「と、言うわけでぇ・・・捕虜がまた増えました~。あはは」
「あははって・・・」
手首足首を凍らせ、風紀財団の入り口を経由してブラックスペルの面々を基地に連れ込んだツナに、γは呆れたような視線を向けた。
洗脳されているボスのために、そして捕まったであろう仲間を心配して探している、そんな理由があろうとも敵対していたのは間違いない。だから、どういう扱いを受けても文句は言えない。
なぜならボンゴレ関係者を始末したのはホワイトスペルの隊員だけではない。仇だと憎まれても仕方がないことをブラックスペルもしているのだ。
「自分でも甘いなーとは思うんだけどー・・・きっと隼人達も俺が捕まったりしたらアンタ達と同じようなことをすると思うんだよねぇ・・・うん、まぁ、他人事じゃないっていうかさ?」
「ああ・・・」
それは何となく理解できるとγは思う。ボスと部下(守護者)の繋がりが強ければ強いほど、人質にされてしまえば身動きが取れなくなってしまうものだ。
「でもぉ・・・俺が捕まるとかありえないけどねっ、あはははは!」
「・・・お前を良いヤツだと思った少し前の俺を返せ」
ツナに良いように振り回されてガックリとうなだれたγを見て、新たに捕虜にされたブラックスペルの隊員達はツナに対して恐怖を覚えた。
(((コイツには逆らっちゃいけない!!)))
野生の勘というものであろうか。一斉にそう思ったブラックスペルの隊員はお利口さんと言えるかもしれない。
そんなブラックスペルの隊員を見つめていたツナだったが、不意に背後から地を這うような低い声が聞こえて来て、思わず目を瞠った。
「・・・群れてる・・・」
「わぁお・・・ご機嫌ナナメですね、雲雀さん」
「これ以上群れたら・・・咬み殺す」
「えー、それは困りますってー」
“ダメ”な方のツナならばこの時点で「ヒィイイッ」とか叫びそうなものだが、ヘラヘラと笑うだけ。そんなツナに調子を狂わされた雲雀は眉間に皺を刻む。
「恭さん、落ち着いて・・・す、すみません、沢田さん」
雲雀の不機嫌さを肌で感じたらしい草壁がそんな2人の間に割って入る。
「あ、草壁さん?・・・わぁ、変わってなーい」
「は、はい。その、沢田さんは・・・随分、お変りになりましたね」
「え?そうですか?・・・ふーん、未来の俺はフツーの人っぽいけど、それなりに成長してるんですよね?」
「そう、ですね・・・常に先を読んでいるような方でしたね」
過去形。
この時間軸の未来のツナは既に死んでいる。それを改めて示された形となり、ツナは首を傾げた。
「ふーん。そんな俺がアッサリ殺されるかねぇ・・・しかも仲間を放置して。そこら辺がおかしいなって思うんですけどねぇ・・・?」
「・・・ッ」
じとっと自分を見つめるツナに、草壁は言いようのない圧力を感じた。
「哲・・・お前の敵う相手じゃないよ」
草壁がひゅ、と息を吸ったその瞬間に雲雀が彼の肩に手を置き、グイッとどかした。
「へぇ・・・」
その様子に目を細め、ツナは感心したように声をあげた。
「君、相当この時代の彼と違う性質を持ってるみたいだね」
「そんなことないですよ?時間軸が違うだけで沢田綱吉という存在は一緒なんですから」
「でも、育つ環境が同じ双子だって性格が違ったりするんだ。ましてや時間軸が違うんだから変わっている可能性もあるよね?」
「・・・雲雀さんとこんな風に会話が続くのって珍しいんですけどねー・・・時間軸が違うっていうのもあるかもしれないですけど、やっぱり10年ってすごいなぁ」
雲雀との会話を楽しんでいるようにも思えるツナだったが、そうそう簡単に“自分が認めた相手”ではない雲雀に主導権を握らせるつもりはない。
さらりと話を逸らされた雲雀は、その掴みどころのなさ“だけ”は確かに自分の知る沢田綱吉と似ていると感じる。
「・・・君、ムカつく」
「ふふ・・・じゃあ、拳で語りあったりしちゃいますか?」
「いいね・・・」
ビリビリと空気を震わせるような殺気に、その場にいた全員が竦みあがる。
「なんて殺気だ・・・」
γは呆然と殺気を発している2人を見つめる。
仲間同士であるにも関わらず、純粋な殺気をぶつけ合っているというのがγには理解できない。
「オイ、ここで暴れるな」
その時。ほんの少し、いつもよりも不機嫌な声が2人の殺気のぶつけ合いを止めた。
「止めないでよ、リボーン」
ムスッとして応じたツナの肩に乗り、ヒタリと小さな手を頬に当てるリボーン。
「変なトコでやる気出してんじゃねぇぞ、ツナ」
「・・・やぁ、赤ん坊。元気そうだね」
その2人のやり取りを見つめながら殺気を抑えた雲雀がうっすらと笑みをうかべる。
「・・・雲雀こそ元気そうで何よりだぞ。悪りぃがツナとの手合わせはもう少し待ってくれ。ちょっとした報告があるからな」
「報告?なんか進展でもあったの?」
「まぁな・・・おい、入れ」
ツナの問いに頷きつつリボーンが招き入れた2人を見て、ツナは目を軽く瞠った。