東方狂植物   作:大神 龍

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第五話

 目が覚めると、強い日差しが突き刺さる。

 

「うぐっ……あれ…?土壁が……無い?」

 

 呟き、数秒硬直した後、飛び起きる。

 

 まずは周囲の確認。周りはすべて土で囲まれ、どうやら壊れたのは天井だけのようだった。

 

 しかし、天井が壊れているということは何かが侵入してきたということ――――

 

 ふにゅん。

 

「…………う~ん…認めたくない。パターンからしてそんな感じだけど認めたくない。大方隣には女性がっ!パターンだぜ?運が良ければなにも起こんないけど、すでに手遅れだ…うん。諦めよう」

 

 そう言って、不思議な感触があった右手のを見ると――――

 

 

 

 

 昨日会った神様がいた。

 

 

 

 

「……ふぅ。能天気バカ神なら安心だぜ。驚いて損した」

 

「それは喧嘩を売ってるってこと?」

 

「残念。俺の冒険はここで終わってしまった」

 

 起きてた。しっかり起きてた。パーフェクトに起きてた。

 

 しかもただ起きただけでなく、しっかり呟いてたのを聞いていたということが更に問題。

 

「で、何の用なのさ」

 

 香は全力で話をそらす。

 

「別に話をそらすのは良いけど……で、何の用かだっけ?」

 

「お、おぅ」

 

「フッフッフ……それはね……忘れ物を届けに来たのさ!!」

 

「忘れ物…?」

 

 何か忘れただろうか…と考えるが、特に無かったはずだ。

 

「いやぁ…完全にこっちのミスなんだけどね~。何を忘れたか。それは……」

 

「それは……?」

 

 神様は、ためて、ためて、ためて……

 

 

 

 

 

 

「寿命です!!」

 

 

 

 

 

 バーンッ!と効果音をつけて発表する。

 

「…………バカかお前は!!!」

 

「うわー!香が怒るー!」

 

 これ怒らざるを得ない。なぜなら、寿命を忘れる。つまり、原作に入る何億年も前に老死するということだ。

 

 それだと、転生してきた意味が何もない。まさに無意味だ。

 

「ブーブー!ちゃんと反省してオマケも持ってきたんだぞー!」

 

「オマケ…?」

 

 オマケと言われ、思わず動きが止まる。

 

「フハハ!聞いて驚けぇ!今回の特典は……異世界召喚装置だよ!!」

 

「異世界召喚装置…!?」

 

 それは、あれか?異世界から人を召喚できるってことか…!?

 

「しかし残念ながら、こっちからは何も出来ないんだなコレが!!」

 

「じゃあどうやるんだよ?」

 

「それはね……待ち続けるんだよ!!」

 

「まさかの後手!しかも待つだけか!」

 

「そう!待つだけ!自分からは何も出来ないわ!」

 

「使えねぇ!何時来るかすら不明か!」

 

「完全に謎!っていうのは嘘よ」

 

「そ、そうか…やっぱり嘘か…」

 

「そう、貴方が近くにいるときだけ発動!でも自分から呼べないのは事実よ!」

 

「最重要が事実だった!」

 

 この二人、中々テンションが高かった。寝起きのテンションではない。明らかに。

 

「ちなみに、香くんが向こう側に行くときは装置から黒い手が出て来て引きずり込むぞ☆」

 

「超絶こえぇ!!殺しに来てる!?真理の扉でも開くのか!?」

 

「異界の扉は開くね!」

 

 ドヤ顔の神様。頬をひきつらせる香。

 

「う~む…異世界召喚装置か…一体どういう奴なんだ?」

 

「フフフ!見せてあげよう!私の暇を持て余した結果から生まれた地味に凄いこのアイテムを!」

 

「暇潰しで作られたのかよ!!」

 

 香の突っ込みの後に、神様は地面に両手を付ける。

 

 すると、土のドームの中に紫色の光が走り、思わず目を瞑る。

 

 目を開けると、地面に紋様が浮かんでいた。それはまるで、魔方陣のようにも見える。

 

「フッフッフ…これこそが三日三晩コトコト煮込んだ魔方陣だよ!」

 

「シチューか!?カレーでも良いけど!いや、そういう話じゃない!」

 

「では見せてあげよう!この装置の威力を!」

 

「話通じない!?」

 

 すると、魔方陣が強い光を発し――――

 

 

 

 

 

 

――――一人の少女が現れる。

 

 

 

 灰色のボサボサの髪に、白と黒が反転した目を持つ少女。

 

 その手には、皿に乗ったプリンとスプーンがあった。

 

 突然呼び出された少女は、口に運んでいたスプーンを止め、こちらを見て凍る。

 

「…………………」

 

「…………………」

 

 嫌な沈黙が流れる。

 

 神様も何も喋らないし。というか、お前が召喚したんだろうが。と突っ込みたい香。

 

「………あげないから」

 

「要らないから!」

 

 サッとプリンを匿いつつ少女は言う。

 

「……どこよここ。清花…プリン食べてて良いって言ったじゃない」

 

「呼ばないとは言ってないわ!」

 

「許されないわ。そんな横暴」

 

「まぁまぁ。実験は終わったから食べてて良いよ?」

 

「凄いいい加減。なんて迷惑…」

 

 良いながらモグモグと食べる少女。

 

「で、一応は実験成功したわけだし…これで安心だね!何時でも来るよっ!」

 

「いや、来られても歓迎できる状況じゃないから迷惑だろ!?」

 

「知ったこっちゃないね!じゃ、頑張って生き残るのだ少年よ!」

 

「え、ちょ、えぇ~!?」

 

 魔方陣が光り、神様と少女は消えていった。

 

「…………本当に…どうしろって言うんだよ…相手の方が悲劇じゃねぇか…」

 

 勝手に呼び出されて、その上呼び出された先は家すらない森の中。近くに香がいるとしても、初対面な上に変なところにいる人間なんかに話しかけたくないだろう。

 

「……結局、何がしたかったんだ…あの駄神…」

 

 香はため息を吐いて、とりあえず植物の様子を見ようと外に出た。




「……結局、あの子は誰だったんだろうか…」


え?寿命?本当に忘れてましたよ。気付いた時に真っ青になりましたね。ええ。
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