茜差す夕暮れ。急いで成長していた灯りを入れる為の薄く大きい葉を採り、加工すると、その中に光る種をいくつか入れる。
「これで灯りは確保できた。問題は食い物だな…火耐性の葉はまだ成長しきってない……ん~…大きな平たい石なんて落ちてないし…生か…馬刺しとかみたいに食えるかな…」
ぐぬぬ…と悩み、それで腹を壊した方が危険だと気付いて諦める。
「はぁ…今日は飯無し。胃が痛いっと。いや、むしろ直火焼きで……」
とりあえず、花肉を一つだけ採り、
「『焼けろ』」
ゴゥッと音をたてて火だるま状態になる花肉。
やがて、火は消え、きれいに焼けた花肉が出来る。
「おぉ、出来たよ。ふ、ふふふ!これで飯ができた!もうなにも怖くない!」
意気揚々と花肉にかぶり付き――――
「もう、諦めよう」
中身が赤いままだった花肉を狼に渡し、悲しみの涙を流す香。
「外はカリカリ。中は生肉……ダメダメだったぜ……」
清潔さの欠片もない現状では少し勇気のいる食事だった。とりあえず狼に食べさせて経過観察である。
非情と言うなかれ。こちらも生きるのに必死なのだ。
「寝れる場所は急遽作ったが……寝たら殺されそうだ……」
地理も分からず、夜道も見えず、武器も強いのはほとんど無い。こんな状況で寝れるほど精神が強いわけがなかった。
「さて、夜の攻防戦だ。爆裂種は植えた。踏めば地雷の要領で吹き飛ばす。自分も動けなくなるから諸刃だけどな」
対策は打ってある。しかし、自然はその上を行く。
音は小さく、だが、確実に狩るものの意思を持った『ソレ』が近付いてくる。
「………空!?」
対策は無意味。むしろ自分を追い込む形になってしまい、想像できる最悪の状況だ。
「大音響!落ちろやコラァ!!」
音種。地面に叩きつけると同時に響く爆音は、大気を震わせるだけに止まらず、周囲の木々や香、ふくろう、狼も震わせる。
いや、違う。狼に被害は無かった。
幾重にも重ねられた水の膜と真空の膜に守られていたのだ。
音のせいで感覚を狂わされたふくろうは、そのまま地面に落ちる。
「いよっしゃぁぁ!!大!爆!発!!」
手元にひとつの爆裂種を作り、大量の爆裂種をふくろうの上に降らすと、
勢いよく手に持っている爆裂種を投げつける。
カツンッ!と爆裂種どうしがぶつかり――――
ドゴォォォォッ!!
轟音と共にふくろうを焼き尽くす。
「いよっしゃぁぁ!初勝利!もうなにも怖くない!!」
嬉しさのあまり叫び、直後冷静になる。
「……ヤベェ……被害甚大……」
周囲の地面が吹き飛び、植えていたいくつかの種が一緒に吹き飛んでいた。
「あ、あぁぁ…チクショウ…考えなかった俺のミス……」
惨劇を前にして、香は数分硬直した後すぐに立ち直り、吹き飛んだ種を再度植える。
「くそぅ……ふくろうも食えるか知らないし……あれ?そう言えば、そもそも食えるやつとかいるのか?うぅむ…本格的に冒険が必要に……って待て。俺、さっき爆発で倒さなかったか…?」
いや、まさか……な。そう呟いて、種を植え終えて数秒。
「ヤバくね?」
急いで爆裂種を生産しまくる香。
「ヤバイって。絶対音を聞き付けて何か来るよ。対策しとかねぇと死ぬ」
とりあえず、菜園から離れて待機する香。これ以上被害を出すわけにはいかないのだ。
「さて……眠い……寝ないと翌日に響く…だが、寝たら死ぬ…ん?魔法で壁作ったらいいんじゃ…?」
香はそう呟くと、地面に手を当て、
「『壁になれ』」
言葉と共に土が盛り上がり、ドーム状になる。
「よし!これで完璧!余裕でやり過ごせるな!」
絶対無理だな。と思いながらも、言わざるを得ない香。これが
「さて。現状を整理しよう」
香は、モグモグとピーナッツ(水で洗っただけ)を食べながら、拾った枝で地面に現状を書いていく。
「食料、調味料は時間が経てば余裕が持てるようになる。魔法に関しては謎が多すぎるからいくつかの実験をする。実験は全体的に余裕を持ってからだ」
チラリと爆裂種を見て、
「敵は数で押せば倒せるはず。ふくろうがどれだけ強いのか分からないが、あれくらいならなんとかなるはず。敵のデータはまた今度だな」
次にドームを見て、
「家も作らなきゃだな。某クラフトみたいに右腕一本で木をなぎ倒すなんてこと出来ないからな。時間をかけて植物による生成をしよう。この種一個で家が出来ます。って、言えるときが来るんだぜ。まぁ、俺以外が使うような状況にはさせないけど」
そんなせこいのを使ったら大工の仕事が無くなるからな。と思う。
「さて……後何かあったかな…あ、そうだ。あの狼はどうするか」
そう言って狼を思い浮かべ、
「このまま飼うわけには行かないよな。自分で食料を捕れなくなったら問題だ。さて、どうやって追い出すか」
まぁ、明日にでも考えれば良いか。と思い、香は他にないか考える。
「あ、調理器具」
そういえば、包丁すらも無いことを思い出す。
「昼に植えたので足りなかったら困るからな…もう少し作っておくか」
そういって、またいくつか種を作って植える。
「はぁ……コレくらいでいいな。よし、寝よう。おやすみー」
そう言って、パタンッと香は倒れるように眠るのだった。