barroco   作:千α

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やろうと思えば二日連続で行けるもんだなあ……もう昔みたいにできないと思ってたのに……。


功績と

 

 

「タガネちゃ───ん!!!」

「す、筋原さん!?」

 

 ステインが捕まり、やっと場の緊張が溶けた時だった。

 

「理王!?住民を避難させていたんじゃあ!」

「エンデヴァーさん、そんなのもう終わってんのよ!

 そんなことよりタガネちゃん!心配かけてんじゃあないわよ──!!!」

「グはぁっ」

 

 筋原のタックルを受けた鏨は、そのまま気絶した。

 

 

 

 

一夜明け、保須総合病院。

 

「冷静に考えると…凄いことしちゃったね」

「そうだな」

「あんな最後見せられたら、生きてるのが奇跡だって…おもっちゃうよね」

「俺、筋原さんので死ぬかと思った」

「よく耐えた」

 

 病院のベッドで、鏨たち4人は話し合う。

 鏨は筋原のタックルで左腕を骨折したため、念のために入院した。筋原はあれで個性使ってないとか…なんだ、化け物か。

 

「……僕の脚、これ多分…殺そうと思えば殺せてたとおもうんだ」

「ああ、俺らはあからさまに生かされた。地飛沫に至っては、あいつから受けた傷はほぼなかったしな。

 あんだけ殺意向けられて、なお立ち向かったお前はすげぇよ。(たす)けに来たつもりが逆に救けられた、わりィな」

 

 轟は飯田に謝罪の言葉を伝える。

 

「いや…違うさ、俺は─…」

 

 飯田が何かを言おうとした時、病室の扉がガラリと開いた。

 4人が目を向けると、そこにはグラントリノ、マニュアル、そして筋原、その後ろには見たことのない人物が立っていた。

 

「おおォ、起きてるな怪我人共!」

「グラントリノ!」

「マニュアルさん…!」

「タガネちゃん、りんご持ってきてあげたわよ」

「あ、ありがとうございます。筋原さん」

 

 まだあのタックルの恐怖を忘れられない鏨は震えながら折れていない右腕でりんごの入ったバスケットを受け取る。

 

「タガネちゃん、りんご剥いてあげるから…三人を威嚇するのやめなさい」

「……はい」

 

 鏨は知らず知らずのうちに、病室に入ってきた3人を威嚇していたようだ。眉間を指で伸ばし、何とか表情だけは普段に戻す。

 

「保須警察署署長の面構犬嗣さんだ」

「面構!!署…署長!?」

「掛けたまで結構だワン。

 君たちが、ヒーロー殺しを仕留めた雄英生徒だワンね」

 

 グラントリノから紹介されたのは頭が犬になっている男はだった。

 

「ヒーロー殺しだが…火傷に骨折と、なかなかの重傷で現在治療中だワン」

「!」

 

 鏨はホッとする。ちゃんと治療を受けているなら、ちゃんと生きている。誰も殺していない。

 

 面構の話をまとめるとこうだ。ヒーロー資格未習得者の鏨たちが、たとえヒーロー殺しであったとしても個性で危害を加えた、これは立派な規則違反である、ということだ。

 鏨は目を閉じた。

 規則違反、身に覚えがあり過ぎた。思い出すのは、血塗れになった店。返り血を浴びた、自分自身。

 

「君たち四名及びプロヒーロー。エンデヴァー、マニュアル、グラントリノ。そして元プロヒーローの筋原理乃。この八名には、厳正な処分が下されなければならない」

「待って下さいよ」

「轟くん……」

 

 面構に待ったを掛けたのは、轟だった。

 

「飯田が動いてなきゃ、ネイティブさんが殺されてた。緑谷が来なけりゃ、二人は殺されてた。誰もヒーロー殺しの出現に気付いてなかったんですよ。規則守って見殺しにするべきだったって!?」

「結果オーライであれば、規則などウヤムヤで良いと?」

 

 熱くなる轟を緑谷が抑えようとした時、面構が轟にそう聞いた。

 

「──…人をっ…救けるのがヒーローの仕事だろ」

「俺も、轟くんと同じ意見、です……俺は、そのためにここ(・・)にいるから……」

 

 轟の言葉に続き、鏨もそう言う。

 声に出さないといけないと何度も経験してわかっていた。黙っていては、誰も己の気持ちは理解してくれない。

 

「だから…君たちは"卵"だまったく…良い教育してるワンね、雄英も…エンデヴァーも、筋原くんも」

「あら、お褒めに預かり光栄よ」

「この犬──…」

 

 面構に褒められた筋原はりんごを剥きながら照れるが、轟はそうも行かず、面構の方へ向かおうとする。

 

「やめたまえ、もっともな話だ!」

「まァ…話は最後まで聞け」

 

 そんな轟を止めたのはグラントリノだった。

 

「以上が───…警察としての意見。で、処分云々はあくまで()()()()()の話だワン」

 

!?

 

「公表すれば、世論は君らを褒め称えるだろうが処罰はまぬがれない。一方で、汚い話公表しない場合、ヒーロー殺しの火傷跡からエンデヴァーを功労者として擁立してしまえるワン。幸い目撃者は極めて限られている。この違反は、ここで握り潰せるんだワン。

 だが、君たちの英断と功績も、誰にも知られることは無い」

 

 4人は面構の言ったことに口が開いていた。

 

「どっちがいい!?一人の人間としては…前途ある若者の"偉大なる過ち"に、ケチをつけさせたくないんだワン!」

 

 しかし、どの道筋原たちは監督不行届で、責任を取らなければならないようだ。

 

「ごめんなさい、筋原さん」

「いいのよ、この代償はその腕ってことで」

「代償が大きいよ……」

 

 筋原はりんごを食べやすい大きさに切り、皿の上に乗せりんごの1つを爪楊枝で刺すと、鏨に差し出した。鏨はそのりんごを笑顔で受け取る。

 

「……よろしく…お願いします」

 

 鏨たち4人は面構に頭を下げた。

 

「大人のズルで、君たちが受けていたであろう賞賛の声はなくなってしまうが…せめて、共に平和を守る人間として…ありがとう!」

 

 面構も、同じように頭を下げる。

 

 この鏨たちの戦いは、こうして人知れず終わりを迎えた。

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

「さて、地飛沫……ちゃんと吐けよ」

「え、今!?」

 

 ──が、鏨の戦いはこれからだった。

 

 

「説明するって言ってただろ、言質は取ってたからな」

「うん、わかってるよごめんなさいだからそんなに怒った顔しないで……本当に、つまらない話だよ?」

 

 面構や他のヒーローたちが去って行った後、病室にはまた出久、飯田、轟、そして鏨だけになっていた。その病室で鏨は3人による事情聴取を受けることとなる。

「ええと、具体的に何が聞きたい?」

「とりあえず、ヒーロー殺しとは昔会ったことがあるの?」

「……うん。

 みんなが聞きたいことは、なんとなく理解出来た、からもう俺の過去話すよ。その方が手っ取り早い。

 

 みんなは、類葉町って知ってる?」

「えっと、確か日本で五本指に入るくらいの治安の悪い町、だよね」

「うん……実は俺、その町で育ったんだ」

 

 3人は鏨の言葉に驚く。

 この日本に、治安の悪い町があることは知っていた。しかし、どこか遠い存在のように思っていた。そんな世界に住んでいた人間が、今ここにいる。

 

「人を騙すのは当たり前、自分が生きることができれば何でもやる。そんな町だったよ」

「……もしかして、地飛沫くんが人間不信だったのって……」

「この町の影響っていうこともある、かな?」

 

 鏨は力なく笑う。

 

「俺は、子供の頃類葉町の居酒屋で働いてた。働くかわりに、寝る場所とご飯もらってた」

「働いてたって、それ…」

「俺には親がいないから。でも、あそこにはそんな子沢山いる。自分でなんとかしなきゃいけない。俺なんか、まだいい方だよ。子供たちがやってる仕事の中には、ポルノビデオとかも……」

「地飛沫くん、ポルノビデオとは?」

 

 そのポルノという意味がわからなかった飯田は、鏨に質問する。他の2人も、いまいちよくわかっていないようだ。

 

「………まあ、子供に()()()()()()をさせたりした物をビデオにして売りに出してる……て言ったらわかる?」

「……?」

「飯田くん、これ以上はやめておこう」

 

 出久は少し気まずそうにしている鏨を見て、助け舟を出す。

 

「地飛沫、続きを頼む」

「あ、うん。

 えぇと、俺はいつかヒーローが、助けてくれるって思ってた、ずっと。そんな時に(ヴィラン)が、俺の働いていた居酒屋を襲撃してきたんだ。俺が四、五歳の頃かな?俺は(ヴィラン)の攻撃で、致命傷を負った。その時にね、個性が発覚したんだ」

 

 出久は、自分のその頃を思い出す。

 その頃は確か自分が無個性だということを知らされた頃だ。それだけでも、自分はひどくショックを受け絶望した。それでも諦められなかったから、今ここにいる。

 

「俺はその時、ヒーローが助けに来てくれたんだって思った。それまでは全然個性とか出る兆候なんて、なかったから。てっきり自分は無個性だと思ってたし……でも、俺を救ったのは、俺自身で、ヒーローでも、何でもなかった。おまけに、その(ヴィラン)…勢い余って殺しちゃったし」

 

 鏨は顔を伏せる。苦しいことを思い出させてしまった、と轟はさっきまでの自分を少し攻めた。ステインとの関係、何故嘘をついたのか。それしか、頭になかった。

 

「一応、正当防衛ってことになったけど、俺は()()()()()が入る小学校に入学することになった。親がいないから、その学校を設立した施設に入ることになった………。

 

 絶望したよ。もう嫌になっちゃってた。誰も味方なんてしてくれない。みんな敵……でもね、それでもヒーローに憧れてた。諦めたく、なかった。オールマイトみたいに、いつでも笑って人を救けるヒーローになりたかった。

 そんな時に、出会ったんだ────ステインに」

 

 

 




台詞が多いよー。

次回からは鏨の過去を書いていきます。
え?鏨、こんなにアッサリ話しちゃっていいの?とか思っている人もいるかも知れませんが。
細かいことは気にすんな!
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