死柄木たちがこの場に揃い、そしてオールマイトもやって来た。
状況は刻一刻と変わっていく。しかし不利であるのはオールマイトの方である。爆豪は
カシャッ
それは何か、金属が落ちた音。
その場で何故か大きく響いたように聞こえた音の方向に、全員の視線が自然と集まる。
「ち、地飛沫少年!?」
赤黒い髪を揺らして、鏨は歩く。そして暫く歩くとその場に立ち止まった。虚ろではあるが、その目はしっかりと辺りを見渡した。
「オール…マイト?と、爆豪くん……よかった、爆豪くん死んでない」
「勝手に殺すな!女男!!」
鏨はオールマイトを指差す。それから爆豪を指差して、口を開いた。鏨の言葉に爆豪は切れたが、鏨はどこ吹く風でポカンとしている。
「……あ、ここ敵の本陣みたい」
「ンなこと知ってんだよ!!」
──無事、のようだが地飛沫少年には緊張感がまるで無い。コレは……。
──正気ではあるようだが、恐怖心がない。それで、この緊張感の無さか。
オールマイト、オール・フォー・ワンは今の鏨の様子から、彼がいったいどんな状態にあるかを推測する。その証拠に、鏨はオールマイトと爆豪以外の人間には目を配っており、
「えっと……イマイチ状況が理解できない…どういうこと?…オールマイトと爆豪くん以外は、敵でいいの?」
「チッ…説明すんのがメンドクセェ!コイツらに捕まんじゃねぇぞ、女男!」
「……んん?あ、うん分かった」
爆豪はその鏨の様子を見てさらに苛つく。しかしここは冷静に対処しなければならない場面だ。そんな空気を感じて、鏨はここが戦いの場であることを理解してから気を引き締める。
「お前……っ」
「…どうかした?爆豪くん」
「何でもねぇよ」とそっぽ向いてしまった爆豪に鏨は首を傾げた。
爆豪は背中にゾワリとしたものを感じていた。それは自分に向けられたものではないとわかっているが、それでもはっきりと人に向けられているものだ。さっきまで目を擦っていた彼とは全く違うその気配に、言いようのない何かが喉元まで這い上がってきた。
一方、壁の陰に隠れていた出久達はこの状況下で何もできない自分たちに、無力感を覚えていた。
出久は必死に考える。何もできない自分でもやれることを…そして、思いついた。
「飯田くん、皆!」
「だめだぞ…緑谷くん…!!」
飯田は出久がこのまま戦闘に参加するのかと思い出久を止める。しかし、出久の口から出たのは全く違うことだった。
「違うんだよ、あるんだよ!
決して戦闘行為にはならない!僕らもこの場から去れる!それでもかっちゃんと地飛沫くんを救け出せる!方法が!!」
「言ってみてくれ」
轟は出久の言葉を聞いてその作戦を聞くことにする。
「でもこれは…かっちゃん次第でもあって──…」
出久は思い出していた。
ここに来るまでのことを。爆豪に言われたこと、麗日に言われたこと…だからこそ、自分では……。
「この策だと多分……僕じゃ…成功しない。
だから切島くん、君が成功率をあげるかぎだ」
「爆豪くん、後ろ!」
「わかってる!!」
鏨と爆豪は
──できるだけ、オールマイトから距離取りたいな……。
爆豪くんも俺たちが邪魔になってることは多分わかってる。一番いいのはここからの離脱……でも……。
ここに味方はいない。逃げることができない。6対2であるため、数では圧倒的に不利だ。
──なにか、隙でもあれば。
そこで、頭上に現れた何かを、見上げる。それは他の人たちも同じだった。それ…突如現れたのは、切島、飯田…そして出久だった。
「来い!!」
爆豪に声を掛けたのは、切島だった。出久は入学当初から爆豪と対等な関係を築いてきた切島なら、呼びかけに爆豪は応えるはずだと思い。その役を切島に任せることにしていたのだ。
爆豪は切島を見て、そばにいた鏨の襟を掴んだ。
「え、ちょとまって爆豪くんまさかああああぁぁあ!!!?」
個性で手から爆発を起こし、上昇していく爆豪は途中で鏨を出久に向かって放り投げ、差し出していた切島の手を握った。
「…バカかよ」
鏨は間一髪の所で出久に掴まったが、まだ混乱しているようである。
「地飛沫くん!」
「緑谷…くん?」
今にも泣いてしまいそうな出久の顔を見て、敵の攻撃を受けて倒れるMt.レディを見て、鏨はやっと自分が置かれていた状況を実感した。
「……本当、無茶するよね」
鏨は救出してくれた出久と飯田、切島に笑いかける。それに応えるように、3人は笑った。
「地飛沫くん、今から走るからしっかり掴まってて!」
「うん!」
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「ああっ」
消えるその姿を見て、死柄木は声を上げる。
──鑢姉ちゃんの子ども、鑢姉ちゃんと約束してたのに。
グルグルと頭をいっぱいにそれが蠢く。
しかし、そればかりに気を取られている場合ではない。グラントリノがこちらへ向かってくる。
「弔くん、終わりたくないです」
「……!」
それに対抗しようと死柄木は個性でグラントリノを塵にしようとするが、急に身体を後ろへ持っていかれる。
どうやらオール・フォー・ワンがマグネの個性を強制的に発動したようだ。気絶させられていた開闢行動隊とともに死柄木はトガの元へ引っ張られる。さらにその後には気絶していた黒霧が同じように個性を強制的に発動している。
「やー、そんな急に来られてもぉ」
次々に黒霧のワープゲートに入っていく。
「待て…ダメだ、先生!
その身体じゃ、あんた……ダメだ…」
そんな中で、死柄木はオール・フォー・ワンに手を伸ばす。
「俺、まだ───」
死柄木の視界から、オール・フォー・ワンの姿が消えた。
相変わらずゆっくりしてます。
GW中にもう一つ上げれたらイイノニナー