barroco   作:千α

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いつの間にか、8月も後半……学校…行きたくねぇ……。


2日目

 

 

 

【合宿2日目 AM5:30】

 

 普段まだ寝ている時間だからか、外へ集まったA組たちは眠そうにしている。鏨も例外ではなく、目をこすりながらフラフラしていた。

 

「本日から本格的に強化合宿を始める。

 今合宿の目的は、全員の強化及びそれによる"仮免"の習得。具体的になりつつある敵意に立ち向かう準備だ。心して臨むように」

 

 相澤の合宿の目的を説明された彼らは気を引き締める。

 

「というわけで爆豪、こいつを投げてみろ」

「これ…体力テストの…」

 

 相澤が爆豪に投げたのは、体力テストで使った測定用のボールだ。

 

「前回の…入学直後の記録は705.2m…どんだけ伸びてるかな」

「おお!成長具合か!」

「この三ヶ月色々濃かったからな!1kmとかいくんじゃねえの!?」

「いったれ、バクゴー!」

 

 爆豪はその声援を受け、腕を慣らしながら測定位置へ移動する。どうやら爆豪も、この三ヶ月での成長を試すのが楽しみなようだ。

 

「んじゃよっこら…くたばれ!!!」

 

──……くたばれ…。

 

 個性を発動し、爆豪は思いっきりボールを投げる。しばらくすると、相澤が持っている記録を測っていた端末から音がする。どうやら記録が測れたようだ。

 

「709.6m」

「!!?」

「あれ…?おもったより…」

 

 4.4m…()()()()の経験をしたというのに爆豪の結果はそこまで伸びているわけではなかった。前日に相澤から説明を受けていた鏨だったが、この結果には驚いた。そして再確認する。

 

──やっぱり、個性の強化って、難しい……。

 

「約三ヶ月間様々な経験を経て、確かに君らは成長している。だがそれはあくまでも精神面や技術面、あとは多少の体力的な成長がメインで個性そのものは今見た通りで、そこまで成長していない。だから──今日から君らの個性を伸ばす。死ぬ程キツイがくれぐれも…死なないように──…」

 

 

 

 

 

「──と言われたけど、やること昨日と変わらないんだけどね」

 

 A組の生徒たちは、それぞれのプロヒーローたちに特訓を見てもらいながら、個性強化を目指していた。だが、鏨は森の中で寝転んでいた。サボっているわけではない、決してそんな無駄な時間の浪費をしているわけではない、と言い訳しているが、正直鏨は行き詰まっていた。

 

「何か、違うんだよな……」

 

 鏨の身に起きているのは、個性の劣化。ヒーローになるため、(ヴィラン)と戦うために、休むことなく個性を鍛えてきた彼らには、到底無縁の話である。そこで、鏨は幼い頃のような環境に置いてその頃の感覚を取り戻そう、という試みだった。昔、ステインに放り込まれた場所との違いを考える。しかしいくら考えても、よくわからなかった。そのうちとうとう考えるのを止めた。

 

「まあ、そのうちわかる、かな?そう信じたいけど……とりあえず、個性を上手く使う練習しないとな。あれこれ考えてても、それをしないと話にならない…」

 

 鏨はそう言いながら、森の奥へ奥へと進む。犬園には、あまり奥へ行くなと言われているが、すぐ帰ってこれる位置ならば別にいいだろう。

 しばらく進むと、ガサリという草と草が擦れる音が聞こえてきた。鏨がそちらを見ると、そこにいたのは1匹のうさぎ。

 

「……お前、迷子か?」

 

 そう話しかけてみるが、野生のうさぎは警戒して近づいてこない。

 

「ここがあそこ(・・・)なら、すぐ捕まえて、食用にしてるとこだよ。お前、運がいいな」

 

 なんとも物騒なことを言っているが、本人は至って真面目である。しかしその内容をなんとなく理解したのか、うさぎは鏨の前から姿を消した。

 

「………まあ、そうなるよね」

 

 しかし、ふと考え直す。あの頃、自分の食料を確保するため、毎日うさぎや魚なんかを追いかけていたではないか……と。

 

「食べないけど、追いかけさせてもらおう」

 

 鏨は走り出す。

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

「順調か?」

「…さあな…匂いはそう遠くない、アイツご丁寧にすぐ帰って来れるような場所ウロウロしてるよ。素直なんだか反抗的なんだか……」

 

 相澤に話しかけられた犬園は、読んでいた本から目を離してその問に返答する。

 

「相澤先生!」

 

 ガサガサと草が揺れたと思うと、草むらから鏨が現れた。急に現れた鏨に驚く相澤と犬園だが、その手に持っているものを見てさらに驚く。

 

「相澤先生!見て!うさぎ!」

「……可哀想だから、放してやれ」

「えー…」

 

 鏨はそう言いながらも、素直に相澤の言うことを聞きうさぎを森へ放した。

 

「それで?地飛沫、調子はどうなんだ?」

「まあまあです。なんか、こう……パッとしなくて…あ、でもピクシーボブさんが、たまに地形とか変えてくれて、マンダレイさんがアドバイス?してくれるし、ラグドールさんは……なんかよくわかんないけど…結構、助かってます」

 

 アバウトではあるが、鏨はプッシーキャッツの面々の教えをちゃんと受けているようだ。

 

「なら、地飛沫もうそろそろ個性を使うのをやめにしておけ」

「え!?なんで!?」

 

 鏨は思わず叫んだ。個性を伸ばすには個性を使い続けることが鍵となる、のにも関わらずそれをやめろと言われた。

 

「誰も血を流さないこの場所では自分のを使うしかなねぇ…お前、貧血なって明日まで持たねぇぞ」

「だが訓練自体をやめろとは言っていない、虎のところまで行って緑谷と一緒に訓練だ」

 

 鏨の個性は体内から体外へ出た血液、しかも5分しか使えない…何度もまともに使っていたら身体に悪い。他の個性なら、使えば使うほど個性は伸びる。しかし、鏨の個性は日頃からの体調管理も視野に入れなければならない。ここへ来て、鏨の食事は鉄分の多いものがメイン、就寝時間も他の生徒に比べやや早めになっている。

 

「先生、俺行ってくるね」

 

 鏨は相澤と犬園に手を振り虎と出久のいる場所へと向かった。

 

「……血操系上位個性"赤の庭(レッドガーデン)"…か、ブラドに任せるのも一興かと思ったが……こうも制約があるとな…」

 

 犬園は、もう1人の雄英の教師を思い浮かべる。

 鏨の個性はまだまだ粗が見えるが、もし時間の限界がなければそれは血操などの個性の上位に立つ存在だ。

 

「この合宿で、どこまで伸びるか……」

「それをどうにかするのは地飛沫自身だ。俺たちがそのヒントを見つけてやる」

 

 犬園は相澤の言葉に頷くと、訓練をしている生徒たちに目を向ける。

 

「懐かしいな…」

 

 その犬園の声は、少し震えているような気がした。

 

 

 

 

 

「緑谷くん!」

「あ、地飛沫くん……」

 

 鏨は緑谷を見つけるとそこへ駆け足でやって来る。

 

「地飛沫は、森の中で訓練じゃ……?」

「そうだったんだけど……これ以上やると貧血なって明日まで持たないからって……血液には、限界あるし」

「たしか、血液って三分の一なくなったら、大変なことになるんだよね……?」

「うん。長時間三分の一、短時間の大出血なら五分の一で軽く死ねる」

 

 サラッと笑顔で怖いことを言ってのける鏨に、緑谷は顔を青くさせ「へ、へぇ〜」と言うことしかできなかった。

 

「他の人のが使えればいいんだけど、そういうわけにもいかないしね。緑谷くんは、なにしてるの?」

「え、ええと…」

「ほう、自らこのブートキャンプに参加するか…」

 

 ザッと2人の前にやって来たのはプッシーキャッツの虎だ。

 

「…よろしく?」

「早速だ、我に撃ってこい」

 

 鏨は撃つの意味がよくわからず首をかしげたが、つまり攻撃してこいということだとすぐ理解し、虎に向かって拳を振るう。

 

「──ほう!なかなかやるじゃあないか!!だがまだまだ甘ぁい!!」

「なっ!?」

 

 しかし鏨の攻撃は簡単に避けられ、逆に自分の頭に一撃もらう。

 

「ここでは掛け声は「イエッサァ!!」だ!!」

「えぇ……」

 

──地飛沫くんの本気で嫌そうな顔、久しぶり見た……!

 

 正直、あまり信用していない人物にあれこれ命令されたくない鏨は、せめての反抗とばかりに顔を歪める。

 

「掛け声は!!?」

「イ、イエッサ!?」

 

 しかし反抗も虚しく、虎の気迫に鏨はビクリと肩を震わせる。

 こうして、鏨は虎のブートキャンプに参加することになったのであった。

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

【PM4:00】

 

「さァ昨日言ったね「世話焼くのは今日だけ」って!!」

「己で食う飯くらい己でつくれ!!カレー!!」

 

 テーブルには食材が並んでいる。 昨日は彼女たちが用意してくれた食事だが、今日は自分たちで作るようだ。

 

「イエッサ…」

「アハハハハ、全員全身ブッチブチ!!だからって雑なネコマンマは作っちゃダメね!」

「確かに…災害時など避難先で消耗した人々の腹と心を満たすのも救助の一環…さすが雄英、無駄がない!世界一旨いカレーを作ろう皆!」

──飯田、便利。

 

 やる気満々な飯田と、元気がない生徒たちの声を聞いて、鏨はおかしくて笑う。

 

 

 

「地飛沫、よく包丁でニンジンの皮むけるよな…すげぇ!」

「え、ああ……こんなの()()ぐのと同じ要領だよ……!」

「ごめん!それ何の皮!!?」

 

 ピーラーを使わずニンジンの皮を剥いている鏨は、上鳴に褒められると照れ笑いをしてみる。

 

「地飛沫ー!ジャガイモもお願い!」

「うん!」

 

 鏨はニンジンをむき終えるとそのままジャガイモに取り掛かる。鏨が持つのは包丁、にも関わらずピーラー勢よりもむくのが早いため、いつの間にか食材の皮むき担当になっていた。

 

 

「いただきまーす!」

 

 カレーの用意が出来ると、生徒たちは席につきいっせいにカレーを口の中へほおばった。

 

「地飛沫、お前のはこっちな」

「うん、ありがとうね、犬園さん」

 

 鏨は犬園から、みんなと用意したものとは違うカレーが入った皿を渡される。

 

「え?こっちの食べないの?」

「うん…ほら、鉄分取らなきゃだし…そっちも食べてみたいけど……」

 

 鉄分、それは鏨の個性には必要不可欠な成分だ。

 

「レバーにほうれん草その他にもいろいろ入ってる…本当に鉄分中心…」

「わざわざ犬園さんが作ってくれたみたい」

 

 鏨は遠ざかる犬園の背を見る。はじめは嫌いという認識のほうが強かったが、少しは好きになる努力をしてもいいかな?という感情が出てきていた。

 

「美味しい……」

 

──でも、なんだろ……この味…知ってるような気がする……。

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

【とある森の奥】

 

 

 森の奥に大学生くらいの青年と小学生くらいの少女の話し声が聞こえてくる。

 

「クソがっ!あの野郎!」

仕立て屋(テーラー)、少し落ち着いて」

「あ"?うるせぇよ葬儀屋(アンダーテイカー)!俺ァあのクズに命令されんのが嫌なんだよ!!」

 

葬儀屋(アンダーテイカー)仕立て屋(テーラー)と呼ばれた青年と言葉を交わす。

 

「今回は、開闢行動隊の援護及びアレ(・・)をアイツらより先に捕獲すんのが仕事…ったくなんで俺が……」

「仕方ないじゃない…あなたは一応……」

 

仕立て屋(テーラー)は側にある木を蹴る。イライラを発散させようとしてるようだが、その効果はイマイチのようだ。

 

仕立て屋(テーラー)、突然呼ばれた故驚いたぞ」

 

 その木の裏からやって来たのは、無精髭を生やした大男だった。

 

「んあ?(ウッドカッター)か……遅かったな。漫画家(カートゥーニスト)保母(メートロン)はどうした?」

 

仕立て屋(テーラー)(ウッドカッター)に尋ねるが、彼は首を横にふる。

 

「どちらも「来れたら来る」そうだ。あれは「行かない」という意味だろう」

「アイツらー!!またか、クソ!!」

「だからせめて料理人(シェフ)大工(カーペンター)を呼んだ方がいいと言ったのよ」

「あの二人と仕事するなら死んでやる!!他の二人は揃って国外だし!!」

 

仕立て屋(テーラー)はさらにイライラを募らせ木を蹴り始める。

 

「そもそも、あなたが開闢行動隊の前で()()()()()()()()のが発端でしょう?()はこれを内密に行おうとしてたのに…あなたがややこしくするから…」

「それでも結局俺ァ足で使われんだろうが!!」

「落ち着け仕立て屋(テーラー)、これが終わればしばらくあやつもおとなしくなるであろう…」

「……だったらいいけどな……」

 

 仕立て屋《テーラー》が木を蹴るのをやめると、その木を背にしてその場に座り込む。

 

「おい葬儀屋(アンダーテイカー)()はどうしてる?」

「おそらく、今の入れ物のガタ(・・)が近いから…新しい入れ物を探しているはず」

「自分は好き勝手にやるってか……いい身分だなァ…」

 

 森の奥で、3人の人影が月明かりに照らされていた。

 

 

 

「まァ、仕事はキッチリやるさ……」

 

 

 




いっきに新キャラと新キャラの名前出てきたぜ!これからもオリキャラたちが多く出てくるので、ご理解くださいな!
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