barroco   作:千α

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鏨ちゃんを今の本誌の展開に絡ませるか、絡ませないか、それが問題。




「おっきい…」

 

 ここで試験をするのか…と鏨は試験会場の国立多古場競技場を見上げる。それと同時にここで仮免を取れると感じて顔を緩ませる。

 

「この試験に合格し仮免許を取得できれば、おまえら志願者(タマゴ)は、晴れてヒヨッ子…セミプロへと孵化できる。

 頑張ってこい」

 

 相澤の激励を聞き、生徒達は気を引き締めた。

 そして、気を入れるために彼らは声を上げる。

 

「っしゃあ。なってやろうぜ、ヒヨッ子によォ!!」

「いつもの、一発決めて行こーぜ!」

 

 鏨もいつものように円陣を組み、片手の拳を天高く挙げる準備をする。

 

「せーのっ、"Puls(プルス)…」

Ultra(ウルトラ)!!」

 

 しかし、いつものそれは不意に現れた人物によって阻止されてしまった。

 鏨はギョッとすると1歩後ろへ下がった。

 

「勝手に他所様の円陣へ加わるのは良くないよ、イナサ」

「ああ、しまった!!」

 

 イナサ、と呼ばれた彼は声を上げる。

 

「どうも大変!失礼!致しましたァ!!!」

 

 鏨はススっと相澤の後ろへやってきた。彼のテンションに引いた訳では無い、さっきは驚いてしまったが彼の素直さには好感が持てている。それよりも鏨は何か、嫌な視線(・・・・)を感じてしまい、今1番の安全地帯である相澤の後ろへ行ったのだ。

 

 彼らは士傑高校の生徒達らしい。正直鏨にはあまり興味の無い話だ。それよりもこの嫌な視線(・・・・)が士傑高校の生徒達の中から感じるのが気になって仕方がない。

 

「一度言ってみたかったっス!!プルスウルトラ!!自分、雄英高校大好きっス!!

 雄英の皆さんと競えるなんて光栄の極みっス、よろしくお願いします!!」

 

 それを言い終わると、士傑高校の生徒達は去っていく。

 その途中で、鏨は嫌な視線(・・・・)の張本人を見つけた。士傑高校の女子生徒…彼女は鏨と目が合うとニッコリと鏨に笑顔を見せるが、鏨にはそれが嫌なモノであると直感的に感じた。

 

──この人、嫌だ…。

 

 鏨は反射的に彼女を睨みつけた。それでも、彼女はどこか嬉しそうに去っていく。

 その後、相澤やクラスメイト達が何かを話していたようだが鏨はそれどころではない。この試験に何かが(・・・)混じって(・・・・)いる(・・)。それが鏨に不快感を与えた。

 

「イレイザー!?イレイザーじゃないか!!」

 

 鏨はその声を聞いて彼女から目を離す。その声の持ち主を見た瞬間の相澤の心底嫌そうな顔を見てしまい、今度はそっちに気を取られた。

 

「テレビや体育祭で姿は見てたけど、こうして直で会うのは久し振りだな!!」

「あの人は…!」

 

 出久はこちらへやって来た女性に何か心当たりがあるようだ。

 

「結婚しようぜ」

「しない」

「しないのかよ!!ウケる!」

 

 彼女は相澤の即答に笑う。

 

「相変わらず絡み辛いな、ジョーク」

「スマイルヒーロー "Ms. ジョーク"!個性は "爆笑"!

 近くの人を強制的に笑わせて思考・行動共に鈍らせるんだ!彼女の(ヴィラン)退治は狂気に満ちてるよ!」

「なにそれ怖い」

 

 出久の説明を聞いて、鏨はその光景を想像して身震いした。爆笑している(ヴィラン)とその中心に立つ、Ms.ジョーク。怖すぎる。

 

「私と結婚したら笑いの絶えない幸せな家庭が築けるんだぞ」

「その家庭幸せじゃないだろ」

「ブハ!!」

 

 とにかく彼女の認識はよく笑う人だ。

 それに、性格は全然違うがどこかキサゲと喋り方が似ているような気がして、さっきの嫌な感じが少しづつ解けていく感覚がした。

 

「仲が良いんですね」

「昔、事務所が近くでな!助け助けられを繰り返すうちに相思相愛の仲へと」

「なってない。何だ、お前のとこもか」

「いじりがいがあるんだよなイレイザーは。

 そうそうおいで皆!雄英だよ!」

 

 Ms.ジョークがそう言うと、鏨達の前に彼女の生徒達がやって来た。

 

「おお!本物じゃないか!!」

「すごいよすごいよ!TVで見た人ばっかり!」

「1年で仮免?へぇー随分ハイペースなんだね。まァ色々あったからねえ。さすがやる事が違うよ」

「傑物学園高校2年2組!私の受け持ち。よろしくな」

 

 鏨はまた嫌な視線を感じた。しかしさっきのような感じではなく…そう、嫌な視線ではあるがそれが不快感にはならない。

 

──この人達、俺達を意識(・・)してる…雄英ってやっぱりそういう感じになるんだ……ってことは、ほかの人達もそうなのかな?

 

「俺は真堂!今年の雄英はトラブル続きで大変だったね」

 

 真堂と名乗る彼は、出久の手を握った。

 

「えっ あ」

「しかし君達はこうしてヒーローを志し続けているんだね、素晴らしいよ!!不屈の心こそこれからのヒーローが持つべき素養だと思う!!」

 

 次々と雄英の生徒達と握手をしていく真堂に、鏨達は戸惑う。

 

──まぶしい。

 

「ドストレートに爽やかイケメンだ…」

 

 初めは薬師と同じタイプの人間かと思っていたが、この真堂は全く違う人間だということがわかってしまっていた鏨は、上鳴の言葉に首を傾げた。

 

──でも、嫌な人じゃない。

 

 それは確信として持てていた。

 

「君は地飛沫くんだね!」

「……うん」

 

 でもそれとこれとは別なわけで、鏨は握手を求めてきていた真堂から距離を取った。

 嫌な人じゃないと言っても、そこにヒーローとしての素質があるかどうかは別だ。だが鏨にはそれをステインのように見抜くことなんてできない。

 

「君も、爆豪くんと同じで心の強いと思っているよ!っていうか遠いな!」

「気のせい」

「そっか、気のせいか!」

 

 露骨に威嚇しないようにはなってきたが、やはり知らない人に会うと身構えてしまう。

 

「……やっぱり、変な人…」

「変?」

「嫌な人じゃないのに、嫌な感じする」

 

 背中ムズムズする…と感じていると切島に「お前も失礼だな!」と言われるが、鏨は気にしない。そんなこと(・・・・・)よりこの周りの視線から逃げたくて仕方がない。

 

「おい、コスチュームに着替えてから説明会だぞ。時間を無駄にするな」

「はい!!」

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

「えー…ではアレ、仮免のヤツをやります。あー…僕、ヒーロー公安委員会の目良です。好きな睡眠はノンレム睡眠。よろしく。

 仕事が忙しくてろくに寝れない…!人手が足りてない…!眠たい!そんな信条の下、ご説明させていただきます」

 

 試験会場には既に百を超える受験生が集まっていた。

 鏨は辺りを見渡して、さっきの士傑高校の彼女が見える範囲にいないか確認する。彼女がここに紛れ込んだ不純物であることには間違いがない。だから、もし何かがあれば…と鏨は拳に力を入れる。

 

「ずばりこの場にいる受験者1540人一斉に勝ち抜けの演習を行ってもらいます。

 現代はヒーロー飽和社会と言われ、ステイン逮捕以降ヒーローの在り方に疑問を呈する向きも少なくありません」

 

 ステイン、そういえば元気だろうか?もし仮免許を取ったら…喜んでくれるだろうか…なんて考えたものだから、鏨は無性にステインに会いたくなった。俯いて地面を見ていると、隣にいた飯田が肩に手をポンと置く。

 

「……ありがとう、飯田くん」

「なんでもないさ、このくらい。それより今は試験に集中しよう」

「うん」

 

 ステインの話を聞いたりすると、鏨は寂しそうにしていると飯田は気が付いていた。兄の仇でもあるステインだが、それでも鏨には恩人だ。会いたくても会えない、会えるのに会えない寂しいに決まっている。

 

「多くのヒーローが救助・ヴィラン退治に切磋琢磨してきた結果、事件発生から解決に至るまでの時間は今、ヒくくらい迅速になってます。

 君達は仮免許を取得し、いよいよその激流の中に身を投じる そのスピードについて行けない者ハッキリ言って厳しい。よって試されるはスピード!条件達成者 "先着" 100名を通過とします」

 

 たったの百人しか通れない、その事実に会場はザワつく。それもそのはずだろう。千人以上もいるのに関わらず、一気にそれだけの数を落とすのだから。

 

「で、その条件というのがコレです。受験者はこのターゲットを3つ、体の好きな場所、ただし常に晒されている場所に取りつけて下さい。足裏や脇などはダメです。

 そしてこのボールを6つ携帯します。ターゲットはこのボールが当たった場所のみ発光する仕組みで、3つ発光した時点で脱落とします。

 3つ目のターゲットにボールを当てた人が "倒した"事とします。そして "2人"倒した者から勝ち抜きです。ルールは以上」

 

 シンプルなようで難しい。それが鏨の感想だ。ボールは6つ合格ラインギリギリの個数だ。もし、1つ外れればそれだけで不利になってくる。既に幾つか当たっている人を狙っても…その人を狙う受験生はまた多いはずだ。

 だが……

 

──けど、まあ…俺の得意分野(・・・・)かな?

 

 




今回は鏨のセリフとか少なかったかなー?本当にごめんなさい。
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