barroco   作:千α

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ステインは鏨に甘い。


飯田少年と

 

「3対1か………甘くはないな」

 

 ステインの言葉を合図にするように、出久と鏨はステインの元へ駆ける。

 後ろからの轟の援護を受け、攻撃する2人だが、さっきまでとは動きが全く違うステインにあしらわれる。

 

「地飛沫、ワイヤーはあと何本残ってる!?」

「ごめん、もうワイヤーなくて……ステインに残り取られて、切っちゃった!」

 

 そう言った鏨に、轟は顔をしかめた。

 この状況を打破する方法を3人は必死に考える。

 

「止めてくれ……もう……僕は……」

 

 飯田の声が聞こえる。

 

「やめて欲しけりゃ、立て!!!」

 

 ステインはそう叫んだ轟の方へ向かった。

 

「ごめんっ轟くん…!」

「くそ……っ轟くん、飯田くん!!」

 

「なりてえもん、ちゃんと見ろ!!」

 

 鏨には、その言葉が飯田の心に届いたかはわからない。でも、妙に自分の心にストンと入っていった。

 

──なりたいもの?

  なりたいものは……。

 

パキンッ

 

 何かが割れた音が、鏨に響いた。

 

 

 

 

 

 紅茶を飲んでいたインプラントは顔を上げる。

 

「どうしたの?()

「どうした?……うーん…何だかね、嫌な音がしてさ」

 

 角付きの少女の問に答えながら、インプラントは飲んでいた紅茶に角砂糖を入れる。

 

ひとつ、ふたつ、みっつ……

 

「嫌な音?」

「おそらく前から()としての自分に反発していた子が、それに成功したかな?」

 

よっつ、いつつ、むっつ……

 

「成功したの?あなたから?」

「いやいや、まだ繋がりが完全に消えたわけじゃあない。それに、僕から簡単に反抗出来る奴なんてそうそう……ああそうか、あの子か」

「あの子?」

 

 インプラントは角砂糖だらけになったティーカップを傾ける。重力に逆らわずに、紅茶だった物は地面に叩きつけられた。

 

「全く……一度目(・・・)までは大丈夫だと思っていたけれど、これで二度目だ…次は、完全に繋がりを絶たれる。あの子、そもそもは純粋に()ってわけじゃあないしね」

「…………」

 

()、死柄木くんのところへ行こう」

 

 インプラントは角付きの少女に向かい、ニッコリと笑ってみせる。

「……ええ」

 

 

 

 

 

 ステインに応戦しようと、轟は左の個性を使用しようとしたが、避けられてしまう。

 

──っ…んで、避けられんだよコレが!

 

「言われたことはないか?個性にかまけ、挙動が大雑把だと」

「化けモンが…」

 

 一瞬にして轟の懐に入ったステインに、思わずそう言う。

 出久も鏨も、すぐに轟の元へと急ぐがその時……やっと飯田が、立ち上がった……!

 

「ステインの個性の効果が切れた……!」

 

 4人ならばと、期待は膨らむ。

 

「レシプロ…バースト!!」

 

 飯田の強烈な蹴りはステインの刃物を折り、そのまま後退させる。

 

「飯田くん!!!」

「解けたか。意外と、たいしたことねぇ個性だな」

「良かった、飯田くん……」

 

 3人は三者三様の言葉を飯田に掛ける。

 

「轟くんも、緑谷くんも、地飛沫くんも関係ないことで…申し訳ない………」

「また、そんなことを…」

「だからもう、3人にこれ以上血を流させるわけにはいかない」

「感化され、とりつろうとも無駄だ。人間の本質はそう易々と変わらない。お前は私欲を優先させる、贋作(ニセモノ)にしかならない!"英雄(ヒーロー)"を歪ませる、社会のガンだ。誰かが正さねばならないんだ」

 

 以前の鏨なら、ステインの意見に全力で同意していただろう。

 でも、今は違う……確かにそうかもしれない、でも…彼はきっと、いいヒーローになれると、鏨は感じていた。

 

「言う通りさ、僕にヒーローを名乗る資格など…ない。それでも…おれるわけにはいかない…俺が折れれば、インゲニウムは死んでしまう」

「論外」

「待って!」

 

 そう切り捨てたステインに、鏨は思わず声をかけてしまった。

 ゆっくりとこちらを振り返るステインに、鏨は訴えかける。

 

「……人は変われるよ。今は、ダメかもしれないけど、でも……」

「ハァ……鏨、お前は相変わらず甘いな…」

「俺は、俺は変わったよ!?雄英に居ると、みんなといると……全然、見えるものが違ったよ。飯田くんも、きっと……!だから……」

 

 彼の可能性に掛けて欲しい、ここはいったん退いて欲しい。そう言おうとした時、鏨の顔の横を何かが通った。

 

「次は、お前でも容赦はしないぞ……」

「ステイン……っ」

 

 そのままステインは鏨から顔を背けた。

 鏨の頬からは血が流れる。だが、鏨は個性を使う気にはなれなかった。

 ただただ悔しくて、悲しくて……。

それでも、止まるわけにはいかない。

 鏨は腰に付いたポーチに手を入れる。

 

──これしか、もうない……ごめん、ごめんなさい……。

 

 鏨はステインの目の前へ走り出す。

 飯田は轟を庇い、腕を刃物で射抜かれ地に伏せている。

 

「地飛沫!」

「轟くん、早く俺の脚を凍らせてくれ!」

 

 鏨はステインの前に立つとナイフを投げる。

 それは、狙いが定まっていないものだ。避けるのは容易い。

 ステインはそのまま全てのナイフを交わし、鏨の服に刃物を突き刺し飯田と同じように地面に縫い付ける。

 

 飯田を殺そうと、向かうステインはそこで動きを止めたる。

 

 

 

 目の前で何かがキラリと何かが、光った。

 

 

 細い糸……光の加減によって、見えたり見えなくなるそれは、鏨のワイヤーだった。

 

─「ごめん、もうワイヤーなくて……」─

 

 それが鏨の嘘だったことに、ステインは気が付いた。だが遅い。

 

「……ごめん」

 

 いったい、何に謝っているのだか。

 友人を守ると、そう言ったのならその言葉はいらないはずだ。それなのに………一瞬その謝罪の意味を考えた。が、考える必要なんてものはない。鏨は、ステインをこの保須から遠ざけるとだけ言った、ステインを捕まえる気など毛頭なかったのだ。

 

優しすぎる。

あの街(・・・)で生きるには、本当に優しすぎた。人間のことを信用できない、怖いと言っている彼は、その実人間が好きなのだ。だからこそ、こんなにもヒーローに憧れた。誰かを助けたいとそう願った。

 

「ごめん、なさい」

 

 その呟きと同時に、ステインに迫る出久の拳、そして飯田の脚──!!

 2人の攻撃が、ステインを捉えた!

 

 




うちのステインはピッコロみたいなイメージだったりする。
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