世界の始まるその日まで   作:スノウレッツ

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流れるようにエリちゃんを100Lvにしたスノウレッツです。お陰さまで石も林檎も無くなりました。

今回はセイバーオルタvsモードレッド。
ぶっちゃけ、ぼくのかんがえたさいきょうのモードレッドです。
まあ結局……ですが。

今回はオリ宝具&独自解釈率が凄まじいです、GOA読んでる人からは、ん?ってなる人もいるかもしれません。

あとまあ結局前編と同じくらいの文量になりました。
それでは、暫しお時間頂きたく申します。



第18話 [聖剣家族・後]

 

 

 ───選定の剣。

 

 それはかつて、とある少女が手にした運命の剣。その剣は王にしか抜けない、王に為るべき者にしか。

 

 しかし。それを手にした者は、きっと苛烈な人生に終わるだろう。だからこそアーサー王は、死ぬことすら許されず、今も何処かで未来を待つ。

 

 

 ───そう、彼の人生は未だ続いているのだ。けれど、それは、ただ一人の話である。

 

 

//

 

 

「…………? 」

 

 

 草原、穏やかな風が漂う、平和な丘。

 

 己の存在に気づいたとき、モードレッドはその地に立っていた。

 

「ここ……は……… あの時の………」

 

 モードレッドが辺りを見回していると、直ぐに声をかけられた。

 

「──────む、もう来ていたか。まあ貴様の深層に潜ったのだから当たり前か」

 

 オルタは、いつものドレス姿でモードレッドを迎える。この地はアーサー王の始まりにして、モードレッドが辿り着いた一つの真実。

 

「父上……? ここは、選定の……」

 

「ああ、お前もここにやって来たことが有るらしいからな。お前の選定には丁度良い場所だろう?」

 

 選定の剣はそこにあった、しかし今はない。

 それはかつてアルトリアが抜いてしまったから。

 

「でも……もうあの剣は無いんじゃ? オレは結局引き抜くことが出来なかったから……」

「何を勘違いしている? 貴様が挑むのはこの私だ。 ああ、いつも通りにやれば良い。ここでは互いに全力を出せる 」

 

 サーヴァントの深層、又の名を夢に於いて、全ては幻想だ。願えば、それはそこに発生する。

 

「…………そうか、そう言うことならっ!」

 

 二人は戦いを始めようとする。しかし、そこに更に二人ほど観客が来訪した。

 

「───待った!」

 

 白い装束の青年、そしてこれまた白百合のような騎士。

「───やぁやぁ、そんな面白そうなこと、二人だけで始める気かい?」

「あ、あのっ! 見届け人でやって来ました!」

 

 リリィと、それに同伴するのは、最果てにて引きこもった魔術師。

 

 

「リリィ!? なんでここに?」

 

「貴様……マーリン、勝手に人様の心に入り込むとは相変わらずだな」

「君が言うかいアーサー……いや、君はどっちかって言うとアルトリアかい?」

 

「……まあいい、花の魔術師。私は所詮アーサー王から取り除かれた残骸に過ぎない、よって私の名は”あり得たかも知れぬ一(オルタナティブ)”ではなく

王には不必要なもの(キングスレケージ)”だ。……ま、今となってはどうでもよい事だが」

 

 オルタは、表に出ることの無かったアーサー王のもう一つの面。

 アルトリアは王として生きると決め、あらゆる不安定なものを自分から切り離した。それでも彼女の裏に残っていたのがこの黒い騎士王。

 しかし、彼女は自分を、『王には不必要なもの』と称した。

 

 マーリンは笑って言った。

「アハハ、そこまで辿り着いたというのに、君はどうしてモードレッドなんかに構うんだい?」

「だからこそだ、私のことを父上とは言うが実際は自分とは違う者を見ているのだから。なあモードレッド? 」

 オルタは何故か機嫌が良い。

 

 

「そ、そんなことは無いぜ? オレは黒くても父上のこと大好きだよ! …………あ 」

 思わず口走ったモードレッドは顔を赤くし、

 

 そしてオルタは自らの心を話す。

「ふふ…………余計に奪いたくなった。私はずっと気に食わなかったんだよ、お前のことが 」

 

「え……」

 

「私は貴様の見ている、騎士道を重んじた高潔な王などではない。我が円卓の騎士たち、それだけではない、どれだけの臣下が死のうが、如何に民が苦しもうが、私は何も感じない、ただ私の為だけに理想を求めるだろう」

 

 私は非情の王だと、モードレッドの言うような民を想った王ではないと、そう告げる。

 

 

「…………………」

 それをただ聞く、言葉に出来ない思いと共に。

 

 オルタは、笑みを浮かべながらモードレッドに諭した。

「───まあ、あれだ。いつまでも私とアーサー王を重ねるな、さっさと親離れしておけ。それができぬなら私に奪われろ。……ああ、勿論私に勝てば貴様は自由だ、これまで通りに好きに生きるがいい」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ父上!」

 

 いい。貴様の言い分は聞かなくてもその内にわかる。

 

「…………マーリン、リリィと安全な場所で見学でもしておけ、もしかすると面白いものが観れるだろう 」

 

「既に面白いけどね? 君の道化っぷりはさ」

「言っておけ、私は人の心が分からんからな」

 

 自分の不器用さなどとっくに理解しているつもりだ。私が出来るのは敵を用意するか敵になるか、その二つくらいしか無いんだからな。

 

 ああ、そう思うとなんだか可笑しいな、私は…………

 

「───フッ!、悪いが時間が無い、朝食に間に合わねば余計に腹が減るからな…………さあ、剣を取れモードレッド! 伝えたいことはその力で示すがいい!」

 

 剣を向け、自らも鎧を纏う。

 

「───くっ……! 分かった、やってやる……やってやるぜ!!」

 

 そうだ……全ては戦いが示している!

 

 ああ、久しぶりに全力が出せるな………!

「───我が身に落ちろ、ブリテンに飛来せし流星よ……我は、我が身を竜へと捧ぐ!

──────来い!『黒き覇王の凱旋(アドライグ・ゴッヘル)』!!」

 

 それはかつてペンドラゴンを生んだ、天からの赤き竜を模し、今、その身を黒き覇王として騎士モードレッドに立ち塞がった。

 

 これは選定の儀。王は力を以て脅威に打ち勝たねばならない。

 

 オルタはここまでを導いた、後はモードレッドが示すだけだろう、その王剣の真なる輝きを。

 

 

//

 

「ははは、この地に再びあの娘がやって来たかと思ったらまさかアルトリアに会えるなんて、人は不思議で満ちているねぇ」

 

「あの、マーリン」

 

「なんだい、アルトリア?」

 

「どうして私もここに連れてきたんです?」

 

「それは、アレだよ。君が見るべきものが今から始まるからさ。 今やあの黒い騎士王はブリテンに襲来した卑王、いやそれ以上のいわば覇王さ。それにとある騎士が立ち向かうんだ、何処かで見た構図じゃないかい? 」

 

「それは…………ブリテンの赤き竜の伝承……?」

 

「そうだね、卑王ヴォーディガーンを始めに討ったのは先王ウーサーの兄アウレリア。そしてその時、天から二つの赤き竜が降りた。私がそれを予言としたから、今、君が此処にいる」

 

「……竜頭の彗星(ペンドラゴン)の誕生ですか 」

 

「そう、その赤き竜の写し身が君……アーサー・ペンドラゴンという王さ。竜の選定が君という人間を導いた 」

 

「私はまだ修行中の身ですし……私よりもオルタさんの方が、まるで竜のようで…………あ」

 

「気づいたようだね、そうだよ。あの黒き覇王は再び王を選定しようとしている様子だ、その対象がモードレッドというわけだね。いやぁ、ずいぶんとひねくれた方法をとったものだ 」

 

「……モードレッドさんは、勝てるでしょうか……?」

 

「無理だね」

 

「そ、そんな! モードレッドさんも此れまでたくさん修練を積んできたんですよ! オルタさんだってきっと……それを汲んでくれたから!」

 

「まあ騎士という者はよく分からない生き物だからね、ましてやあれは卑王など比べ物にならない化け物だ。いくら血を継いでいるとはいえモードレッドがそれに敵う道理なんてないよ。

……ああ、オルタが手加減などする筈もないね」

 

「そんな…………それじゃあ……この戦いには一体何の意味が有るんですか……」

 

「それを見定めるんだよ、若き騎士王。その目で、新たなる王の誕生を見てみたらいい」

 

「…………」

 

 

//

 

 黒い極光、赤き雷。

 

 二つの剣は撃ち合う、互いの間合いはもはや無し。鎬を削るとはまさにこの事。

 

「ぐっっっっ………!!」

 

「どうした! 貴様の力はそれだけか!」

 

 剣越しに相手の顔を探る、互いは笑って。

 さぞ、楽しいことか。

 

「へっ………!オレだって、この一週間何もしてなかったわけじゃねえ! オラァ!」

 

 モードレッドは剣術だけでなく、体術にも秀でていた、それも我流でだ。かの佐々木某やらに荒神の如く、と謳われた事だけはある。

 

 人為的に手の加えられたその優れた身体から繰り出される変幻自在の手技足技。

 ああ、ただクセが悪いと言われることも多々あるが。

 

「───ふっ! まだだっ!まだ足りないぞ!それではまだ届かん!!」

 猛烈な蹴りをそのまま腹で受ける、しかし覇王の鎧はただでは砕けぬ。再び黒き魔剣で凪ぎ払う。

 

 間一髪、避けた!しかし!

「くァッッ………!くっそさすがだ……と素直に感心してる間もねぇ!」

 直ぐさま二陣が来る、オルタは攻撃に暇をつけない。

 

「悪いが今の私は無尽であり烈覇だからな!

貴様にも時間は無いぞモードレッドッッ!!」

 

 知名度補正などカルデアでは適応されない、が。ここはブリテン、選定の剣が存在した草原。

 どちらにとっても、更にはアルトリアには最高の舞台であり、最上の力を以て顕現出来る地の一つである。

 

 星の加護宿りし鞘(アヴァロン)無くともその身体は鋼、その剣は魔竜の息吹にあり、その心臓からは無限の魔力が溢れでる。

 

 黒化しようとも、いや黒化したからこその無双の力が、紅の騎士を試す。

 

 

「分かってるぜ父上! だから此方は短期決戦でいかせてもらうっ!

───────『燦然と輝く王剣(クラレント)』ッッ!!

オレの命ごと持ってけぇえ!!」

 

 

 クラレントの柄が展開し、雷が辺りに散る、しかし───

 

「───!? どうしたクラレント! 動け!今まで何回も撃ってきただろ!?」

 

 光が発生しない。幾度と放ち、果てには”コツを掴んだから”とかいうふざけた理由で自らの業としていた赤雷の熱剣が。

 

「─────ああ、(ようや)くか!漸く貴様は始点へと辿り着いた!さあ此れからだ!再び示せ!その王剣の輝きをッ!」

 

 オルタが全力で剣を撃ち込む、斬るためでなく、骨を砕くため。クラレントごと、その身に叩き込む。

 

「……がはッッッ───!!」

 

「受けるがいい、此れが私から貴様への最後の手向けだ!!

──────風よ、吹き荒れろ! 黒き竜の咆哮を轟かせ!『卑王鉄槌(ヴォーディガーン)』!!」

 

 撃ち込んだ聖剣から、闇の光が零れ出る。

 

「──────!!!」

 

 真名を開放出来なかったクラレントでは、星の聖剣を受け止めることなどできず。

 

 その黒き光の奔流が身体を直撃した。

 

「あっ………がァ………!!」

 

 

 

 ─────ドクン。

 

 その時。

 

 

 心の鼓動が大気に響いた。

 

 

 ──────ドクン。

 

 

 邪悪必墜、英雄不滅。

 

 

 無限の時を越え、今。

 

 

 ───────白銀の剣帝が。

 

 

 ───ドクン。

 

 

 その眼を、醒ます。

 

 

//

 

 

「───そもそも何故アーサー王はモードレッドを王と認めなかったのか? 理由は簡単、モードレッドには王の器が無かったからだ。でもそれは一人の騎士王の意見、ここで新しい疑問が出てくる。果たして王の器とは何か? さてアルトリア、君はどんな王になりたいんだったかな?」

 

「私は……まだ、王としての覚悟も何も出来ていないような半人前です……でも、民たちが笑って過ごしているのを見ていたいって、そう願うのはけっして間違いじゃないと、そう思います」

 

 

「うん、それが君の”王”のイメージだ。君は全ての始まりだから、此れからその認識は少しづつ変わっていく。とあるアーサー王は、君のように自らの理想のために民の笑顔を一とした。また、とあるアーサー王は力を以て圧政を敷き、それを自らの理想の国とした 」

 

「それって……」

 

「また、聖剣を持たず、ロンの槍を用いて騎士王と名乗ったアーサーもいた。それだけじゃない、そもそも男性のアーサー王だっていた。それらは全てアーサー・ペンドラゴンという王さ、けれど皆、王としての生き方が違う。目指す到達点は同じでも、経過はまるで別人のようだ 」

 

「けれど、どの王が統治してもブリテンは滅びの運命にある……」

 

「その通り、君にはまだ実感が無いだろうけどね。そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()は、あまりにも理想の王として完璧だった。その為に自らの人間性すら捨ててしまったから、王としての責務以外に思考を向けることをしなかった」

 

「──────皮肉なものだ。あの黒き騎士王は自らを”王には不必要なもの”と言ったが、それに人間性や我欲を含んでいるんだから。あれは自らの欲に忠実な暴君、非情で冷酷な覇王だね」

 

「でも!オルタさんはとても面倒をみてくれます!私もたくさん鍛えてもらって……」

 

「アハハ、まさにじゃないか。」

 

「え……?」

 

「それが彼女のやりたいこと、さ。君も、モードレッドも、ああ、カルデアのマスターも。皆、強い者だ。腕だけじゃない、心の強さも関係している」

 

「───強い者を彼女は愛する、何故なら自分の隣に立って欲しいから。人は独りではいられない、彼女も同じさ。けれど彼女は人を超えた、その隣に立てるのは同じく超越者だけ。ぞして君やモードレッドにはその可能性がある 」

 

「じゃあ……この戦いはその可能性を引き出そうとしているのですか……?」

 

「自分の為だけに強者を求めているんだ、彼女は。そう言う意味では、あの黒き騎士王だけがモードレッドを受け入れる世界を造れるだろうね」

 

「……? 貴方の言うことはいつもよくわかりません…………」

 

「今はまだ知らなくていい、いつか知るべき時はくるだろうけどね」

 

「それってどういう…………って!モードレッドさんやられちゃいそうですっ!! ど、どうしましょう!? 止めに行った方が……」

 

「いいや、君では巻き込まれて殺されるのがオチだよ、それよりも。聴こえるかい? 竜の鼓動が」

 

「え? ………………これ、は………」

 

 ああ、これが君の答えか黒き竜王(ゴッヘル)

 いいね、僕も始めてみる光景だよこれは!

 

 

//

 

 

 ──────ドクン

 

 

 オレ、は…………

 

 

 ──────ドクン

 

 

 負けるのか? また……

 

 

 ──────ドクン

 

 

 ……イヤ、だ! せっかく父上がチャンスをくれたんだ!!

 

 ─────ドクン

 

 

 まだだ!まだ身体は動く筈だ! 心は諦められない筈だ!

 

 ────ドクン

 

 

 父上が言ってくれたんだ! オレなら出来るって!やって見せろって!

 

 

 ───ドクン

 

 

 だから!!

 

 ──ドクン

 

 

 ドクン

 

 

 ここで、終わってたまるかぁ!!

 

「がああああああああああぁぁぁぁ!!!!」

 

 ドクン!

 

 右手が()()を振り抜き、オルタは直感的に後ろに跳びのった。

 

「──────ッは!漸くお目覚めか!ずいぶんと、ああ! ずいぶんと待ったぞモードレッド!!」

 

 モードレッドは眼を開く、その右目は金色の瞳に。

「はぁ、はあ…………! どうだ父上…… 見てくれ……この輝きをっ!!」

 

 ああ───

 

 幾星霜の時を越え───

 

 今、選定の王剣は真なる輝きを取り戻した。

 

 

 モードレッドはそれを天高く掲げる、それはもはや赤雷纏う邪剣に非ず。

 

 ──────白銀の雷纏う聖剣にあり!

 

「ああ、それこそまさにフロルの輝き! 全ての剣の王と称された選定の王剣の真なる姿!さあモードレッド、その剣の銘を告げろ!」

 

 開放された剣刃からは、止めどなく雷が溢れ、モードレッドの身体すら守護する雷装と化している、しかもこれはまだ始まりに過ぎない。

 

「へへ……ああ、コイツも目覚めたばかりでうずうずしてるみたいでさぁ! 早く枷を解けって煩くて! ああ分かった、だったら今すぐ開放してやる!」

 

 その剣は、銀雷散らす、剣の皇。

 

「さあ、オレに力を貸せ!

───『燦然と輝く宝剣・白銀の雷帝(クラレント・フロレリア)』!!」

 

 この世のどの剣よりも、眩く、鋭い。

 そう謳われた白銀の剣刃から、灼けついたように透き通る雷が、柱となって天を裂く。

 

 世界を揺らす、雷の咆哮。

 

 その剣は、別に星が鍛えた至上の剣でなく。

 その剣は、何かの神が宿っている訳でなく。

 

 ただ恐ろしい。

 その剣は、人が造り出した『剣の皇』である。

 人類が到着した、宝剣の最高到達点である。

 

 

 その光景に、花の魔術師は愉快そうに笑う。

「ハハハハハハハハ!!見なよリリィ!あれが真のクラレント!僕も始めてみるよ、アレが本当の姿を晒しているのはねぇ!」

 

「凄い…………あれが、モードレッドさんの力……」

 

「一体どうするんだい黒き竜王(ゴッヘル)!! 君が呼びこんだ力は世界を破壊するという事に於いて、果ての塔と対を為す程の逸品だ!」

 

「ふっ、侮るなマーリン。悪いがまだ自分の娘に負ける訳にはいかんからな。過ぎた力を持った娘を諫めるのも親の仕事だろう? 」

 

「君……ずいぶんと変わったことだねぇ!」

 

「褒めるな、あまり慣れていないから恥ずかしくて仕方がない」

 

 マーリンの方など見ず、雷の柱に対峙する、それは自分が導いた、在ることの無いはずの王の姿。モードレッドに王の器は無かった、それは確かな事実である。しかし。

 

 持っていないのなら、持たせればいい。

 まだ未熟だというのなら、育てればいい。

 

 

 『燦然と輝く宝剣(クラレント)』はモードレッドに力を注ぐ。

 その心臓は劣化品であるにも関わらず、アルトリアと同じく無限の魔力を彼女に与える。

 所詮造られた肉体、されどその身体は竜の膨大な魔力に耐え、聖剣に力を伝達し、そして返され。

 

 モードレッドは王を目指すことを諦めた筈だった。だが。

 

 彼女の母モルガンはアーサーの姉にしてウーサーの娘にあり、父は言うまでもなくアーサー王である。その身は確かに正統な王位継承権を持ち、身体に流るる血は間違いなく王の血族。

 

 しかし現実はそれを否定し、彼女はブリテンを崩壊させた愚かな叛逆者の印を押された。

 

 ああ、けれど。

 ここは魂集う星見の廟、可能性が光を示す。

 

 命の期限から解き放たれ、無限が彼女に考える時間を授けた。

 一方的な憎悪は、一方的な理解によって思慕に戻り。今、理不尽な天秤がそれを裁く。

 

 斯くして白銀の剣帝は目覚め、右目の金の瞳はオルタの系譜を辿る。

 

 ”力ある王”の格が、モードレッドという存在を一つ上へと繰り上げた。

 

「……今なら……今なら父上を越えられる!」

 

 

「驕るなモードレッド。年の功というのを見せてやろう……

 卑王鉄槌、極光は反転する───」

 

「いくぞ父上!! ───ああ、この剣はあらゆる輝きより目映く、その白銀は我が身を照らし、天の怒りが世界に轟く!」

 

 ───魔剣を構え、魔力を限界まで注ぐ。

「覇竜の息吹が天を裂く!さあ、地に墜ちろ!

約束された(エクスカリバー)───

 

 ───聖剣を天高く掲げ、ただ、自らの心に委ねる。

「此れ為る光は我が心のままに!

我が親愛なる(クラレント)───

 

 

 天より延びる雷と、大地を這う極光。

 それは、まるで───

 

───勝利の剣(モルガーン)』!!

 

 

───王へと捧ぐ(キングスアーサー)』!!!

 

 

 ───交錯するは光と闇の無限光。

 それは、まさに『ウェールズの赤き(Y Ddraig Goch)竜』、そして『ザクセンの白き(Y Ddraig Saxon)竜』の姿の如く。

 

「アハハハハ!!さすがに空間が保てないよこれは! 全く素晴らしいね! これは伝承の再現、いやそれ以上の絶景だよ!!」

「笑ってる場合じゃないですマーリンっ! 浮いて?私浮いてます!? 世界崩れていってますよ!?」

 

 

 衝撃の余波が世界を壊す、二人の竜を中心に。

 

 

「でやぁぁあああああ!!!!」

 

「はぁぁあああああああ!!!」

 

 

 世界が裂けようと、二人は止まらず。

 互いの力と想いをぶつけ合う。

 

 選定の地は崩れ、夢は次々に覚めていき。

 天空は一直線に割れ、大地は響きを上げて落ちていった。

 

 覚醒した王は、少々力が強すぎた。それは自らの肉体すら崩壊させてしまう程。

 

 

 やがて、二人から溢れる光が、全てを飲み込んでいく。

 

「だ、大丈夫ですかこれ!?」

「アハハハ、それは勿論!だって僕はマーリンさんだからね!皆を無事に帰すくらいはやるさ!」

 

 

 消え行く世界の真ん中で、彼女は尋ねる。

 

 

 ─────ねぇ……父上……

 

 ───オレ……父上の隣に立てるかな……

 

 

「──────」

 

 

 あの人は、言葉をかけてくれたけど。

 でも、聞こえなかった。

 はは……ダメだ……眼も、耳も、上手く機能してくれないや……

 

 でも、嬉しいな……なんだか、とても───

 

 

 

//

 

 

 

 

 夢が覚めた。

 

 しかし、英霊の夢は特別だ。

 

 記憶は自らの通った道、これからを示す道。

 

 その騎士は、新たな力を手に入れた。それは確かな現実へ───

 

 

 

 

//

 

 

 んん……?

 

 ───ああ、夢か……

 またずいぶんとオレに都合がいい夢だったな……

 

「──────」

 

 ぺちぺちと頬を叩かれている。

 ような気がする。

 

「──────」

 

 抱き起こされた……か?

 ああ、いま起きるからさ~~もうちょっと今の夢見ていたかったなぁ……

 

 目を開ける。……開けた、筈だった。

 

 見えない、何も。真っ暗だ。…………いや、うっすらと見える。誰だろう?

 

 

「──────」

 

 口を、動かしてる? けど聞こえない。

 もしかして……耳も……?

 

 なんで? どうして……?

 

「───」

 

 え? 顔が……近……

 

「──────」

 

 ────!! し、舌いれられてる!?

 

 ドクン

 

 

 あ……なんか……暖かいな………

 

 

 ドクン

 

 心臓の鼓動が聴こえる。自らの血が流れているのを感じる。

 誰かの温もりを、感じる。

 

 ドクン

 

 段々、視界が晴れていく。聴覚が周囲の音を拾う。

 

 ドクン

 

「─────んむ………ぷはっ、ん。ようやくお目覚めか 」

 

「ちち……うえ…… 父上!? にゃ、なんで!?」

 

 後ろにのけ反ろうと思ったが動けない……?

 手を後ろに回されてる? な、なんで?

 

「ちょっと眼を見せろ」

「へ……?」

 

 ぐいっと顔が近づいてきて、見つめられる。

 父上……やっぱ格好いいな!金色の眼が綺麗だ!

 

「んん……? うぅむ、やはり定着が良くないか……」

 

 実は、モードレッドの右目も金色だったのだが、直ぐに元の翠の眼に戻ってしまった。

 オルタが口移しで注いだ魔力は、竜の心臓を起動させる発破に全てつぎ込まれ、直ぐ様モードレッドという肉体を自律に移行させていた。

 

 ただ、クラレントからのフィードバックが無いだけだ、あればしっかり目が金色に変化する。

 

 オルタも、そこまで気づくことは無かったが、なんとか持ち直したモードレッドに安堵するように、吐息を継ぐ。

 

 

「うむ、まあいい。気分はどうだ?」

「え……いや、えと………」

「そうか、いいよどむくらい元気か」

 

 いや!あの!

 

「……それでなんだが、勝負は私の負けだ。お前はどうしたい?」

「……え? いや、夢……じゃあない?」

「確かに夢だろう、だがあれも現実だ。お前は私を打ち負かしたぞ。うむ、私は実に気分がいい、何か願いはあるか? 一つか二つは叶えてやれるぞ?」

 

 勝った………? オレが……?父上に?

 あり得ない。

 あり得ないあり得ないあっていい筈がない!

 だってオレはモードレッドだ! 父上より強くなれる筈がない!

 父上を超える?そんなこと無理に決まってるじゃないか!!

 どうしてそんなこと言ってくれたんだ………

 

 涙が出てくる…………なんで…………?

 

「………あぁ………えぅ…………?」

 

 だめだ……だめだ! 泣くんじゃない……

 

「うぅ……………うわぁあああぁあ……!」

 

「どうした、泣くほど嬉しかったか? ああ、胸くらいなら貸してやる、好きなだけ泣けばいい」

 

 私は、みっともなく泣いた。分からなかったんだ。どうして父上がそんなこと言ったのか。

 でも、嬉しくて、信じられなくて、申し訳なくて、やっぱり嬉しくて。

 

 抱きしめられて、余計に涙が出る。止めようと、泣くのを止めろと心が叫ぶ。けれど。

 

 何故か、私の涙は止まってくれなかった。

 

 

「んぐっ……ちちうえ……オレさあ……」

 

「ああ、なんだ?」

「父上の……隣に……立てたかな………」

 

「───当たり前だ、お前は私の娘だろう?」

「娘じゃなくて……んっ……息子だよ……」

 

「うん? うーん……あまり変わらないんじゃないか?」

 へへ……オレも、そう思う……

 

 ああ、また、眠気が……

 

 泣きつかれて寝るなんて……何処のガキだよオレは………

 

 ゆっくりと、眠気が迫ってくる。

 モードレッドは、拒むこともせず、それを受け入れた。

 

//

 

「あの……オルタさん? 朝食、まだ残ってますよ!そろそろ行きませんか………っあ、すいません……」

 

「いい。もう少し待っていてくれないか?」

「はい、……モードレッドさん、まだ寝てるんですか?」

「さっき起こしたんだがな……また寝てしまったよ、はは、夢であっても疲れるだろうからな」

 

「でもオルタさんは大丈夫そうですね?」

「ああ、年季の違いというやつだ。貴様も私と同じだろう?」

「さすがにあそこまでは……あんなお二人初めて見ましたよ? かっこ良かったです!」

 

「それはモードレッドが起きてから言ってやってくれ、きっと泣いて喜ぶ 」

 

「それじゃあ、もう少しだけ待ちましょうか 」

「そうしてくれると助かるよ」

 

 

 二人の父の間で眠る、叛逆の騎士は。

 叛逆という事実を忘れることはない。

 けれど、新たな家族との記憶も、きっと。

 

 モードレッドは忘れない。

 

 もしかしたらあり得たかもしれない、普通の家族の一風景。

 

 随分と遠回りをした。

 結局彼女は、父を一生越えられない。

 ああ、きっと。それでいいのだ。

 

 モードレッドは忘れない。

 

 父に挑んだこの朝を。

 

 悲しき過去も、愛しき未来も。

 

 きっと彼女は、永遠に忘れない。

 

 

//

 

 

 目の前で不穏な笑顔を浮かべる彼女を尻目に、モードレッドの成長物語を思い返す。

 

 もうあれが半年前なんだなぁ……

 

 

 そして数日後。

 

 

「マスター……最近モードレッドがよく甘えてくるのだが……どうやって相手してやればいいか分からないんだ………どうすればいいと思う?」

 

「…………似た者同士過ぎる」

 モードもオルタもリリィ見習いな、あの純真さは色々教えてくれるよ。

 

 

 そんなことを思いつつ、私は顔をしかめるオルタを眺めながら、カフェオレを一口飲んだ。

 

 実にまろやかだな。うん。

 

 苦いのも、酸っぱいのも、渋いのも、甘いのも、辛いのも。

 

 うまく調和すれば、こんなにも、

 

 ──────綺麗な色が、見えるんだもの。

 

 

 

 





妙な終わり方に無理やり持っていきました。ほんとはもうちょっと長かったんですが、落とし所が決まらなかったんでばっさりカット。
だいぶオルタびいき青王ディスな感じになってしまいましたが、あの頃のブリテンは今からすると狂気以外の何物でもないんでこれもしょうがない、と自分で勝手に思ってます。

本家では水着イベですか……開拓ネタはダビデでやるつもりだったんだが……
まあいいです、ちょっとした外伝を5話くらいで書こうと思います。ちょっと時間はとびますが、ウチのカルデアの現状でも書きましょう(まだ予定)。

次回は、再びロンドンが舞台、エレナさん再登場です。
またゲストが来ます。白きなんちゃら。
それでは!

あ、以下に今回のオリ宝具とかのマテリアルを載っけときます。本文の補足も兼ねてるっていうね……

黒き覇王の凱旋
”アドライグ・ゴッヘル”
宝具というか、『ペンドラゴン』の名を冠する者の全力全開状態を表す。
使用条件はブリテンの地に立っていること。

オルタは自らを黒き覇王とした。
他のアーサーも使える、が。他のアーサーは聖剣に魔力を注いで戦うことが多いので、あまり身体強化に全力つかったりしない。
オルタは聖剣だけに頼っているわけではないので、これが正真正銘最強バージョン。
忘れ去られている知名度補正の全開版でもある。

モードレッドを成長させるための敵として自らに写した、ブリテンに来訪した赤き竜。

元ネタは、ウェールズの赤き竜こと、
Y Ddraig Goch(ア・ドライグ・ゴッホ)である。私は厨二病なのでゴッホでも良かったけどちょっともじってゴッヘルにしてみた。
自分で考えといてなんだが、割りと気に入ったフレーズ。そもそもウェールズ語とか読み方知らないしね!仕方ないね!



燦然と輝く宝剣・白銀の雷帝
”クラレント・フロレリア”
ランク B(条件付でA++) 種別 対人宝具
レンジ 自身
モードレッドの中の「王」を認め、真の輝きを取り戻したクラレント。
本来の機能が戻り、使用者に強力なサポートを授ける。
効果一部
全ステータス一段階上昇
白銀の雷帝 B を付与
カリスマ C- →狂奔 A に変化
魔力放出 A →魔力放出(雷) A+ に変化

白き雷纏う聖剣であるが、変わらず赤雷も纏える。
真名解放時には、モードレッドの右目が金色に輝く。これは、オルタが注いだ魔力及び、魔力の飴玉による現象。特に意味なし。疼いたりしない。

フロルとは、クラレントの本来の持ち主(仮定)のローマ帝。ガリアを任されてる王だったりもする。
フロレリアは、フロルの女性詞。これも仮。
アルトリウスがアルトリアになるんだから……ねぇ?
(何が?)
つまり七割妄想。情報少な過ぎるよクラレント。
ちなみにフロル帝、ガウェインに勝ちました。
ランスロに負けたけど。ラモラックっていう騎士に殺されたけど。


我が親愛なる王へと捧ぐ
”クラレント・キングスアーサー”
ランク A++ /種別 対騎士王宝具
レンジ 1~∞ /最大捕捉 1人
『燦然と輝く宝剣・白銀の雷帝』の真名解放時、様々な条件が揃うことによって放たれる、天へと届く雷の剣。
条件としては、
ブリテンの地に立っていること、
相手がアーサー王であること、
モードレッドがアーサーを思慕していること、
etc……
その他様々な条件をクリアするとようやく撃てる。そもそも倒すための宝具じゃなかったり……
威力としては、最大解放のエクスカリバーが1000とすると800前後。どうあがいても勝てません。

ちなみに撃つともれなく命が散る。
今回は、夢であったこともあり、五感が消失する程度で済んだ……済んでない?
オルタがちゃんと現世に繋ぎ止めてくれていたのでなんとか生還。止まった心臓を『ペンドラゴン』の魔力でもって再起動してもらった。

元ネタは『コハエースEX』より、
「ところで我が王いいにおいで───」
「モードレッド私ごとうてーーーい!!」
「父上ーーーーーっ!!」
である。ぶっちゃけ対オルタ戦くらいしか共通点無いけど。

モーさんを持ってる人は、ステータスを一つ繰り上げてみてください。とんでもねぇ化け物が出来上がります。

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