barroco   作:千α

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久しぶり過ぎて文章がおかしいです。


林間合宿
期末テストへ


 

 

「──と言うわけで、夏休み中に林間合宿やるからな」

「はい、わざわざありがとうございます」

 

 保健室にて、鏨は相澤の話を聞く。林間合宿の内容や、参加条件……しかしその鏨の顔は少し青白い。

 

「……俺が聞くのもアレだが…大丈夫か?」

「は、はい!わざわざありがとうございます!」

「………」

 

 地飛沫鏨、雄英に入学してから1番の危機と遭遇した瞬間である。相澤に聞かされた林間合宿の参加条件が、鏨にとって重くのしかかる。

 

「期末テストで、合格点に満たなかったら、学校で補習……」

 

 この言葉を鏨はかれこれ10回以上繰り返していた。

 と言うのも、鏨は勉強が大嫌いなのだ。前回のテストでは堂々の最下。「まあ勉強できなくてもどうにかなるしなー」と思っていた時期もあった、前の自分なら林間合宿に行かず学校の補習だって何も思わなかっただろう……しかし、今はそうではない。

 

「みんなと、林間合宿行きたい、です」

「ならもっと教室に来い」

「それはもうちょっと時間ください」

 

 こうもクラスメイトたちと仲良くしようとするにも関わらず、鏨は未だに保健室登校をやめなかった。職場体験前は教室に来ることも多かったが…それが終わった後、また鏨の様子が変わった。おそらくは最後の一線(・・・・・)が越えられないのだろう。日陰で生きた彼と、日向で生きた彼たちとの間の線は、鏨には簡単に越えられるものではなかった。

 

「先生、俺……自分の出身地、みんなに教えようかなって、思ってて……」

 

 相澤は驚いた。初めて出会った頃は、あんなにも自分の出身地をなかなか言わなかった鏨が、自分から言いたいと口に出したのだから。

 

「でも、それで嫌われたらって……」

「……お前は、そんな理由で誰かを嫌う奴らだと思っているか?」

 

 鏨はしばらく考えた後首を横に振る。

 

「話したいなら時間が掛かってもいい、ゆっくりでいい。アイツらも、いつかはそういった場所に派遣されるかもしれない。もしかしたら、お前の経験が役に立つかもしれないしな」

「……うん。テスト、できるだけ頑張る、けど、多分補習だからその時はみんなによろしくお願いします」

「諦めるのが速すぎないか……?」

 

 

 

 

 

 今朝の話を振り返りながら、鏨は食堂へ向かう。いつもは体育祭で友人になった(と思われる)、森賀林子と一緒なのだが、「クラスメイトたちとたまには一緒に昼食食べたら?」という鏨の言葉に従いクラスメイトたちと食べるようだ。

 

 食堂についてレバー定食を頼んだ後、席を探そうと辺りを見渡すと目に入ったのは出久と飯田、轟だった。そういえば、職場体験から帰ってきた時から話していないな…と思い3人に話し掛ける。

 

「えっと…一緒に食べていい?」

「地飛沫くん!」

 

 3人に話し掛けると、出久はパッと明るい顔を見せる。飯田と轟もそうだった。

 

「鏨ちゃん、今日初めてね。おはよう」

「おはよー」

「いや、もうお昼だよ」

 

 3人の向かいには、お茶子と梅雨、葉隠が座っていた。

 

「鏨ちゃんはテストどうなの?」

「うーん…実技は、まあ大丈夫、かな?でも……みんな、林間合宿楽しんできてね」

「どうしたんだ地飛沫くん、やけに自信が無いが……」

 

 全員の視線を受け、鏨は目をそらす。

 

「……地飛沫くん、聞いたらその悪いんやけど…前のテスト、何位だった?」

「……二十一位」

 

──最下位!!?

 

「地飛沫くん、見た目はめちゃくちゃ勉強できそうなのに!?」

「勉強なんて、人生でまともにやって来たこと、なかったから…あ、でも国語得意」

「地飛沫の意外な面を見たな……」

 

 鏨は飯田に箸の持ち方を指摘されながら昼食を取る。

 

──そういえば、クラスの子と一緒にご飯食べるのは初めてだ。

 

 飯田に言われた通り箸を持ち直し、鏨は思う。今までの自分じゃ多分無理だった。そう思うと自然と笑がこぼれた。

 

「普通科目は授業範囲内からでまだなんとかなるけど、演習試験が内容不透明で怖いね…」

「突飛なことはしないと思うがなぁ」

「普通科目はまだなんとかなるんやな……」

「一学期でやったことの総合的内容」

「とだけしか教えてくれないんだもの、相澤先生」

 

 鏨は豆を取るのに苦戦しながら、会話に耳を傾ける。轟も鏨の箸の持ち方が気になったのか、自分の箸の持ち方を見せ、鏨はそれを手本にする。見よう見まねだが、轟と同じように持った鏨は轟にドヤ顔、そんな鏨に轟は満足そうに頷く。

 

「試験勉強に加えて、体力面でも万全に…あイタ!」

 

 出久の突然の声に驚き、鏨はやっと掴めた豆を落とす。

 

「ああ、ごめん。頭大きいから当たってしまった」

 

 そう言ったのは、よく林子のクラスで見かける生徒だ。彼は出久の後ろを通る際肘を当ててしまったと言う。

 

「B組の!えっと…物間くん!よくも!」

 

 鏨は物間寧人に興味がないようで、一瞬見た後豆掴みに再チャレンジを始める。

 

「君ら、ヒーロー殺しに遭遇したんだってね」

「!」

 

 鏨は急に出てきたステインの話題に動揺し豆を取りこぼす。

 

「体育祭に続いて注目を浴びる要素ばかり増えていくよね、A組みって。ただ、その注目って決して期待値とかじゃなくて、トラブルを引きつける的なものだよね」

 

 鏨はここでようやく自分たちが煽られていることに気が付き、チラリと物間を見る。

 

「あー、怖い。いつか君たちが呼ぶトラブルに巻き込まれて僕らにまで被害が及ぶかもしれないなあ!ああ、怖…ふっ!」

 

 しかし、その時物間は突然の手刀により気絶する。

 

「シャレにならん。飯田の件、知らないの?

 ごめんなA組。こいつちょっと心がアレなんだよ」

「拳藤くん!」

「鏨様ー!こんな所でお会い出来るなんて、私とても嬉しいですわ!」

「あ、林子ちゃん」

 

 物間に手刀を入れたのは、B組委員長の拳藤一佳だった。その後からは林子がやって来る。

 

「林子ちゃん、今日はご飯断っちゃってごめんね」

「いいえ、鏨様の私には見せない面も堪能させて頂けましたので、とても有意義な時間となりましたわ……!」

「そう?なら良かった」

 

 林子は鏨の隣へ来る。

 

「林子ちゃん、テストどう?できそう?」

「ええ、バッチリですわ!林間合宿では、その、よろしくお願いします致しますわね?」

「あー、そのことなんだけど、俺行けそうにない」

「な、何故ですの!?」

 

 林子はショックを顔に貼り付け鏨に迫る。

 林子の林間合宿中の計画では、ほぼ恋人(と思っている)の鏨と一緒にいることになっている。その本人がいなければ、意味がないのに!

 

「筆記がさ……演習試験ならまあ行けそうだけど…」

「そんな……!いいえ、まだ諦めてはいけませんわ鏨様!この森賀林子、鏨様と林間合宿へ行くためなら何でも……」

「ほら林子、早く行こう」

 

 興奮気味に鏨に詰め寄る林子を、拳藤が止める。その手には気絶した物間。

 

「で、でも拳藤さん!」

「今日は私とご飯たべるんだろ?」

「そうですけれど……」

「俺のことはいいからさ、行ってきなよ」

 

 鏨は林子に微笑むと顔を赤らめ、高速で頷き物間を引きずる拳藤も元へ急いだ。

 

「鏨ちゃん、いい加減に気付いてあげないと流石に可哀想よ」

「え?」

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

【放課後・A組の教室】

 

 

 爆豪勝己はイラついていた。

 目の前の彼のせいで。

 

「爆豪くん、ここってどうすればいいの?」

「そこさっきも教えただろうが!!」

 

 それもこれも、教室にノートを忘れるなんてことをした数分前が原因だ……。

 

 

 

 教室にノートを忘れたことに気が付いた爆豪は、その道をUターンし学校へ戻る。そして通りかかった自動販売機の前……そこにいたのは、爆豪がクラスの中でも気に食わない部類に入る…地飛沫鏨の姿。そこで気にせずサッサと行ってしまえば良かった、なぜあそこで立ち止まったのだろう。

 

「ば、爆豪くん……」

 

 こちらに気が付いた鏨の目には薄らと涙を浮かべている。嫌な予感を察知した爆豪はそのまま進もうとしたが……。

 

「待って!待ってお願い!!」

「な!?は、離しやがれこのクソ女男!!」

「お、女男!?それ、俺の髪の毛の長さ見ていってる!?」

 

 ガッシリと爆豪の腕を掴む鏨の腕力は凄まじいものだった。どうしても爆豪を逃がしたくはないようである。

 しばらくの攻防が続いた後、息が切れてきた爆豪は話だけは聞くことにした。しかし息が切れている爆豪に比べ、鏨はケロりとしているものだから、腹の立つことこの上ない。

 

「あのね、じどーはんばいき?の使い方よくわかんなくて」

「………………はあ?」

 

 一瞬、爆豪は鏨の言っている意味がわからなかった。このご時世に自動販売機の使い方を知らないと言う奴がいるなんて……。

 

「……チッ」

 

 爆豪は舌打ちを1つ打つと自動販売機の前に進む。

 

「おい、金!」

「え、教えてくれるの?」

「テメェが教えろ()ったんだろうが!!」

「あ、うん……!ありがとうね、爆豪くん。はいコレ」

 

 そう言いながら鏨は爆豪に1枚の札を手渡す。それを見て爆豪は固まった。

 

「どうしたの?」

「なんで二千円渡してんだ!?このクソ野郎!」

「二千円札、使えないの!?」

「自販機じゃほぼ使えねェよ!!」

 

 鏨は大変驚いており、爆豪に突っ返された2000円札を見る。

 

「でも、俺今これしか持ってないよ……」

「じゃあ諦めろ、女男」

「でも、上鳴くんがコレ美味しいからって……」

 

 鏨は未練がましそうに自動販売機を指差す。

 その目は、期待している目だ。

 

 

 

 

 

「ありがとうね、爆豪くん」

「クソがぁ……」

 

 結局、その2000円札は爆豪の財布の中にあった2枚の1000円札と両替することになり、鏨は無事に目的の物を購入することができた。

 喜ぶ鏨を見て、爆豪はサッサと教室へ向かうが、それに鏨がついてくる。

 

「付いてくんじゃねェ!殺すぞ!!」

「え、でも俺もコッチに用があるから……」

「用?」

 

 教室に着くと、窓側の1番後ろの席に、教科書やノートが並べられていた。

 

「勉強してたんだ…俺、馬鹿だから……」

 

 そう言いながら、鏨は席に座る。

 爆豪はそんな鏨を無視して目的の物を机の中から取り出し、教室から出ようとする。そこで、爆豪の耳に入ったグスンっという音……何故、ここで振り向いた……爆豪は後悔する。

 

 

 爆豪勝己はイラついていた。

 目の前の地飛沫鏨のせいで。

 

「やったー!できたー!」

「一問解くのに何分掛かってんだテメェは!」

「うん、ありがとう」 

「話聞いてんのか!?」

 

 数学の問題がやっとできた鏨は、そう言うと次の問題に手を付ける。爆豪は鏨が何故ここまで勉強ができないのか、その理由がわかってきたような気がする。

 まず、一般的な勉強はあまりしてこなかったのだろう。掛け算でも手間取るほどなのだから。そしてもう1つ、鏨は1対1(マンツーマン)で教えたほうがいいのでは…ということだ。1対多では、教える側は大勢を相手にしなければならないため、全員をちゃんと見る事はできない。最後の1つは、保健室登校をして、授業はモニターを通しているがイマイチ集中が授業に向いていない…ということが、鏨がここまで勉強ができないの要因なのだろう。あれだけ教えたからか、2問目は自分の力で何とかしようとしている。

 

「俺はもう帰るからな」

「え!?帰るの!?」

「なんでそんなに驚かれたんだ!?」

「じゃあ俺も帰ろうかな?一緒に帰ろ」

「うるせぇついてくんな死ね!!」

 そんな爆豪のセリフもなんのその、鏨は帰り支度を始める。

 

「よし、行こう!」

「一人で帰れ」

 

 爆豪の言葉は鏨に虚しくスルーされ、結局一緒に帰ることになってしまった。

 

 

 

 

「爆豪くん、俺からも一つ教えてあげるね」

「あ"ぁ"?」

 

 鏨は帰宅中も爆豪に勉強について質問していた。鏨の機嫌が上昇するのに比例して爆豪の機嫌は急降下していく。

 やっと鏨との帰路が別れる場所まできた。

 そこで鏨は爆豪に微笑みながらそう言った。テメェに教えられることなんざ何もないと、爆豪は言おうとしたが、その前に鏨は口を開く。

 

「死ねとか殺すとか……人に向けて言わない方がいいよ…言霊ってね、凄く怖いから……ずっとそれが言いたかった」

 

 その目は、さっきまでのフワフワした物と売って変わり、暗く強い物へと変わっていた。

 

「じゃあまた明日もよろしくね!」

「教えねぇよ!!」

 

 しばらく固まっていた爆豪だが、鏨の最後の言葉に反応し怒鳴る。

 鏨は何も言わず、手を振って爆豪に別れを告げた。

 

 




とりあえず豆を取りこぼす鏨が書きたかった。
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