barroco   作:千α

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今回はちょっと読みにくいかも知れません。
急に始まり急に終わります。


保須市と

 

 

 

 

 

ステインが連れてこられたそこはどこかのバーだった。

 

 

「よう、ステイン。キミも呼ばれてたのか」

「インプラントか……」

 

 そこにいたのは、糸目の男と、頭に角を生やした少女だった。二人は自分たちで入れたのであろう紅茶を、悠々と飲んでいる。

 

「元気だったー?」

「おい黒霧、なんだコイツら。なんでこんなに鬱陶しいんだ?」

 

 インプラントと呼ばれた男はステインに手を振る。

 その隣にはぐったりとした様子の死柄木弔が座っていた。

 

「インプラント、死柄木弔にいったいなにを……」

「ん?とりあえず構い倒した」

 

 黒霧の問にインプラントは、だって暇だったんだもん、とカラカラと笑う。

 

「まあ、僕が呼ばれるならキミも呼ばれるだろうと予想していたけど……予想的中ってやつだね」

()、後からなら何でも言えるのよ」

()は相変わらず厳しいこと言うなぁ……」

 

 隣にいた少女にそう言われ、インプラントのさきほどの笑みは、苦笑いになった。

 

 

───────────────────────

 

 彼ら、(ヴィラン)連合は、ヒーロー殺しと名を馳せるステイン、そしてインプラントに協力を求めてきた。

 死柄木弔とステインの会話、及び戦闘には全く興味がないインプラントは、角付きの少女とどこからか取り出してきたスゴロクを始める。

 しばらくして、ステインは(ヴィラン)連合に協力することになったようだ。

 

 

 

「あー、そうだステイン」

 

 ステインが再び保須市へ向かおうとした時、インプラントがステインを呼び止めた。

 

「………………なんだ?」

「今聞くか聞かないかで迷ったね。まあいいんだけども。

あの子(・・・)、雄英に入ったそうだよ」

 

 そう言うとインプラントは食べかけていたケーキを、角付きの少女と同じタイミングで食べ始める。

 

「なに?」

「なんでも、更生中学校で初の雄英進学者だって。大きくなったよね、昔は小突いただけでピーピー泣いてたのに……。

 でも彼、あの頃に比べるとだいぶん弱くなってるよ」

 

 その時、ステインは始めてインプラントを見た。

 それに気を良くしたのか、インプラントはニヤリと笑ってみせる。

 

「…………」

「おいおい、そう睨むなよ。僕はイカサマだってするし嘘もつく。でも、つまらない嘘はつかない。それはキミがよく知ってるだろう?」

「そうだな……ハァ、お前はそういう奴だ。だからタチが悪い」

「お互い様だろう?僕だって、キミがそういう奴じゃなけりゃ、殺してやっている。

 まあ、僕は弱いからキミに勝つなんてことなんてまず無理だろうけどさ」

 

 そう言って、インプラントはケーキにフォークを突き刺す。何度も何度も、何かを発掘するかのように、何度も。グシャリッと音を立て、ケーキはグチャグチャになていった。

 

「まあ、キミが何見せてくれるか楽しみにしてんぜ」

 

 ニッと笑うインプラントは、何かを企んでいることは明白だった。しかしステインは何も言わない。ステインはこのインプラントという男が、どんな信条を掲げているのかを知っているからだ。それが、インプラントの心に深く根付いたものであることも。

 

 ステインがいなくなった後、死柄木がインプラントに話しかける。

 

「で?あんたはどうするんだ?」

「キミらに協力するかってことかい?

 んー……まあ、僕にも目的があるし、それにキミらが協力してくれるってんなら……ほらWin-Winってやつさ。いいだろう?えーと、先生だっけ?」

 

 インプラントが向けた視線の向こうには、モニターがある。

 

『……いいだろう。そうでなければ、おちおち君を信用できないからな』

「おやまぁ……信用ゼロかい。ま、僕らしいけどね。

 ……お、オレンジ見つけた」

 

 フォークを動かすのを止めたインプラントの視線の先には、グチャグチャになったケーキの中に小さないちごがあった。

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 それは職場体験の二日目に起きた。

 

「筋原さん、お疲れ様」

「ありがとね、タガネちゃん」

「あの、この(ヴィラン)対策、すごく参考になります」

「嬉しいこと言ってくれるわね〜」

 

 鏨は青いヒーローコスチュームを身にまとい、筋原の手伝いをしていた。

 

「それにしてもタガネちゃんのコスチューム、なんだか露出多いわね」

「個性の関係です」

「あらそうなの?」

 

 鏨のコスチュームは、ノースリーブにへそ出しで、守られていそうな箇所はブーツを履いている足と、厚手のグローブをしている手、少し短めの赤いマフラーをしている首だけだ。

 

「さて、この後は見回りね!タガネちゃんも、頼むわよ!」

「はい、筋原さん!」

「……うん、元気そうね」

 

 筋原は、鏨の様子を伺ってそう言った。

 

「え?」

「ほら、タガネちゃん…元気なかったから……昨日保須市まで一緒に来た、飯田くんだっけ?とても心配してたじゃない?」

「あ、えっと……」

 

 鏨と筋原は、一緒に保須市へ来ることになっていたので、目的地が同じだった飯田とは途中までは一緒だった。

 全てお見通しよ!と、言う筋原に鏨はどう答えようかしばらく考える。

 

「……飯田くん、無理しないかな?って…何か、焦っているような気がして。でも、俺じゃうまく元気づけられなくて……飯田くんには、いろいろ世話になってるし……あ、それは、委員長だからってのも、あるだろうけど。でも、飯田くんには感謝してるから、だから、少しでも力になってあげたくて……」

「そっか……でも、きっと大丈夫よ!」

「え?」

 

 筋原は鏨の背中をバシンッと叩く。

 あ痛っと小さく叫んだ鏨だが、筋原は気が付いていないようだ。

 

「タガネちゃんの気持ち、きっと飯田くんに伝わってる。何があったかは知らないけれど……もしかすると、飯田くんが元気になるのは、もう少し遅いかもしれない。だから、タガネちゃんはそれまで飯田くんを見守ってあげなさい」

「でも……」

「大丈夫よ!「おはよう」って言われるだけで、人って違うのよ?人はそんな些細な関わりでも変わっていけるの。だからとりあえずこの一週間終わったら、「おはよう」って自分から言ってなさい!」

 

 そう言い終わると、筋原はまた鏨の背中をバシンッと叩く。

 あ痛っとまた小さく叫んだが、その筋原の手はとても暖かい。鏨にはその手が、とても心地よいものに感じる。

 

──ああ、なんて懐かしいんだろう……。

 

「……筋原さん」

「何かしらん?」

「…トイレ、行ってくるね」

 

 それが少し気恥ずかしかった。

 

 

 

 

 

 

 行ってらっしゃーい!と筋原に言われ、鏨は仮設トイレへ向かう。本当は、恥ずかしいのを隠すためについた嘘だからか、全く尿意は感じていないのだが……。

 

──筋原さんも、たぶん気が付いてたんだろうな……。

 

 鏨は保須市の街並みを見る。

 今はまだ、安全そうだと一息つく。

 

 とにかく、今は飯田くんがあの人を見つける前に、あの人をここから遠ざける。今の飯田くんがあの人に勝てるはずがない……最悪の場合は…飯田くんが、死ぬ。

 

 鏨は頭によぎった最悪の未来を振り払う。

 そうさせないために、自分はここに来たのだと。鏨は前を向く。

 

 

 そこで立ち止まる。

 誰かがこちらを見ている。ああ、これは知っている。知っているからこそ、鏨はその誘い(・・)に乗ることにした。

 充分な広さのある路地裏に、足を踏み入れる。

 

「久しぶりだな……ハァ…タガネ」

「うん、久しぶり……師匠(ステイン)……」

 

 こうして三年ぶりに、師弟は再会したのだった。

 




インプラントの詳しくプロフィールはまだだいぶ先に紹介したいと思います。
あとステイン書きにくい!!誰だお前!!
とりあえずステイン書く時のコツを教えてください←
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