東方狂植物   作:大神 龍

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第二話

 目が覚めると、木々に囲まれていた。

 

 日が射してチラチラと視界を白く染め、寝ぼけていた意識を無理に覚醒させる。

 

「……本当に俺、転生しちゃったのかよ」

 

 起き上がって、周囲には木々や草が無造作に生えていることを確認し、少し考える。

 

「山奥に放置された可能性もあるよな…そう言えば、魔法がどうのこうのって…どうやって使うんだ?」

 

 考えた瞬間、まるで本を読んだかのような錯覚と共に理解する。

 

「……『凍れ』」

 

 直後、正面の木が凍りつく。

 

「本当に使えるし…夢じゃなかったっていう証明が出来ちゃったし…」

 

 はぁ。とため息を吐き、香は次にすることを考える。

 

「とりあえず、能力を理解するのと、使いこなせるようにしないといけないのと、だ」

 

 能力は、先ほどと同じように、考えただけで出てきた。

 

「『植物を生み出す程度の能力』…か。時間と難易度は比例する…と。しかも全部種かよ…育てるための土壌を作らなきゃじゃねぇか」

 

 愚痴を言いながら探しに出ようと考えたその時、

 

「……無いなら作ればいいんじゃないか…?」

 

 閃いてしまった香は、すぐさま能力で一つの種を生み出す。

 

「これを埋めて……っと」

 

 種を作りながら待つこと数分。植えた種から芽が出る。

 

「お。もう芽が出た。んじゃ、次にこれだ」

 

 芽から少し離したところに、新たな種を植える。

 

「これで後五時間くらいで完成かな」

 

 満足そうに言い、香はまた別の種を作り始める。

 

「衝撃で破裂する種。地雷や小型爆弾としても使えるけど、育てると中々枯れない綺麗な赤い花になる…設定。基本爆弾として使うんだけどな。安全になったら育てよう」

 

 まずは自分の身を守ることが最優先。香はそう言って、同じ種を更に十個ほど作る。

 

「さてと…性能テストだ。同じ威力かなっと」

 

 香は種を一つ持って、先ほど凍らせた木に向かって投げつける。

 

 ドンッ!と、体の奥に響くような低い音をたてて爆発する。

 

「くぅ……案外威力あるな。これがどこまで効くかってのが問題なんだが…」

 

 香が呟いていると、背後からガサガサッと草を揺らす音がする。

 

「……なんだ…?何が来る…?」

 

 怖々と振り返り、いつでも種を投げられるように準備をする。

 

 そして、数秒の沈黙の後――――

 

「ワゥッ!!」

 

 小さい犬みたいな動物が飛び出してきた。

 

「……なんだ?何も…してこないのか?」

 

 じっとこちらを見ているだけの犬。いや、狼と言った方が正しいかもしれない。

 

「……一応、対策はしておくか…」

 

 爆弾種ほどの威力はなく、ただ音だけがでかい衝撃感知式の音爆弾を生成する。

 

「飛びかかって来たらこれをぶつければ良いか…」

 

 狼を見て、動いてないことを確認しながら、食料となる種を作って植えていく。

 

「今は肉を手に入れるのも困難だろうからな…完成を待とう」

 

 今植えた種は、『花肉(かにく)』と名付ける。文字通り、肉で出来た花を咲かせる種だ。焼いてよし。煮てよしの優れもの。

 

 花の部分だけを収穫すれば、また生えてくるはず。

 

「よし…次は調味料だ。砂糖、塩、酢、醤油、味噌、胡椒、みりん……まぁ、これくらいで良いか」

 

 いくつかの種を作り、植える。

 

「はぁ…武器も作らなきゃいけないのに、時間かかりすぎだろ…完成するまで生きていられるかどうか…」

 

 現状、自分がどんなところにいるのかすらも分からない香は、準備が終わるまで動けない。

 

「この狼も何してくるか分かったものじゃないし…不安しかない…」

 

 そう思いつつも、とりあえず武器を増やしていく香。

 

 と、そこで気付く。

 

「……夜来たら不味くないか…?」

 

 夜。闇夜に紛れて狩人が現れる時間。古代において、そこはより強いだろう。

 

「どうするか……爆弾だけじゃ耐えきれないかもしれないな…今日さえ乗り切ればなんとかなるように手は打つが…今日事態乗り切れるか分からねぇ……」

 

 なら、と呟き、いくつか種を作る。

 

「まず、明日のための壁を生み出す植物。蔦系の植物で周りの木々に取りついて壁になる…栄養は最初の種に任せるとして、完成にはやっぱり明日になるな」

 

 種を植え、また別の種を生み出す香。

 

「閃光玉。まぁ、俺の視界も奪われるって可能性もあるけどな」

 

 これで、爆弾、音爆弾、閃光玉の三種類の武器が出来た。

 

「食料は問題ない。でも、地理が分からないのは致命的だ……安定してきたら装備を整えて散策だな」

 

 苦い顔をしつつ、ふと放置していた植物を見ると、花肉が咲いていた。

 

 みずみずしく輝くその赤い花弁である肉は、とても美味しそうだった。

 

「おぉぉ!!初めてにしてはうまく出来たんじゃないか!?」

 

 そう言って香は近付き、自分の失態に気付く。

 

「…どうやって食う…?」

 

 ここには、食器はおろか、調理器具すら無いのだ。生肉を食べるなど、危険なここでは自殺行為である。

 

「チクショウ……やらかした……!」

 

 心が折れそうになった香は、少し離れたところでこちらを見ている狼に花肉を渡す。

 

「食って良いぞ。まぁ、いらないならそのままにしとけ」

 

 言葉は通じないだろうな。と思いつつ、香は狼と距離をとって座り込み、生で食えそうな野菜を考えるのだった。

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