私はステイルに一応目線を送ると、階段を飛んで降りた。
もう飛ぶことに躊躇しない、私たちを見ることが出来るのは当麻とステイル、それを除いても魔術に多少は精通した子どもである。それっぽっちを危険視する必要なはないと判断したからだ。
「……さて」
どうしたものか、と考える。
目の前には当麻と魔術らしきものを唱える少女。
「おいっ!そのまんまじゃ、お前……」
どうやら彼の知識の中には『能力者は魔術を使えない』というものが備わっているらしい。
どさり、と少女は倒れた。
見るからにボロボロである。私はどうせ当麻はこの少女を助けるのだと思って、時を止めた。
そして、患部に手をあて、霊力を流し込む。
霊力とは、生命力と言っても構わないものだ。彼女に生きる希望を少しでも見出してもらえれば、生き長らえる確率は格段にあがったりする。
そして、当麻の死角へと移動し__時を動かした。
「っ!」
予想通り、彼は彼女を背負って進み始める。
「……随分と重そうなこと」
でもこれは彼が望んだことだ。
これ以上、手を貸すことはできない。
ふう、と目をつぶり、また開く。たったそれだけをしたはずなのに、景色はまるで変わっていた。
「弾幕!?」
仕方ない、と避けた。
けど、それらは当麻たちに向かっていった。
危ない、と叫ぼうとした。柄ではないとはわかっているけど、助けたいと少なからず思った。
ぴたり
そんな音が聞こえた気がする。
気づけば、弾幕は宙に浮かんだまま止まっていた。
ドサドサ……
そして今度は軽快な音とともに弾幕が崩れ落ちていく。
まるで、張り詰めていた糸が切れたように。
「誰……?」
階段から感じた、今まで気づかなかった視線。
私はすぐに飛んでいった。
「それは。こっちのセリフ」
そこには、
「これは。見た目が派手なだけ。それに力にも溢れてる」
チラリ、と姫神秋沙に見られたが、適当に目線を外した。
バレるはずがなかったはずなのだが、バレている。
「あなたも。わかってるんでしょ」
「……これは皮膚が剥がされ毛細血管が破れただけで、大動脈までは行っていない。つまり、致命傷ではない、ということでしょう?」
こくり、と彼女はうなずいた。
と、いうかこれぐらいわかる。これでも、毎日人間を解体してきてたんだから。
けど、人間というのは弱い。だからショック死とかいう惨めな死に方がある。
『ああ、だめだ、もう私は死ぬんだ……』
とか本気で思うと本気で死んでしまう。
「そう。手伝って」
と、彼女は服をめくりあげた。ゔ、と当麻がわかりやすく反応するのを尻目に、私は学び舎の園で買った純白のハンカチを取り出す。
「……高そう」
「別に気にしなくていいわ、また買えばいいもの」
「あなたがいいなら。いいけど」
ぎゅっ。
彼女は当麻のベルトで腕を締め上げ、動脈の流れを止めると避けた腹の肉を髪の毛と裁縫用の針で縫い上げた。
その間、私は黙って彼女が治療しやすいように、補助を一応しておいた。
「これで。ひとまずは安心」
彼女の巫女装束は血でベタベタだが、そんなの気にしないといった風に話し始める。
かく言う私のメイド服も、血で汚れてしまっているが。
「……けど、まだ気休めね。消毒が完全じゃないし」
「そのとおり。病院に行った方が。確実」
要するに、あとは私たちじゃできないということだ。
「あなたって医師免許でも持ってるの?私は人間を
無論、自分は例外だけど。
幻想郷に医師なんて竹林の薬師しかいないし、そもそも幻想入り前はどうしてたんだという話になる。
「……持ってない。私。魔法使い」
「……そ」
パチュリー様やアリスのような種族的なものなのか、魔理沙のような人間の真似事なのかで分かれるかとは思うが、聞くのはやめておいた。
「じゃ、当麻。さっさと救急車よんでちょうだい」
「……本当に魔法使いなのか。気にならないの」
「別に気にならないわ。だって、本人が言ってるんだし。それに、先ほど魔法だって見せてくれたじゃない。あそこまでしてくれて、どこを疑うというの?」
「科学の住人でしょ」
「そうだけど、
信じられないのか、彼女は黙ってしまう。
特に信じて欲しいとも思っていないが。
「はぁ……んじゃ、さっさといくぞ」
「ええ」
私は立ち上がって当麻が少女を背負う手助けをする。
しかし一番の目的でもある、
「お前も行くんだよ」
焦ったくなったのか、当麻が口を開ける。
私は無表情のまま、彼女を見遣った。
「けど私は」
何か彼女が言おうとしたところで、何か物音がした。
いや、正確には何かを引きずるような音。
私は耳をすます。
憎悪の感情が込められていると感じるくらい荒い息と、念。無意識にそちらを睨んでしまうくらいのものだった。
現れたのは、白いスーツを着た緑の髪の外人。義腕に義足をつけた、男性だった。
「……すごい血の匂いね。あなたがアウレオルス=イザード?」
「誰だ、お前」
「名乗るのは遠慮させてもらうわ。ここまで明らかな血の匂い、吸血鬼でもさせないわよ?」
私は冷酷な笑みを浮かべてそう言ってみた。
彼の引きずるものを見てみると、それは人間。上質とはいえない。おそらく、これは錬金術の材料だ。
「あら、
「……お前は吸血鬼なのか?」
「まさか。人間よ。だって、吸血鬼を見たものは死ぬんでしょう?」
私は不適な笑みを浮かべて見せると、彼は簡単に挑発に乗った。
久しぶりにみた錬金術は、なんだか新鮮である。
うん、久しぶりにちょっと本気を出そうかしら。
咲夜さん無双の予定は……どうでしょうね
追記。色々とおかすぃ。