番外編2本目です!
この魔術の世界でパチュリー・ノーレッジ、と聞いて知らぬ者はいない。
それは、ただただ単純に彼女の功績が凄まじく、誰もが彼女の蔵書を読みたいと願うからだった。
イギリスのある場所に、小さな人形屋があって、そこの娘に入れ込んでいた話もあったと聞くが、それが真実なのかは誰も知らない。
パチュリー・ノーレッジを知らぬ者はいないが、パチュリー・ノーレッジの顔や姿形を知るものもいなかったのだ。
ある人は金髪の背の高い美女だといい、ある人は赤毛の地味な少女だと言った。その全ては一致しておらず、ピンクの髪だ、とか、青の髪だ、とか、紫の髪だ、とか、そんな風に誰もが自分の信じるパチュリー・ノーレッジの姿を疑わなかった。
私の脳にはそんなどれが真実かもわからないパチュリー・ノーレッジの知識が詰め込まれたものまであった。
「……」
彼女は魔女だ。
魔術師ではない、魔女である。
「咲夜、咲夜、」
「あら、どうしたの?」
「なに……やってるの?」
「ああ、宿題よ宿題」
「珍しいね、咲夜が宿題なんて」
「まあ普段は能力使ってるからね」
と、咲夜がふふっと微笑んだ。
そっか、と私は呟いてそのプリントへと目を移す。
「だめ」
「わっ、びっくりしたぁ」
序文、の文字がちらりと見えた時、咲夜が私の視界からプリントを隠した。
何事かと、私は目を丸くする。
「こんな科学論文なんて読んじゃダメよ。これは現実なの。あなたが読むべきじゃないわ。幻想が崩れるのよ?」
「なんで咲夜がそんなことを知ってるの?」
「これによってあなたの幻想が壊れた時、もしかしたらあなたの脳の本が拒絶反応するかもしれないじゃない」
「……へ、」
「うちのお客様が言っていたわ。己に守護魔法をかけていない魔術師が科学について詳しく知ったあとに原典を読むと危険だって」
しゅ、守護魔法?と私は一〇万三〇〇〇冊の魔道書に検索をかける。
守護魔法は魔法だ。魔術じゃ、ない。私の記憶に守護呪文はあっても魔法はなかった。
それに、原典の魔力に耐えられる守護呪文なんて、それこそ聖人ですら不可能だ。一瞬なら平気でも、いずれ消えてしまう。
「咲夜……この世に守護魔法なんて存在しないんだよ?この世界は魔術で溢れかえってる。魔法なんて、それこそ
パチュリー・ノーレッジがもし、殴りがき過ぎて読めなかったあのノートたちの中にその守護魔法を残していたとすればこの世に存在していることになる。
けど、私には到底あの文字は読めなかったのだ。この能力を駆使しても不可能だったんだからこれからも私は読めるようにならないに決まっている。
「大魔法使い、なんかじゃなくても魔法は作れるでしょ?」
パチンっ!と咲夜が指を鳴らす。その手から出てきたものは、青と紅の二本の薔薇だった。
「ほら、これも
「これは日本語では手品、でしょ?」
「まあ、種も仕掛けもない見せかけだけどね」
じゃあ、そろそろ門限だから、と咲夜が部屋から出て行こうとする。
そのとき、カギの開く音がして__________
「あら、当麻」
「当麻おかえり!」
すっごく短いですが、まあ本編じゃないので。
インデックス目線とか書きにくいしそもそも間違ってる。