「そんでー・・・俺はどこを探しに行けばいいの?やっぱ並盛中?」
「いや・・・ジャンニーニが言うには、オメーらがγを捕まえに行っている間、一度だけ並盛神社付近で強いリングの波動を感知したそうだ。そこは雲雀の作った風紀財団の基地の秘密の入り口にも繋がっているらしい」
「じゃ、基地にいるってこと?・・・たしか、このボンゴレの基地と繋がってるんだよね?」
「今はあっちからロックがかけられていて入れねーらしいがな」
「ほー、相変わらずの一匹狼っぷりだねぇ・・・ま、良いんじゃないの?あの人らしい」
「とはいえ、いつ雲雀も入れ変わるかわからねぇからな。なんとかしてコンタクトを取りてぇ。ツナ、お前ちょっと行って来て説得して連れて来い」
「めんどくさー・・・でも、しょうがないかぁ」
ブツブツと文句を言いながらも雲雀を迎えに行く気になったツナに、リボーンは最後に忠告だけしておこうと口を開く。
「ツナ・・・頼むから、イラッとしたとか言って雲雀をボコボコにするなよ?この時代のオメーは“普通の”ボスなんだからな?」
「・・・えぇー。でも確かに即戦力を潰しちゃダメだよねー・・・うん、わかった」
(良かった!念のために言っておいて良かった!!!)
ツナの行動を大体読めてしまう自分に毒されてるなぁ、と思いつつ雲雀の死亡フラグを立てずに済んだことにホッと胸を撫で下ろした。
そんなこんなでやって来た並盛神社前で、ツナはミルフィオーレ・ブラックスペルの隊員数名に囲まれていた。
「こんなところで、何をしてる?」
と、聞かれても答えられるわけがない。「風紀財団の基地の入り口を探してました~」だなんて。
傍目からでもツナの行動は怪しく見えただろう。なにせ、神社の本殿の周りをぐるぐると回ったり、灯篭をじーっと見つめてみたり・・・。
極めつけにはマモンチェーンを外してリングを近づけてみたりしてしまったのだ。
おそらく、その時のリングの反応を感知して、彼等はここに駆けつけて来たのだろうと思われる。
「えっとー・・・お散歩?」
思わず疑問形にしてしまったのが余計に怪しさを増してしまったようで、ブラックスペルの隊員達が匣兵器を構えてじりじりとこちらに寄ってくる。
「怪しいヤツ・・・とりあえず捕まえてみればわかることだ」
「うっわー・・・」
マフィアとしてはごもっともな発言である。警察ではないのだから怪しきは罰せずとはいかないのは当たり前で、ボンゴレじゃないのだから一般人どうこうなんていう暗黙の了解もないだろう。
何も出なかったらそれでよし、何か出たらラッキーぐらいの勢いで調べられるのがオチである。
このまま捕まるのはしゃくだし、ここで戦闘でも起こせばバトルジャンキーな雲雀が寄ってくる可能性がある。
「やれ!」
子ども1人相手に大人が複数人で武器を持って攻撃を加えようとする何とも大人げない状況だが、自分達の隊長や仲間が行方不明になって疑心暗鬼になっているからだと思うと責める気にはなれない。
ツナは、はぁ、と溜息をついて身構える。
「だから嫌なんだよ、こういう手合いと戦うの」
(ホント、めんどくさい)
呟いたその瞬間、ブラックスペルの隊員達の手が持った武器と共に凍りつく。もちろん足元も氷原になったような状況で一歩も動けない状態になってしまう。
「・・・ば、馬鹿な」
「こ、これは・・・」
零地点突破First Edition。それは未だに原理がわかっていない、ボンゴレのボスのみが使える技。
イタリアンマフィアならば一度くらいは聞いたことのあるその技に、ブラックスペルの隊員達は息を呑んだ。
その技を使える者は既にいないはずなのだ。その死んだ状況を目の前で見た者だっている。
「ホント、甘っちょろいって自分でも思っちゃうよ。ここで始末しちゃった方がめんどくさくないのにねぇ」
勧善懲悪と開き直れば楽なのだろうが、彼等が本当に悪かと言われればそうではないと知っている。
人質となっているボスのために戦い、そして今は行方知れずとなった仲間を案じている。そんな仲間思いの者達だ。
「・・・うん、確かにね」
感傷的な気分になっていたツナの背後から唐突に気配を感じて振り返れば、興味深そうに己を見つめる雲雀の姿がそこにあった。
「・・・雲雀さん?」
つい訊ねる形になったのは、どことなく己の知る雲雀とは雰囲気が違ったから。
大人になって少しはまるくなったのだろうか。そんなことを考えながらじっと彼を見つめる。
「小動物・・・君は僕の知っている沢田綱吉とちょっと違うね?」
そりゃそうだろう。全く違う時間軸から来ているのだから。
それに猫被りだった頃の自分を鑑みるに、こんな場面に1人で出くわしていたら悲鳴の1つや2つはあげていたに違いない。こんなにあっさりと敵を排除したりしない。
能力はあるのにその使い方がイマイチ。それが猫被りバージョンの沢田綱吉、通称ダメツナだ。
「そりゃ違いますよー。違う時間軸から来てますし」
「・・・へぇ」
ツナの返事に目を細めて笑う雲雀。
ためらいなく力をふるうことができ、時間軸やら現状の説明は省いても良いとくれば、なるべく他人とは関わり合いたくない雲雀としては大歓迎なのである。
「とりあえず雲雀さんを探してたんですよ。俺だけじゃなく隼人や武まで入れ変わっちゃって、他の守護者だっていつ入れ変わるかわかったもんじゃないですからね」
「そう」
「さすが雲雀さん。そう簡単に会話から情報を掴ませないですねぇ」
会話をすれば大体の人間は思考をしながら答える。その思考を呼吸や視線、筋肉の動きやしぐさ等で読み取るのが本来の読心術である。
ツナの場合それに加えて超直感があるおかげで考えていることをまるっと読み取るリーディングのような機能を得ている。が、それも万能ではない。相手が思考しなければ読み取れるものも読み取れないのだ。
「君こそ・・・なかなかシタタカに育ってるじゃない。まるでこの時代の君を相手にしているようだよ」
「それは褒めてもらってるんですよね?・・・なら協力してもらえませんか?雲雀さんが嫌だと思ったことにまで無理矢理協力させたりはしませんから。情報共有だけでも良い」
「うん、イイよ。君は・・・僕を楽しませてくれそうだし、ね」
「・・・うっわー。ターゲットロックオン的な目ぇしてますよー」
ツナが思わず茶化したくなったのも当然といえる。雲雀の視線はそれだけシャレにならないくらいに凶悪だった。
「安心してよ。使いものにならなくなるような鍛え方はしないから」
そう言う雲雀は未だにツナの実力を完全には把握していない。それはそれで構わない。こちらの戦い方をよく知る相手が鍛えてくれるというのだからお言葉に甘えることにしよう。
ツナはそう決めてこっくりと頷いた。
「じゃあ、よろしくお願いしますね、雲雀さん」