barroco   作:千α

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遅くなりました!


3日目・樵

 

 

 

【現在…林子side】

 

 なぎ倒された木々の中心に林子は立っていた。目の前には大男の(ウッドカッター)が。

 

「その斧が、貴方の個性ですのね……」

 

 異様に切れ味のいい斧を見て、林子はそう確信した。同時に、林子だけではこの男には勝てないと。

 

「ふむ、やはり気付かれてしまうな……俺の個性は【万能刃物】鉄であろうがビルであろうが、なんでも一刀両断できる刃物を作ることが出来る。まあ、一つの刃物につき三つの物しか切れないのが、この個性の弱点か……」

「この様子を見る限り…その三つのうち植物と人間は確定のようですわね」

 

 林子はキッと(ウッドカッター)を睨み、その真偽を問う。林子が武器として使った木々はすべて切り倒され、頬には赤い一筋の切り傷が……あと一つ、あの斧が高い切れ味を発揮できるものがある。

 

「貴様の個性、その扇子が補助の役割をしているようだな……見たところ、それがなければまともに個性の範囲も、場所も決められないと見た」

 

──これは、慎重にならなくてはなりませんわね…。

 

 林子の扇子を持つ手に力が入る。

 それを合図に、(ウッドカッター)がこちらへ斧を振り上げ突進する。林子は無駄だとわかっているが、一瞬の目隠しのために植物を活性化させ身を隠す。

 

「むっ…!」

 

 斧で活性化させられた植物を切り倒した(ウッドカッター)だが、姿が見えなくなった林子に驚き周りを見渡す。その様子を茂みの中から見た林子は、扇子をかざし木の枝を活性化させる。木の枝はそのまま勢いよく一直線に(ウッドカッター)の元へ伸びる、がやはりその枝は斧によって切り倒される。

 

「そこか!」

 

(ウッドカッター)が林子のいる場所に斧を振り下ろす。林子はそれを避けたが、木の根に足を引っ掛け扇子をどこかに放り投げてしまった。

 

「しまった!」

 

 バランスを崩した林子の目の前に、(ウッドカッター)の斧が迫る……!

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

葬儀屋(アンダーテイカー)のやつ…遅いな……」

 

仕立て屋(テーラー)は袋を担ぎ直す。

 もうそろそろ帰ってきてもいい頃の葬儀屋(アンダーテイカー)が、未だに姿を現さないことに不安を覚えた。

 

「……あいつ、大食らいだったか?」

 

葬儀屋(アンダーテイカー)の食事は1分もあれば、食べ終えてしまうほど早い。彼女と分かれてからもう何分も経っているが、一向に姿が見えない。

 

「ま、あとは黒霧が迎えに来るまで身を潜めてればいいだけだしな……あのクソ野郎が来たら一番なんだがな……」

 

 本来ならば、袋の中身を葬儀屋(アンダーテイカー)に任せたいところだが、いないのだったら仕方がない。2人のうちどちらかが戻るまで、爆豪勝己の誘拐は開闢行動隊に任せることにする。彼らにとっては、爆豪勝己はどうでもいい存在だと感じているからだ。

 彼らの第一の目的はもうすでに達成されている。開闢行動隊の目的はもうあちら側知られてしまっているが、インプラントたちの目的は知られていない。もちろん鏨が捕まっていることも。だから仕立て屋(テーラー)は油断していた。雄英と開闢行動隊の争い、それに巻き込まれるとは一切考えてなどいなかった。

 

「うおっ!?」

 

仕立て屋(テーラー)の目の前を横切ったのは、刃物のような何か。これが、雄英か開闢行動隊、どちらの個性かわからない仕立て屋(テーラー)はすぐに身を隠す。

 

──くそっ…足止めされたか……迂闊に動けないな。

 

仕立て屋(テーラー)は少しだけ身体をずらし、そこで何が起きているのかを確認する。

 そこにいたのは、雄英の生徒たち…目的の内の1人、爆豪勝己もいる。彼を含めた雄英の生徒3人が対峙しているのは、開闢行動隊の1人である脱獄囚のムーンフィッシュだ。

 

──ヤバイな…よりによって見つかると厄介なヤツに出会した。ああなると、言葉が通じないタイプなんだろうな……間違えてコッチに攻撃してきたらってのも考えて行動するか……雄英の奴らに袋の中身を見られるのも、マズイ……。

 

 あれこれ考えているうちに、仕立て屋(テーラー)後ろから木々をなぎ倒す音が聞こえる。一瞬(ウッドカッター)かと思ったが、どうやらそうではないらしい。木々の倒れる音と共に黒く、大きな腕のようなものが現れた。仕立て屋(テーラー)は、誰にも見つからなかったものの、担いでいた袋を落としてしまった。

 

「…っくそ」

 

 袋を担ぎ直そうと、袋に手を伸ばそうとしたが、黒い腕がそれを阻み袋を吹き飛ばす。仕立て屋(テーラー)は、舌打ちをすると、どこに飛ばされたかもわからない袋を追いかけることにした。

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

(ウッドカッター)の斧が迫り、林子は悲鳴を上げた。だが、その斧は林子の目の前で止まる。

 

「うぐ…っぬ、ぬぁぁぁああ!?」

 

(ウッドカッター)の腕には木の枝が深々と刺さっていた。

 

「な、何故だ!?扇子は……!?」

「残念ですけれど、私の扇子はただの扇子……ちょっと格好つけたかっただけの代物ですわ!」

 

 林子の家、森賀家は他の家よりもだいぶんお金持ちである。林子の記憶をたどると、お金に困ったことは無く欲しいと言ったものはなんでも買ってもらえた記憶がある。そんな林子が、ヒーローになろうと思ったのは…あるヒーローの特集を見てからだった。扇子を持ち、堂々と(ヴィラン)に立ち向かう彼女(ヒーロー)を、林子は目を輝かせて応援した。それから、林子は常に扇子を持ち歩くようになったのである。いつか、彼女(ヒーロー)のようになりたいとそう思っていた。

 

「これで、利き腕は使えませんわ!さあ、観念して目的と人数、誰の差し向けか答えなさい!」

 

 林子はさらにその場にあったツルを活性化かせ、(ウッドカッター)のもう片方の腕に巻き付かせる。

 

「……そうさなあ…あの呪いが無ければ俺はもうとっくの昔に、この地獄から抜け出せていたんだろうなあ……」

「地獄…?いったい何を……」

 

(ウッドカッター)はもう抵抗するつもりがないようで、動こうともしない。

 

「すまんな仕立て屋(テーラー)、俺はここまでだ……。

 お嬢さん、俺を捕まえるならば、今しかチャンスはないぞ」

「え、えぇ……」

 

 林子は、(ウッドカッター)の気が変わることも想定し、(ウッドカッター)の頭を木でできた棍棒で殴って気絶させた。

 

「いったい……この方は何だったのかしら?」

 

 

 

 

 一方その頃…出久に洸汰のことを頼まれた相澤は、洸汰を抱きかかえて施設へ戻ろうとしていた。

 

「!?」

「ど、どうしたんだよ…」

 

 相澤は、前方の気配に気が付きそのまま動きを止める。

 

──あともう少しで施設だってのに……味方か?敵か?

 

 慎重に進み、相澤は進む。

 そして、そこにいたのは……。

 

「犬園!?」

 

 仰向けになった犬園が2人の目にとまった。青白い顔をさせた犬園を見て、相澤の脳裏に浮かんだのは「死」の一文字。急いで相澤は犬園が息をしているか確認する。

 

──息はある……!

 

「おい、犬園起きろ!」

「…っ…あ、いざわ……?」

「ここで、何があった!?」

 

 意識が戻った犬園に問いかけるが、どうも反応が鈍い……ここでは危険だと判断した相澤は、犬園を立ち上がらせ肩を貸して施設へ戻ることにした。

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

「どこにもない…くそっ…土と同じ色だから他と判断が…」

 

仕立て屋(テーラー)はブツクサと文句をいいながら袋を落とした場所付近を虱潰しに探す。

 

パキッ

 

仕立て屋(テーラー)は、足元で何が割れる音を聞いた。木の枝だと言われればそれまでなのだが…この音はそうではないようだ。

 

──この音はガラス…?いや、薄氷か?この季節に……?

 

 足元に落ちていた音の正体と思わしき、ガラスのような物を手に取り、薄暗いこの場所を照らしている月にそれを照らす。

 

「赤い色?……ってことは、氷じゃない…ガラスか?」

 

 赤いそれを空にかざしていると、仕立て屋(テーラー)の後ろの地面から伸びた赤い棒が、仕立て屋(テーラー)を襲った。

 

「…!?

 タガネか……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、なんか疲れた……いろいろと。だから、もう、あれ……パパッと終わらせることにしたから……」

 

 それは死刑宣告。

 




不穏な気配を察知(文章力的な意味で)
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