ただいま。
……やっぱり、誰もいないんだな。
手紙もそのまんまか。
でも一応届いててよかった。
うん、何も変わってない。
……アイツ、やっぱり来てるんじゃん。
掃除してるし……俺の部屋入ってないよな?
帰ってきたのはいいけど……これからどうしようか。
すぐ動く気になれないし。
うーん、とりあえずご飯!カレーしか作れないけど!
材料なら買ってきたし……ここで買うと値段が酷いことになるからなぁ……。
えーと、米はチンしたらいいし…お湯作って、袋入れて5分!
光熱費はアイツ持ちで!
できた!
カレー用のお皿に、レンチンした米と袋の口開けて、そのまんまカレーをドバーッと。
いただきます!
……うん、おいしい。
けど、やっぱりみんな一緒がいいな……。
これからのこと、ちゃんと考えないとな…うん、考えないと。
さて、荷造りしないと。
アイツには悪いけど、少し綺麗にしておかないと。
ちゃんと、区切りをつけないと。
ごめんね、キサゲ。
最期の約束、破るけど、家は放棄しちゃうけど。
家族は大切にするから。
ばいばい。
───────────────────────
「相澤先生ー、ごめんなさい、遅れるかも」
半泣きになった鏨は相澤に電話を掛けていた。
これから雄英は全寮制となるため、鏨は類葉町に置いていた家具一式を取りに帰ってきていた。
『昨日はあんなに間に合うと言っていたのに、何があった?』
「渋滞がすごくて…今、パーキングで休んでます」
電車は類葉町を避けて通っているため、乗ろうと思うとかなりの距離を移動しなくてはならない。船は港の治安が悪いため乗ることを許されなかった。そのため、鏨は夜行バスで雄英まで向かっていた。
「あと、すごい視線がするから、なんか嫌です」
『この間あんな目にあったんだ、我慢しろ』
監視付きであるが、誘拐されたのだからこの程度で済むようにいろいろと助言してくれたオールマイトや相澤に感謝すべきなのだが…。
「そりゃ、類葉町に戻るだけでも、許してくれたのは、感謝してますけど…」
『…それより、何時頃につきそうだ?』
「えーと、お昼過ぎ、かな?」
『質問を質問で返すな』
「ごめんなさい」
とりあえず、お昼過ぎまでを目処にして待っていると言われ、鏨はホッとしながら電話を切る。
そこでパーキングのお土産コーナーが目に留まり、出発までの間物色することに決めた。
「わー、このキーホルダー、常闇くん好きそう」
鏨は
───────────────────────
【昼過ぎ・雄英高校、ハイツアライアンス前】
「つ、ついた……!」
大きな荷物はもう既に寮に運ばれているため、鏨の今持っている荷物は、大きなキャリーバッグに入っているものだけだ。
「……意外と大きい」
中へ入ると、クラスメイトの声は聞こえるが、姿は見えない。
どうやら、もう荷物を片付けているようだ。
「えーと、確か部屋は……4階の、爆豪くんの隣か……」
ガラガラとキャリーバッグを転がしながら、鏨は4階へ進む。
「お?」
「あれ?」
エレベーターの前で鉢合わせたのは出久だった。
「緑谷くんだ!」
「地飛沫くん!急に類葉町に帰ったって聞いて…」
「うん、なんにも言ってなくて、ごめん」
出久は鏨と再会できたことに喜ぶ。がふとあの病院での出来事を思い出した。鏨の様子を見ると、ニコニコ笑っていて嬉しそうだ。
「地飛沫くん、凄く嬉しそうだね」
「うん!だって、友達と一緒に、暮らせるってなんか…新鮮で!」
そっか…と出久は頷いた。
いつもの鏨だ。
「緑谷くん?」
「あ、いや!なんでも!なんでもないよ!?」
「そう?あ、エレベーター来たよ。何階?」
「2階だよ」
鏨は2階のボタンと4階のボタンを押す。2階へはすぐについて、出久はエレベーターから降りた。
「緑谷くん、後でね」
「うん、後で」
──あれ?地飛沫くん、髪の毛あんなに短かったっけ?
・
・
・
「地飛沫、帰ってきてたのか!?」
「みんな、ただいま!」
部屋を作り終えた鏨は、1階の共同スペースへ降りてきた。女子たちはまだ終わっていないようで、男子しかここには集まっていないようだ。
鏨は上鳴とハイタッチをしたり、飯田と握手を交わしたりしながら、再会を喜ぶ。
「男子、部屋できたー?って地飛沫!」
「久しぶり」
「あれ!?髪短くなってない!?」
耳郎の言葉に、先ほど会った男子たちは鏨を見る。肩よりも下まであった髪はバッサリと切られ、髪をよけなくても首が見える程度には短くなっていた。
………………………。
「ホントだ!?」
「気付かなかった!」
「違和感はあったけど!!」
鈍感な男子を女子たちは鏨の肩を叩いたりしながら、呆れたような目で見る。
「地飛沫がどんどん女子陣営へ!」
「何故か違和感がない!」
「落ち着け、地飛沫はどっからどう見ても男子だ!」
「羨ましい!怨めしい!」
さっきまで男子たちの輪に入っていた鏨は、だんだん女子陣営に連れていかれる。
「地飛沫、気にしなくていいからね」
「そうよ、あんなクラスメイトの髪型すらろくに覚えれない奴ら」
「よく似合っていますわ」
そんな女子たちの言葉に鏨は頬をかいて照れる。
「あ、ありがとう…ちょっと鬱陶しかったから……。
いつも伸ばそうとするんだけど、途中で切っちゃうんだよね」
そのまま男子たちを置いてけぼりにして、鏨たちは髪の話で盛り上がる。どんな髪型がいい、どんな美容院に行ったかetc。
並の男子ではこの中に入れる者はいないだろう。例えるなら、そう歩道を横に並んで登下校している女子たち並のディフェンス能力を持っている、この横を通るor話しかけるのは至難の技だ。
「おーい男子!」
そう思っていると、向こうから芦戸が話し掛けてきた。
「あのね!今、話しててね!提案なんだけど!お部屋披露大会、しませんか!?」
次回!鏨の部屋が明らかに!!