barroco   作:千α

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すんませんでした。遅くなりました。
就活も始まり、大変多忙となっていました。そろそろ決まりそうなので、息抜きに書いた次第です。
しばらく書いてなかったので、ちょっと文章の構成とか変化しているかも知れませんが、よろしくお願いします。


日々

「へー、今日はそんなことがあったんだ」

「地飛沫、今日は保健室だったもんな」

 

 出久が爆豪よりも1日早く学校に復帰したその日、鏨は保健室にて授業を受けていた。

 

「まさか、サボってた頃のツケがこんなところで返ってくるとは……」

「あー、それはお前が悪いわ」

 

 それは入学当初、雄英高校の教師だろうが何だろうが信用してたまるものかと、何かにつけて反抗していた頃だ。今ではそんなことはなく、本当にあの頃は申し訳なかったと鏨は反省している。

 

「でも、補習をあと何回かしたら、またみんなと授業受けれるって」

 

 それよりも……と鏨は辺りを見渡すと、少し不安そうする。

 

「みんなの話に、ついて行けない」

「その気持ち良くわかるよ、地飛沫くん」

 

 謹慎をくらっていた出久は鏨の気持ちに同意して頷く。

 周りでは、インターンシップやらビック3やら今日の授業のことやら、鏨には全く理解できない言葉が並んでいる。爆豪も鏨と同じようで、クラスメイト達を睨みながらも、いったい何のことか気になるようだ。

 

「そうだね、僕でよかったら色々教えるけど?」

「本当に?緑谷くんが教えてくれるなら、なんか安心だよ」

 

 にっこりと出久に鏨は笑いかける。元々の顔立ちに相まって、その笑顔は同性の出久でも照れてしまう。同時に、この顔を誰にでもできたら、きっと人気ヒーローになれるだろうと思った。

 

「そういえば、今日地飛沫がいたらどうなってたんだろうな」

「今日?」

「授業で、3年生の先輩の1人と戦ったんだ。でも皆手も足も出なくて……」

 

 先輩と?しかも3年生?と鏨は思っていたよりもクラスメイトが、自分が思っていたことよりも違うことをしていたことに驚いた。3年生と戦った。そのことで、クラスメイト達はもっと上を目指す気満々といったようだ。

 

「みんなが負けたんだ…どんな個性だったの?」

「えーと、透過って個性で、色んなものをすり抜けられるんだって」

 

 出久は自分が知る限りの通形ミリオのことについて話す。鏨はそれを頷きながら耳を傾ける。説明が終わったあと、鏨は少し考え込むと。

 

「……実際に見てないから、よくわからない、けど…俺も多分、負けてた」

 

 出久はそんな自信なさげな鏨に驚いた。鏨は個性発動条件が複雑ではあるが、上手く使いこなし、他にも体術はもちろん咄嗟の判断力には目を見張るものがある。それを通形ミリオという人物を見ずにおそらく負ける、と鏨は宣言したのだ。

 

「やっぱり地飛沫でも無理か」

「透過の個性が厄介だよな。物理攻撃きかねーし」

「いや、そんな個性(もの)は重要じゃないよ。

 緑谷くんが、そのとーかた(・・・・)?さんがこの個性を使うまでしてきたことも、教えてくれたよね。それ聞いて、俺じゃ無理って思った。

 キサゲ言ってた。経験に勝る武器はないって」

 

 おそらく自分達よりもミリオは自身の個性に苦しんだはずだ。それを上手く使い、今やこの雄英高校でもNo.1になった男。生半可な努力ではなかったはずだ。様々な経験をしているだろう。それを踏まえて、例え得意な個性なしの体術で挑んでいたとしても…負けていた、はずだ。

 

「うん、ちょっと会ってみたい、かな」

「地飛沫が、自分から、人に会いたいって!?」

「熱でもあるのか!?」

「ちょ、それはさすがに失礼…」

 

 しかし事実なのだ、会いたいと思ってしまったのだから仕方がないだろう。

 

 

 

────────────

 

 

 

「インターンシップか……林子ちゃんは何か考えてる?」

「そうですわね…「インターン受け入れの実績が多い事務所」が対象ですから、かなり絞られてきますわね」

 

 インターンシップの件だが、鏨と林子は2人組みのヒーローがいる事務所に行こうと考えていた。2人で活動している、尚且つ学校側から出されていた条件を踏まえて考えてみるが、なかなか見つからないのが現状である。

 

「相澤先生なら、何か知ってる、かな?」

「そうですわね。先生方に聞いた方が何かわかることも多いかも知れませんわ!」

 

 こうして、鏨と林子は手分けをして参加可能な事務所を探すこととなつたのだがその問題はあっさりと、鏨が真っ先に頼った相澤によって解消されることとなった。

 

 

「なら、ここが1番妥当だろう」

「ここ?」

 

 鏨に渡されたのは、ヒーロー事務所の詳細な情報が記されている紙だった。首を傾げながら、鏨はその紙を覗き込む。

 

「『ヒーロー事務所・デュオ』?」

「今回のインターンシップ用のプリントだそうだ。

 2人組のヒーローで、俺やマイクとは同級生だった」

「プリント作ってたんだ……用意周到?…なんですか?」

「あの2人は、雄英への支援は惜しまない方針だからな。ただ、2年以上が対象で募集しているようだが……」

 

 相澤は鏨を見る。とてつもなく目がキラキラしている。もう行く気満々と言ったところだろうか。2人組ヒーローで、受け入れることができる事務所は…相澤が知っているのはここぐらいだ。鏨もなんとなく気が付いている。

 

「あの、林子ちゃんと相談してきます!だから、えっと……」

「……こっちでも、デュオの2人には話しておく」

「相澤!」

「ただ、この2人がお前達を受け入れるかどうかまではわからない。それでもいいか?」

「はい。俺、絶対にインターンシップ行きたいから、お願いします」

 

 以前の職場体験とは大違いのテンションに、相澤は暫く呆気に取られた。しかし、鏨がそれだけ成長したということなのかもしれない。まだ他者との関わり合いは苦手なようだが、自分から行動しようとしているのは、ここ最近よく見られているのが証拠だろう。

 

「じゃあ、林子ちゃんに言いに行きます!」

 

 鏨は嬉しそうな笑顔を相澤に向けると、すぐに林子の所へ向かうと言い、職員室から飛び出した。

 

「地飛沫、入学式からだいぶ変わったな」

「………そうだな」

 

 願わくば、そのままいい方向へ変わってもらいたいものだ。

 中学生の頃の刺々しさは今では形を潜めているが、外でその心持ちが保てるかどうかが心配な所ではある。

 

──まあ、あの2人なら大丈夫か。

 

 相澤は早速、電話の受話器を手に取った。

 

 

 

────────────

 

 

 

「あ、オールマイト」

 

 廊下を歩く鏨の前に現れたのは、鏨もよく見知ったオールマイトだった。オールマイトは機嫌の良い鏨を見て、おや?と首を傾げた。それだけ、本当に良い顔をしているのだ。

 

「やぁ、地飛沫少年!今日は気分が良いみたいだね」

「は、はい…インターンの行き先、決まりそうで……」

 

 鏨は照れくさそうに頬を掻く。

 いつだって、誰にだってこんな顔ができれば、プロヒーローになれば、鏨にもすぐにファンはできるだろう。キレた時は誰よりも怖い顔をするが、それと一変して笑顔は綺麗だ。

 

「あの……オールマイト、聞きたいこと、あるんですけど……」

 

 しかし、先ほどとは打って変わって鏨は少し暗い顔をした。とても言いづらそうだ。オールマイトはそう感じ、鏨に少しづつでいいからと、鏨に言う。鏨はゆっくり頷いて、ポツリと呟いた。

 

「…………ステイン(・・・・)、のこと…なんだけど」

 

 オールマイトは目を見開いた。しかし、心当たりはある。鏨の思想はヒーロー殺し・ステインと似通っている。その鏨が、ステインについて聞きたがるのも納得がいく。

 鏨とステインの関係を知らないオールマイトは、そう考え身構える。

 

「……俺、その…えーと………あ、の…俺ステインの…弟子(・・)なんです………」

「!!?」

 

 衝撃

 

 脳天に一打食らったかのような衝撃を、オールマイトは受けた。

 だんだん小さくなる声とともに、鏨の顔は下がっていった。冗談などではない。しかしどうして……。

 

「どうして、それを今?」

 

 オールマイトの問に鏨は静かに、たった一言。

 

「ステインに会いたい」

 

 ああ、なんて当然のことを質問したのだろうか。この少年の気持ちはよくわかる。同じだ。これは師匠に自分の成長を見てもらい、認められたいという気持ちだ。

 

「仮免取ったって言いたい…クラスメイトのみんなが仲良くしてくれるって言いたい…相澤先生優しいって言いたい…緑谷くんのこととか…あと、オールマイトのサイン自慢したい。いっぱい言いたいことあるのに…でも、会えないから……だから、オールマイトならって……思って……」

 

──私は、この少年に何をしてあげられるだろうか。

 

「地飛沫少年」

「オールマイト?」

「約束をしよう」

「約束?」

 

 それを考えたら、もうこれしか言えない。

 

「いつになるかはわからない。けど、きっと君とステインがもう一度会えるように私が掛け合ってみるよ」

「………本当に?」

 

 目を輝かせた鏨に、オールマイトは大きく頷いた。その瞬間、鏨の顔にはまた笑顔が蘇った。

 

「だから地飛沫少年はそれまで、ステインに伝えたいことを1つでも増やすんだ!」

「伝えたいこと……」

「そうだとも、会って言葉に詰まってしまったら元も子もないからな!」

「お、俺、その時忘れてる、かも!オールマイト、どうしよう!」

「なに、メモを取っておけば大丈夫だ!」

「メモ!」

 

 だんだん興奮して鏨は前のめりになってくる。

 いつ再会することが叶わないかもしれない。そんなこと、きっと鏨はよくわかっているはずだ。それでも、鏨は嬉しかった。オールマイトが約束(・・)をしてくれたからじゃない。オールマイトが自分の気持ちに()()()()()()()()ことが嬉しかったのだ。

 

「あ、オールマイト…その、このこと緑谷くん達にしか言ってないから、他の人には内緒にしてて。お願い」

「もちろんだとも。ただ、もしも(・・・)の時があれば……」

「うん、わかってる」

 

 それから一言二言話したあと、鏨は寮へ帰って行った。

 

 インプラントとステインが何かしらの繋がりがあることは、これまでの警察の報告からは聞いていた。インプラントと鏨との関係、そして今回わかったステインと鏨の関係。それをかんがえると、あの2人の繋がりが見えてきた。

 そして、(ヴィラン)連合が林間合宿の際に鏨を誘拐した理由も。

 

「地飛沫少年……」

 

 あの少年の未来はいったいどうなるのだろうか。鏨がインプラントに狙われていることは、もう既に信頼におけるヒーロー達には伝わっている。彼が自ら(ヴィラン)になることはまず無いだろう。このまま、クラスメイト達と楽しく学校生活を送って欲しいものだ。




鏨がオールマイトに打ち明けた回となりました。というか、もうそろそろオールマイトには言っといたほうがいいかなー?と考えた結果がこれです。ちょっと早かったかな?まあ、ダラダラするよりはいいかな?精神。
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