……」
うん、多分この先は予想できる。
「最近、父上が冷たいんだ………」
やっぱり。ここ三日はモードの口からアルトリアのことしか聞かない。そして”父上”は大抵オルタのことだ。リリィはちゃんとリリィって呼んでる。
「それいつもじゃない?」
「そ、そんなことはないぜ!? だってオレはクラレントに認められたんだ! 父上も喜んでくれたし!でも………」
そんな感じで、悲喜こもごもを一通り示してくれる。
「…………少しは距離を置けばいいんじゃない?オルタはわりと孤独好きだし。ってかリリィに甘えればいいじゃない」
「オレがそんなに大人しくやってられるかってんだ! ああ、でも……もしかしたら鬱陶しく思われてんのかな………黒くなった父上に責められるの……いいな………えへへ……」
おうダメだ駄目だ、教育行き届いてねえよ親御さん。息子さん妙な方向に走りそうだよ!
全くいつからこんな感じに………ああ、やっぱりアレか。
ふむ、そうだな……
まずは、彼女がカルデアに来た時のことを思い返してみよう。
あれは半年ほど前だったかな……
//
その日、私は召喚室にいた。
召喚室といっても、別に大迎なものは無い。
『フェイト』に繋がっている召喚陣が床に印されているくらいの、マンションの一室のような小部屋である。
サーヴァント召喚には、聖晶石という金平糖のような魔力塊を用いるのだが、これがまたすこぶる不安定だ。大抵、召喚の余波に耐えきれず瓦解する。
つまり割れる、そうなるともうそれは使い物にはならない。
たまに呼符という超高純度な、英霊との架け橋のようなものが出来るのだが、精製に成功するのは非常に稀。
聖晶石の精製は比較的楽だが、呼符の精製にはやたらと運が絡んでくる。ただ、呼符はほぼ確実に霊基を呼び寄せる。
だが、まあ、しかし。
その日の私は普通に聖晶石を持ち込んでいた。ダヴィンチちゃんからの餞別らしいが、何か妙なチャームがかかってる。
「───マスター? ここに居たか。なんだ、召喚をするのか?」
部屋を覗いたのは黒いドレスを纏うアルトリア。騎士王と謳われた高貴な人物らしいが、何故か反転しており、真っ黒だ。性格も……という訳でなく、わりと理知的で穏やか。戦闘では一切の容赦がないが。あと大食いだな、リリィはそうでもないんだけど。
「ああ、オルタ。そうだ、ちょっと私の後ろに立っててよ」
「む? ふむ……マスターの命ならば 」
オルタを私の後ろに立たせた。
……縁召喚、というものがあるらしい。ここカルデアに通常の聖杯戦争のセオリーが通じるかは知らんが、検証に値する案件だろう。王そのものが
私は召喚陣の前に立ち、手持ちの触媒を投げ入れる。この時、綺麗に散らばると非常に見た目がよろしい。あと、陣全体に魔力を回す、という理屈もある。
また、召喚の為の詠唱も、また長ったらしいのがあるのだが、私は暗唱出来るようになるまでだいぶかかった。それでもよく言ってればいつかは覚えるというものだ。
すぅ、と息を吸い、吐く。よし。
真っ直ぐ前に右手をかざす。令呪に魔力を流しつつ、陣へとリンクを繋げる。
さあ───
─────素に星と水。 礎に無と探究の
祖には我が深縁たる操士アニムスフィア。
降り立つ風には壁を。 十二の刻は閉じきらず、王冠より落ち、天廊へ至る三叉路にて廻り逢え。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされぬ淵より引き揚げる。
─────
告げる────
─────告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
我が星見の廟の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ───!
──────光る、眩く。座と通常領域の間に落ちた英霊を引きずり出す。
ここまではいつも、これからが重要な行程。
星の光が、陣へと融ける。そして───
「おぉっ! なんだ?」
「ほぅ……この気配……」
赤く、赤く光る環が三つ、陣の上に発生し、そこに英霊が虚無より転写されてくる。
赤いわっかなんて初めて見たな……これも英霊の付き添いが発生させる事象か?
やがて。
白き鎧、白き兜。それに赤の意匠の入る、如何にもな騎士が、召喚された。
「──────セイバー、モードレッド推参だ! 父上はいるか……って父上!?」
兜に声が遮られてはいるが、その声は少女のものだった。ああ、この子はロンドンの……
オルタが前に出る。
「ああ、此処にいるが? ……実に久しいな、モードレッド卿よ」
「な、なんで黒く…… いや! 都合がいい! 丸腰でオレの前に立つとは無用心極まりねぇな……アーサー・ペンドラゴン! 覚悟ッ!!」
モードレッドは剣を振りかざし、オルタへと斬りかかる。
対し、オルタは───
「なっ…………!?」
「………ふっ、その程度か? まあ仕方の無いことではあるがな」
オルタは、その剣を素手で受け止めた。
その綺麗な白い手は、剣を撫でるように突き返し。
「…………私にかかってくるのなら、せめてフロルの輝きを取り戻してからにしろ。……いや、挑むというのなら何時でも受けてたってやる……その度に己の力の無さを嘆くがいいだろう 」
そう言うと、踵を返して、
───その顔には、笑みが浮かんでいたような、そんな風に私には見えたのだが。
そのまま静かに、部屋を出ていった。
すると、入れ違いのようにしてもう一人。
「マスター? 今オルタさんがとても上機嫌に歩いて行きましたが……… あ、その人……新しい仲間の方ですか?」
「そうだよリリィ。そうだな……挨拶がいるかな? こちらはモードレッド。円卓の騎士だ 」
「わ、若い父上………?」
さっきから色々くらってるモードレッドは困惑気味だが、気にせずリリィは追い討ちをかける。
「へぇ、そうなんですか! 私はアルトリア……いえ、今はリリィと呼んでください!未だ修行中の身ですが……これからよろしくお願いしますね!モードレッドさん!」
あと、あんたの息子らしいよ。
リリィはそんなことは露知らず、天真爛漫に笑顔で迎える。
恐らく記憶は存在すると思うのだが、少なくとも彼女にとっては”初対面”であろう。
「………………天使だ」
「へ?」
きょとんと、リリィが首をかしげそうになると……
「ああ!?いやいや何でもねぇ! 何でもないったら!」
甲冑のせいで慌てふためいているのかよくわからん、それにステータスも読みづらいな?
「まあここはそう言うことにしておこう……ってリリィ、何か用だった?」
「えと、夕食の支度が出来ましたので、お呼びに参りました! 今日は私も手伝ったんですよ?」
「おお、それは良いね……ってオルタほっといたら全部食べられちゃうよ! 今すぐ追っかけろ!」
「ああ、そうでした! それでは失礼しますね!」
リリィもタッタと小走りでオルタを止めに部屋から飛び出していった。
「……ってことで、もう夕食の時間らしい。モードレッドも来るかい?」
モードレッドは、こちらを向いた……のか。
「………マスター、ここは天国か何かか?」
「んなわけないでしょ、どっちかというと地獄の一丁目だね」
「……………ああ、そいつぁはいいや。退屈しなさそうだぜ……」
そう呟くと、甲冑が消えていき───
「あー、なんとまあ涼しそうな格好だね」
ヘソだしのチューブトップ姿……ってこれ多分
ちょいと露出が多い気がする。
「動きやすいのが一番だからな。あと、なんだか力が入らない気がするんだが? いくら父上とはいえクラレントをそのまま受け止められるっておかしいだろ」
カルデアに召喚されたばかりの英霊は言うなれば膨らんでいない風船だ。ヘリウムなりなんなりを入れなくては空に上がらない。
「それは仕方ないことなんだ、ここでは。 カルデアだと霊基の補充は後付けだから 」
「ならちゃっちゃと充填してくれ! 早く父上を追い越さなくちゃいけねえんだからよ!」
「そんなに焦らんでもオルタは逃げはしないよ」
「当たり前だろ父上なんだから!」
うーむ、なかなか元気なのが入ってきたな……
//
とりあえずこんな感じだったような覚えがある。
ああ、サーヴァントの成長ってのは結構面倒な仕様でな……
まあいい、今はモードレッドについてもう少し語ろう。
さすがは、円卓の騎士ということか、それともアーサーの血を受け継ぐ者ということか。
モードレッドはめきめきとその実力を現していった、今ではオルタの隣に立ち、共にその聖剣を振るっている。
……そう、聖剣をだ。
ならば、それについてを語らねばなるまい。
モードレッドが覚醒した、のか。
クラレントが本来の姿に戻った、のか。
まあどちらかは未だによくわからないけれど。
//
モードレッドはみるみるうちにその頭角を現していった。
また、何かある度にオルタに勝負を仕掛けて、その度に土をつけられていた。
───四戦目までは、オルタは得物を持ちすらしなかった。
九戦目になると、オルタも甲冑を身につけ、それなりの時間、戦闘が続いた。しかしオルタは手を抜いているような気がしないでもなかった。
十六戦目、モードレッドは甲冑を外し、紅き装束で速さを選んだ。この辺りからオルタは宝具である極光の聖剣を使い始める。
二十戦目が過ぎたころには、モードレッドとオルタの関係も若干変わってきており……
「っ………ぐぅ………父上、もう……もう一度だ………!」
剣を支えに膝を突き、肩で息をするほど消耗しているモードレッドに対して、オルタは平然と幕引きの言葉をかける。
「そんな状態では余りにも無様だ…… ああ、今日はもう遅い。またの機会にしておけ」
その無尽蔵の体力は、竜の心臓をフル稼働させるアルトリアと、本質は同じでもデッドコピーに過ぎないモードレッドとの数少ない差異である。
「そ、それじゃあ明日!」
「悪いが明日は
モードレッドに歩み寄り、休息を促す。
オルタは、とある時期を越えて少しだけ物腰穏やかになった。その時期というのは……まあ聖夜なわけだが…… この辺りの話はまた今度にしよう。
霊基の並列同化現象(仮)などという厄介な事象は今は放っておく。
「…………それじゃあその次は……?」
まるで…………いや、皆まで言うまい。まさしく子供のようにすがる。
結局オルタは、
「………ああ、解った解った! いいだろう、二日後にまた、な」
仕方ないな、と折れた。
「へへへ……やった!」
本来は、恐らくあり得ないやり取りだろうか、オルタはモードレッドの手を取り、立ち上がらせる。
「私は湯浴みに行くが、貴様はどうする 」
「オレも!オレも一緒に行く!」
何となくオルタは、幾度も諦めず向かってくるこの騎士を無下には出来ずにいて、いつの間にか少しずつ自分の在り方を変えていった。
しかし、彼女の心はもはや本質とは切り離され…… 原点から派生しきった別人と言っても過言ではない。それを理解していたアルトリアは生前とは違った生き方をしようと思い立ち。
そんなところに以前に殺した相手がやって来たのだ、ならば今度は目の前の彼女を自分の好きなように染め上げてやろう、とそんな思考に走っていた。
モードレッドを相手にそんな考えに至ったのは、やはりオルタはアルトリアとは違い、表に出ることの無かった側面であったことが要因であるのかもしれないが、これもまた一つのif。
相変わらず若干いびつな関係を結んだ二人であったが、直にオルタは最後の手を打つことになった────
//
場所変わって聖杯風呂。
もうずいぶん遅かったにも関わらず、夜更かしに風呂に入っている物好きがいた。
「おおー、今日も研鑽を遅くまでやっとった様じゃなぁ」
「うぅー………あぅ!」
湯船に浸かっていたのは信長とフラン。フランは信長の腕に収まっており……
え?感電? このお湯は魔力で練られているので感電も漏電もしないのです、まさにご都合。
「てめぇノブナガ! フランこんな遅くまで起こさせてんじゃねぇよ!」
「だいじょーぶじゃ、なーフラン?」
「うー……」
よくよく見れば、フランの顔は真っ赤になっていた。
「…………おい、フランに何したよ」
「うむ? 少々酒に付き合わせたのじゃが…… これがなかなか良い飲みっぷりでな! わしもついつい酌が進んでな!」
信長はまだましだが、フランは完全におちている。
「風呂で酒を飲むんじゃねえ、フランにも飲ませんじゃねぇ! さっさと上がって寝ろ飲兵衛!」
「なはは……そうかぁ? それでは先に上がるとするか…………ほれフラン、ゆくぞ」
「ぁう……あぅ……」
信長はそのまま自分より一回り大きいフランを抱えて風呂から上がっていった。
「あいつ……意外と力あるんだな……」
「魔王を名乗るだけのことは有るだろう、如何に華奢でも英傑であったことは間違いない英霊であるからな 」
オルタが認めている英霊はあまり多いわけではないが、信長は数少ないそれの一騎。
…………何処かで顔を合わせていたことがあったのか、わりと直ぐに打ち解けた二人であった。
というか織田信長という英霊は、そもそも他の英霊と根本的に異なった存在である、と言われても差し支えないほどなんでもありなサーヴァントなのだが……
とりあえず、二人は共に聖湯へと身を委ねる。
湯は傷に沁みるも、同時に心にも沁みていく。
「いつつ…………なぁ父上、今日のオレはどうだった?」
「言うまでもない、傷を受けすぎだ。力に対して中途半端な力で立ち向かうなと何度も言っているだろう」
言葉は堅いが、口調は優しく諭すように、モードレッドに批評を与える。
「うう……まだまだ父上には敵わないってことか………」
(…………………もう、そろそろいいか)
「────── 一週間だ」
オルタは通告する。
「え?」
「一週間の期限をやる。それで私を倒せないようなら、私に殺されろモードレッド」
「……な、何いってるんだ父上? そんなこと今まで一回も……」
オルタはモードレッドを、その金色の瞳で見つめる。
「私は短気だからな、これ以上貴様の勝手に付き合うなぞ御免だ。私に勝てないようでは本来の私に勝つことなど出来はしない。その程度の力しか出せない者など餌として喰ってやろう」
冗談じゃない、そんなことされたらカルデアの戦力がいつの間にか1/9くらいにまで激減してしまう。
しかしなんてことはない、それはモードレッド一人に向けられた言葉である。
オルタはどちらにせよ極端だった。天秤の片方に命を賭けさせるという暴挙など日常茶飯事のように行われていた。だが、まあしかし。
もう片方には、ちゃんと愛が乗っていた……かもしれない、それを証明出来るのは乗せられた命の持ち主のみ。つまり…………
「……じゃあ、オレが勝ったらどうなるんだ?」
「たわけ、勝った後のことなど考えるな。そんな余裕が貴様にあるかモードレッド。
……いいか? あと一週間で私を越えろ、それがお前の始まりだ 」
その眼光は、有無を言わせぬ威圧を放ち、同時に、息子に試練を与える獅子のような、そんな姿を思わせた。
「父上を、越える………」
「ああ、お前なら出来るはずだ。それともなんだ? 貴様はそれすら出来ずに私に叛逆を仕掛けたとでも言うか? だとすれば随分と滑稽だな 」
嘲笑するように、しかし静かに笑い。
「父上は……オレに期待してくれるのか……?」
「それこそ言うまでも無いだろう……そのくらいやって見せろ、
「───! ああ……ああ、わかったぜ父上!絶対に父上より強くなってやる!」
──────ふふ。
オルタは……目の前の彼女をみて、不思議と微笑んでしまった。それがどんな感情からくるものなのか、オルタはまだ分からなかったが、なんとなく。
そう、なんとなく笑みがこぼれた。
曖昧なことであるが、それは人の不安定な心を示していた。この娘にちゃんと向き合ってやろう、と。
//
「───って、そんなことがあったんだが、後二日で期限が来ちまうのに全く糸口が見えないんだ………」
カウンターにて並ぶのは、モードレッドと赤須、対面にエミヤ。いつもの如く夕食の後の談話中である。
エミヤは、軽く笑いながら話す。
「成る程、ここ最近やたらとやる気を出していたのはそれか…… オルタを越える、とは。だいぶ大きく出たなモードレッド 」
「そりゃオルタ越えてくれたらとんでもない逸材だと思うけどね、ウチのセイバーで一番強いから、オルタは。しかもぶっちぎりで………エミヤ、コーヒーおかわり、濃いめで」
赤須は、いつもの調子でコーヒーを飲みまくっていた。この頃はまだ、自分に起こる悲劇を知らずにいたわけだが。
「あいわかった、……後二日でと言ったな。もうあと実質一日しかない、そのまま喰われてやる気か? あの騎士王ならば言ったことは必ずやるぞ」
アルトリアと面識があるエミヤの言うことだ、恐らく間違いないことだし、赤須本人も結構オルタの無茶は知っていた。
「あー!どうすれば父上に勝てるんだー!」
頭を抱えて嘆いているモードレッドを見て、私は何かを思い出す。
「…………ん? ああ、そういえば……さっきのは………」
「コーヒーお待ち、……なんだ、どうしたマスター、ポケットを漁って 」
「いやー、さっきオルタに貰ったものがあるんだけど……… あったこれこれ」
夕食前に、オルタに「モードレッドに渡しておいてくれ」って言われてたんだった。小さな紙袋をポケットから取りだし、開ける。
エミヤはそれを見て、
「………? 何だそれは、飴か?」
まあ見たままだ。
それは赤い珠、黒と赤の二色飴。
「……!いやこれは多分……モード、ちょっとこっち向いて」
「何だよマスター…………むぐっ!?」
私はそれをモードの口に突っ込んだ。これは食わせるものだ、と瞬間的に悟った為である。
間違いかもしれないが。
「───何だこれ!? マズッ!」
「まあそう言わずに飲み込んで、オルタからの贈り物だよ?」
「そ、そうか……父上からのだったら……えいっ!」
モードはバキバキと噛み砕いてそれの喉に流す、そして───
「んがぁ…… ちょっとそれくれ!」
「あ、私のコーヒー!」
「んぐんぐ………っぷぁ…… なんとか……なったか……」
モードレッドは流れるように私のコーヒーを奪い取って、それで口の中の異物を根こそぎ流した。
ぜいぜいいってるモードに尋ねてみる。
「それで……何か変化ある?」
モードは顔をしかめたまま首をひねる。
「………………? わからん……でも何か変な感じっていうか…… こう……ちょっと体が熱い感じだ」
「…………それ多分、魔力塊だよ。オルタが作ったんだと思う」
(オルタの魔力塊って……血か何かだろうけど……それで強化されるんだろうか?)
「父上がオレの為に……? そうか、そう聞いたらなんだか調子出てきた!」
機嫌が良くなった彼女に、私は聞く、わりと根本的な疑問。
「……モードはさ、どうしてオルタに勝ちたいの?」
「ん? そりゃ決まってんだろ、オレがモードレッドだからさ 」
「それ答えになってるのかね」
「なってるさ、だって父上がやっと機会をくれたんだ、…………そう、やっと」
「モードはオルタのことどう思ってるの? あのアルトリアは本来のアーサー王じゃない……って私が言うことじゃないけど 」
「ああ、多分父上もそう思ってるからオレを試そうとしてるんだ。本来のアーサーだったらオレを認める筈がないからな………… 」
目を閉じ、静かに言葉を紡ぐ。そして。
「……だからオレが勝手に満足したいだけなんだ、だったら最後まで諦めない。オレは父上を越えてやる! 」
その自信に満ちた目は、まるでモードレッドの心を写すように晴れやかであった。
「そっか。…………大丈夫、それだけ覚悟があればオルタにもきっと届く」
私の励ましに彼女は笑いながら言う。
「それ、根拠ねーだろ」
「なんでもかんでも根拠考えて言葉にしないって」
「そりゃそうだ、マスターはそんなに頭良くないからな!」
「言ったなこの!」
うん、多分大丈夫だ。この親子喧嘩……じゃない試練で、モードレッドは一つ上のステージに行く、そんな感じがする。
そのあと、モードレッドは期限最終日にオルタに勝負を仕掛けた。
それは、彼女の始まり。誰もが予期しなかった、しかし確かな選定の死合であった。
オルタは立ち塞がる、部下であり子であり、かつて殺した叛逆の騎士に。
モードレッドは挑む、王であり父であり、かつて憎んだ、しかしその苦悩を理解してしまった自らの親に。
それは、此れまでの何処でもあり得なかった、カルデアという異郷が生んだ奇妙な繋がり。
今まで在ることの無かった、無限のifの一欠片。
「明日は蛮神殺しに行くから無理」
→「お前の為に心臓とってきてやるから楽しみにしてろ」
そんな感じの訳です、まさにサンタ。
べつに隠すことじゃないんで書きますが、このオルタはサンタと同化してます、なので若干穏やか。エリちゃんも同じく。
あと召喚関連もオリジナル設定……あ、モードレッド召喚は正月のアレです、福袋。
途中に出てきたパチもんの詠唱は、カルデア版を妄想して適当に単語を書き換えただけです。
さて、次回はモードレッドvsオルタですか……
これ多分次回の方が短い気がしてきました。
さあ、モードレッド覚醒のターン!