少し、
ある日少女は生まれ持ったその力のおかげで吸血鬼をよんでしまった。
少女の生まれ育った小さな村にやってきた吸血鬼は、周りの人々を吸血鬼に変えた。
甘い、甘い少女の血匂いの誘惑に勝てなかった吸血鬼たちは、
少女の血を吸って、灰と化した。
村の人間はみんな仲良しだったのに。
親も、友も、八百屋のおじさんも、肉屋のおじさんも、優しかったおばちゃんも、みんな殺した。
誰もいなくなった村で。灰だらけになった村で。
駆けつけた人間を前にして彼女はこう呟いたという。
「わたし、またころしたのね」
これが、当たり前だという顔で。
……忘れ物をした。
空を飛んで、男子寮に再び向かった。
「っと……ナイフナイフ……」
ナイフを五〇本置いてきてしまったのだ。
それを拾った時、インデックスの気配がないことに気がついた。
「……インデックス?……猫?」
これは当麻に怒られそうである。
けど、あの優しい少年のことだ、許すだろう。
私は再び寮を出た。
「おっ、咲夜おかえりー」
「ただいま」
実質、三〇分ぐらいだろうか。
ほとんど時を止めていたからそこまで時は進んでいないと思うが。
「じゃ、敵について話すよ」
「どうぞ」
「敵の名前はアウレオルス=イザードだ。知ってるか?」
ふうむ、と考えを巡らせてみる。
けど、思い当たる人物はいない。
先ほどから言って、おそらく錬金術師なのだとは思うが、そこまで私も魔術に精通してるわけでもないので当たり前と言えば当たり前なのだけど。
「知らないわ」
「じゃあ、パラケルススなら知ってるかい?」
「名前だけならね」
いつだったか、人形使いがパチュリー様と共に錬金術について話しているときに聞いたレベルだけど。
「そうか……でな、その錬金術師がもしかしたら
「……誇り高き吸血鬼が?」
ボソッとつぶやいた言葉は聞こえていないらしい。
「そもそも錬金術師という職業は存在しない。錬金術自体も完成された学問じゃないんだ」
「それなら知ってるわ。錬金術で作り出した、金銀や宝石は結果なのであってもとの目的ではないって。知り合いは錬金術を齧ってるからね」
彼女の作る人形には、彼女の生み出した宝石やら金やらが使われていることがある。
私のナイフが壊れた場合、材料を渡すと銀を作り、ナイフにしてくれるので(私よりずっと器用なのだと思う)よく頼んでいたりもするから結構そっちは知ってたりするのだ。
「ああ、そうなのか。けど、世界最高とも言われたアウレオルスといえど三沢塾を要塞のように固めることしか出来ないんだよ」
「錬金術には結構な時間がいると聞いたけど?」
「アウレオルスにとってそれぐらいは容易いことさ」
アリスに依頼するときには決まって時間を止めている。
対価どころかそれ以上のものを払っているため、嫌な顔ひとつせず作ってくれるが。
「へぇ、そうなの」
と、三沢塾についたらしい。
「何も感じない……」
ステイルが呟く。
私は三沢塾の建物に触れた。
「ほんとね、これはかなりの使い手みたい」
全く感じないと言えば嘘になるが、感じるにはこれでもかと感覚を研ぎ澄まし、そして触れないと気づくことが出来ない。
私たちは扉をくぐって中へと入っていった。
ちょっと少ない。