とあるメイドの学園都市   作:春月 望

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お久しぶりです。大変長らくお待たせいたしました……!!
また近いうちに更新できたらと思います


決戦開始

午後一一時二七分。

『パラレルスウィーツパーク』の職員用出入り口付近の金網まで、私、当麻、インデックス、ステイルの四人は来ていた。

ローマ正教は数が多いのが特徴だ。

別行動をすれば、数が多いあちらに敵は集中する。こちらには、あまり敵はやってこないという算段らしい。

 

「おいステイル」

 

夜だからなのか少し不気味な雰囲気漂うパラレルスウィーツパークを見ていた当麻が振り向いた。

 

「何だ?」

「本当にこれ、時間内に終わると思うか?いくら咲夜がいるといっても、『法の書』もオルソラも、なんて……」

「僕らだけじゃ、正直難しいだろうね。咲夜、君はどれくらい頑張ってくれるんだい?」

 

ステイルと当麻、それからインデックスに見られ、私はそうねぇと悩んだふりをする。

 

「私が『法の書』とオルソラを知っていればよかったのだけど、はじめてみるものを探し出せるほど私の勘は優れてないわ」

「それもそうだね」

 

ステイルはそう言って苦笑した。

 

「じゃあ、向こうに見つかったときはきみは能力を使うのかい?」

「見つかったら使わないわよ。気配だけなら話は別だけど、見つかったのなら逃げたら失礼じゃない」

「失礼って……」

 

紅魔館のメイド長として、私にはお嬢様を持ち上げる義務がある。吸血鬼、レミリア・スカーレットの従者がどれだけ優秀なのか、示さなくてはならない。

 

「そのわりには随分と色んなものに首をつっこんでないか?」

「楽しいことには目がない性分なの」

 

異変はときはお嬢様の許可があるときだけしか行くことが出来なかったが、今はお嬢様のメイドから離れている。

楽しいことである以前に、私が強くなるチャンスなのである。

 

「ふーん……」

「けど、私の仕事はインデックスの警護。いざとなったら能力を使用して、インデックスでも誰でもパラレルスウィーツパークから遠ざけることくらいはできるわよ」

「その必要はないんだよ。魔術を知らないとうまが行くっていうのに、私だけ逃げるなんてできない」

「……そういうと思ってたわ」

 

インデックスだって、魔術のプロだ。

私もメイドとして仕事は投げやりにしたくはないし、誇りを持っているのだからその気持ちもわからなくはないけど……インデックスは魔力を精製する力を持たないらしいので、やめてほしいものである。

 

そのときだった。

 

爆発音が空を駆け巡った。

 

「!?」

 

それは、遠く離れた一般用出入り口の方からのようだった。

轟々と燃え上がる火柱。あれが陽動というものなのだろうか。

 

「騒ぎが起こらない。人払いと刷り込みの魔術を併用してるのか」

 

ふと魔力の流れに気を配ってみると、パチュリー様や魔理沙のものと比べて随分とあっさりしている。かなり気を配って慎重に調べないと、全く気づくことができないレベルである。

これが、天草式の術式。これなら私も身につけてみたいと思える代物だった。

 

インデックスがフェンスに近づいてトラップがないか確認してフェンスを越える。ステイルと当麻は自力で、インデックスは私が抱えた。彼女は自力で越えるつもりだったようだが、私の能力を舐めないでほしい。

むすっとした顔で私を睨みつけられても、困る。

 

幻想郷では愚か、学園都市ですら私がみたことのないような『じぇらーと』や『あんにんどうふ』の店が目に入る。……今度、美琴と黒子にじぇらーととあんにんどうふについて聞いてみよう。

観覧コースへと入ると、それは巨大な円形のコースだったことがわかる。真ん中には水路があり、その下に水面が見える。水はまあそれなりの深さがあるようだった。そして、その周りには私の知らないカタチの店が並んでいる。水路の内側には机や椅子がたくさん設置してあるため、そこで食べるような屋台なのかもしれない。

 

「ずいぶんと悲しい光景だな」

「昼間にきたら、楽しい場所なんでしょうね」

「とうま、咲夜、時間がないんだよ。捜すなら早くオルソラを捜さないと」

 

遠くから人の怒号や絶叫、爆発音などが聞こえる。

確かに、ゆっくりここを歩き回る時間はないようだった。

 

と、頭上から気配を感じる。

時を止めて飛び上がって確認すると、それはどうやら天草式の人間のようだった。手には西洋剣。右からハンドアンドハーフソード、バスターソード、ボアスピアソード、ドレスソードのようだ。この剣の組み合わせも魔術に関係あるのかと考えながら、私はインデックスを連れてその場を少し離れた。

 

「っ!?」

 

店の上から当麻とステイルへと一直線の四人。

上条は慌ててインデックスのいた方を見たが、いないことに気づいて自分も剣を避けた。

天草式は狙っていた四人の内、二人がいないことに気づいて辺りを見渡し、一瞬にして私たちに気づいた。

 

「さ、咲夜っ!とうまが!」

 

なんで、私だけ。と、目で訴えられるが私の仕事はインデックスを護ることである。

私はインデックスを抱えて天草式の二人から逃げた。死角に入ったところで時を止め、背後に回った。

 

「死ぬか、見逃すか。どちらかを選びなさい」

 

ナイフを突きつけ、そう呟く。インデックスがごくんと息を飲んだ。

 

天草式はどちらも選ばずに剣で切りかかってくる。私はそれをかわして、二人をパラレルスウィーツパーク、いや、東京から追い出し日本列島の長野というところに置いてきた。殺しはこの世界ではご法度だ。

 

「咲夜……?」

「大丈夫よ。長野に置いてきたわ」

「え、な、長野……?」

 

長野まで行けば、きっとしばらくは戻ってこない。

市街地に放置してきただけ良心的だと思っていただきたいものだ。


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