寮に帰って、二人の部屋をノックしたが黒子しかいなかった。
どうやら美琴はまだ帰ってきていないらしい。
「あら?いないと思ったら、どこへ行っていたんですの?」
「ちょっと面白いことがあったのよ」
実は二人、まだ出会って三ヶ月やそこらだと言っていた。
なのにこんなに仲が良いのか。不思議なものである。
「美琴は?」
「お姉様はどこか行ってしまわれましたわ。まあ、私もお姉様を信じておりますから探しませんけど」
「……そう」
それから美琴が帰ってきたのは門限ギリギリだった。
なんかムカついているようだったが、何があったのだろう。
寮監に呼ばれて三人で食堂へと行くと、今日のメニューのビーフストロガノフをいただいた。
素直に美味しかった。
「そういえばお姉様、今日はどちらに?」
「あーうん、ちょっとねー……あのわけわかんない能力者に会ったのよ……」
と、美琴がぐちぐち頭を抱える。
「は、はあ……そ、それは災難でございましたわ、ね?」
「ホンットよホンット」
あのツンツン頭がどーだの私の超電撃砲が効かないだの言っていたので多分それ、当麻だ。って思ったけど言わないでおいた。
まあ、言っても楽しそうだったがメリットがない。
「じゃあ、また明日」
私は二人に別れを告げて、自室に戻る。
暗い部屋にパチっと電気を灯すと何となくここは都会なんだと感じた。
「ふぅ……当麻といえば、あれからどうなったのかしら」
私が呟いた途端、カツカツと硬い足音が耳に入ってくる。一週間も経てば分かる、これは寮監の足音だ。
バンッ!
そんな音とともに、寮監が扉を開ける。
もう慣れたもので、最初は何も言わずに入ってくる寮監にイラッとしたりもしたが、もうそんなことはない。
怒りを覚えなくもないが、それが当たり前になってきているのだ。
「__」
今来たということは、しばらくはもう来ない。
廊下から出ればバレるかもしれないが、窓を開けて時を止めて飛べばバレない。
気づけば私は、空へと飛び立っていた。
「……なにかあったの?」
当麻の部屋のある、寮の下にはたくさんの人がいる。
また、色んな車もあることから、なんらかの事件なのだろうか。
まあいい。
私は当麻の部屋のベランダに向かうが、そこは電気が点いておらず、一瞬にして誰もいないと感じさせられた。
「……?」
私はそこから離れ、探るようにして裏道の上を飛んだ。
度々、スキルアウトと呼ばれる集団を見たが、放っておいた。
所詮、能力の使えない人間の集団__いや、能力の使い方を知らない馬鹿な人間たちの集まりである。
「__いた」
黒いツンツン頭。これは恐らく当麻である。
急降下すると、その腕にはインデックスがいることがわかった。
__血まみれの。
「……」
これが彼女の運命なのだろう。
ここで死ぬのが、定めであったのだ、恐らく。
そう思ったあと、視線を当麻に合わせた。
そこにあったのは、悔しそうに歪めた顔。彼は、彼女を救いたくてたまらないのだ。
ふう、とため息を吐いて私は時間停止を解除した。
「咲夜!?」
「……インデックス、あなたの知識に怪我を治すすべはないの?」
驚く当麻を無視してインデックスに問いかけると、彼女は薄っすら目を開けた。
「ある、けど……む、りだよ……だって……」
「知ってるわ。学園都市の人々はカリキュラムを受けてるからダメなんでしょう?」
「う、ん……な、んでそ……れを……?」
「知り合いに聞いたのよ」
もちろんパチュリー様のことだが。
いつか聞いたことがある。特殊な例を除いて元から能力を持っている人間は、魔術を使えないと。
「なら、この世界で能力を持っていない、大人たちなら出来るんじゃないの?」
「「!」」
盲点だった、と当麻の目はいい、そうだったのかとインデックスは言っている。
「でも、誰なら__」
「咲夜っ!公衆電話入ってくる!インデックスを頼む」
「えっ、ええ」
渡される寸前、時を止めて常盤台に帰り、メイド服に着替えて受け取った。
電話の存在は幻想郷にいたときから知っていて、こちらに来てからは何度か使う機会があったからなんのためにあるかわかる。
「誰に電話するつもりなのかしら」
咲夜さんは原石という設定ですが、能力者に変わりはないので魔術は使えないことにしてもらいました。
例外とは、まあ……色んな面を考慮した結果です。ほら、土御門とか。