学園都市の外へ
「ふぅ、」
と私はひとつため息を吐いた。
「おぅい、咲夜ぁ……ため息なんかついてないでなんか言ってくれよ〜」
「こうなったインデックスを私がどうにか出来るとでも?」
ことの発端は数日前に遡る。
学園都市第一位
『俺たちと同じレベル0が学園都市最強を倒したんだと!』
『ならその、レベル0を倒せば最強になれるってことじゃね!?』
みたいな噂が広まったらしく、混乱の対処のために彼は異例中の異例で学園都市の外へと出ることになったのだ。
つまり、本来学園都市から出るときは生徒が学園都市の上部に『だしてください』とお願いするのだが、当麻は逆だ。『外でてろこのバカ』と命令されたのである。
夏休みで生徒間の交流が少ないはずなのに、ネットワークの普及によるものなのか面白そうな噂は広まりやすすぎるのか、レベル0がレベル5を倒したという話はみるみるうちに広まったらしい。
で、それを知ったインデックスが
『私もいく!』
と駄々をこねはじめたのだ。
ただ外に出すだけならいいのだが、インデックスは学園都市への来訪を合法的に行っていない。つまり、不法に侵入しているために学園都市から出すのも一苦労なのである。
ちなみに私も不法侵入者なのだが、まあそれに関しては八雲紫が手を回しているだろうしそもそも出るなと言われているので今考えるべきことではなかったりする。
「じゃ、じゃあ、お前が時間止めて抱えて連れてきてもらうとか??」
「出来なくはないけど、女の子にお願いすることなの?」
「ふぐっ!?」
これでも一応霊力持ちなので身体強化ぐらい出来るが、彼にはそれを教えたことがない。
彼の良心に来たらしい。
「じゃあどうすれば……」
「諦めて連れてけば?」
「いやいや捕まるだろっ!」
「大丈夫じゃないの?ステイルたちも全く対策してないわけがないと思うんだけど」
それでも当麻はうぅ〜と唸る。
私は再びため息を吐いて時を止めると当麻とインデックスに縄を括り付けて空を飛んだ。
時が止まっている間の物質は絶対に溶けないし砕けないものだと思えばいい。
私がその本体に触れない限りそれが動き出すことはないので、縄で括り付けても身体に縄の痕が残ることはないし、逆さまになって頭に血がのぼることもない。更にいえば、縄が外れて地面に激突しても全く何も起こらなかったりもする。
ちなみに止めた瞬間浮いていたものはそこから落ちることはないが、止めたあとに私が移動させたり(この場合は当麻とインデックス)浮いていたのに私が弾き飛ばした場合は墜落し、墜落中に時を動かすとそのまま地面に激突して死んでしまう、そんな変なルールが敷かれている。
そして私はゲートの真正面に来ると縄を解いて時を動かした。
「わっ!?」
当麻はバランスが取れずに倒れ、私はインデックスを瞬時に支えた。
「ありがとう、咲夜」
「どういたしまして」
こういった対応にはもう慣れつつある上条当麻は驚いたようにゲートを見つめる。
で、私は二人を連れて通ってみた。
当麻はやばいって!などと言っていたが、案の定呼び止められた。
「あの、そこの三人。そっちの女の子なんだけど」
____なぜだろう。私は呼び止められなかった。
いつの間にか私の外出許可が降りていたらしい。私は身に覚えがなく唖然としていたが、きちんと常盤台の署名もある。ちゃんとしたやつっぽい。
そしてよくよく見てみると、本人の申請ではなく保護者の申請によるものになっていた。名義は……八雲紫。代筆らしく、傍に八雲藍の名もある。なんだか釈然としないながらも、私はインデックスや当麻とともに
「咲夜、その八雲紫って誰だよ?」
「……知り合い、かしらね」
この人は私に学園都市から出て欲しいのか出て欲しくないのかよくわからない。出て欲しいのなら、なぜ夏休み中に幻想郷へ帰してくれなかったのだろうか。
「知り合い?」
「ええ、私をこちらへ送った張本人」
「ふうん。それでその人に申請をお願__」
「してないわ」
「は?」
「してないのよ。ほんっと何もかも見透かしてるようで気に入らないわ。今もこれをどこかで見てるんでしょうね」
「何それ怖」
そんなごもっともな意見を聞き入れ、彼の家族が待っているという海の家とやらに行った。
幻想郷に海はないし、私も海なんて見たことがなかったので内心楽しみにしていたから海をみたときは素直に感動した。
当麻に海に来たことないのか?と聞かれたのでとりあえず頷いたら驚かれた。
「初めまして。十六夜咲夜と言います」
深々とお辞儀をし、にこりと微笑むと当麻には誰こいつみたいな顔をされたがいい印象を彼の両親に与えることができたようだ。
「これはこれは。当麻の父の上条
「母の上条
軽く自己紹介をして、ご飯を食べ、急に来たにもかかわらず寝床を用意してくれた二人に感謝して、寝た。
____夜中。
ナニカの気配を察知してうっすらと目を開けた。
「!?」
「あら、お目覚め?」
そこにいたのは八雲紫だった。
金色の髪をたなびかせ、日は出ていないのにいつもの日傘をさして窓に座っていた。
「なんの、ようかしら」
「貴女、それでも吸血鬼のメイド?魔術が発動する気配がするわ。貴女と私の周りには一応結界を張ったけど、朝起きて驚いてみなさい。それからは貴女の判断に委ねるわ」
「__?」
「確か身体強化出来たわよね。己の時だけを止めるっていう。それ、やっときなさい」
「なんで__」
用件だけ言って行ってしまった。
私は眠気で唖然としていた頭を叩き起こし、言われた通りにしてみた。
まあ、彼女は胡散臭いとはいえこんなとこまできて嘘は言わないと思うので信じることにしたってこともある。
朝驚くことってなんだろう?そんな疑問を抱きながら、とりあえず寝た。八雲紫について模索していても無駄なのだ。
4巻抹殺するのは心苦しくこんなことになりました。