barroco   作:千α

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お久しぶりです。


だれにはなしかけているのだ

 

 

 

「『いやぁ、爽快爽快』」

 

それ(・・)を見たインプラントは壊れかけた壁に座り感嘆の声をあげる。

 そこには、半壊した倉庫、倒されたプロヒーロー達、そして彼らを倒したオール・フォー・ワンの姿がある。視線を後ろに少し向けると、恐怖で動けなくなった卵達。

 

「『そうだね。キミ達はそうしていればいい。息を殺して、できるだけ物音立てずに……見つかったら…子供でもどうなるかわからない』」

 

 小声で、しかし5人にしっかりと聞こえるように、インプラントは落ち着いた声音で言い聞かせる。

 

「そこにいるのは、インプラントか」

「『さっきぶりだね…タガネは、まだ奥かな?』」

 

 インプラントはオール・フォー・ワンの後ろを指差す。

 タガネ、という名前に反応して後ろの誰かが小さく息を呑んだ。インプラントはできるだけ、不自然にならないようにその音を消すようにオール・フォー・ワンに話しかける。

 

「『あの子を拷問して、何か収穫はあったかい?まあ、キミが何知りたかったのかは、僕は知らないけど。僕の個性奪っておいてさ、僕に何にも言わないのは……フェアじゃないんじゃあないの?』」

「そのことだがインプラント」

「『なんだい?』」

 

 インプラントは頬杖をついてオール・フォー・ワンを注視する。

 正直、インプラントは彼を信用してはいない。この世で1番怖い男だと、そうインプラントは思っているからだ。だからこそ、インプラントはオール・フォー・ワンを消したかった。そのための連合入りだった。しかしそれに気が付かないほどオール・フォー・ワンは鈍感な男ではない。そんなこと百も承知だ。だからこそ、インプラントは彼の動きを見逃さないようにしていた……。

 

「『おや?』」

 

 気が付くとインプラントの腹部がほとんどなくなっていた。

 

「『ゴハっ』」

 

 口の中から血が出てくる。

 

「インプラント…君は、弔の前から消えてもらうよ……君は昔から面倒事しか起こさない」

「『そりゃそうさ、僕はキミがずっとずーっと大嫌いだったからねぇ……』」

 

 オール・フォー・ワンの言葉にインプラントはケタケタと笑う。

 

「『僕の娘を、2人も殺した、そんなキミが大嫌いさ。

  そんな彼女達を見捨てた社会も……いや、"僕達"を見捨てた世界が大嫌いさ。

  キミの邪魔して、世界の邪魔して…あー、楽しいねぇ…!これからも、キミら(・・・)の望む世界なんかめちゃくちゃにしてやるつもりさ!僕の望む世界には、(ヴィラン)もヒーローも、いらないからさ!!』」

 

 インプラントはそう言うと後ろに倒れ、壁から落ちる。

 目に入ったのは、怯えた顔をしてこちらを見る、卵達。

 インプラントは口に人差し指を当てニッコリと笑う。全員が真っ青な顔をしているのが、よくわかる。

 

「『そんな顔するもんじゃないぜ、少年少女。これから、キミらは、もっともっと酷い物見るんだから……まぁ、守ってみなよ』」

 

キミらの大切なものをさ。

 

 

 インプラントがそう伝えると、その身体は爆発した。

 

「…インプラント……自爆したか…」

 

 オール・フォー・ワンの声が聞こえる。目の前には、跡形もなくなってしまったインプラント…。子供達の精神は、極限に追い詰められていた。

 

 

「ゲッホ!!くっせぇぇ…」

 

 その時、彼らの耳によく知った声が届いた。

 

「んっじゃこりゃあ!!」

 

──かっちゃん!!!!

──爆豪!!

 

 その声は5人が救出しようとしていたクラスメイトの1人、爆豪であった。

 

「悪いね、爆豪くん」

「あ!!?」

 

 爆豪の後から、次々と死柄木達が黒い液体の中から現れた。

 

「インプラントといた彼らは……逃げたか……」

 

 オール・フォー・ワンは彼らの人数を見て、仕立て屋(テーラー)葬儀屋(アンダーテイカー)がいないことに気がついたが、どうでもいいといった様子ですぐに死柄木と向き合う。

 

「また失敗したね、弔。でも決してめげてはいけないよ。またやり直せばいい

 こうして仲間も取り返した。この子もね…君が "大切なコマ"だと考え判断したからだ。いくらでもやり直せ、その為に(せんせい)がいるんだよ。

 

 全ては君の為にある」

 

 

───────────────────────

 

 

 

()、大丈夫?」

「もちろーん。大工(カーペンター)ってば心配症」

「あなたがいなくなったら、私は行き場が……」

 

 白く、広く、何も無い部屋に少女が寝そべった彼を見ていた。彼、犬園の身体を借りたインプラントが起き上がり、少女の頭を撫でる。

 

葬儀屋(アンダーテイカー)仕立て屋(テーラー)は?帰ってきてる?」

「うん、でも仕立て屋(テーラー)は半殺しにしておいた」

 

 部屋の隅で赤黒い塊が動く。

 

「おおっと、半殺しってマジで半殺しなんだな」

「お腹空いた」

 

 塊の近くにいたのは膝を抱えた葬儀屋(アンダーテイカー)だった。インプラントは彼女の頭を撫でる。

 

葬儀屋(アンダーテイカー)は本当に食いしん坊……ああ、ごめん。家では名前で呼ぶって決めてたっけ?

 おかえり、鉋ちゃん」

「うん、ただいま」

 

 インプラントは塊に手をかざす。すると、みるみるそれは元の形に戻っていき、仕立て屋(テーラー)になっていった。

 

「いやー…この個性のことをオール・フォー・ワンに知られなくて本当に良かった」

仕立て屋(テーラー)、元に戻った」

「戻らなくても良かったのに」

 

 インプラントは仕立て屋(テーラー)にほぼ無関心な2人に苦笑する。

 

「知られてたら…今頃もっと酷いことになってただろうね……。

 感謝してよね、八木くん」

 

 

これから始まる世界を祝福しよう。

その世界はこれからの僕の求める世界への通るべき道なのだから。

 

 

「ヒーローが、(ヴィラン)が…そんなもの、きっと誰も考えちゃいないのさ。いつ、誰が悪に目覚めるかなんて、誰も予想できない。皆本当は気が付いているはずなんだ。本能で、周りは敵だらけだと。

 

 大きな力を持った者は、特に人間って奴は、欲深く。

 

 新しいことにチャレンジしようとする者は、批判される。

 

 そんな世界だから、こんなことが起きる。

 

 僕達はこの世界の負の遺産(・・・・)である。

 

 教えてやろうじゃないか。僕達の怒りを。捨てられた無念を。世界から消された屈辱を。

 

 僕はインプラントだ。この世界の欠損を埋めるものである」

 

 




書き消しかき消ししてたらこんなに時間が経ってました。
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