barroco   作:千α

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倉庫を掃除していると、母のギターが出てきました。
とりあえずお盆までに掃除が終わったので、スッキリです。


隠す

 

 鏨がそれを見つけたのは偶然だった。

 

「地飛沫くん?」

 

 靴を一緒に買いに行くメンバーは、上鳴と芦戸、葉隠と飯田だった。

 急に立ち止まった鏨に、飯田は思わず声を掛ける。何があるのかと未だに動かない鏨の視線の先を見ると、そこには……。

 

「これ、ヒーロー殺しだよな!」

「不謹慎だろー?」

 

 鏨の目の前の店に、あのヒーロー殺し・ステインを模している覆面がある。同い年くらいの少年たちがそれについて言及しているが、その覆面を面白がって装着している。鏨はそれをジッと見ていた。

 

「あー、えっと!地飛沫くん!」

 

 ヒーロー殺しは鏨の師匠。それを知ってしまっているからこそ、どう声を掛けたらいいのかわからなくなった。

 自分の兄はヒーロー殺しにヒーロー活動ができないほどの傷を負わされてしまった。しかし、たとえ鏨がそのヒーロー殺しの弟子であろうと友人なのだ。それに代わりはないし、これからも変わらない。

 鏨は少年たちがいなくなると、その店の覆面を見る。どうするつもりだろう、と再び声を掛けようとした時だった。鏨は、その覆面を装着する。

 

「どう?似合ってる?」

 

 二カッと笑いながら、飯田にそう聞く。

 

「地飛沫くん……ヒーロー志望者が、それはよくないと思うぞ」

「だよね」

 

 鏨はそう言うと覆面を取り、元の場所に戻した。

 

「飯田くん、気にしなくていいからね。ステインは(ヴィラン)。いつ捕まっても、おかしくなかったんだから」

 

 その鏨の顔は、少し悲しそうだったような気がした。

 

 

「どうしよう、みんなとはぐれちゃった……」

 

 いろいろと考え事をし過ぎたせいか、鏨は飯田たちとはぐれてしまい、とりあえず最初にA組のみんなとやって来ていた場所へ戻ろうとした、時だった。

 トンっと誰かの腕に肩がぶつかった。

 

「あ、ごめんなさい!」

「……………っ」

 

 鏨は、自分の顔を見て固まった青年に首をかしげる。

 

「大丈夫、ですか?」

 

 当たりどころが悪かったのか?それとも慰謝料でも要求されるのだろうか、と鏨はグルグルと思考を巡らせる。

 

「あ、いや……大丈夫…」

「そっか、良かった…」

 

 慰謝料請求されるかと思った鏨は、心底安堵し、胸を撫で下ろす。ぶつかったらすぐ謝って、まずい雰囲気になれば即退散。あの町で培ったこの習慣は、どうにも抜けそうにない。

 

「本当に、ごめんなさい!」

 

 鏨はもう一度謝ってから、その青年から離れた。

 少し早足で目的の場所に着くと、そこは何やら大騒ぎになっていた。その中心にいるのは、出久とその隣のお茶子。A組の何人かも合流している。

 

「み、緑谷くん!?」

「地飛沫くん…」

「いったい、何が……」

 

 慌てて出久の元へ鏨は駆け寄る。

 

「……死柄木、弔が…」

「死柄木弔……?確か、(ヴィラン)連合の…えと、学校を、襲撃したって言う?ここに、いたの?」

 

 出久はこくんと頷く。

 雄英高校襲撃事件。その頃、鏨はまだ完全な保健室登校で、A組のクラスメイトたちとは顔も合わせていない時期だった。その事件を知ったのは、担任の相澤が負傷し運ばれた、と言う知らせを受けてからだった。リカバリーガールは事前に知っていたようだが、これを鏨に言うと飛び出してしまうだろうという判断で鏨には秘密にされていた。

 ちなみに、保健室にいたのに何故、保健室に運ばれた出久とオールマイトに出会わなかったかと言うと、その頃には鏨は保健室を出て相澤の元へ向かっていたため、入れ違いになっていたのだ。

 

「そっか……」

 

 鏨は顔を歪めた。

 

──死柄木弔……見つけたら、一発ぶん殴ってやろうかと思ってたのに……。

 

 そんな物騒なことを考えながら、その日を終えた…。

 

 

───────────────────────

 

 

 

 死柄木弔がそれを見たのは偶然だった。

 偶然にも緑谷出久と出会い、"信念"というものを見つけた死柄木は、人混みの中を進む。そこで、トンっと誰かの肩がぶつかった。

 

「あ、ごめんなさい!」

 

 そう言って、謝る彼を死柄木は知っていた。雄英高校を襲撃した際にはいなかったが、体育祭とヒーロー殺しステインとの交戦…それを見ていた時に、その赤い髪はよく目立った。そういえば、ちゃんと見ていなかった…と死柄木はそう思い返しながら、この時初めて彼の顔をしっかりと見て、固まった。

 思い出すのは大好きだった灰色の目と赤色の髪

 

「大丈夫、ですか?」

 

──この子が産まれたら…お兄ちゃんになってあげてね──

 

 自分を心配して眉の端を下げる彼は……その目と髪を持っていた。

 

「あ、いや……大丈夫…」

「そっか、良かった…」

 

 彼は「本当にごめんなさい」と謝りながら、人混みの中へ消えていった。

 

──似ていた……あの人(・・・)に、似ていた…。

 

 思い出すのはセーラー服の少女。彼女はそのお腹を愛おしそうに撫でて微笑んでいた。

 

「なんか良いことでもあったかい?」

「──っ!」

 

 死柄木の肩に手が置かれた。すぐさま後ろを振り向くと、そこにいたのはアイスを持った中学生くらいの少女。

 

「……インプラントか?」

「よくわかったね」

 

 少女の姿をしたインプラントはニッコリと笑うと、死柄木の手を引く。

 

「とりあえずここから離れよう。あ、アイス食べる?」

「いらない。なんでアンタがここに……」

「キミのことが気になったから、じゃあダメかな?」

 

 インプラントは足早に人混みの中を進む。人にぶつかろうがお構い無しだ。それでもアイスを死守するのだから、なかなかの身のこなしと言えるだろう。

 

「……さっきの子、気になるのかい?」

「はあ?」

「そう何度も後ろをチラチラ見てたらわかるよ。安心しなよ、もう少ししたらキミにも紹介してあげるから」

「紹介する……?アンタの知り合いか何かだったのか?」

 

 死柄木の問に、インプラントは振り向きニッと笑う。その顔を見れば、また何か企んでいることは明白だ。

 

「まあ、そのためにもキミらには協力してもらうからさ」

 

 インプラントはアイスを一口食べると、また前を向いて死柄木をグイグイ引っ張り始めた。

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

──「オールマイトも、救けられなかったことはあるんですか…?」──

 

 出久の問に、オールマイトは答える。

 救えなかった人々はこの世にたくさんいる。しかし、そこで立ち止まってはいけない。だからこそ、笑って人々の、ヒーローたちの、悪人たちの心を灯す。オールマイトはその心を出久に伝えた。

 

「そういえば、地飛沫少年にも似たようなことを言われたな……」

「地飛沫くんが?」

「アレは、初めて地飛沫少年に会った時だった……」

 

──「救けられない人がいること、どう思ってる?」──

 

「あの時の目は、忘れられない……」

 

──恨みを持っているわけじゃない、怒りを持っているわけでもない……それなのに、私に向けるあの目は……純粋な闇そのもの…大きな虚無だ。

 

「オールマイト?」

「いや、何でもない……」

 

 そう、何でもない。あの日以来、鏨はあの目をオールマイトに向けることは一切しなかった。あの時、あの一瞬だけ……。

 あの後、鏨についてオールマイトは調べた。そして驚いた、彼はあの類葉町の出身であったことに……そして、疑問に思うことができた。

 類葉町には1度足を運んだことがある。あの町はこの日本の中でも治安の悪い町にも関わらず、政府からは手出し無用とされていた。ここはまだマシだと、そう言われていたが…オールマイトはついにその町に入った。

 結果は、問題なし。オールマイトの前では事件1つ起きなかった。それどころか、類葉町のここ何年もの事件発生報告はごく僅かだった。

 

──あの町は、何かを隠している……だからこそ地飛沫少年がヒーローになることには、意味がある!

  

 オールマイトは出久を見る。きっと、この子が鏨を変えてくれると、ほう思っていた。その結果、本当に鏨は変わってきた。周りを見る余裕もできてきた。初めて出会った頃の誰も寄せ付けようとはしない、刺のある少年ではない。

 

 オールマイトは、出久の成長を楽しみにしていると同時に、鏨の変化も楽しみにしているのだった。

 




え、鏨の設定濃すぎ?二次創作だから、で許してください:( ;´꒳`;):プルプル
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