世界の始まるその日まで   作:スノウレッツ

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オケアノス組中編です。
果たして白狼攻略の糸口は見えるか?

※なんかフォント表記がおかしくなってることに気づきました。一応修正しましたが… iosのフォントAndroidに上手く表示されない感じですね。気づいてよかった。なんか滑稽です。もうこっちで書いた方が楽かなぁ


第7話 [月光天使]

 

 アステリオスが白狼を足止めし、ロビンとエウリュアレが『顔の無い王』で姿を消したことで、戦闘は新たな局面に突入した。

 

 

(この窮地にアステリオスが来てくれたことはこの上なくありがたい……!)

 吾らアーチャーだけでは、どうしても火力に欠けるからな……

 

 空を駆け終わり、アタランテはスナイプポジションに落ち着いた。

 

「それにしても……」

 アレは一体なんだ? 私とロビンの宝具の直撃で確かにアレは一回死んだ筈だ。

 

 まさか、あのヘラクレスのように複数の命があるのではなかろうな……

 ……いや、考えることは後回しだ! 今はアレを倒すことに集中する───

 

 ________________

 

 

 地上では、白狼と雷光が激突していた。

 

「うがあああああ!!」

『Grrrrrrrrrr!!!!』

 

 力は互角。となれば差がつくのは技であるはず。

 白狼が跳び、見えぬ斬撃を撒き散らす。

 空間全てを埋め尽くすほどの死の導き。

 足が切れる。腕が裂ける。しかし肉体は悲鳴をあげない。

 

  ()()()はこんなもんじゃなかった!!

「う、……おぉおおお!!」

 奔り、吼える。得物を振りかぶる。身体につく無数の傷などいっさい気にも留めない。

 狂奔。雷光は生まれた瞬間にその技能を身につけ、育て続けた。

 

「お、まえは、ぼくと同じ、でき、損ないだぁぁ!!!」

 ゴグチャ

 白狼の頭が潰れ、目玉が飛び、顎が外れ、脳漿と鮮やかな血が噴き出る。

 

 そう、こいつは、なにかのまねごとにすぎない。

 

 アステリオスは、戦う内に気づいた。

 これは生き物ではないと。

 

 怪物を背負わされた男は、コレが自ら怪物を背負っていることを直感的に気づいたのだ。

 ただ、それに気づいたことでなにか状況は好転するわけではなかった。

 

『G……guuu……!!』

 こぼれた中身は蒸発し、新たな中身が生成される。

 がわが造られ、目玉が生え、牙は鋭く。

 そして……総てが元に戻った。

 

「わか、った。……おまえが、その気なら、死ぬまで、つきあってやる……!!!」

 

 怪物が英雄に倒される運命など、その身で死ぬ程受けたのだ。

 

「ぼくは、この場所で、人間になれた……! だから今度は……ぼくが! 英雄に、なってやる!!」

 

「がああああああ!!!!!!!」

『……Guoooooo!!!!!!!』

 

 雷光は英雄を目指し、

 怪物は殺戮を求め、

 互いの命の牙を削りあう───

 

 ________________

 

 一方、木陰に潜む狩人は、必至の時を待つ。

 

「ひえぇー、やっぱ怪獣大決戦は大迫力だなぁおい」

「ちょっと、アステリオスのこと怪獣っていうの止めなさい。彼も今は英雄の一端よ」

「へいへい、……でもありゃ人間には出来ねえ戦い方じゃあねえですかね」

 

『顔のない王』にて、二人してマントにくるまっている。

 

「ところで、女神様は戦わねぇんですかねぇ?」

「貴方、私が引き裂かれる所でも見たいのかしら。残念、ここで死んだら存在ごとアレに飲み込まれるわ。それだけはかんべんね。」

 ……!

 そうか……今死んだらもう、二度と戻れないってか?

 

「わりと冷静ね。二回目の死の恐怖はそうでも無いのかしら?」

「お前さんが言ってたでしょうが。……戻るぜ、俺は。絶対にだ」

「頼もしいものね。本気になった臆病者ほど貴重な人材はないわ。」

 

 へっ、今の俺は菩薩すら凌駕する精神だぜ…… なんてったって、女神抱えて魅了から逃れてるからな……!

 

「……ところで、ホントに戦力外なんですかい?」

「私の宝具知ってるでしょう? ハートキャッチよ、ハートキャッチ。アレに効くかしら?」

 ……………はいはいそーでしたねりょーか、

 ……ん?

 

 ……………

 

「……いや、一つ秘策を考えついた。ちょっと手伝ってもらうぜ」

「え……?」

 こんな馬鹿げた作戦、効くかは分からねえ。

 だけど、今を打開しなくちゃいけねえ。

 できなければ死、だ。

 

 ロビンフッドのアタマは、これまでの人生の中で、最も冴えていたかもしれない。

 

 この力、生き残るために使う。二度目の人生、まだ終われねぇ……

 

 即興、矢に文書(スクロール)を付与させ、射る。

 こいつは全員でかかる作戦だ…… 気づけよ。

 

 ________________

 

 ……さすがにおかしい。

 

 丘の樹木に隠れ、雷光の援護をするアタランテ。

 

 アタランテは、これまでの人生で最も困惑していた。

 

 既に40回は殺している筈だ……

 なのに奴は、()()()()()()()

 命に数があるのなら、削れる度に焦りが生じる筈だ。それは、人だろうが獣だろうが神だろうが変わらない一つの真実。

 

 死は恐怖するものだ。

 

 なのに、奴は、初めから今まで変わらない殺意で雷光に向かっている。

 

 アステリオスの攻撃に合わせて、『天穹の弓』から矢を放つ。

 白狼の脚を潰し、目を潰し、動きを止める。

 

 そして斧で、拳で、抉る。

 その度に死を迎えている筈だ。

 

 なのに───

 

 ひょっとしてアレは、私たちでは倒せないものなのではないか……

 そんな考えが、一瞬でも頭をよぎったことに、身が保てたくなりそうな、金縛りのような恐怖に襲われる。

 

 ……くそっ!私から仕掛けた戦だというのに...! 不甲斐ない……!

 

 ───ヒュッン

 刹那、風を裂く。

 ッ!なんだ?

 

 ストッ

 停まっていた木の幹に、矢が刺さってきた。

 

 ……ん?これはロビンの矢? 文書が付いている。

 

 〔心臓をくれ お前の思うように〕

 

 …-? これは……

 

「心臓…… 確かに、撃ち抜いているわけではなかったが…… くれ……とは?」

 

 ヤツの死は、頭を潰され、切り落とされることによって生じている。

 なぜなら、白狼と対峙すると、正面に固定されてしまうのだ。側面に回らせない立ち回りをしているのか、アステリオスが正面戦闘を得意としているからなのか。

 それのせいで、身体の方に傷をつけることは困難だった。

 

 一つ、あるとすれば、

 

「心臓を…… 取り出せ……か?」

 

 ……ロビン、私には学がない。お前のように、策を立て、標的を倒す…… そんなことは終ぞ知らない。

 

 だが、此の勘、此の野生の衝動のままに動けと言うのなら、私はただ自身を信じてヤツを殺す……!

 

 

 そうと決まれば、行動に移るのは極めて簡単だ。

 

 私の、このか細い身体が、ヤツと対峙するためには───アレしかない。

 

 ________________

 

 

 届いたか?俺からのラブレターだ。せいぜい笑って破いてくれ。もし届いたなら……

 

「……いいか? 女神サマ。上手く状況ができたら突っ込むぞ」

「貴方やっぱり正気じゃないわね。そんな作戦を考えるなんて」

 エウリュアレは小さく、呆れに似た笑みを浮かべた。

 

 意味のない問答を続ける。

 

「偶には無茶やって、はっちゃけましょうや」

 命までとは言わねえ。

「貴方の命は私のものの筈なのに、私の命を貴方に預けるのかしら?」

 ごもっとも。

「いいじゃねえか、賭けにはBETが必要だ。命一緒に賭けようぜ?」

 なんてふざけたナンパだ。

「神と人が同価値だなんて…… なんてバチあたりかしら。でもいいわ。あなたの勝利に全員の命を賭けましょう。見返りは何かしら?」

 

 俺が献上出来るもんなんてたった一つしかねえよ。

 

「見返りだぁ? そんなもんなぁ、勝利の喜びと、生命の保証と、この世界の終わりまでこき使える奴隷が一匹だ。……どうですかい?」

 

 これ以上は何も出ねぇぜ。

 

「……ええ、いいわ。でもね、女神に奴隷は要らないわ。せめて召使ね。だから……」

 ぎゅっ、

「!」

「……私の寵愛を受けさせてあげる。そう、だから……勝ちなさい。」

 

 手を握られた。微かに震えていた。

 

「……その寵愛、全員に受けさせてやりな。俺だけじゃあ、受けきれそうにないわ。」

 

 優しく握り返してやった。なんで恋人みたいなことやってんだろ。これから死に挑むってのに。

 

 とはいえ、心意気は決まったようだ。

 

 ───さぁこい、アタランテ。お前が最後のキーだ。

 

 ───獣の力、見せてみろ。

 

 ________________

 

 

 ……アタランテは微かに思い出した。

 遠き異国の聖杯大戦にて、この宝具を発動させた時のことを。

 

 いや、正確には記憶に残ってなどいないのかも知れない、あの時は憎悪に塗れていたのだから。

 

 然し、今。私はまた、この忌むべき力に染まる覚悟をしている。

 憎悪ではない、野生の衝動によって、この宝具を開放する───

 

「……再び、吾が身に纏え、魔獣の皮よ。吾を魔人へと変貌させよ。

 神の罰よ、今一度、その姿を現世に顕現せよ。───『神罰の野猪(アグリオス・メタモローゼ)』……!」

 

 かつて、月女神が神罰として野に放った魔猪、その毛皮。それに身を包んだものは、理性を奪われた魔人と化す。

 

 黒き靄がアタランテを包み、その身を侵してゆく。

「ぐっ!、……ううううぅぅう!!」

 変化には激痛が伴う、身が裂かれるような痛みが。

 

「……おい……ぐっ!、……私の言うことを、聞け……!!」

 痛みと侵食が、アタランテを蝕む。

「あっ…………があああああああ!!!!」

 

 憎悪以外でこの宝具は展開することはない。もし、開くとすれば。

 

 使用者の肉体を生贄にして、世界を蹂躙した魔猪が復活するのみである。

 

 (やはり……無理なのか───)

 

 遂に、彼女の意識は、肉体から剥離した。

 

 

 

 //

 

 すまない…… 私では、役に立てそうに無い……

 

「───ちょっと?」

 

 ……なんだ? ここは……何も無い。虚無か……? 自らの身体も見えない……

 

「ちょっとー!気づいてー!」

 

 ああ……きっと、此処が獄か。諦めたものに未来などくるはずが無い。

 

「むー、此処までシカトだと流石のワタシもおこだよ! ……起きなさい!アタランテ!」

 

 ……? なぜ私の名を呼ぶ。お気楽な声だな。一体何処のどいつだ……

 

「アタランテちゃん、また忘れちゃったの? ワタシだよ、貴女の大事なアルテミス!」

 

 ……! なに? アルテミスだと? ……馬鹿も休み休み言え、吾が月女神様が地獄にまでくるはずもなかろう……

 

「むぅー、ここ別に地獄じゃないんだけどなー……

 良し、それじゃあ、えーいっ!」

 

 ……額を指で突かれた。すると───

 

 

 ───瞬きが出来る。手が動く。足が動く。思考が回る。

 ……そして、私の前に白い装束の人物がいるのがわかる。

 

「っ!? 貴女は……!」

「やっと気づいたのね〜、一先ず安心ね!」

 天空一面に透明な床が敷き詰められている。まさに天海だ。そして───

 

「アルテミス様! どうして……?」

「それは、貴女が一番良く知ってるんじゃないかしら?」

 それは……

「……私は……結局、カリュドンの魔を背負いきれなかった。結果、魔猪を再びこの世に解き放って───」

 今、私の身体は、魔猪を背負いきれずに中途半端な醜い姿のままだ。

 

「ちょーっと待った!貴女は一つ勘違いしてるわ」

「え?」

 私は、裁かれに来たわけでは無いのか……?

 

「私は、自分で蒔いた災厄の回収に来たの。そしたらアタランテちゃんがまた罰を発動させようとしてるのが見えて、それで慌てて()()()()()ってわけ」

 

 この身はその途中で止められたのか……

 

「そうだったのですか…… 然し、私があの白狼に立ち向かうにはもうアレぐらいしか手が……」

 

「貴女は一度罰を背負ったんだもの、また背負うことは無いわ!罰を受けるのは一回ぽっきり、それが贖罪ってものよ?……だから、これは返してもらうわ。」

 再び、額に指を置かれた。

 

 ───消えていく、私に巣食う魔が。

  私の……忌むべき最後の切り札。

 

「……ならば!私は一体どうすればいいのか!? それを奪われたのでは、私に残るのはもうこの身体しかない……」

 私の弓では……アレを斃すことが出来ない……

 

 何も纏うことのない身体は、哀しみに沈んでいる。

 

 

 アルテミスはそれを見ると、したり顔で言った。

「……ええ!だから代わりを用意したの!」

「……え?」

「貴女は既に罰を受け終えた。ちょっと遅くなっちゃったけど...ご褒美よ♪ とっておきをあげる、……ほら!」

 ばさあっ

 なにか……マントのようなものを肩に掛けられた。

 

「これは……?」

 アルテミスは得意げに続ける。

「それはアリエルの衣。神の獅子と呼ばれた炉の守護者の証。貴女のサイズに合わせたんだけど。 ……ほら、貴女にぴったりよ〜!」

 もふもふと獣耳を弄られる。

「あぅ…… や、やめ……」

 

 がしっと顔を支えられ、目が合う。

「……うん! いつもの綺麗な顔に戻ったわね。貴女に合うのは余裕と矜持を持った顔、落ち込んでたらもったいないわ!」

「……! はい! ありがとうございます……!」

 

 アルテミスは瞳を外さずに諭す。

「いい? 今、貴女が戦っているのは世界の機構(システム)そのものよ。それこそめっちゃくちゃ強敵だわ! でも、決して諦めてはダメ。貴女に授けたその力は、世界に立ち向かうのをきっと手伝ってくれるわ」

 女神が私を励ます。

「然し、私はコレの使い方がわからないのですが……」

「そんなものそれ自体が教えてくれるわ。

 ……きっと」

 

 言葉を濁された!?

 ……ああ、そういえばこの神様はこういう感じだったな……

 

「……よし!そろそろ行きなさい! 貴女には帰るべき場所があるわ、絶対に生きて戻りなさい。そして───」

 そして?

 

「───愛に生きなさい、アタランテ!」

 !?

 

 それじゃあね〜、また縁があったら逢いましょう!

 

 //

 

「……はっ」

 意識が戻る。

 慌てて自身の身体を見ると、すぐに気づく、圧倒的な魔力。

「これが……アリエルの衣……」

 

 自身の左肩にかかる、獅子頭のついた肩マント。白くたなびくソレは、あの白狼に何処か似ている。

 

 ……迷う暇などない。

 

 念じる。

「汝の力、その一端を……吾に見せたまえ……」

 

 ───

 

 アリエルは答えた。

 

 ──────

 

 自らの出自とその能力。そして……

 

 ──────ああ、わかった。

 名が欲しいのか? いいだろう。

 今、汝に宝具としての真名を与えてやろう。

 

 ________________

 

 

 汝、授けし者。

 汝、護りし者。

 汝、相反せし者。

 その身、嵐を起こし、全てを吹き消す。

 その身、主に叛逆し、堕天を極めん。

 

 在し時は嵐、在し時は天魔。

 又、在し時は善智の堕天使。

 

 汝、その起源は"調和"。

 天より堕ち、然して獄には至らない。

 最も古き神々の叡智よ。

 その力、我に授けたまえ。

 

 真名、開放───

 

 ───『神嵐の獅子(エ・アリエル)』!

 

 [了解、発動を承認する]

 

 身体中に風の息吹が這い回る。不思議と心地がいい。

 身体が転化していく。

 腕には、貴き神毛と強靭な爪が。

 脚には、天まで駆けることすら可能なほどの波導が。

 そして背中には、力天使(Virtues)の証である三枚の翼が。

 神格もつ白銀の聖毛が彼女を包む。

 

 サーヴァントという格を変革し、天使へと変貌させる。それがこの宝具の力である。

 

神の獅子(アリエル)』とは、獅子の頭を持つ天使。ユダヤ伝承では、エルサレムを指す名であり、カバラ伝承では力天使に名を連ねる。

 最も偉大な原典は、グノーシス派伝承にある「造物主(デミウルゴス)」である「遂には至った子供(ヤルダバオト神)」にまで遡る。

 その人智を超えた力が、彼女を守護している。

 

「───ふむ」

 気分はすこぶる良い。身体も言うことをきく。むしろ軽くなった。

 翼にはちと慣れんな。

 然し、『天穹の弓(タウロポロス)』も使える。

 ───これならば、アレとも闘えそうだ。

 

 翼を広げる。

 人の身で、天使をその身に顕現せしめたその姿は、イカロスを彷彿とさせる。

 

 待たせたな。アタランテは行くぞ。あの場所に戻る為に。

 マスターに再び逢う為に!

 

 

 さぁ……嵐、巻きおこせ───!!

 

 

 今、神の与えた力と、世界が接触する。

 

 




二連続宝具エンドですわ... 次で終わる。はず。
アルテミス(神体)の手にかかれば、閉ざされた次元にだって簡単に手を出してきます。そして天使降臨。
型月では、英霊≒天使らしいので、ギリセーフかなぁ?
まあ問答無用で神性A以上ですがね。

オリ宝具について
魔猪のように使用者蝕む系宝具は、通常の聖杯戦争ならいざ知らず、FGO世界ではただの足枷にしかならないので、アルテミス様にボッシュートしてもらいました。んで代わりにくれたのがアレです。
アリエルという天使は、それはもういろんな所に顔を出しているヤツでして。力天使だったり、座天使だったり、智天使だったり、サタンの相方だったり、YHVHだったり、兎に角やりたい放題です。
シェムハムフォラエ神72柱とか言う、天使と悪魔ごちゃ混ぜ版ゲーティアみたいなとこにも所属してます。
アタランテとの共通点がかなり多かったので、今回採用と相成りました。その実力や如何に?

ちなみにその容姿は、魔獣アタランテを白くして翼生やした、ってのが一番近いですかね。聖天アタランテ。誰か描かない?
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