鏨は森の中を走る。ところどころに道であった場所がある。
「林子ちゃん、ちゃんとついて来れてる!?」
「は、はい!大丈夫ですわ!」
鏨の2歩後には、息の切れた林子がついて来ている。
そこで、何かの足音が聞こえてくる。
「林子ちゃん!来たよ!」
「は、はい!」
茂みの中から飛び出してきたのは、ドーベルマンだった。そのドーベルマンは鏨に飛びかかる……。
「な!?」
「鏨様!!?」
【数時間前】
「それじゃあ演習試験を始めていく。
この試験でももちろん赤点はある。林間合宿行きたけりゃ、みっともねえヘマはするなよ」
あの日から筆記試験のために、鏨は放課後あらゆる手で爆豪を引き止め試験勉強をすることとなった。それにいつの間にか切島も参加し、放課後の教室はいっそう騒がしくなった。イライラしながらも、なんだかんだ言って最後まで面倒を見てくれた爆豪には感謝しかない。
しかし、それでも筆記試験はできたかどうか微妙なところだ。いつもよりはできた、ような気もする……そんな筆記試験を何とか乗り越え、演習試験当日になった。
「先生多いな…?」
「5…6…9人?」
鏨たちの前にズラリと並ぶ先生たち。プロのヒーローが並ぶと圧巻である。
「あれ?林子ちゃん、なんでいるの?」
「そ、それが私も…B組のみなさんとは別々によばれまして……」
A組の中には何故かB組の林子もいる。鏨と林子は首を傾げ考えるが、結局結論は出ない。そこで相澤が口を開く。
「諸君なら事前に情報仕入れて、何するか薄々わかってるとは思うが…」
「入試みてぇなロボ無双だろ!」
「花火!カレー!肝試──!」
上鳴と芦戸が相澤の言葉に応答する。しかし、そこで相澤のマフラーから校長の根津が現れた。
「残念!諸事情あって、今回から内容を変更しちゃうのさ!」
「校長先生!」
「変更って…」
驚くA組の面々は、根津から説明を受けることとなる。
「これからは対人戦闘・活動を見据えた、より実戦に近い教えを重視するのさ!というわけで…諸君にはこれから
「先…生方と…!?」
驚くのも無理はない。まさか、こんな試験内容になるなんて誰も思っても見なかっただろう……。
「尚、ペアの組と対戦する教師は、既に決定済み。動きの傾向や成績、新密度………諸々を踏まえて独断で組ませてもらったから発表してくぞ……」
次々にペアと相手をする先生たちを伝えられて行く。
──緑谷くん、オールマイトと……いいなぁ、俺も戦ってみたかった……。
なんてことも考えていたが、自分の名前を呼ばれたために、鏨はそちらに意識を向ける。
「最後に地飛沫と森賀、お前たちの相手は……」
「
「よ、よろしくお願い致しますわ……」
1歩前に出てきたのは、白いジャケットを羽織った見たことのない男だった。
「えと、相澤先生?」
「なんだ?」
「なんで、林子ちゃんは、A組と一緒なの?」
「それは後で説明する」
鏨の質問は相澤に受け流された。
「それぞれステージを用意してある、十組一斉スタートだ。試験の概要については、各々の対戦相手から説明される。移動は学内バスだ。時間がもったいない速やかに乗れ」
・
・
・
「お前たち二人は、チームでヒーローになることを視野に入れていると言っていたな?」
「ええ、それが私がA組のみなさんと受けることになった理由ですの?」
「そうだ。とりあえず、今の段階でどこまでやれるのか…それも見ることになっているから、気張れよお前たち」
バスの中で、二人は犬園から何故林子がここへいるのかを聞かされた。
試験会場は大型デパートの中。そこに着くと、犬園から試験の概要を説明される。その内容は、30分以内に『ハンドカフス先生に掛ける』or『どちらか1人がステージから脱出する』という単純であり難しいものだ。
「質問」
「なんだ?」
鏨は1つ、気になったことがあったため、犬園に質問することにした。
「周りのこと……建物の被害とか、気にしなくていい?」
「ああ、とりあえず今はそれは無視していい」
犬園の答えを聞いて、鏨は林子に耳打ちする。
「…林子ちゃん、試験が始まったらすぐに植物を活性化させて。先生を巻いたら様子見て作戦会議、いい?」
「は、はい。わかりましたわ」
二人はヒソヒソと初めの一手を伝え合う。
「まあ、試験だしな。俺は二人よりは格上である自信がある。
で、教師は今回この超圧縮重りをつける」
「先生、そんなの別にいいのに」
「自信満々だな。まあ、素直にこのハンデを受け取っておけ。お前は一人で試験を受けるわけじゃあないからな」
そう言われても、鏨は少しどこか不服そうである。
『皆、位置についたね。
それじゃあ今から雄英高一年、期末テストを始めるよ!
レディイイ───…ゴォ!!!』
根津の合図で、期末テストがついに始まった!
「林子ちゃん!」
「はい!」
林子に支持を出すと、こちらへ向かってくる犬園の目の前に大木が現れた。
「これは……」
デパートにあった観賞用の植物、外で植えられていた植物の根などがあちらこちらから伸びている。
「噂には聞いていたが……森賀の個性、ここまで広範囲に影響するなんてな…」
あたり1面はデパートではなく、森に変わっていた。
「視覚を遮って身を隠す…その間に対策でも練る気か」
鏨と林子は活性化させた植物を利用して2階までやって来た。
「……とりあえず、様子を見よう。あの人の個性もよくわかってないし」
「そうですわね。これだけの植物、何か対策するために個性を使わないはずありませんものね」
二人は2階の吹き抜けから1階を見る。いつ、どんな個性を発動するか…それを見るために、意識を集中させる。
「………たしか、林子ちゃんの個性って相手に敵意がないと道を塞がないんだっけ?」
「ええ、そうですけど……」
「……林子ちゃん、俺一つ間違えたかもしれない」
「え?」
鏨はエスカレーターの方を見る。
「足音、聞こえる」
「わ、私には何も聞こえませんが……」
「林子ちゃん、下がって!」
エスカレーターから登ってきたのは……。
「ドーベルマン!?」
ドーベルマン…19世紀末、ドイツのブリーダー、カール・フリードリヒ・ルイス・ドーベルマンによって、警備犬としてジャーマン・シェパード・ドッグとジャーマン・ピンシャー、ロットワイラー、マンチェスター・テリアとの交配により生み出された犬である。体は細身だが全体的に筋肉質で敏捷性、走力に優れる。そのスタイルから「犬のサラブレッド」とも呼ばれている。
「油断したな!」
ドーベルマンはそう言いながら鏨たちに襲いかかる。
「犬が喋った!?」
「まさか、それが先生の個性!?」
"個性"・ドーベルマン。その名の通り自身をドーベルマンに変身させる個性。
──匂いを追ってきたのか!
鏨は舌を打つ。
「ごめん林子ちゃん!俺の判断ミスだ!
とりあえず森の中に戻ろう!!」
「は、はい!しかしエスカレーターは先生の後ろ……へ?」
林子が言い終わる前に、鏨は林子の脇に腕を回す。そしてそのまま飛び降りた。
「ええええ!!!?」
林子の悲鳴とともに2人の姿は見えなくなった。
「……まさか、飛び降りるとは…地飛沫の判断力はやはり、なかなかな物だな」
──森へ入れば、少しでも匂いを誤魔化せる……とでも思ったのか?
デパート2階で高笑いが響く。
そして現在に至る。
「鏨様!!?」
「林子ちゃん、走って!」
「は、はい!」
鏨は噛み付いてきた犬園を蹴り飛ばす。
ここは時間を稼ぐことが必要だと判断し、林子を先に逃がすことにする。
「なんだ、森賀は邪魔だったのか?」
「いや、林子ちゃんにはやってもらいたいことあるから……先に行ってもらわないと…」
鏨はそう言うとナイフを2本取り出した。
「なるほど、お前は時間稼ぎか?」
「うん」
「逃げるってことはしないつもりか……」
「逃げるのは、俺も林子ちゃんも、したくないってことで、一致してるから、逃げるのは、最終手段」
──林子ちゃん、できるだけ早くお願いね………。
鏨は犬園に向かって走り出す。
いつの間にか、UAが1万超えてたことに驚いた千αです。
これからもよろしくお願いします。