barroco   作:千α

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鏨は飛び抜けて強い、というわけではありません。


3日目・3人

 

 

「キミ、楽しそうだね…」

 

(ヴィラン)連合のアジトであるバー。

 インプラントは死柄木に話しかけた。しかしその顔にはいつもの笑顔はない。不満そうな顔である。

 

「あんたは機嫌悪そうだな」

「そりゃあね。当初の予定が狂ったんだ。微々たることだけど、気に食わないというか……」

 

 そう言うとインプラントは食べていた羊羹を黒文字で何度も突き刺す。

 

それは数日前に遡る。

 

 

「今回の襲撃、()らも協力するよ」

 

 開闢行動隊も集まったその場で、インプラントはニコニコと上機嫌で話しかける。この笑顔に慣れた死柄木は、また何か企んでいるな…と感づいた。

 

「お前が?いったい何を企んでいる…?」

 

 荼毘が眉間にシワを寄せながら、インプラントを訝しむ。

 

「嫌だなぁ、何も企んでないよ!今キミたちの手伝いしておけば、次は()らの手伝いしてくれるだろ?

 あと、僕はキミらよりうんと年上だからね。"お前"じゃなくてせめて"あなた"とかそういうので呼んでよ」

 

 何も企んでいないと言うインプラントだが、それでも信用はできなかった。誰もがそう思っていた。

 

「おいこらインプラント!来てやったぞこら!」

 

 その時、アジトの扉を勢いよく開けた人物がいた。

 

「来たかい、仕立て屋(テーラー)

「うっせぇ。そんで?コイツらが(ヴィラン)連合?」

 

仕立て屋(テーラー)(ヴィラン)連合の人物をグルリと見渡す。

 

「おい、インプラント…そいつは誰だ?」

「ああ、この子は()だよ、仕立て屋(テーラー)って読んであげて。僕の個性をうまく使っている子でね……僕と似たことができる唯一の個体だよ」

「似たこと?」

「秘密」

 

 ニンマリと笑うインプラントを睨みながら、仕立て屋(テーラー)は今回の仕事(・・)について話し始める。

 

「俺たちは今回、ソイツらの援護が目的……だがソイツらの襲撃の目的がわからないんだが?」

「ああ、行ってなかっけ?」

 

 開闢行動隊をジッと見ながら、仕立て屋(テーラー)は溜息を吐いた。

 

「確か、ヒーロー殺しに当てられた連中が多いんだっけ?なら目的は、俺たちと同じ地飛沫鏨か?」

「チシブキタガネ?」

 

 その名に、聞き覚えがない開闢行動隊メンバーは戸惑う。いったい、そのチシブキタガネとステインはどのような関係を持っているというのか……。

 

「おいインプラント、そのチシブキタガネってのは……?」

「あーあーあー、僕はなんにも知らないよー」

 

 インプラントは耳を塞ぎ目をそらす。

 

「……言ったら、悪かったか?」

「悪いよ!なんで言っちゃうのかな!?タガネがステインの弟子だってバレたら絶対面倒なことに……」

()、口に出てるわよ」

「あ」

 

 

 その後、開闢行動隊の、特に荼毘・トガヒミコ・スピナーの3人に説明を要求され、しぶしぶとインプラントは彼らに地飛沫鏨とヒーロー殺し・ステインの関係について説明することになった。

 ステインの弟子、と言うと死柄木は機嫌が悪くなっていたが、一部の開闢行動隊は目に見えて興奮したようにインプラントに詰め寄った。トガヒミコなんかは「ステ様の弟子→私がステ様になったら私の弟子」とかいう謎思考に至っていた。そしてインプラントが1番警戒していた展開になった。

 

「地飛沫鏨を開闢行動隊に入れる!」

「なんでそうなったのかな!?ほら、あの子ヒーローになりたがってるし……」

()はこの間、タガネはヒーローに向いてないから、ヒーローになるの諦めさせた方がいいって言っていたわ」

葬儀屋(アンダーテイカー)!?」

 

 正直、鏨をあることに使おうとしていたのに、これでは計画が丸潰れだ…鏨を捕まえたとしても、インプラントが鏨にやろうとしていることを知られれば、絶対に面倒なことになるのは目に見えている。

 インプラントはその頭をフル回転させる。今思えば、本当にパニックになっていたんだろうな…もっとましな提案できただろうに……。

 

「じゃあ、()らと開闢行動隊のどちらかが先にタガネをここに連れてこられるか競争ね!勝った方がタガネの今後を決められるってことで!」

 

 

「もっとましな提案あっただろ……僕ってなんでこんな場面でしくじるかな……?もし()らがこの競争に負けたら……いや、()らを信じてないわけじゃないんだけどさ?あー、でもそろそろ仕立て屋(テーラー)が裏切りそう……」

「インプラント、あまり羊羹を散らかさないでください」

「よく裏切りそうな奴を使う気になったな……」

「……………ま、どうせ裏切っても…後は死ぬだけだしね」

 

 インプラントはもう原型をとどめていない羊羹を見つめる。

 

仕立て屋(テーラー)は賢いからさ、そこら辺雑そうで慎重な奴だから、裏切らないって信じたいけど……」

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

【少し前…鏨side】

 

 

 相澤に追いつこうと鏨は森の中を走る。しかし、何かが動く気配を感じ取り鏨は足を止める。

 

「……誰!?」

 

 そこから現れたのは…見たことのない青年……しかし、鏨は彼を知っている(・・・・・)

 

「よぉ……直接会うのは、初めてだな」

「…仕立て屋《テーラー》、だっけ?」

 

仕立て屋(テーラー)の後からもう2人の男と少女が現れる。

 

──嫌なのがいると思ったら……コイツらか……仕立て屋(テーラー)の他に、(ウッドカッター)葬儀屋(アンダーテイカー)か……十人衆のうち3人も…。

 

「この森を、燃やしたのはお前ら?」

「いや、(ヴィラン)連合の…開闢行動隊って奴の一人だよ」

「……そっか…で、何の用?インプラント、とうとう死んだ?」

「アレが死ぬわけないだろ」

 

──敵《ヴィラン》連合……そいつらとここへ来たってことは……まさか。

 

「…ステインだけじゃなくて、インプラントまで(ヴィラン)連合に協力するなんて……」

「協力っつーか利害の一致な。お前がまだ()たちと…インプラント()との回線がちゃんと繋がってたら、その襲撃も予測できたのにな……」

 

 鏨はキッと仕立て屋(テーラー)を睨みつける。

 

「嫌だよ。やっと俺に戻れたのに…」

「だよな………いいな、お前は…俺も俺に戻りたい……」

仕立て屋(テーラー)、貴方は()との繋がりが強すぎるから、()が死なない限り無理よ」

「……それ一生無理じゃねぇか」

 

 鏨はそんな2人のやり取りに溜息を吐いた。

 

「……で、何の用だ?」

「インプラントが「ステイン(邪魔者)が消えたから、やっと行動を大きくすることができる」……そう言ってた…意味は、わかるよな」

「うん……つまり俺は…お前らから逃げればいいわけだ……()()()使()()()()のは、絶対嫌!」

 

 鏨はプロのヒーローが多くいる肝試しのスタート地点へ走り出そうとする……がそこで頭にマンダレイのテレパスが届いた。

 

『A組B組総員──…戦闘を許可する!』

 

 鏨はそれを聞いて、親指を噛み切る。その出てきた血液で刃物を作り出した。

 

「やる気か……いいのか?」

「うん、許可降りたから」

 

葬儀屋(アンダーテイカー)は個性を発動し本来の姿になり、(ウッドカッター)は斧を構える。一触即発の場面で、またしてもマンダレイからのテレパスが鏨に届いた。

 

(ヴィラン)の狙いの一つ判明──!!生徒の「かっちゃん」!!』

「爆豪…くんが?」

『わかった!?「かっちゃん」!!「かっちゃん」はなるべく戦闘を避けて!!単独では動かないこと!!』

 

 鏨はそれに気を取られた。一瞬見せてしまったスキを付かれ、葬儀屋(アンダーテイカー)の口が鏨に向かう。鏨ほそれを交わすが、いつの間にか後ろへ移動していた(ウッドカッター)が肩に切りかかる。鏨はそれをまともに受け、その場に転がった。

 

「ガハ…っ」

 

──肩…やばい、とりあえず出血の量抑えないと……ただでさえ、血が足りないのに……。

 

 鏨は個性で出血の量を調節する。

 そして直ぐに立ち上がろうとするが、鏨は立ち上がれくなっていた。

 

「!?」

──糸!?

 

 鏨か足元見ると、鏨の膝からふくらはぎにかけて、糸で地面と縫い合わされていた。

 

葬儀屋(アンダーテイカー)

「わかってるわ」

 

 立ち上がれない鏨に、葬儀屋(アンダーテイカー)の口が迫り…その口は鏨の頭に噛み付いた。

 

「!?」

──力が……抜ける……っ…。

 

 鏨の目の前が白んできた……。

仕立て屋(テーラー)が鏨の意識の有無を確認する。

 

「よし、完璧だ葬儀屋(アンダーテイカー)

「そう、なら私はご飯食べてくるわ」

「気を付けろよ」

仕立て屋(テーラー)、袋を作ってくれ」

 

葬儀屋(アンダーテイカー)が森の中へ消えたのを確認し、仕立て屋(テーラー)は土を布のように地面から引きはがすと、そのまま糸で縫い始めた。そうして、鏨を入れるのに充分な大きさの袋ができた。

 

【個性:縫製。

 辺りのものを布のように縫い合わせたり、布や糸にする個性】

 

「さて……あとは爆豪だっけか……?」

仕立て屋(テーラー)、場所を探せるか?」

「ああ…確か、()の中に千里眼を使う奴がいただろうから…探してみるよ」

 

 鏨を袋の中に入れた仕立て屋(テーラー)は、袋を担ぎ空を見る……。

 

「……よし、見つけた…」

 

 

 




うん、頑張った!頑張ったよ俺…il||li (つω-`*)il||li
次回こそ、次回こそはもっとましなのを書きたい…!(多分無理)
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