barroco   作:千α

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久しぶり4千字!!


なかまがまっている

「わああダメダメちょっと待ー!!」

 

 トップバッターにされた出久の部屋は、なんとオールマイトグッズ一色に飾り付けられていた。

 

「おお、オールマイトだらけだオタク部屋だ!!」

 

──キサゲのマル秘部屋といい勝負してる。

 

「憧れなんで……恥ずかしい…」

 

 ガックリと肩を落とした出久だが、彼らの勢いは止まらない。

 

「やべえ、何か始まりやがった…!」

「でもちょっと楽しいぞコレ…」

 

 次々と暴かれていく部屋を見て周り、口田の部屋まで来て、鏨が不覚にもペットのうさぎに「うさぎ、美味しそう」などと思い、めちゃくちゃうさぎに怯えられていた時、それは始まった。

 

「釈然としねえ」

「ああ…奇遇だね。俺もしないんだ、釈然…」

「そうだな」

「僕も☆」

 

 女子による容赦ない舌剣が、男子たちを襲っていた。そんな男子からの釈然としない声が上がる。その中ではじめに女子たちに物申したのは峰田だった。

 

「男子だけが言われっ放しってのはぁ変だよなァ? "大会" っつったよな?なら当然!女子の部屋も見て決めるべきじゃねえのか?誰がクラス1のインテリアセンスか、全員で決めるべきなんじゃねえのかなあ!?」

「いいじゃん」

「え」

 

──第1回A組ベストセンス決定戦が今!!始まる!!

  いいのか…?はたして…いいのか!?

──いいんじゃない?緑谷くん。

──こいつ直接脳内に…!

 

 などと、出久と鏨がくだらないやり取りをしているうちに、話がどんどんまとまっていく。

 

「えっとじゃあ部屋王を決めるってことで!!」

 

 ということになった。

 

「なんか、決まっちゃったね」

「そうだね」

「俺だったら、断然緑谷くんの部屋かな?」

 

 4階へ向かう集団のあとを追いながら、鏨と出久は部屋のことについて話す。

 

「え、僕!?」

「俺、オールマイト、好きだから……えっと、俺、サイン貰った」

 

 出久は自分の部屋が良いと言われ少し照れた。

 

「僕も貰ったよ!凄いよね、一瞬で書いちゃうんだもん!」

「そーだよね!俺、色紙持ってきて、本当に良かった!目の前で書いてくれたから!」

「オールマイトと言えば!○○事件の時のこと、わかる?」

「知ってる!オールマイト、活躍した!キサゲと見てて、ハラハラした、けどオールマイト勝って良かった!」

「やっぱり、あれはあの時のあのオールマイトの判断がよくて、だからオールマイトの行動が後でオールマイトに良い結果をもたらしたって言うか!」

「そんなとこまでオールマイトが気を配っていたオールマイトはやっぱり凄いオールマイト!」

 

 オールマイトがゲシュタルト崩壊しているが、クラスメイトは2人をそっとしておくことにした。

 

 

 

 

「さて、次は地飛沫の部屋だ!」

「あ、うん」

 

 鏨は自分の部屋を開ける。

 

「えーと、実家にあるやつ、適当に持ってきたから、ゴチャゴチャしてる、けど」

「アンティーク!!?」

 

 鏨の部屋はアンティーク調の家具が揃っていた。

 

「やべぇ!予想外だ!」

「予想外なのにしっくりくる!」

「これ、ビューロー机だよね?」

「はじめてロッキングチェアとか見たぞ……」

「こんなにアンティークしてるのに、飾られてる千羽鶴!」

「ブックケースに教科書以外何にもない!」

 

 鏨のアンティーク調部屋に、クラスメイトたちは興奮する。

 あまり場所を取らないビューロー机に、かなりの大きさがあるブックケース。ゆったり座れるロッキングチェア、その横にはワインテーブル。ベッドはソファにもなるアイアンフレームベッド。時計はなんと柱時計。鞄や傘をしまえるホールスタンドが入口付近に置かれている。食器棚の中のティーカップ、ポットもアンティークである。全体的に、ここだけイギリスにでも来たような雰囲気だ。

 

「えっと……キサゲの趣味で」

「お前の親いい趣味してんぜ」

 

 そうかな…?と鏨は照れる。

 キサゲを褒められると、どうしても自分も褒められていると錯覚してしまう。

 

「こ、これ地震起きたら大変なことになるんとちゃうん!?」

「え?あー、地震対策は、バッチリだよ」

 

 鏨は麗日の勢いにタジタジになるが、自分のしている地震対策は一応説明しておく。

 

「まあ、ここにあるのほとんど俺のだから、壊れても、別に……何回か壊してるし……」

「勿体ない奴め!!」

「うぇー?」

 

 

 

 

 5階の男子部屋も、残すところ砂藤の部屋のみとなった。轟の和室と化した部屋には驚いたが、しかしこの時点でも鏨の1位は出久だった。

 

「ていうか良い香りするのコレ何?」

「ああイケね忘れてた!!

 だいぶ早く片付いたんでよ、シフォンケーキ焼いてたんだ!!

 皆食うかなと思ってよォ…ホイップがあるともっと美味いんだが…?」

 

 その言葉と共に、全員にシフォンケーキが配れる。

 鏨もそのシフォンケーキに迷いなくフォークを突き刺した。

 

「あんまぁい!フワッフワ!」

「瀬呂のギャップを軽く凌駕した」

「素敵なご趣味をお持ちですのね砂藤さん!今度私のお紅茶と合わせてみません!?」

 

 女子たちの評判は上々である。

 

「オォこんな反応されるとは…まァ個性の訓練がてら作ったりすんだよ」

「ちっきしょー さすがシュガーマンを名乗るだけうまっ!」

「ここぞとばかりに出してくるな…うまっ…」

 

 男子たちもその美味さに思わず声を出す。

 

「おいなんか地飛沫泣いてんぞ!?」

 

 轟に背中を撫でられながら、鏨は泣いていた。

 

キサゲ()の味がするんだと」

「おいしい、すごくおいしい…」

 

 とりあえず落ち着くまでは轟に付き添われることとなった鏨であった。

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

「自分への投票はなしですよ!?それでは!爆豪と梅雨ちゃんを除いた…第1回部屋王暫定一位の発表です!!」

 

 部屋を一通り部屋を見てまわったので、全員1階に集まり芦戸の結果発表を聞く。

 

「得票数7票!!圧倒的独走、単独首位を叩き出したその部屋は──砂藤ー力道ー!!」

「はああ!!?」

「ちなみに全て女子票で、理由は "ケーキ美味しかった" だそうです」

「部屋は!!」

 

 砂藤が男子たちの攻撃を受けるのを、鏨は笑ってみる。

 ちなみに、7票の内1票は鏨のものである。理由?「ケーキがおいしかった」から。オールマイト部屋ももちろん魅力的で、芦戸に相談すると女子と一緒に砂藤に入れることになった。相談相手を間違えたな!

 

──あと、俺のこと弟みたいって言うのやめてほしい。

 

 鏨は弟属性だった。

 

「終わったか?寝ていいか?」

「うむ!ケーキを食べたので歯みがきは忘れずにな!」

「終わるまで待ってたんだ」

 

 大会が終わったので、自然と全員解散していく。もう結構夜も深くなってきている。

 

「あっ、轟くん。ちょ待って!デクくんも飯田くんも…それに切島くん八百万さんちょっといいかな」

 

 各自部屋へ戻ろうとすると、麗日が5人に話しかける。なにかあるようだ。

 

「じゃ、おやすみ……」

「あ、ちょっと待ってくれ地飛沫!」

「どうかしたの?切島くん?」

 

 鏨が5人に挨拶をして自室へ戻ろうとすると、切島に止められる。

 

「俺、お前に聞きたいことがあるんだよ。だから、地飛沫も来てくれ」

「え!?え、でも……いいの?」

 

 鏨は麗日に尋ねる。この5人しか呼ばなかったのは、それなりの理由があるはずだと思ったからだが、その中に呼ばれてもいない自分が入っていてもいいものか……。

 

「うーん、一応聞いてみるけど…うん、いいと思うよ」

「そうか、いいのか」

 

 

 

 

「あのね、梅雨ちゃんが皆にお話ししたいんだって」

 

 寮の外で待っていたのは大会に参加していなかった蛙吹だった。蛙吹は5人を見ると、静かに話し出す。

 

「私思ったことは何でも言っちゃうの。でも何て言ったらいいのかわからない時もあるの。病院で私が言った言葉憶えてるかしら?」

 

 出久は爆豪と鏨を奪還する前のことを思い出し、頷く。

 

「心を鬼にして辛い言い方をしたわ」

「梅雨ちゃん」

「それでも、皆行ってしまったと今朝聞いてとてもショックだったの。止めたつもりになってた、不甲斐なさや色んな嫌な気持ちが溢れて…何て言ったらいいのかわからなくなって、皆と楽しくお喋りできそうになかったのよ。でもそれはとても悲しいの」

 

 溢れてくる涙をポロポロと流す蛙吹。

 

「だから…まとまらなくってもちゃんとお話をして、また皆と楽しくお喋りできるようにしたいと思ったの」

 

 そんな蛙吹を見て、麗日も自分の思うことを伝える。

 

「梅雨ちゃんだけじゃないよ、皆すんごい不安で拭い去りたくって。だから…部屋王とかやったのもきっとデクくんたちの気持ちはわかってたからこそのアレで…だから責めるんじゃなく。またアレ…なんていうか…ムズいけど…とにかく、また皆で笑って…頑張ってこうってヤツさ!!」

 

 麗日は腕を挙げてグッと拳を作り、笑顔を見せた。

 

「梅雨ちゃん…すまねえ!!話してくれてありがとう!!」

 

 1番はじめに切り出したのは切島だった。

 

「蛙吹さん!」

「蛙吹すまねえ」

「梅雨ちゃん君!」

「あす…ゆちゃん!」

「ケロッ」

 

 5人は蛙吹に、駆け寄る。

 こうして、彼らは日常へと戻っていくのであ……

 

「よし、今度は地飛沫だな!」

「はい!?」

 

 ただ聞いているだけだったのに急に切島から声が掛かり、鏨は情けない声を出す。

 

「な、なんのこと……?」

「……爆豪と地飛沫の所へ行った時に……お前のことを話してた、インプラントって奴についてだ」

「!?」

 

 鏨は切島の言葉に肩をビクリとさせ、出久と飯田、轟を見る。

 

「それって私たちも聞いていいお話しかしら?」

「…………」

 

 蛙吹に話し掛けられて、鏨は俯いた。逃げることはいけないことだ。ここで逃げても何にもならない。そうは思うが……。

 

「地飛沫くん」

「緑谷くん……」

 

「ゆっくりでいいよ」

「……うん」

 

 鏨は出久の言葉に頷く。

 深く息を吸って、気持ちを落ち着けさせる。

 

「俺、の……昔の話し、なんだけど……」

 

 鏨は保須市ですでに話していた3人に時たま助けを求めながら、ゆっくり、ポツリポツリと話す。

 

 

「───てこと、なんだけど…えと、嫌いに、なってほしくなくて、今まで言えなくて……」

「……鏨ちゃん、私たちそんなとで鏨ちゃんを嫌いにならないわよ」

「梅雨ちゃん……!」

 

 蛙吹の言葉を受けて、鏨は蛙吹の手を握った。彼女も鏨の手を握り返した。

 

「地飛沫、俺ちょっとでもお前のこと疑っちまった!

 男として情ねぇ!地飛沫、1発殴ってくれ!」

「切島くん!?」

 

 切島は鏨に頭を下げて、いつ衝撃がきても良いように構える。

 

「頼む!」

 

 鏨は少し考えて、わかったと頷いて、思っいっきり切島を殴る。個性を使わなかった切島は、予想以上に重い鏨の拳に吹き飛ばされた。

 

「か、かなり本気だな、地飛沫くん!」

「そうでないと、切島君に失礼かな?って」

「ありがとう、地飛沫!お前はやっぱり漢だぜ」

 

 鏨と切島は握手を交わす。

 

「地飛沫さん、私も貴方に殴られましょう……」

「八百万さんも?」

「いつでもどうぞ!」

 

 鏨は八百万にも拳を奮い、やはり握手を交わした。

 

「しかし、緑谷たちに言ったなら、俺たちにも言って欲しかったよな」

「でも、地飛沫くんの秘密を知れたって、なんか優越感!」

 

 こうして、本当にいつもの日常へと戻っていくのであった。

 




鏨ちゃんの男女平等パンチ。
河川敷とかでよくある熱血シーンを想像して書きました、はい。
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