目指せ、世界一! 作:ちょこ
あれから5年後。
レーヌはすくすくと育ち、既にピカチュウへと進化していた。ただ、生みの親がもともと小柄だったらしく、従来のピカチュウの半分、20センチくらいの身長だった。母曰く「あんた小柄だから乗せやすくてよかったわね」。はいおかげで肩や頭に簡単に乗っけられてちょー便利です。
で、今日はなんとレーヌさんの誕生日。レーヌが大好きなショッピングをしに行きたいと思いまーす。
「ピカァ?」
「今日はタマムシシティに行こうと思うの。タマムシデパートっていうとこがあるんだけど、品揃えも豊富なんだって」
レーヌが満足そうに頷いたのを見て、自分のリュックサックにお小遣いと、母が「レーヌ用に」とくれたお金を入れる。レーヌがいつも持っているピカチュウポシェットには、ピカチュウが毎月コツコツと貯めたお金が入っているミニがま口を入れる。
「アオイ、あたしも連れてって!」
アカネが私の部屋に入ってきて、涙目で訴えた。
私はアカネに、そこになおりなさい、と言ってカーペットの上に正座させる。
「いい、これはレーヌの誕生日祝いなの。だから、アカネ中心にお店を回ることもないし、私のお金ではアカネには何も買ってあげられない。それに、頼むなら私にじゃなくてレーヌにでしょ?」
「そうだった!」
アカネがレーヌに頼み込み、レーヌが「ピィカ、ピカ」とデパートでのマナーを教え始めたのを後目に部屋を出ようとしたら、スーツを着た出勤前の父が部屋に入ってきた。
「アオイ、頼まれていた飛行ポケモンだ。アカネじゃあるまいし、扱いは大丈夫だな?」
「もちろん。ありがと」
「気をつけて行ってくるんだぞー。夜にはケーキだって、レーヌに言っといてくれ」
そう言って、父は階段を降りて行った。つくづく、娘たちには甘い父親だ。
アカネはレーヌに許可をもらえたようで、ルンルンしながら着替えに行った。
10分後、玄関前にやってきたアカネは、なんと私と色違いともいえる服を着ていた。
私は濃い青のチュニックにレギンスだったのだが、アカネは赤いワンピース。丈が違うだけだが、これはあまりにも似過ぎている。
だが、レーヌは待ちきれないように早く早く、と急かすので、そのままモンスターボールを宙に投げる。
出てきたのはプテラ。レーヌを抱えたアカネが最初に乗り、その後ろに私が乗る。レーヌはプテラの頭近くまで登った。
「んじゃ、ラーさん、しゅっぱーつ」
父のセンスが疑われる名前だが、お互いに気に入っているらしいので何も言わない。
ラーさんは翼を広げ、私達に振動を与えないようにしながら飛び立った。
レーヌは風を浴びて喜んでいる。空を飛ぶ……は、さすがに無理があるから、今度レーヌになみのりを仕込んでやろう。
そう決意しながら空の旅を楽しみ、あっという間にタマムシシティに到着する。道のりはかなり遠いが、実は距離はそこまでないのだ。
さっそくタマムシデパートを探す妹と娘に呆れつつも、ラーさんをモンスターボールに戻し、ポケギアでマップを出してデパートへ向かう。そして到着したタマムシデパートに、レーヌとアカネは興奮を隠しきれていなかった。
タマムシデパートは、デパートというに相応しい建物だった。そんじょそこらのショップでは敵わないほどの店数と、品揃え。店ごとに店員さんが接客しているし、目立たないように警備員も立っている。
「レーヌ、どこから行く?」
聞くと、
「ピッカチュウ!」
案内板の最上階を示し、そこから指を下にスライドさせる。なるほど、上から順に見ていきたいのね。
「じゃあ、エレベーターはっと……」
見回してエレベーターを見つけ、全員でそこに乗り込む。
5階で、女の子ものの洋服や髪飾り、ストラップなどを見ていると、レーヌが服を引っ張ってきた。手渡されたのは、ピカチュウストラップ。
「あ、これが欲しいのね」
「ピッカ!」
「じゃあ、この店で他に良いものがないか見てから買おう」
「ピカ!」
ストラップを購入し、各階もひと通り回っていく。
屋上で、ミックスオレを飲みながら休憩しているとき、怪しげな男が近付いてきた。
「おう、お嬢ちゃんたち、かわいいポケモン連れてるな。触らせてもらっていいか?」
「いい———」
「あ、この子警戒心強いので、知らない人がむやみに触ると感電させちゃうんです」
アカネの言葉を遮り、レーヌを抱いていう。
「すみませんね、他を当たってくだ———」
「いいじゃねかよぉ!」
急に男が怒鳴った。
やっぱそう来るか。
私はアカネにラーさんのモンスターボールとポケギアをこっそり渡し、ジュンサーさんに連絡を、と囁く。
「じゃあ、勝負だ! 俺が勝ったらそのピカチュウはいただく!」
やっぱりロケット団でしたかー。
レーヌは警戒モード、だが、レーヌの誕生日にこんな悪党と戦わせるわけにはいかない。
「ちょっと待っててね、すぐ片付けるから」
レーヌには頭の上で待機してもらい、ボールベルトについている数少ないモンスターボールを手に取る。
「お願いね、クロエ!」
「行け、コラッタ!」
ロケット団の下っ端らしく、出してきたのはコラッタ。よし、いける!
「クロエ、げきりん」
与える指示は簡単。私もクロエも、レーヌの誕生日を邪魔されて怒ってるんだ。これ以上最適な技はないだろう。
クロエのげきりんが一瞬でコラッタに決まり、戦闘不能にする。男はこれ以上ポケモンを持っていなかったらしく、賞金を置いて逃げて行———けなかった。ジュンサーさんたちが、男を包囲したのだ。
「ありがと、クロエ」
クロエをモンスターボールに戻し、通報してくれたアカネに礼を言い、ポケギアを返してもらう。
「ピカァ?」
「そうだね、家に帰ってお祝いしようか」
父のプテラに乗り込みながら、そういえば原作開始はいつなんだろうと気になった。
*
「ハッピバースデートゥーユー♪ ハッピバースデートゥーユー♪ ハッピバースデーディアレーヌ〜♪ ハッピバースデートゥーユー♪」
晩御飯はめちゃくちゃ豪華だった。
うちのレーヌはポケモンフードが嫌いなため、ヒトと同じものを食べているのだが、さすがに塩分過多なのではないだろうか。しかし、そこはちゃんと考えてあるようで、塩は少なめなのだと母は言う。
しかし、全く味は劣らず、レーヌは満足そうである。
食後のケーキを食べたあと、ダイニングテーブルについてしゃべったりゲームしたりしていると、突然父が呟いた。
「そういや、二人とももう10歳だな」
「そうね、そういえばそうだったわ」
父の言葉に母が便乗し、頷く。
「レーヌも5歳になったことだし、旅に出たら?」
「「……は?」」
初めて姉妹の心がひとつになった。
急に両親が旅の心得を語り出し、そして母が旅支度を始めたので、私はレーヌを抱えながら恐る恐る尋ねる。
「ねぇ、旅に出るのって、いつ?」
「2日後後よ」
「あのー、もうちょっと伸ばしていただけませんでしょうか……」
「なんで?」
「えーと心の準備が……」
「いいのよ別に。私だって急に家から出されて行ってこいって言われたし」
色々と規格外なお母さんでしたー……。
誤字脱字等ありましたらご報告お願い致します。
・解説
「クロエ」
チルタリス♀