目指せ、世界一! 作:ちょこ
「アオイぃ、まだなの〜?」
「ちょっと待ってよ。まだ真昼間じゃないの」
「いいじゃん〜。ピィかピッピ〜」
「夜にならないと会えないよ」
「むぅ」
お月見山なう。
妹は、なかなか捕獲活動を始めようとしない私に向かって仏頂面だが、私は今、ヒトカゲの育成をしている。
初登場? そりゃ、旅立つ直前にもらったからね。お父さんのリザードンの子供なの。
小さい頃からアルバイトをし、バトルで様々な人からお金を巻き上げてきた私は、かなり裕福なお財布を持っている。
だいたいのトレーナーは、生活費などを入れたカードと、賞金用の小銭入れを持っており、普段はカードで買い物をする。
何が言いたいかというと……
生まれたてヒトカゲをヤク漬けしています。
別に悪いことじゃない。麻薬とかソッチではなく、タウリンだのマックスアップだの、ドーピングアイテムを使っているだけだ。
ゲームとは違い、タウリン×10とタウリン十分の一、などというように計れるので、最初に全部努力値を固定出来るため大変便利だ。よって、私のヒトカゲ———ルージュは、周りの生まれたてヒトカゲよりは若干優れている。
ここからはレベル上げ。なのだが……。
ルージュは、水をかぶるのが嫌いなようだ。
お月見山内を流れている小川でレーヌとクロエが水を飲んでいるとき、ルージュは何故飲まないのか不思議に思っていると、水が超絶苦手だからなようだ。
つまりは、相手がこちらにメタを張ってきた場合、この子は出せなくなってしまう。
よって、まずはルージュを水に慣らすことから始める。
この子は、多分将来的に私のパーティでエースとなる子だ。メガストーンも、片方なら用意してくれるとお父さんも言っている。多分、お父さんのリザードンと同じやつだろうが、この子はエースとして、水タイプにも臆面なく攻撃をしていかないといけないのだ。
ルージュを説得し、まずは水を触って———
———などということからなどは始めない。
なみのりを仕込んだレーヌと共に、嫌がるルージュを無理矢理水につける。レーヌがルージュに水をバシャバシャかける。ルージュから力が抜ける。
これを何度も繰り返し、3時間経過。普通であったら、フワフワが湿るのを嫌がるはずのチルタリスの中でも例外な、クロエですら水浴びを楽しむ様子を見て、ルージュも諦めてレーヌやアカネと一緒に遊び始めた。水に慣れたようで何よりである。
この調子でいけば、もしかしたら水に耐性がつくかもしれない。メガリザードンXならまだしも、リザードンやメガリザードンYだったら耐性がついていた方がありがたい。
「……そろそろ暗くなってきたね。とりあえず、ピィを探しに行こう」
「ピッピじゃないの?」
「あれ? なつき進化、させてみたくないの?」
「したい!」
アカネのポケモンとはいえ、私は厳選をするつもりだ。アカネとは、今後わかれて旅をすることになるだろうし、アカネのことだ、育成についても、タイプ相性についてもまだまだわからないことだらけだろう。
この子は特殊アタッカーに向いているだとか、すばやさは低いだとか———ベテランのトレーナーなら感覚でわかるだろうが、転生者でもなく、また、新米トレーナーであるアカネにはわからないはず。
だから、姉としてはサポートするつもりだ。
少なくとも、特攻にはVが欲しい。
しかし、現実で厳選するとなると、あとで待っているのは地獄だ。それだけは避けなければならない。
だから、そうならないようにするのだ。
「あ、ピッピ見っけ。レーヌ、よろしく」
「ピッカー」
レーヌがピッピに近付き、話しかける。最初は警戒していたものの、レーヌの話を聞くとピッピは頷き、私達に手招きをした。
そして、向かったのは———
「わぁ、綺麗……!」
お月見山の頂上。
湖には月が映り、その周りをピッピやピィが囲んでいる。
先ほどのピッピが、リーダーらしいピッピに声をかけると、そのピッピが近付いてきた。
私はしゃがんで目線を合わせると、話しかける。
「こんにちは。私達、旅をしているトレーナーなんだけど、お願いがあるの。私の妹、アカネっていうのだけど、最初のパートナーのポケモンを探しているの。一緒に旅していいっていうピィが居たら、紹介してくれないかな?」
「ピィィ?」
「うん、出来ればピィがいいかな。お願い出来る?」
「ピィッ!」
交渉成立。
ピッピがピィに声をかけ、何体か連れてくる。
何年もレーヌと戦い、また、お父さんの激戦を間近で見続けていた私は、どの子も1V以上だと見抜く。ピッピに目を向けると、サムズアップを返してきた。ピッピなりに、アカネに気遣いをしてくれたらしい。
ただ、意外に量が多い。10体ほどいる中でアカネが戸惑っているので、申し訳ないがここから絞らせてもらう。
そして残ったのは、HP、特攻、特防がVのピィ3体。HPがVの個体、特攻がVの個体、HPと特防がVの2Vの個体。
私としては、どれでもいいと思う。あとはアカネとの相性次第だ。
アカネは、全員を撫でたり、声をかけてみたりしたあと。2Vのピィを抱き上げた。
「この子がいい」
一番アカネにアピールしていたためだろう、アカネも気に入ったようだ。
ピッピも頷いているので、大丈夫だろう。
「名前は何にするの?」
「エラ! 私、決めてたの!」
ピィ改めエラも嬉しそうだ。
アカネが、自分で初めて買ったモンスターボールをぎこちなく投げ、エラをボールにおさめる。
カチ!
無事に捕獲完了したようだ。
エラを再びボールから出し、アカネは抱き抱える。
「ピィッ、ピィ」
ピッピが服の袖を引っ張り、アカネにバレないように何か包みを渡してくる。その手触りで何かを悟り、ピッピに礼を言う。
さぁて、今夜はここで野宿をするとして、明日出発しましょうか。