「鏨様ー!」
「あ、林子ちゃん」
林間合宿3日目、昼──…続・個性を伸ばす訓練。
林子は、森の中で1人特訓する鏨の元へ、お昼ご飯の時間になったことを伝えるためにやって来た。
「って、鏨様!き、傷だらけではないですか!?」
「ん?」
林子はある程度の傷は予想していたため、救急箱を持ってきていた。それを鏨に見せると、林子は鏨を治療する準備に入る。
「鏨様、そこにお座りください」
「大丈夫だよ、これくらい…」
「ダメです!」
林子にここまで言われてしまえば治療を受けるしかない。そう感じた鏨は、今度は素直にその場に座った。
「腕の切り傷が特にひどいですわね……」
鏨の腕に消毒液を掛け、大きめの絆創膏を貼り、それが剥がれないよう包帯を巻いた。そのため、少し大げさになってしまっているが、林子の気遣いが鏨は嬉しかった。
「でも、これじゃ個性伸ばす訓練できないな」
「そういえば鏨様、個性の方はどうなっていますの?」
「えーとね、全然ダメ」
鏨の個性使用時間はそこまで伸びていない。これはヤバイと思いつつもゆっくりしていたツケがここで回ってきたのだろう。
「相澤先生に怒られるなぁ……」
「鏨様…あ、そ、その鏨様!」
「どうしたの?」
「こ、今夜…クラス対抗肝試しがあるんですって!」
「え、なにそれ楽しそう……」
「地飛沫!こっちの皮むいてくれ!」
「うん、わかった」
日もすっかり傾いた夕方。鏨は肉じゃがに使う野菜を一心不乱にむいていた。ニンジンの皮をむき終えると、それを爆豪の元へ持っていく。睨まれたけど、気にしない。
次はジャガイモ、と思いながら所定の位置へ戻ると、B組の女子に話しかけられた。
「地飛沫くん、ちょっといい?」
「……なに?」
できるだけ優しくきいたつもりだが、少し怯えさせてしまったようだ……。
「林子ちゃんのことなんだけど」
「林子ちゃんのこと?」
鏨は首をかしげた。そして気がつくとなぜか鏨はB組女子に囲まれていた。少し恐怖を感じる。
「林子ちゃんのこと、幸せにしてあげてね!」
「林子ちゃん、なんだかんだ言って結構騙されやすいから!」
「フッたら許さないから!」
などの言葉の数々を浴びせられた鏨は、ますます首をかしげる。
「……フるもなにも…林子ちゃんは、俺の相方なんだし…幸せにするのは、当たり前だよ。ヒーローになったら、俺が守るしね」
そして上がるB組女子の黄色い歓声。そこに混じる峰田の恨めしそうな声。
──なんだこれ…。
───────────────────────
「…さて!腹もふくれた。皿も洗った!お次は…」
「肝を試す時間だ──!!」
「その前に大変心苦しいが、補習連中は…これから俺と補習授業だ」
「ウソだろ」
盛り上がるその場を相澤が静める。それを聞いた芦戸はすごい顔をしていた。
「すまんな。日中の訓練が思ったより疎かになったので
「うわああ、堪忍してくれえ、試させてくれえ!!」
捕縛布でグルグル巻きにされた補習組が、ズルズルと相澤に引きずられていく。
「で、だ。地飛沫」
「なに?犬園さん」
「お前も施設に戻れ」
あまりの衝撃発言に鏨は固まった。
「え…なんで…?」
「貧血のお前に睨まれてもな……怖くねぇぞ」
「な、なんで貧血だってわかったの!?」
「うまく誤魔化してくれたじゃないか地飛沫…だが、俺の鼻は誤魔化せんからな…」
「やっぱり、あんた嫌いだ───!!!」
そして鏨は強制的に宿泊施設へ連行された。
「みんなと肝試ししたかった」
「ま、今回は運が悪かったと諦めろ。
……行事ならまだあるし、二年には修学旅行だってある」
「……うん、まだ…みんなとお別れってわけでもないし…」
鏨と犬園は、補習組に少し遅れて施設の中へ入る。
既に補習組が補習を受けようとしているているところだ。犬園は点滴をよういするから、大部屋へ先に行くようにと鏨に言う。
「……しんどい…」
大部屋へ帰ってきた鏨は、自分の布団を用意し、そのまま突っ伏した。そこまでくると、もう限界だった。目が自然と落ちてくる。
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それは突然起きた。
『皆!!!』
合宿に参加していた人物全てに、マンダレイのテレパスが届く。宿泊施設にいた補習組は、その声を聞いてざわついた。
『
「は……!?なんで
テレパスを聞いた相澤は、生徒をブラドキングに頼み、施設の外にいる生徒を保護するために施設の外へ出る。
そこで見たものは…燃えている森。
「……マズイな」
それに気を取られた相澤は気が付かなかった。施設の玄関、その場所に…1人の
「心配が先に立ったかイレイザーヘッド」
それに気付きブラドキングに伝えようとしたが、それは少し遅れ、その
「邪魔はよしてくれよ、プロヒーロー。用があるのはおまえらじゃない」
「
「……んじゃあ、俺らもやるか…」
「プロのヒーローと戦うのは、これが初めてだな」
派手に動く開闢行動隊、その陰に隠れて動くのは、インプラントが選んだ3人だった。
「とりあえず、視覚の共有だ。
俺は
「わかったわ。
「ああ、腹いっぱい喰えよ。
「んじゃあ、解散」
「さて、どこにいるんかね……地飛沫鏨は……」
目を閉じ、
「ああ……見つけた…」
───────────────────────
「んー……?」
鏨は外から聞こえてくる音で目を覚ました。全然眠れなかったからか、少し頭が痛い。目をこすりながら、鏨は補習組がいる場所へ向かおうとする。しかし立ち上がったところで、大部屋の窓から見える景色をして、鏨は固まる。
「森、燃えてる…」
──なんだろう…この感じ……知ってる、嫌なのがいる……相澤先生に、教えないと!
鏨は急いで施設の玄関へ向かう。その途中で、ブラドキングと鉢合わせたが、持ち前の身のこなしでそれを回避してみせる。
「地飛沫!戻ってこい!」
「無理!」
ブラドキングは、これはやむなしと判断し個性を使い鏨を捕まえようとするが、いつの間にかやって来た犬園に止められた。
「犬園!?」
「お前は生徒を…あのバカは俺がとっ捕まえてくる!」
犬園はドーベルマンに変身すると鏨の後を追う。
「相澤先生!」
「地飛沫くん!」
いると思っていたはずの相澤がそこにいないことを知った鏨は、また走り出す。
「地飛沫くん、いったいどこに!」
「ごめん飯田くん!どうしても、相澤先生に伝えないと行けないことがあるの!伝えたら、直ぐに戻る!」
困惑する一同だが、そこからまた出てきたのはドーベルマンに変身した犬園。
「お前ら、早く中に入れ!」
「犬園先生!でも、地飛沫が!」
「俺が連れ戻す!中にはブラドもいる!」
犬園は生徒全員が中に入ったのを確認してから、鏨の匂いを追いかけ施設から離れる。犬園が森の中へ入った途端、足が止まった。
──何か…いるな……。
ガサッと茂みの中から音がすると思うと、そこから出てきたのは、1人の少女…小学生くらいだろうか…少し大人びた印象を受けるためか、小学高学年生に見える……。
「なんで、子供が……?
おい、君…なんでここに……」
「お腹がすいたの」
犬園は警戒しながら、少女に近づく。その少女は、ポツリと言葉を発した。
「だから……食べさせて……」
メリッと音がしたと思うと、少女…
【個性:エスカ。
普段の姿は借り物にすぎない。彼女の本当の姿は、この蛇のような姿をした物体である。幼く可愛らしい姿は、餌をおびき出すための皮にすぎない】
犬園は後ろへ後退するが、
「──っ!」
しかし、食われたのにも関わらず、腕はなくならない……のだが、腕が急に動かなくなる。
「……これは……」
「まだ、足りない……!」
「ど、どうしましょう……この毒ガスのせいで…拳藤さんと鉄哲さんとはぐれてしまいましたわ……」
ガスマスクを装着した林子は、1人道に迷っていた……マンダレイのテレパスで、相澤が戦闘の許可をしたのは知っている……林子は今出来ることをと思い、木々を退化させ、見晴らしをよくしていく。
しかし林子の個性も無限に使えるわけではない、この個性の最大の弱点は個性を使う度に体力を大幅に消費するところにある。
「はぁ…はぁ………火も、こちらにまわりそう…とにかくこれ以上の被害を出さないためにも…植物を退化させないと……!」
林子がまた個性を発動とした時、後ろから足音が聞こえてくる。後ろを振り向くと、そこにいたのは斧を持った大男…そして、大きな袋を担いだ青年……。
「
「ん?ああ……生徒か…」
林子はいつでも動けるように扇子を構える。
「!!?
そ、それは……!その中に入っているのは…まさか、人!?」
「……
「応……任された…」
「ま、待ちなさい!!」
林子は逃げようとする
「まあ、そう死に急ぐことはない……このまま、宿泊施設に帰れば……何もせんさ……」
「そんなこと素直に聞くとでも……?」
「ほう……流石、ヒーローの卵と言うわけか…肝が座っとる……」
さーて、これから苦手な戦闘シーンパート!頑張るぞー…。